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ソードアート・オンライン 瑠璃色を持つ者たち

作者:はらずし
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第七話 初の戦闘

 
前書き

どうも、はらずしです。

今回は宣言通り、戦闘描写をできるだけ詰め込みました。

けれどまあ…………あまり期待しないでください。

では、どうぞ。 

 





「よっーーーこいせっ!」

『ミギャァァ!』

ブン!と一振り横に薙ぐと面白いように数体のモンスターが吹き飛ばされ、ポリゴンと散っていく。

青い破片に一瞥もくれずバックジャンプし、背後にいたモンスターの背後を取って、一突き。

「ラァッ!」

『ギャアァ!』

反撃することはおろか、背後に回られたことすら気づくことができずに最後の一体が消えた。

周囲に敵の反応がないことを確認して、リュウヤはふぅ、と息をつき得物を一振りして戦闘態勢を解いた。

「うん、やっぱりいいねぇ」

片手剣では感じられなかった、シックリくる感覚。それが今持つ武器にはあった。

「変えて正解だったな」

リュウヤは己の新たな武器ーーー片手長槍を見やり満足げに微笑んだ。

新たな武器とはいえ、使い始めて約一ヶ月近く経つ。
現在リュウヤがいるのは第十層の迷宮区だ。ここはベータテスターでさえ未知の領域となる階層だが、十分にやりあえている。
片手用直剣のままでは確実に死んでいたと実感するほどに。

「つっかれた〜」

《プラティンランス》の名を持つ槍をペン回しのごとくクルクルと回しながら、疲れを取るために安全地帯を目指す。

トコトコ歩いていると、遠くの位置からモンスターの反応が。
即座に戦闘モードへ移行し、敵の数を数え始めた。

(五………いや、七か)

だんだんと近づいてくる敵に、リュウヤは吠えた。

「いい加減、休ませろやぁぁぁ!!」

安全地帯に向かっているのにモンスターの群れに襲われる。それが今日だけで三回繰り返されたのだった。






「ん?……おっと、こりゃヤバいもんみっけたな、俺」

安全地帯に着いた後、小一時間ほど休憩を入れて再び迷宮を進んでいたリュウヤが見つけたのは宝物庫を彷彿とさせる部屋だった。

つまり、見るからに罠と思える部屋ということだ。

こんなあからさまな部屋が、単に得するだけの部屋とは思えない。絶対になにかある。
だが、それだけ見返りは相当のものとなるはず。

命をかけて不確定な報酬を取るか
命を惜しんで先の人生を取るか

「ま、悩んでも仕方ないかな」

口調は軽く、気持ちは引き締め、リュウヤはその部屋へ一歩踏み出した。

宝物庫は中々に広く、部屋の四すみには宝箱が。広すぎる空間が異様な雰囲気をまとってリュウヤに悪寒を走らせる。
すると部屋中が赤々と光り出し、部屋中央に一体のモンスターが現れる。

リュウヤとほぼ同じ体躯を持つ敵は、しかし油断ならない雰囲気を醸し出している。
リュウヤのもつ識別スキルで確認しても、レベル差はかなりあるようだ。
まるでフロアボスを相手にしている気分に陥ってしまう。

そのモンスターの名は《ロイアルリテーナオブソード》。

武者鎧を着け、腰に刀を差して悠然と構えるその姿はまるで武士のようだ。
ただ中身はモンスターだ。人ではない。
《リザードマン》のような形容をしているが、顔だけが見えない。落ち武者といったところか。

なんにせよ、このモンスターを倒さなければ報酬はゼロだ。代わりにこの世界を去る権利を得ることになる。いっそう気を引き締めた。

数瞬の睨み合い。


ーーーーーーバンッッ!


ゼロから最速へ、その影響で音が部屋に響き渡る。その元凶はリュウヤだ。

一気に間合いを詰め、引き絞っていた右腕を素早く伸ばしきる。槍の穂先が鋭い牙となって敵に襲いかかった。

ノーモーションからの攻撃で反応しきれなかった《ロイアルリテーナ》は躱しきれず被弾する。一気に体力の二割を削られた。

さらにリュウヤは畳み掛けるように得物を振り回し始める。
伸ばしきった腕はそのままに身体だけを反転し、槍を上段から振り下ろす。
《ロイアルリテーナ》の鎧を掠めた穂先の方向を変えて下段から切り上げる。
切り上げとともにジャンプして敵の背後へ回ると水平に槍を薙いだ。ドッ、と音がして敵は横に飛ばされていく。

