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真田十勇士

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巻ノ二 穴山小助その六

「わかった、わし等の負けだ」
「もう賊は止める」
「わし等も男だ、約束は守る」
「ならよい、では上田に行きじゃ」
 幸村は自分達の負けを認めた賊達に微笑みこう告げた。
「真田家に入るがいい」
「真田家にか」
「入れというのか」
「あの家に」
「そうじゃ、御主達は賊じゃったが心まで腐ってはおらぬ」
 このことも見極めての言葉だ。
「ならばな」
「ううむ、しかし何故じゃ」
「何故真田なのじゃ」
「あの家なのか」
「実はこの方は真田家のご子息幸村様なのじゃ」
 穴山が今度はいぶかしんだ賊だった者達に笑って答えた。
「それでこう御主達に言われたのじゃ」
「何と、真田家のですか」
「だからそう言われたのですか」
「その様に」
 賊達はまた驚いた、穴山のその言葉に。そしてこうも言ったのだった。
「しかもあの噂に名高い幸村殿だったとは」
「いや、これは失礼しました」
「まことに」
 賊達はここで恐縮し畏まった。
「それがし達の命も奪わず」
「仕官先まで案内されるとは」
「いや、申し訳ないです」
「礼には及ばぬ、拙者は今は人を探し集めているに過ぎぬ」
 幸村は織田家の面々に笑って答えた。
「御主達が賊を止めてくれて真田に力を貸してくれるならよし」
「では」
「それでは我等はです」
「これより上田に向かいます」
「しかしその前に」
「お頭にお話して宜しいでしょうか」
「我等のお頭に」
 こう話してだった、そしてだった。
 賊達は三人をそのままだった、山の奥の彼等の頭目のところに案内しようと申し出た。それを受けてだった。
 雲井は幸村に顔を向けて言った。
「どうされますか」
「はい、この者達は嘘を言っておりませぬ」
 賊だった三人のその目を見ての言葉だ。
「ですから」
「それでなのですな」
「その頭目に会いましょう」
「してその頭目とは」
 穴山は三人に問うた。
「どういった者か」
「はい、鎖鎌の使い手で」
「この山の賊全員が一度に向かっても敵いませぬ」
「忍術も使われます」
「ふむ。忍の者か」
 幸村はそう聞いて考える顔になって述べた。
「では穴山殿と同じか」
「いえ、幸村様」 
 穴山はここでだ、幸村の前に片膝を突いて畏まってだ、そして。
 そのうえでだ、こう彼に言った。
「それがしは今のことで幸村様の強さとお人柄を見させて頂きました」
「では」
「はい、これよりそれがしは真田幸村様の家来」
 幸村に自ら臣従を約束するのだった。
「そうさせて頂きます」
「それでは」
「この命幸村様の為に」
「ではこれからは穴山殿と呼ばず」
「小助とお呼び下さい」
「では小助」
 幸村は微笑み穴山を自身が申し出た呼び方で呼んだ、そのうえで彼に対してさらに述べた。
「これから宜しく頼む」
「それでは」
 こうしてだった、幸村と穴山は主従となった。そしてだった。
 穴山はあらためてだ、幸村に言った。
「ではこれより」
「うむ、その頭目と会ってな」
「どういった者か見ましょう」
「そしてな」
「若しその者がこの者達の言う様な鎖鎌と忍術の達人なら」
「拙者の家臣としてじゃな」
「用いましょう」
 こう幸村に言うのだった。 
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