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刀術

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4部分:第四章


第四章

「見ているだけで心が和み洗われていくな」
「ですから好きなのですが」
「その花を長く見ていきたいが為じゃな」
「はい、生きたいです」
 またこう言う竹千代だった。
「是非共」
「それならばじゃ」
 ここでだ。雪斎はだ。
 静かだがしっかりとした口調でだ。竹千代に述べた。
「剣を身に着けよ」
「生きる為にですか」
「己を護るのは己じゃ。それに」
「それに?」
「そなたの祖父と父のことは知っておろう」
 不意にだ。竹千代の親達の話もしてきた。
「その二人のことはな」
「はい」
 彼等の話をされるとだ。竹千代は。
 態度を急に変えた。そうしてだ。
 無念の顔でだ。雪斎に答えた。
「御爺様も父上も」
「殺されておるな」
「家臣達によって」
「二人共まだ若かった」
 雪斎はここは淡々と述べた。
「御主も若くして死にたくはなかろう」
「それは」
「長く生きて花を見ていきたければ」
 まさにだ。その為にだというのだ。
「剣を身に着けよ。それで己の身を護れ」
「己を身を護るのは己だけですか」
「二人共いきなり斬られた」
 それが竹千代の祖父と父の最期だった。戦国の世にあってはよくあることだがそれでもだ。無惨な最期であることは言うまでもない。
 その祖父や父の話をだ。あえて出してなのだ。
 雪斎は竹千代に話すのだった。
「若し剣に秀でておったなら避けられたかも知れぬのだ」
「死を」
「死にたくなければ剣を取るのじゃ」
 難しくはなくだ。ただそれだけだというのだ。
 
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