無様に飛ばされた《ロイアルリテーナ》はなんとか着地に成功。間髪入れずにリュウヤへと飛び込んだ。
その手にもつ刀には赤いエフェクトがまとわれている。

「やべ……!」

リュウヤは相手のソードスキルがなんであるかを悟りバックジャンプで回避を試みる。しかしそれは遅い。

ソードスキル特有のエフェクトが残光を煌めかせながらリュウヤへと迫った。直撃するには至らなかったものの、一気に三割ほど体力を削られる。やはり攻撃力が高い。

第一層ボスが使ったスキル《辻風》だ。
反応してからでは遅すぎるこの技はこの第十層でもレベルの高いやつは使ってくる。リュウヤが見てからでも直撃せずにすんだのはそのおかげだ。

リュウヤはすぐに態勢を立て直し、ソードスキルの技後硬直により動けない《ロイアルリテーナ》へ現状最大のダメージを与えられるソードスキルを発動する。

槍の穂先をエフェクトで輝かせ、システムアシストにより高速の動きを見せる。
左右斜めから《ロイアルリテーナ》の中心部分一点を交差するように斬撃を浴びせ、交差する一点を狙って自身の体重移動も上乗せした刺突をおみまいする。

三連撃ソードスキル《ドットクロッサー》

《ロイアルリテーナ》は攻撃力が高かった。だがその反面、防御力は低いのだろう。だった数回の打ち合いでポリゴンと化した。

「あらら、なんか拍子抜けだわ〜」

強いと確信して臨んだのに、肩透かしを食らった気分だ。だが勝ったことに変わりはない。勝利に喜び宝箱へ歩みを進める。

しかし、いきなり背後からなにかが精製される音が聞こえた。
バッ、と振り向くとそこには先ほど倒したばかりの《ロイアルリテーナ》が。それだけではない。一体増えて二体になっているのだ。
それだけで、あらかたのことをリュウヤは悟った。

何体かは不明だが倒すごとに頭数が増えていき、その出てくる敵を全て排除しなければ宝箱は開けられない。

「あ〜、こりゃヤバいもんに手ぇだしちゃったのかな?」

言いつつ、リュウヤは油断なく槍を構えなおした。
意識をもう一度戦闘モードへと切り替え、不敵な笑みを浮かべた。

「さて、殺されないように気をつけないとな」







日が沈み、多くの昼型プレイヤーたちが街で酒を飲み、飯を食べ、笑みがこぼれだす夜。
第十層の天井にはキラキラと光輝く星のようなものがいくつもこちらを見下ろしている。

その小さな光源のおかげか、もしくはシステム的な配慮か、街中ではない外のフィールドでもあたりを見渡せるくらいには明るかった。

そんな中をトボトボと歩く青年が一人。

「………………」

無言。息を吸って、吐くだけ。
十人に聞いて十人が「疲れてるよね、あれ」と言うであろう、見ただけでわかるお疲れモード。

今すぐ大の字に転がって寝たいという欲求を抑えて歩くのはついさっきようやく迷宮区から出てきたリュウヤ。

生きて帰ってこれたことに嬉しさは当然あるのだが、これだけは仕方ない。

あの宝物庫で戦った《ザ・ロイヤルリテーナオブソード》は全体撃破。最後に剣を交えた数は五体。正直、死ぬかと思った。

一発一発の攻撃力が馬鹿高いのに加えて数でも押してくるのだ。全力で回避を続けスキができれば単発ソードスキルでダメージを与えた。

疲れたのはそれだけではない。やっと終わったと思って宝箱を開ければ、中身は自分じゃ使えないもの。全部開けたが、どれ一つとして実用性のあるものはなかった。

成果といえばレベルが一上がっただけ。確かに嬉しいことなのだが、それでも精神的疲労は癒えない。

「はぁ……」

ため息をこぼしながら歩いていると、街が見えてきた。リュウヤはようやく圏内へと戻ると、すぐさま武器、防具の装備を全て解除した。

着ているのはシャツとズボンだけという、いかにもNPCのような格好だ。
誰もこのプレイヤーがリュウヤだとは気づかない。それどころかプレイヤーとさえ認識していない可能性もある。

