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フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち~

作者:零水
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ゼロの使い魔編
第二章 天空の大陸 アルビオン
  婚約者

 
前書き
一か月に二話は投稿したい!と目標を掲げるもそれでも十分亀更新だと気付く

そんなこんなで二話目です
ホント遅くてすいません 

 
 翌朝、まだ生徒たちも起きていない早い時間にルイズたちは出発の準備をしている。皆黙々と行っているのだが、それはある人物の醸し出す空気のためであった。

「・・・・・」

 言うまでもないが、ルイズのものだ。この場に来てから一言も発してないが、その様子は明らかに「納得いかない」と語っている。
 そして、その矛先が誰なのかは無視をしてるつもりでもチラチラとその人に視線を送っていることで明らかである。
 いい加減この空気に耐えられなくなったのか、ギーシュが肝心の男―――架に話かけた。

「カ、カケル?そ、その・・・ルイズと何かあったのかい?」
「別に。」

 これである。ルイズほど不機嫌さを出してはいないが、その表情や声はどこか暗い。何かあったのは間違いない。そういえば、昨夜から・・・。
 ギーシュがうんうん考えていると、キュルケがそっと耳打ちしてきた。

「ダーリン、ルイズがアルビオンに行くことにずっと反対しているのよ。昨日の夜、あれからさらに二人でモメたみたいなの。それで最終的にダーリンが『俺だけで行くからルイズは残れ』って言ったらルイズも堪忍袋の尾がキレちゃって。」
「ふうむ、貴族としてはルイズに味方してやりたいところだが、カケルの言い分も否定出来ないな。やはり男として、レディに危険な旅はさせたくないからね!」(キリッ)
「いや何突然バラなんかくわえてんのよ。あとどうしたのよその目の隈。おかげで余計にカッコ悪いんだけど。」
「いや余計って・・・。まあ、これはその、む、武者震いして眠れなかったからね。」

 誤魔化すようにあははと笑うギーシュ。実際は武者震いなどではないのだが、もし事の真相が我が愛しのモンモランシーにバレたら何を言われるか分かったものではないため、ここで話すわけにもいかない。
 話題を逸らそうと悩むギーシュだったが、皆に話しておこうと思っていたことを思い出し、「あ、そうそう。」とカケルや離れたルイズにも聞こえるように声を上げた。

「君たちに相談したいことがあるんだが。僕の使い魔を連れて行っても構わないかね。」
「アンタの使い魔?どこにいるのよ。」

 ギーシュの声にルイズが近寄りながら尋ねてきた。その際露骨に架を無視しようとしているのがこの場にいる全員に伝わっている。

「もうここにいるよ。」
「・・・どこにもいないじゃない。」

 ルイズたちが辺りを見回すが、それらしき影も見当たらない。ギーシュはフフンと得意げな顔になり、靴で地面をトントンと叩いた。
 すると、ギーシュの足もとの地面がモコモコと動き出したかと思うと、そこから顔をだしたのはサイズが人間ほどある巨大なモグラだった。

「ああっ!ヴェルダンデ!僕の可愛いヴェルダンデ!」

 突然ギーシュがモグラに抱き着いた。その光景に誰も何も言えなくなる。というか引いている。そんな皆などお構いなしに戯れるギーシュとモグラ。先ほどとは違う意味で何とも耐えがたい空気になってしまった。
 やがてルイズが呆れながら声をかける。

「あ、あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?でもそんなの連れて行けないわよ。」
「ふっ、甘く見ないでおくれ。ヴェルダンデはこう見えて地面を掘り進むのが速いんだ。」
「アルビオン、空。」

 不意にタバサがポツリと呟くと皆が「あ・・・」と声を漏らした。ただ架はタバサの言っている意味が分からずキョトンとしているが。
 と、不意にモグラ・・・ではなくヴェルダンデは鼻をヒクつかせるとのそりとルイズに近づいた・・・と思った次の瞬間にはルイズに飛びかかっていた。

