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ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~

作者:akamine0806
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第5章 極寒の雪原の中で ~指揮官としての初陣~

 中隊長として第3中隊をひいることになった私ではあったがこの中隊は下士官、兵士ともにローゼンリッターの隊員が多く私に親しみをもって接してくれた。
同盟人下士官、兵も同じく私にとても優しくしてくれた。
訓練の時中隊先任准尉であったジョアン・マッケンジー准尉はよく私に戦術指導をしてくれたし、中隊後方支援幕僚であるジョン・バレット軍曹は弾薬などの消耗品に関しての難しい報告書を新任少尉である私のためわかりやすくフォーマットを変えてくれたり、何かと弟のように面倒を見てくれた。
また、元からかもしれないがこの中隊にはとてもまとまりがあった。
そのためか、中隊全体が一体となって行動するとき、特に訓練の時は他中隊とは比べ物にならないような訓練成績を上げていた。
もちろんその中で私も指揮運営能力を醸成させることができたし、中隊の一員としてなじむことが自分の想像以上に早くなっていたことにはある一種の感動を感じた。
早く、実戦に出てこの百戦錬磨の戦士たちとともに戦いたいと思っていたが、そのチャンスは予想より2か月も早く回ってきた。
 世にいう「βⅢ衛星攻略戦」である。

 宇宙歴791年 9月20日 
第99衛星群 βⅢ衛星上空 
強襲揚陸艦「ケルティック3号」の降下ハッチ前にて
マークス准将が
「各連隊は降下攻撃戦闘群ごとに降下開始ののち、各大隊で連携を取り攻撃を開始せよ!」
とヘッドセット越しに全兵士へ向けて発信した。
この3個降下中隊で編成された第1次降下攻撃戦闘群を率いているのはカスパー・リンツ中尉である。
リンツ中尉は
「よし野郎ども行くぞ!
ここがローゼンリッターの花道であることを第2次降下部隊の奴らに思い知らせるぞ!」
降下誘導員がゴーサインを出す。
ハッチが開く
一面真っ白だ。
本当なら寒いはずだが、緊張と装甲服内にいるのでそれを感じない。
その中に黒こげになった帝国軍のβⅢ基地が見える。
第2艦隊を基幹とする攻略部隊の徹底的な艦砲射撃によって基地はがれきの山と化していた。
しかし、その中でも生き残った基地の防空部隊が盛んに射撃をしてくる。
第1中隊が降下を始めた。
降下するときは本来なら装甲服の上から降下器具を装着するのだが、今回は下が雪原なので徒歩進撃をすると雪に足を取られるので「凧」と呼ばれている2人乗りの小型強襲機を使う。
これは前席に座った一人が操縦と機体の射撃を行い、後席の一人がトマホークを持って敵に接近し、攻撃するか、ライフルで攻撃する。
速力、機動性ともに良好でローゼンリッターは地上攻撃ではこれをよく利用した攻撃を行っている。
第2中隊の降下が終了し、第3中隊の順番になった。
降下誘導員が中隊員の乗る小型強襲機をカタパルトに設置し
「第3中隊降下良し!
健闘を祈ります!」
私は
「第3中隊降下準備良し!
協力に感謝する! 第3中隊降下開始!」
何度も繰り返した手順ではあったが、本番になると緊張する。
降下誘導員が
「1号機射出!」
シュパーン!
という音とともに、機体ごと前面に射出される。
第2中隊の殿機の誘導灯に従って降下する。
私の機体のパイロットは
ジェフリーズ・ヨハスン軍曹である。
彼は、名前こそ同盟人であるが帝国亡命2世である。
彼はなかなかの操縦の腕前の持ち主で実はスパルタニアンのパイロットであったのだが、
上官に帝国2世を大変嫌う士官がいて、そいつと殴り合いのけんかになって陸戦部隊に転属になってしまったそうだ。
しかし、先のヘンシェルで戦功を立てて軍曹に昇進している。