だから、情報屋の網に引っかかることがないという利点がある。自らの居場所を特定させない。それは今のリュウヤにとって重要度の高いことだった。

かなりの悪評を背負うリュウヤは凄まじい批判を受けることがある。それだけならリュウヤもまだ大丈夫なのだが、それを公衆の面前でやられるのはさすがに耐えられない。
誰かに迷惑がかかるからだ。公衆の面前ということは誰かがいるということで、必ず誰かは不快な気分になってしまう。

リュウヤはそれが耐えられないのだ。自分が持ち込んだ事態で誰かに迷惑をかけたくなかった。

それ以前に、NPCのような格好をするのは単に面白いからやっているという面もある。それにな楽だ。誰かに見られていると感じなくて済むのは。

束縛から解放されたような気分で気持ちよく歩き、リュウヤは裏道を通ってある店へとたどり着く。

NPCレストランなのだが、それなりに美味しくて最近はよくここに足を運んでいた。

カラン、とドアの音を鳴らしながら店内に入る。裏店というやつなので、誰かがいることはない。

いや、なかったと言うべきか。

いつもの席に座ろうとすると、そこにはケープを被った一人のプレイヤーがいた。

「…………よくここを見つけたな」

そのプレイヤーは見知った人だった。かつてパーティとして戦い、最後にリュウヤを罵倒とともに軽蔑したーーー

「アスナ」

「ずいぶん探したわよ」

アスナは目深く被っていたフードをとった。
出てきたのは誰もが振り返ってしまうような美貌。この世界において数少ない女性プレイヤーの中でもそうだが、現実世界でもよほど人気が高いに違いない。

「今日もお綺麗でございますね。お嬢様」

わざと恭しく一礼すると、アスナはほのかに顔を紅潮させながらプイ、と目をそらした。

「そういうの、やめて」

「いえいえ、私は一市民にてございます。あなた様のようなお姫様に頭をさげて当たり前でございましょう?」

「ふざけないで」

「ふざけてなどおりませんよ、姫。私は礼節に則っているだけです」

「姫とか、そんな呼び方やめて」

だんだんと怒りが乗せられてきた声にリュウヤは怯えもせず、言葉を放つ。

「じゃあ、『人殺し』と呼ばれる極悪人を、攻略の時間を割いてまで追いかけるストーカー、でいいのか?」

「…………!」

アスナは逸らしていた目を戻し、リュウヤの表情を直視する。
そこにあったのは、さっきまでアスナを冷やかしていた笑みではなく、「なぜこんな真似をしたのか」という批難の眼差しだった。

