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ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~

作者:akamine0806
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第3章 しばしの休息 ローゼンリッター連隊 第8艦隊ローゼンリッター連隊本部

 ローゼンリッター連隊本部に入るなり、
いきなり連隊長のヘルマン・フォン・リューネブルク大佐が現れた。
「貴官かね?
新米薔薇の騎士は?」
いかにも貴族らしい顔つき、がっちりした肩幅、そして人を一発で殺せそうな鋭い目つき。
これがリューネブルク大佐であった。
いきなりのことであったので戸惑っていると、後ろからあのワルター・フォン・シェーンコップ少佐が現れた。
「大佐。彼です、例のヘンシェルの英雄君は
至近距離からの私のナイフを彼はうまくさけた、例のキャベツ君ですよ。」
このキャベツというのは同盟人が帝国人または帝国亡命人に使うジョーク兼半分本気の差別用語である。
すると大佐は
「なるほどな、シェーンコップのナイフを避けられるとはなかなかだな、だが私のは無理であろう!」
と言って、持っていたペンを私の眉間に直撃させた!いや、直前わずか1㎜位のところで止まった。大佐と私との距離は3,4mは離れていたと思うが一瞬にして間合いを攻めてきた。
とんでもないスピードだった。
「まあいい、これからの貴官の訓練次第でシェーンコップの青二才にだって勝てることは十分に可能だ。
貴官の入隊を歓迎する。」
と言って、きれいな敬礼をしてきた。
私は、一瞬遅れて敬礼を返した。
「貴官の名前を聞いておこう。
軍曹。」
「はっ。
エーリッヒ・フォン・シュナイダー軍曹であります。大佐!」
すると、リューネブルク大佐は顔をしかめて
「貴官はエルビィン・フォン・シュナイダー帝国軍准将を知っているか?」
私は、これまでにないくらいの衝撃を食らった。
なぜ、大佐は私の父の名を知っているんだ・・・・
「はい、知っています。私の父です。
ですが、もうこの世にはいません。」
すると大佐は
「私は、彼をよく知っている。彼は勇猛果敢な帝国軍の擲弾装甲兵士官だった。
陸戦の腕も一級品だった。しかし、あるとき彼は戦場に出てこなくなった。
彼に何かあったのか?」
私は、その場で叔父から聞いていた父のことをすべて話した。
大佐は
「そうか、残念だった。彼が私以外の者の手にかかって殺されるとは…
とにかく、貴官はこうして生きている。
父上のためにもこのローゼンリッターでバリバリやってくれ。
少佐。後は頼んだぞ」
と言って、書類をシェーンコップ少佐に手渡すなりオフィスの奥に行ってしまった。
「大佐はああ見えて情が深い人なのさ。
まあ、おれを青二才と呼ぶのはやめてほしいがな。
よし、こっちへ来い。」
と言って私は応接間で書類手続きを行った。
書類は、私の人事資料、ローゼンリッター連隊について等の事務的内容ばっかであった。
ここで、ローゼンリッター連隊について説明しておこう。
ローゼンリッター連隊とは「第442特殊強襲揚陸白兵戦連隊」という正式名称を持つ白兵戦専門部隊である。
揚陸と書いてあるが、無論地上作戦では空挺降下作戦、特殊作戦、揚陸作戦、強襲作戦いずれも行う。
また、地上戦のみならず、宇宙艦隊戦では敵艦隊旗艦または指揮艦艇に直接強襲揚陸を行い敵の指揮統制を根本から揺るがす「特殊揚陸強襲作戦」も行う部隊である。
どちらかというと後者の任務色が強いためか、常に宇宙正規艦隊に所属しており、独自の対艦強襲揚陸艦20隻、護衛巡航艦25隻、補給・修理工作艦5隻を持つそれなりの規模の宙陸両用作戦部隊であった。
このことよりもっと重要なことがある。
それは連隊の全隊員約3000人と艦艇乗組員約1500人は全員亡命帝国人の子弟で編成されていた。
このことから、設立当初は政治的要因の強い部隊であったが今日では同盟軍最強と謳われる連隊に成長した。
何が彼らをそのように駆り立てたのか。
それは「差別」である。
亡命帝国人は同盟内で差別の対象に真っ先になる。
こうしたことからおのずと同連隊は激戦地に送られる。
当然死傷率も高まる。
これまでの同連隊の死傷率は実に455パーセント。
つまり一人4.5回以上は戦死または負傷しているということだ。
この数値以前に送られる先々で彼らが生き残るには必然と強くなるしか方法がなくなってしまう。
こうして、彼らは「同盟軍最強」の連隊になったのであった。
私は、そんな連隊に入隊したのであった。
しかし、入隊は2年後の宇宙歴791年である。
その前に私はやることがあったのだ。それは
「ハイネ線同盟軍統合士官学校 戦略研究科」への入校であった。
私の入校は宇宙歴789年12月ということであった。
士官学校からあらゆる戦術のテキストが送られてきたが、「宙陸両用作戦」のテキスト以外ケン中佐から教えてもらっていてすでに知っているもので面白くもなんともなかった。
ケン中佐は11月から士官学校の戦略研究科の教官になっていた。
もともと、戦略研究科は宇宙艦隊に勤務するようないわゆる艦艇乗りが行くようなところであったが全体の1割には陸戦科からの道が開けていた。
私は、12月1日の入校へ備えて1日1日をテキストの読み込みに使っていた。
そして、ローゼンリッター連隊本部への出頭から2週間後私は病院を退院した。
私は、第1艦隊の基地内にある官舎に荷物を移した。少しの間と思って荷物を少なめにしたものの(元からあんまりなかったが…)その日から士官学校から帰省してくるときの私の実家はその部屋になってしまう…
私がカードキーをかざして、部屋に入ろうとしたら後ろに見慣れた人影がいた。
ニコール・コリンズ3等衛生下士官であった。
するといきなり、
ケーキの箱を私に手渡すなり
「誕生日おめでとう! 確か、17歳よね!」
と言った。
一瞬何の事だかわからなくなりそうだったが、その時はじめて自分がきょう誕生日であることに気付かされた。
あまりにも突然のことだったので
「あ、うん…」
というリアクションのない返事をしてしまった。
すると彼女は
「まったく、ありがとうの一言くらいくれたっていいじゃない。」
と言って怒った顔をした。
私はあわてて
「ごめん!
あんまりにもいきなりだったから、本当にごめん!」
と言って、頭を下げた。
すると、彼女は
「いいのよ。冗談。まったくこういう風にされるとこっちが困っちゃ困っちゃうのよね。あなたの部屋にお邪魔していいかしら?
一緒にケーキでも食べて祝いましょうよ。
紅茶もあるし。」
と言って、紅茶の茶葉の箱を見せた。
「まだ片付いてないけど、よかったらいいよ。」
と言って、彼女を部屋の中に通した。
そこから2時間以上彼女と話していた。
こうして、私は自分一人だけじゃない誕生日を記憶のある中で初めて過ごしたのであった。
宇宙歴 789年11月25日のことであった。 
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