降下から3分後。
目の前に帝国軍基地が見えてきた。
敵は、盛んに攻撃してくるが、この手の攻撃になれたローゼンリッターがほとんどを占めるこの第1次降下部隊にはそんなものはただの気休め程度にしか思われなかった。
敵からの射撃を避けるために低空単縦陣での飛行を命令した。
リンツ中尉から
「各中隊、予定通りの進撃コースへ入れ!
計画通りのポイント3-3で合流するぞ!
散開!」
私たちは基地の西側、一番対空火器が生き残っていたところであった、の攻撃を担当しており私の隊はそのポイントのさらに西側を攻撃することになっていた。
そのまま、進路変更を命じ攻撃地点へ中隊の機首を向けさせる。
敵の攻撃陣地まであと800mに迫ったところで私は
「機関銃小隊、射撃用意!」
すると、マリー予備役少尉から
「準備良し!」
その瞬間に
「撃て!」
次の瞬間に何本もの機関銃のレーザー弾が敵の陣地に吸い込まれていく。
そして、敵陣地まで300mのところで
「第1・2・3小隊!出力最大突撃!
機関銃小隊は巡航速度を保って援護射撃を続けろ!」
1個小隊23機が単縦陣、高速で侵入を図る。
私は、ライフルで陣地から機関銃を放っている帝国軍兵士に向けて射撃した。命中。
敵陣に到達!
といっても一瞬で過ぎ去った。
我々の攻撃目標はここから先なのだ。
「第2,3小隊フォーメーションA!」
攻撃態勢の編隊になる。
「各機レーザー砲三連射用意!」
「撃て!」
レーザー光線が400m先にある敵の基地本部建物につながる格納庫に集中する。
爆発!
進入路を確保。
「各機、突入路付近へ着地!
機体は遠隔操作モードにしていつでも対地支援が行えるように準備せよ!」
大きく開いた突入口から帝国軍兵士が射撃してきた。
「第3小隊!
誘導ミサイル1から3、突入口に向けて射撃用意!」
「撃て!」
ミサイルがまっすぐ飛んでいく。
命中!
抵抗はやんだようだ。
そうこうしているうちに、突入口に到達。
その場で着地。
ジェフリーズ軍曹が遠隔操作モードにして機体を上空に返した。
ここからが本番だ。
「着地した小隊から周囲の警戒と掃討を行え!」
まずは、橋頭堡の確保である。
ここに楔を打ち込んでおけばここを基地攻略の入り口にすることができる。
周囲では第2,3小隊が警戒行動に入っていた。
私はリンツ中尉に
「こちら第3中隊ポイント3-5格納庫に橋頭保を確保!
これより突入します!」
と報告したところ
「シュナイダー少尉!
ご苦労。
これからが本番だ!冷静にな!」
と、いつもの激励が飛んできた。
「はっ!了解しました!」
私は
「突入許可が下りた!
ただ今から突入する!
第1小隊はポイントAから、第2小隊はポイントDから、機関銃小隊はポイントKより侵入。
第3小隊は敵の第1要撃管制室および、西方射撃統制指令室を制圧し降下部隊本部の誘導に当たれ!」
今考えうる限りで「敵の基地総司令部」いわゆる「ポイント3-3」への一番有効な攻撃ルートを選ばなくてはいけなかったが、
敵の基地駐屯第44空戦飛行隊のワルキューレと基地西方地区の地対空陣地により味方の降下輸送部隊に被害が及んでいたため、独断ではあるが要撃管制室と射撃統制室を制圧することでこれに対処しようと思った。
本来なら未知数の敵の基地守備隊に多正面作戦(できれば最低でも4正面包囲作戦)を取りたかったのだが現状では管制室制圧を第1目標とするべきであろう。
そして
「第1小隊行くぞ!」
と言って私はトマホークを握って進入ポイントAから侵入した。
こうして宇宙歴791年 9月20日 私の「指揮官としての」戦い:「βⅢ衛星攻略戦」の幕は切って落とされた。 
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