「ま、なんでもいいけど、どうやってここ見つけたんだ?まさか本当にストーカーしてたわけじゃあるまい?」

リュウヤはまた表情を変え、質問に移った。アスナが見たところ、アスナの事情は本当にどうでもいいらしい。

人の気も知らないで、と内心憤りながら努めて冷静な声音を発する。

「アルゴさんに訊いたのよ。あなたが来そうな店を予想でもいいから教えてって」

「ほう、やっぱアルゴスゲえな。俺自分の居場所知られないようにかなり苦労してんだけど」

「アルゴさんも最初は分からないって言ってたけど、最終的にはここを突き止めたらしいわよ。アルゴさん曰く、『死にもの狂いでヤッタ』って」

リュウヤもさすがにこれには苦笑い。どこまで俺の素性知るために必死なんだよ、と若干引いてしまうくらいの本気度だった。

「それくらい、アルゴさんもあなたのことを気にかけてるってことよ」

「それはお嬢ちゃんもかな?嬉しいねぇ、こんな美少女から気に掛けてもらえるなんて。男冥利に尽きるってやつだな」

アッハッハ、と笑うと、アスナはそれに反比例して目尻を釣り上げていた。

「ふざけないでって言ってるでしょ。私はあなたに訊きたいことがあってここにいるの」

キッとアスナに睨まれるリュウヤ。だがそんなことだけで怖気つくはずもなく、ましてやアスナの事情を聞く気もなかった。

「あっそ。俺には訊かれるようなものに心当たりはないんだが、人違いじゃない?」

「あなたはいつもそうやってはぐらかすのね。誰もかれも」

「はぐらかしてなんかいないって。俺は自分に誠実だよ?こんな男他にはいないよ」

大仰に胸を張って主張するリュウヤにアスナは冷たい視線を送った。

「……自分で言ってて恥ずかしくないの、それ」

「……いや、さすがに今のは自分でもないと思った」

リュウヤは耐えられないとばかりに目をそらした。

シリアスな空気が一変、どこかギャグ的な悲しさを孕んだ空気になってしまう。
それを振り払うように音を立てながらアスナは立ち上がる。

「もう!あなたとは話してても埒があかない!」

「おいおい……レディがはしたない真似するんじゃないよ」

アスナの怒りをよそに場違いな指摘をするリュウヤだが、アスナは完全にスルーした。

「私と勝負しなさい。私が勝ったら質問に全部答えてもらうわ!」

意気揚々に宣言するアスナ。
だがしかし、リュウヤは冷めていた。

「やんないよそんなの。それ、俺になんか利益でもあるのん?」

確かに、アスナにはあるがリュウヤにはこれといったメリットがない。
だから、そう返されるとは思っていなかったアスナはパッと思いついた言葉を口にしてしまった。

「じゃ、じゃあ、あなたが勝ったらなんでも一つ言うことをきいてあげる」

「今なんでもっつったな?本当だな?」

「え、ええ。言ったわよ。それがなにか?」

さっきの反応とは真逆のテンションで食いついてきたリュウヤに、アスナは今更ながらに自分が失態を犯したことに気づいた。

なんでも、ということはつまり、

「じゃあ、俺が勝ったら一晩抱かせろ」

「ーーーッ!」

こういう命令もされるということだ。

シラッと真顔で言い切ったリュウヤにアスナは息を飲んだ。

だが今更引き返すこともできない。言質は取られているし、やっぱりやめるなんてことも不可能だ。

(ううん、負けなきゃいいのよ。負けなきゃそんな命令聞かなくてもいい……!)

そう腹を括っていると、リュウヤはぷっ、とふきだし笑い始めた。

「アッハハハハハ!冗談だってば。そんな思いつめたような顔しな〜いの。せっかくの美人が台無しだぜ〜?」

「〜〜〜〜っっ!!」

顔を真っ赤にして声にならない声で怒るアスナだが、それに対してリュウヤは笑う。
だが、ひとしきり笑ったところでリュウヤは真剣な表情になった。

「アスナ、『なんでも言うこと聞く』ってのはそういうことを言われることがあること、絶対に忘れるな」

まるで説教をされている気分のアスナだが、実際説教をしているのだろう。いたいけな少女を傷物にしようとするやからはどこにでもいるのだと、そう叱っているのだ。

バチが悪いのとリュウヤの冗談にまんまと引っかかった怒りで顔をうつむかせる。
その頭上で、ハァとため息が漏れた。

「今後一切、自分を賭けに出すようなマネをしないと誓えるのなら、《デュエル》くらいはしてやるよ」

まさかの提案にアスナは食い気味に顔を上げた。

「誓うわ。絶対に言わない。だから《デュエル》して」

「はいはい分かったよ。なら外に出ろ。近くにいいところがある」

言いながら、リュウヤは立ち上がった。







「ここ……?」

「いいとこだろ。よく一人で来るんだ」

アスナが連れてこられたのは、圏内ギリギリの広間のような場所だった。

「ここは一人でぼーっとするときにいいぞ。お前も暇があれば来ればいいさ」

「その前に《デュエル》だけどね」

「はいはい血気盛んなのはいいが、うっかり殺さないでね?」

リュウヤはおどけているのか本気で言っているのか知らないが無視。ウインドウを開き、決闘を申し込む。

「スルーですかそうですか」と言いつつリュウヤは初撃決着モードをクリックした。

両者の間で六十秒のカウントが始まる。

アスナはレイピアを鞘から引き抜く。

リュウヤはウインドウを開き、槍と防具を装備した。
防具と言えども、藍色のレザージャケットを羽織るだけだが。

互いに無言の時間が過ぎる。

アスナはレイピアをフェンシングのような構えで若干腰を落としながら構え、リュウヤは左足を前に、槍を肩に担いでいた。

二人ともに戦闘意欲というものは感じられない。あるのは目の前の相手を倒し、その先にある己の目的だけだ。

両者のにらみ合いが解けたのは【DUEL】の文字がはじけた瞬間。

先攻はアスナだった。腰を低くしていたのは突進の勢いをつけるためだ。そのおかげで開始直後スタートダッシュを決めたアスナの剣尖が襲い掛かる。

目にも留まらぬ速さ、常人なら視認不能の剣速の刺突攻撃をリュウヤは軽々と叩き落とした。
槍を担いでいたのはなにも挑発していたわけではない。アスナの初撃が刺突だと読んでいたから槍を上段に置いていただけだ。

