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白樺

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3部分:第三章


第三章

「いいことね、それは」
「いいことですか」
「親しみやすいということだから」
 だからいいというのだ。
「それでおなま」
「はい」
「お花だね。見たいのは」
「御願いします。大奥に飾るべきお花を」
「わかったよ。それじゃあね」
 こうしてだった。奥方はおなまに今の季節の花を見せた。そうしてだ。
 おなまはだ。奥方にだ。自分が選んだ花を見せたのだった。
「これがいいかと」
「その花だね」
「はい、これです」
 こうだ。その花を手に取って奥方に見せながら話す。
「この花が一番いいです」
「また面白いお花を選んだね」
「面白いでしょうか」
「ええ。何かね」
 その花を見てだ。奥方はこうおなまに言うのだった。
「そのお花とは思わなかったよ」
「少し考えたんですけれど」
「それで選んだんだね」
「このお花なら飾った後でも使えますし」
「飾った後でも?」
「料理番の人にもお話させてもらいます」
 おなまはにこりと笑ってこんなことも言った。そうしてだった。
 すぐにその花が大奥に飾られていく。そしてだ。
 その大奥に将軍家重が来てだ。すぐにだ。
 目を丸くさせてだ。女中達に問い返した。
「大奥に雪が降っておるのか?」
「いえ、違います」
「そうではありません」
 女中達は将軍の足下に畏まって座りそのうえで彼に告げる。
「これは花です」
「全ては花なのです」
「花!?そういえば」
 そう言われてだ。家重も気付いた。
 まずは香りだ。その香りはかなり強い。心地よい香りがだ。大奥の中に漂っていた。
 その香りはまさに花のものだった。そしてだ。
 次にだ、その花達を見た。その花が何かというと。
「菊か」
「はい、菊です」
「それなのです」
 こうだ。女中達はまた家重に話した。
「奥方様が女中のおなまと相談してです」
「そのうえでなのです」
「そうだったのか」
 それを聞いてだ。家重もだ。
 目を見開きだ。そしてこう言った。
「白菊か。それで大奥を飾っておるのか」
「奥方様が上様がお花を好まれることを考えられてです」
「そのうえで大奥でお花を飾られようと思われて」
「それでなのです」
「おなまとお話されてそうして」
「白菊で飾られたのです」
「よいぞ、これはよいぞ」
 家重はだ。女中達のその話を聞いてだ。
 会心の笑顔でだ。こう言ったのだった。
「菊じゃ、菊はまことによい花じゃ」
「御気に召されましたか」
「そうなのですね」
「うむ。奥方を呼べ」
 すぐにだ。奥方を呼べとだ。女中達に告げた。
 
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