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真田十勇士

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巻ノ一 戦乱の中でその九

「あそこには誰がおったか」
「はい、雷獣殿が」
「あの方が行かれている筈です」
「そうか、雷獣か」
「若しあそこに賊がおれば」
「雷獣殿のことですから」
「そうじゃな、あ奴はああ見えて正義感が強く」
 そしてとだ、武芸者は言うのだった。前をひたすら進みつつ。
「しかも強い」
「十二神将の間でも」
「そう仰言いますか」
「十二神将の力はそれぞれ互角程度、しかしあ奴の術はまた違う」
「ですな、素早いですし」
「賊がおっても」
「蹴散らすわ、さて我等はこのまま美濃に向かうぞ」
 武芸者は周りにいる忍の者達に告げた。
「よいな」
「はい、それでは」
「我等はこのまま」
「そしてあの国を見ましょうぞ」
「そうしようぞ、それにしてもあの若武者」
 武芸者は後ろを振り向かない、だが。
 その心を幸村に向けてだ、言うのだった。
「末恐ろしい者であろうな」
「そこまでの者ですか」
「双刀殿がそう言われるまでに」
「こちらに入れられれば」
「よいのですが」
「そうじゃな、半蔵様にもお話しておこう」
 幸村のことをだ、こう言ってだった。
 武芸者は信濃から美濃に向かうのだった、幸村のことを思いながら。
 そしてだった、幸村はその諏訪に着いた、そこには見事な社があった。
 その社を観てだ、幸村は微笑んで言った。
「さて、今からお願いをするか」
「さあさあ、寄って見られよ」
 いざ参拝に行こうとする幸村の耳にだ、ある声が入って来た。
「それがしが出したるこの煙玉」
「むっ?」
 幸村もその声に興味を持ってだ、そのうえで。
 その声の方を見るとだ、そこにだった。
 荒い髷で精悍な顔をしてだ、南蛮渡来の大きな緑のマントを羽織ったいささか派手な服の男がいた、その背には鉄砲があり。
 そしてだ、その手には。
 煙玉があった、その煙玉を持って社に参拝しようとする者達に話していた。
「どろんと煙が出て」
「それでどうなるのじゃ?」
「煙が出て」
「御主が消えるとでもいうのか」
「そうなのか?」
「左様、それがしは煙と共に消えて」
 そしてとだ、そのマントの男も客達に応えて言う。
「別の場所に出て来る」
「おお、妖術か」
「御主妖術を使うのか」
「それを今から見せるというのか」
「左様、消えて出て来て」
 そしてというのだ。
「その時はそれがしに一銭ずつ。宜しいか」
「見事消えて出て来たらな」
「その時は一銭でも二銭でもやるわ」
「妖術を見せてくれたらな」
「その時はな」
「妖術とな」
 妖術と聞いてだ、幸村もだ。
 男に興味を持って観てみた、すると。
 男はだ、幸村と客達の目の前でだった。 
 煙玉を己の下に投げてだ、そこから白い煙を出して。
 その煙で全身を包めさせてだ、するとだった。
 煙が消えるとだ、そこにはだった。
 もう男の姿はなかった、それを観て誰もが驚いた。 
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