レイピアを弾かれたアスナは、驚きに頭を染めてしまう。
まるでそれが狙いだったというかのように長槍という概念を吹き飛ばすような恐ろしい速さで穂先をアスナへと突きつける。

「ーーーッ!?」

「ほら、どうした」

リュウヤは必死に回避しているアスナを挑発するように言い放つ。
だがその物言いに腹をたてる暇もない。一つ一つの動作のキレが尋常ではないのだ。レイピアで弾こうにも、槍が相手では相性が悪すぎた。

「ハッ!」

「くうっ……!」

リュウヤの横薙ぎの一撃で右へと吹き飛ばされてしまうアスナ。なんとか防御しクリーンヒットは避けたものの、抜けた攻撃がアスナの体力ゲージを二割削っていた。

「終わりか?」

リュウヤは開始前と同じ構えでアスナを見据えている。これではアスナの得物十八番である刺突攻撃は簡単に弾かれてしまう。

(こうなったら……)

アスナはレイピアを構えなおし、またもや突進する。
リュウヤは呆れながらもアスナの剣尖の軌道を見つめていたが、正面まで迫り来る直前、それがいきなりブレた。

「っ!?」

慌てて目線で追った先はリュウヤからして右。体勢を変えようと動くが、先に見えたのはアスナのレイピアがライトエフェクトを纏う姿。彼女が最も得意とする《リニアー》だ。

アスナのレイピアが迫る中、リュウヤは咄嗟に後方へとジャンプ。そして彼もソードスキルを発動する。

重単発ソードスキル《ディヴァイブ》

長槍の基本スキルだが、中々に使い勝手がいい技だ。

結果、金属同士がぶつかる特有の音が響きながらアスナのレイピアは彼女の手から叩き落され、振り下ろされたリュウヤの槍の穂先が閃くように軌道を切り返してアスナの首元へと迫りーーーすんでで止まった。

「惜しかったな〜。ま、いい線いってたんじゃない?」

「何をしてるの?早く終わらせなさいよ」

「紳士たる私めにレディを切れと申すか」

「胡散臭いわね。……降参よ」

アスナが言ったことで、このデュエルの勝者はリュウヤとなった。

リュウヤはニコリと笑みを浮かべ槍をストレージへとしまった。アスナもレイピアを拾い上げ鞘へしまう。

「……アスナ」

すると唐突にリュウヤがアスナの名を呼んだ。

「はい?」

「安心しろ。俺は、お前の思ってる通りの人間だから」

「ーーー!?」

驚いた。前々から思っていたことだが、この男、本当に人の心を読めるのではないか。そう思ってしまうほどに彼の言葉はアスナの中にあった疑問の答えを出していた。

「どうせ、本当はいい人なんじゃないかって期待とやっぱ最低の人間だっていう軽蔑で心中穏やかじゃなかったのを、俺に直接ぶちまけることでスッキリしたかったんだろ?」

もはや人間とは思えなかった。人の表情から相手の心情を察することが得意だと自負するほどのアスナでさえもこう的確には当てられない。

もうこの次元まで行けば人間ではなくーーー

「あなた、神様かなにかなの?」

「ハッハッハ。神、ねぇ……」

一つ間をおいて、彼は言った。

「この世に神なんていねえんだよ……!」

押し殺したような声音に、アスナはビクっと肩を震わせた。
どうして彼がこんな怒りを見せるのは分からない。だが、アスナは一つの確信を得た。

この人は、何かに裏切られたのだと。
その結果が今の彼を作ったのだと。

アスナがリュウヤの言うような葛藤に陥っていたのは、第一層での彼の一言のせいだった。

「俺、なんも悪くねえじゃん」

あれは演技などではなく、正真正銘“心の底からの本音”だった。

だからこそアスナはあんな葛藤に身を包んでしまったのだ。キリトを助けようとしたのではないか、あの一言は自分では気づけないほどの演技だったのではないか、彼は最低の人間なのかと。

