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皮肉な結末

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3部分:第三章


第三章

 何日も何日も尋問を受けた。雰囲気で下手をすれば拷問にかけられることがわかった。そんな中で昼も夜もしつこく尋問を受けた。
 その中だ。俺は彼女と離されてその気色悪い奴等の尋問を受けて。
 それでやっとだった。釈放された。
「御前は潔白だ」
「あえて日本に来た革命の闘士だな」
「それがわかった」
 こう言われるのだった。
「仕事は決まっているからな」
「俳優だ」
「それに家も用意してある」
「住むといい」
「そうか。それであいつは」
 俺は彼女がどうなったのか。ゲーペーウーの連中に尋ねた。
「一体どうなったんだ?」
「あいつ?誰だそれは」
「御前は一人で来た筈だが」
「日本の大学で革命を知り俳優になってソ連まで来た」
「そうでないのか」
「何っ、けれどあいつは」
「知らない」
 一人がこう言ってきた。
「とにかく御前は一人で来たんだ」
「我々はその御前の潔白を確めた」
「それだけだ」
「どういうことなんだ」
 俺はこの状況が全くわからなかった。彼女と来たのは間違いない。けれどそれでもだった。
 俺は一人貴族の屋敷を改造して無理矢理アパートにしたその一室に入ってだ。それから俳優生活に入った。演じる役といえば。
 革命家に労働者、そして農民ばかりだ。映画の内容は革命的なものばかりだ。プロパガンダの作品ばかり、これでもかと演じた。
 そして読む本も。ロシア文学以外は。
 プロレタリアばかりだった。日本みたいに娯楽とかそういうのはなかった。
 そんな退屈な中でだ。俺は噂話を聞いた。
「何か日本から来た女優がいたな」
「ああ、聞いたことがあるな」
「その女優がどうなったんだ?」
「一体」
「シベリア送りだってな」
 こうした噂を聞いた。
「何でも尋問中にゲーペーウーの幹部に反抗的な態度取ってな」
「それでシベリアか」
「馬鹿なことしたな」
「全くだ」
 既に噂で聞いていた。シベリアのことは。
 帝政ロシアからだ。シベリアへの流刑はあった。それがだ。
 ソ連でもあった。これは初耳だった。
 俺は自分では何も言わずにその噂を聞き続けた。その噂は。
「シベリアに送られたら終わりだからな」
「ああ、もう生きて帰られないぜ」
「ちょっとでも共産党の幹部に睨まれたらそれで終わりだよ」
「軍に入っても政治将校に嫌われたら」
 政治将校の話は聞いていた。軍人達に共産主義を教える人間だと思っていた。しかし噂での政治将校は。まさに監視員、特高よりも酷かった。
 その政治将校に嫌われるとどうなるか。噂は言っていた。
「懲罰大隊送りだからな」
「地雷原歩かさせられたりな」
「戦車の盾にされたりな」
「人間扱いされないからな」
「この国で人間扱いされるってな」
 それは何かというと。
「共産党員だけだからな」
「俺達人民は消耗品だからな」
「全くだぜ」
「ちょっと逆らったらな」
 その共産党員に逆らうとどうなるかという噂もあった。
「俺達もシベリアだからな」
「剣呑な話だぜ」
「全くだよ」
 こうした話を聞いた。俺はそれを聞いて密かに彼女について調べた。しかしだった。
 何もわからなかった。必要なことは。
 
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