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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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甘い時間・1時間目(2016/03/30 一部修正)

 
前書き
宿題デート回ですが、とにかく甘いと思います。イッキと神崎さんがラブラブです。 

 


【視点:樹】



夏休み4日目。今日は烏間先生が不在の為、予定されていた暗殺訓練が中止となった。烏間先生の部下の人から聞いた話では、夏休み中の俺達の特別講師としてある人物に来て貰う為、直接交渉しに行ったのだとか。

故に今日はA・T訓練も急遽中止となり、各自思い思いの1日を過ごすことになった。ちなみに俺は、夏休みの宿題を今日中にいくつか終わらせようと思っている。

俺、長期休暇で出された宿題とか基本的に最初の方で終わらせておく派なんだよな。で、終わらせてから命懸けで遊びまくる派でもある。

そんな訳で俺は宿題を始めようとしたんだが、その矢先に家の呼び鈴が鳴り、出鼻を挫かれてしまった。一体誰だ?

そんなことを思いながら玄関を出て門に行くと、そこには夏仕様の清楚な私服を着た有希子が立っていた。


「有希子?どうしたんだ?」
「えっと、一緒に夏休みの宿題しようと思って。……来ちゃった」
「………有希子。女の子の「来ちゃった」発言は、男のハートを撃ち抜く必殺ワードでしかないから、絶対に俺以外に使うな」
「イッキ君にしか使わないから、心配の必要ないよ」
「ッ!………取り敢えず、家の中に入ろうか。夏休みの宿題も2人でやったら早く終わるだろうし」
「うん」


別に狙ってやってる訳じゃないんだろうけど、付き合い始めてから有希子は常に俺の心を鷲掴みにしてくる。このままだと、いつか俺の理性が壊れそうで怖い。何か対策を考えないとな。

そんなことを考えながら俺は有希子をリビングへと案内し、冷たい飲み物を出した後、夏休みの宿題一式を自室へと取りに行った。

そして、宿題一式と共にリビングへと戻って来た俺は、有希子の隣の席に腰掛け、宿題に取り掛かった。

ん?さっき理性云々と言ってたのに、普通に隣の席に座るとか意味不明?いや、一緒に勉強するのに向かいの席に座る方が意味不明だろ。分からない所を聞かれた時に教え難いし、身を乗り出して教えるとか面倒臭いことこの上ないと思うぞ。

ちなみに、俺と有希子は勉強を始めると必要不可欠な会話―――問題に対する質問以外の会話をしなくなるタイプで、2人だけなら問題無いんだが、複数人で行う勉強会などでは何故か場の空気が重くなってしまったりする。

期末テスト勉強強化合宿でも、俺達が並んで座って勉強していると、茅野や矢田、倉橋から会話が無いから空気が重いとツッコミを受けた。逆に片岡や速水からは静かで勉強に集中し易いと言われたけどな。

最初に始めたのが国語の宿題ということもあり、リビングに響くのは殆どシャーペンの走る音のみ。極偶に有希子が分からない所を質問してきたが、それも40~50分置きに1回のペースだ。

そんな感じで宿題を片していると、あっという間に時間が過ぎて行き、国語の宿題を終えた時には昼前―――リビングに備え付けられている柱時計の短針は11時を指していた。


「有希子。国語の宿題も終わったし、もう昼時だから一息入れよう。このまま午後も一緒に宿題やるだろ?どうせなら、昼も一緒に食べよう」
「えっと……、いいのかな?」
「遠慮するなよ。それに俺が有希子と一緒に昼飯を食いたいって思ってるんだ」
「……うん。それじゃあ、お昼も一緒させて貰うね」


俺は自分でも少し臭い台詞を言ったと自覚し、内心では引かれてないかとも思っていたが、有希子の反応から察するにそれも杞憂だったみたいだ。

昼飯のメニューに関しては、朝飯を食い終わった時に冷製パスタにしようと決めていたので、あとはトッピングを冷蔵庫の中の食材で決めるだけだった。

冷蔵庫の中には昨日の海鮮丼に使った残り物のイクラと釜揚げしらす、あと青紫蘇もあるな。よし、和風冷製パスタにしよう。

前の世界でも基本的に1人暮らしだったこともあって、俺は手慣れた動きでパスタを調理していく。その俺の隣では有希子が冷蔵庫にあった生野菜を使ってサラダを作っている。


「イッキ君、料理するのも手馴れてる様に見えるけど、普段からよく作るの?」
「最近は全体的に作る頻度が減ってるけど、朝飯は自分で作ってるからな。昼飯も有希子と付き合うまでは自分で作ってたし、晩飯も基本的には磯貝さん――悠馬のお母さんに作って貰ってるけど、仕事に来られない日とかは自分で作ってる」
「そうなんだ」
「おう。っと、パスタが茹で上がった。あとは冷水で冷やして皿に盛り付けるだけだから、有希子はサラダをリビングに持って行っといてもらえるか?」
「うん」


こうして、俺は有希子との共同調理を終え、2人で昼食を食べた。この時、パスタを食べた有希子が少し落ち込んでたが、俺が有希子の作る料理が好きだというと、すぐに元気になってくれた。

昼食を終えた後は、休憩も兼ねてゲーム部屋でオンラインFPSを2人で1時間程やり、12時半丁度から宿題を再開した。今度は理科の宿題だ。

有希子は理数系が苦手ということもあり、午前中より質問の頻度が増えたが、質問に答えるのも俺にとっては復習となるので苦にはならなかった。そして――


「イッキ君、この設問なんだ、けど―――」
「ん?どれ―――」


有希子が質問をし、俺が問題を覗き込もうとした時、俺達の顔はあと少し近づけば唇が振れてしまう程に急接近してしまった。こんな状況に陥ったのは、6月の中旬頃に1回あったきりということもあって、互いに思わず体が固まってしまう。

が、俺より早く硬直が解けた有希子は、覚悟を決めた様な目で俺を見つめると、目を閉じて顔を上げてきた。これはキスしてもいいということだろうか?

いや、そういうことだろう。ここで戸惑っては男が廃る!……いや、有希子にここまでさせた時点で既に男が廃ってる様にも思えるが……。

兎に角、俺は有希子に恥をかかせない為、また俺自身したいという欲求に正直になる為、有希子と唇を重ねた。この日、俺と有希子は本当の意味で恋人同士になれた気がした。


 
 

 
後書き
ファーストキス、おめでとう!イッキ君、神崎さん!!

といっても、ビッチ先生の公開ディープキスのせいで、本当の意味でファーストとは言えないかもしれませんが……。 
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