アルゴにその心の内を明かすと、彼女は言った。

「アイツはな、天邪鬼なんだヨ」

意味がわからなかったが、なんとなく分かったことはある。
アルゴが言いたかったのは、「自分たちが考えて分かるような思考ではない」ということではないのか。

「ま、そういうことで、俺は神じゃねえよ」

アスナの思考を遮ったのは、さっきとは打って変わって笑っているリュウヤの声だった。

「あなた、本当に人間……?」

「おいおい、人を化け物扱いとか人権侵害でしょっぴかれたいの?お縄にして欲しい人なの?あ、縛られたいの?まさかのMなの?」

「Mじゃないわよ!」

「ああ、縛りたい側?」

「Sでもないわよっ!」

アスナの反論にケタケタと笑うリュウヤは実に楽しそうだった。
どんな場面でさえ面白おかしくしようとする彼の思考は全く読めない。いや、読もうとするのがそもそも間違いなのかと思えてくる。

「んじゃ、デュエルも終わったし、報酬いただこうか」

アスナが嘆息していると、リュウヤはさも当然のように切り出した。
だがアスナにはそれを言われる筋合いがなかった。

「え……?だって、それはもう片付いたことじゃ……」

「俺はお前が今後一切、自分を賭けに出すような真似をしないと誓えば、『デュエルしてやる』っつっただけだぞ?」

「それが報酬なんじゃ……」

「俺、一言もそれが報酬だなんて言ってないですよ?」

それじゃあ、この決闘の勝者であるリュウヤはーーー

「さ〜て、『なんでも』っつったかんな〜。なぁにしてもらおうかなぁ〜」

ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべてアスナへ近寄っていくリュウヤ。

「い、いや、いやぁぁぁぁぁ!!」

涙目のアスナの叫び声が、あたり一帯をこだました。






「う〜〜〜!屈辱、屈辱よ!」

アスナは顔を真っ赤にして涙目で原因である加害者を睨んでいた。

「私にあんなことさせるなんて……!」

キッと睨んだ先にいるリュウヤは呆れたようにため息をついた。

「あのな、ただの写真撮影だぞ?」

「どこがよ!私にこんな格好させて……!」

アスナは今、頭にネコ耳カチューシャ、全身を体のラインがそのまま浮き出るようなネコのコスプレ衣装で包んでいた。もちろんシッポもついている。

これは《ロイアルリテーナオブソード》を倒した後に開けた宝箱に入っていた装備だ。

女性専用の装備だったため、男のリュウヤでは装備できなかった。……したかったわけではない。

「それにそれやるって言ってんじゃん。感謝しろよ?それ敏捷地プラスニの補正かかるんだからな」

「こんなの着て、フィールドになんか出ないわよ!」

まあ確かに、ボディラインがまんま浮かび上がっているアスナのその姿は、世のすべての男性の劣情を煽るだろう。現実でそんな格好していれば、お巡りさんに職質されること請け負いだ。

ここでそんな格好していても、誘ってるのかと疑われても仕方ない。
だが、リュウヤはそんなものに興味はなかった。
というか、未だ中学生に見えるアスナに、性的な興味はほとんどと言ってなかった。

だからこそこんなマネができるのである。

「は〜い、撮るからさっき指示したようにやってね〜」

「こ、こんなの絶対誰にも教えないでね!」

「ん?例えば?」

「キリトくんとか……アルゴがさんとかよ!」

「……ふ〜ん」

「な、なによ!?」

「べっつに〜?さ、撮るぞ〜」

リュウヤはニヤニヤしながら撮影に入った。

アスナの格好が面白いからのもあるが、アスナから出てきた言葉のせいが大半だ。

(結構意識してんだなぁ、キリトのこと)

情報屋であるアルゴより前にキリトの名前が出てきたのだ。一応年頃の年齢であるリュウヤもニヤニヤしてしまう。

(これ、時が来たらキリトにふっかけて売ってやろっと)

そんな野望を抱きながら、リュウヤはシャッターボタンを押した。






 
 

 
後書き
さて、いかがでしたでしょうか。

えっと、一応言っておきます。彼は変態です。
ええ、弁解の余地もありません。
こういうコスプレ大好き野郎です。

かくいう私もちょこっとこういうの好きですね。
いいでしょ!?ネココス!?
皆さんも想像してくださいよ!
美少女が恥じらいながらも「にゃ、にゃ〜」///
とかいう姿を!
(ただいま深夜テンションです)

さて次回ですが……特に今思いついていません。
強いて言うなら、たぶん猫の話かなぁ。

ではまたお会いしましょう。
See you!
 
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