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ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~

作者:akamine0806
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第4章 ハイネセン同盟軍統合士官学校

宇宙歴789年12月1日 私は「ハイネセン同盟軍統合士官学校」に入校した。
その日中に入校を全生徒の前で申告し、正直どうでもいい演説をさせられた。
その後、所属する教練中隊の学生寮にて祝賀行事が執り行われた。私の当時所属した教練中隊は「第31中隊」つまり、第3大隊第1中隊であった。
教練中隊の学生指揮官はアーロン・グデーリアンであった。彼は、非常に几帳面な性格で、中隊の分隊単位まで気をかける人でよく言えば面倒見のいい、悪く言えば少々面倒くさい先輩であった。後々に非常に密接に関わる上官でもある。
士官学校 戦略研究科では戦闘戦術を主に扱う。第1学年〜第2学年までは一般教養学色が強い教科を学ぶので、私の様な軍人一筋人間には全然必要のないものであったため戦術教育などが中心となる第3学年からの入学で十分対応可能であったのだ。
教科の内容としては
「艦隊戦戦術」、「宙陸両用作戦戦術」、「陸戦戦術」の3本柱を基礎として7つの選択科目から2科目を選択するものであった。
私は、選択科目を「対艦特殊強襲揚陸戦術」と「後方支援戦術」をとった。
後方支援を選んだ理由としては私の元上官であるケイン中将の副官であったジェシカ・ヒューズ中尉から士官学校入校前に後方支援の重要性を深く語られたことであった。
「腹が減っては戦はできぬ」これはまさに後方支援の重要性を説いたものである。
どんなに最強部隊でも結局は補給物資がないと行動不可能に陥るのである。
ジェシカ中尉は現在第12艦隊司令官ボロディン中将の副官である。
艦隊戦戦術の教科書はつまらなかったが、砲術・航海などのシュミレーション特に、艦隊戦シュミレーションはとてつもなく面白かった。
3次元立体シュミレーションで艦隊運動を考えるので、とてつもない集中力を求められるが私にとっては最高のゲームであった。
私は艦隊を編成するとき1個戦艦群、1個巡洋艦群、3個空母打撃機動群、4個駆逐艦群、1個対艦特殊強襲揚陸群を用いる。
これは、通常ではあり得ないことである。特に3個空母打撃機動群、1個対艦特殊強襲揚陸群を中心としていることが。
空母打撃機動群は近接攻撃力は多大であるが、防御はどんでもなく弱いものなのである。
であるが、私は戦艦群と巡洋艦群には兵站線を叩かせ敵が攻勢に出れない状況を作り出し、この近接攻撃力を用いて敵の側背をつき、敵艦の艦隊旗艦を確実に直接押さえるという作戦をとっている。
ただ、敵が大攻勢に出てきたときは非常にまずかった。しかし、私の艦隊戦教官は"艦隊戦の魔女"と呼ばれたエリー・パスカル准将である。エリー准将はヘンシェル星系攻防戦時に小惑星群でゲリラ作戦を用いて初期の帝国軍を撃退した英雄である。
このエリー准将秘伝の小惑星群でのゲリラ戦を私はよく利用させていただいた。
小惑星群は駆逐艦群や小型戦闘艇の大活躍場所で駆逐艦群は20〜30隻の小集団で敵を閉鎖的な宇宙空間に誘い出し袋叩きにするか、小型戦闘艇は1個空戦中隊程度で小惑星に潜み、敵の艦橋または機関部に集中砲火を浴びせ撃沈するのである。
このようにして、私は学年で1か2位の艦隊シュミレーション名手になった。しかし、ある一人の後輩に絶対にかなわなかった。それは
あのドワイト・グリーンヒル中将の娘である
フレデリカ・グリーンヒルである。
彼女は私の弱点を見抜き、通信や偵察で確実に情報を手に入れて攻勢に打って出てきた。
しかし、そんな私にも先輩も後輩も同級生にも確実に勝てるものがある。
それは、地上戦シュミレーションである。
私はヘリか航空機を用いた敵後方への空挺強襲作戦を得意としており、これを的の補給線が伸びきっている瞬間などの絶妙なタイミングで打ち出すと敵はビビって交代するので機甲部隊と機械化歩兵部隊を送り込み、敵後方まで侵入し空挺強襲部隊と合流ののち残りの敵を分断、各個撃破するというのが基本戦術である。
フレデリカもこの地上戦シュミレーションも第2学年では1位であったが、こんなところで負けるのは私のプライドが許さない。
完膚なきまでにやり込めてやった。
しかし、私にはもっと面白いことがあった。
一つは地上戦の実戦演習であるがもっともっと面白いのは対艦特殊強襲揚陸演習を帝国軍の捕獲戦艦に対してローゼンリッター連隊とともに行えることであった。
ことあるごとにリューネブルク大佐に戦術指導をしてもらい、シェーンコップ少佐には白兵戦指導をいただいた。
練習対艦強襲揚陸艦で帝国軍捕獲戦艦に強襲接舷
戦艦の防御壁を超高熱いっぺんに溶解し、
私は、士官学校生1個中隊とカスパー・リンツ中尉の1個中隊で突入。
中にいる第34即応白兵戦教導連隊1個大隊が迎撃に来る。
私は先鋒を切って敵の中尉と斬り合う。
さすがに、教導連隊であるため強い。
だが、私にもプライドがある。負けるわけにはいかない。
胴フェイント面で敵をドロップアウト。
味方を艦橋の方へ戦術的に移動させる。
数個小隊を使って陽動。
警備の薄くなったブロックへ残りを使って突入。敵の1個小隊発見!
すぐに斬り合いになる。
敵の伍長を訓練やりでドロップアウト
なかなか強い軍曹と取っ組み合いになる。
一瞬自分の胴が空く!
トマホークがきた!!!
と思った瞬間に、軍曹のヘルメットが赤く点灯する
リンツ中尉が
「坊や、ボケボケするな!行くぞ!!」
私は
「はっ!」
と答えて、リンツ中尉の小隊とともに艦橋部へ侵入。
敵が訓練用ペイントライフルを放ってくる!
フラッシュパン投擲!
艦橋制圧。敵の艦長をトマホークの一撃でドロップアウト。
訓練終了
これを見ていた大佐は
「小僧。だいぶ上手くなったな。最初の甘々戦術に比べればマシといったところか。
頑張れよ。」
と言って、ポンと私の頭を押すとローゼンリッター連隊本部に入っていった。
これが私のリューネブルク大佐を同盟で見た最後になった…
その後、私が晴れて4年生になった年の宇宙歴790年4月の「ケブラー第6衛生群攻略戦」で当地の降下作戦に送られたローゼンリッター連隊の連隊長リューネブルク大佐が帝国軍に単独亡命したのであった。
これにより、ローゼンリッター連隊は士官全員が査問にかけられるなど、連隊解体の危機にさらされた。
私はショックであった。
その後、シェーンコップ少佐は私に表面上は連隊への所属を取り消したと通達された。
その後わかったことであったが、下士官に関しても査問が行われ、兵士・下士官の半数は前線辺境守備隊に左遷、士官の4割も同様の運命を辿った。彼は私にこれを避けさせたかったのであろう。なんせこの対象になったのは、連隊所属年数2年未満の隊員たちであったのだ。
そうして、私の不安な宇宙歴790年が始まろうとしていた… 
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