「ちょ、ちょっと!何すんの・・・ってやだ!どこ触ってのよ!?」
「・・・何だこれ。」
「主人と似て女好きの使い魔ねぇ~。」
「ちょっとカケル!あとキュルケも!呑気に見てないで助けなさいよ!」

 一人と一匹の様子を大人しく観察する面々。ルイズはたまったものではないとばかりに抗議の声を上げる。
 と、架はヴェルダンデが興味を示しているのはルイズというよりルイズの嵌めている指輪であることに気が付いた。
 あれはアンリエッタがルイズに託したもの―――確か『水のルビー』だったか。

「なるほど、指輪か。」
「どういうことギーシュ?」
「ヴェルダンデは宝石に目がないんだ。それが貴重なものなら尚更ね。」
「冗談でしょ!?姫様から頂いた物をモグラなんかにくれてやれるわけないわよ!」

 宝石が大好きな使い魔と聞いてついつい赤い悪魔のことを思い出していた架だったが、不意にばっとデルフリンガーを抜くと、一人と一匹を守るように立ちはだかった。

 ビュオウッッッ!!

 突然吹いた強風。だが、自然に起きたものではなく、魔法。誰かが自分たち―――正確にはルイズとヴェルダンデに向かって放ったものだ。

「誰だ?」

 架が声を上げると、上空から鷲の上半身と獅子の下半身の生物――――グリフォンが舞い降りた。
 グリフォンには、帽子をかぶり、マントを付けた長身の男が乗っている。男はヒラリとグリフォンから飛び降りると口を開いた。

「アンリエッタ様から同行を命じられた。グリフォン隊隊長、ワルドという。」
「ワ、ワルド様!?」

 男がワルドと名乗ると、ルイズが驚きの声を発した。

「先ほどは失礼。何せ僕の婚約者がモグラに襲われているのかと思ってね。」

「「「こ、婚約者!!??」」」

 ワルドの発言に今度は架、キュルケ、ギーシュが驚いた。
 ワルドは三人を他所にルイズの方へと駆け寄っていた。

「ルイズ、久しぶりだね!ははは、相変わらず君は軽いね、まるで羽のようだ!」
「お、お久しぶりです、ワルド様・・・」
「ワルドでいいよ。婚約者じゃないか。」

 暫く二人の空間を作っていたワルドとルイズだったが、やがてこの場の皆と自己紹介をかわした。ルイズが憮然とした様子で架を使い魔だと紹介すると大層驚いていた。

「ほお、君が・・・。噂には聞いていたが、人間の使い魔とはな。ところでルイズ、彼と何かあったのかい?」
「いえ、別に・・・」
「そうかい?ではそろそろ出発しようか。おいでルイズ、僕のグリフォンに乗せてあげよう。」
「え・・・え、ええ。お願いしますわ。」

 ルイズは一瞬(本人は気付かれないと思いながら)架の方を見たが、すぐに思い直しワルドに従った。
 架はそんな二人の方をじっと見つめている。ワルド・・・相当な実力だというのは一目でわかるが、それとは別に嫌な気配を感じる。
 考えているとキュルケが近づいきた。

「どうしたのダーリン。もしかして嫉妬してるの?」

 キュルケの問いにそんなんじゃない、と心の底から言ってから続けた。緊張した目線を彼らに向けたまま。

「あいつ・・・危険だ。」
「え?」

 架の呟きにキュルケが聞き返そうとした時だった。

「準備の方は出来ましたか?」
「「「「「「!」」」」」」

 何の気配もなくいきなりかけられた声に、全員が大なり小なり驚いた反応を見せた。すると、朝霧の中から一人の男が現れる。

「貴公は?」
「ご挨拶が遅れました。私、この学院の者でヴァロナと申します。今回の一件につきましては、私も場に居合わせたもので。姫殿下の代わりに皆さんを見送りに参りました。」

 ワルドの問いにヴァロナは優雅に一礼して答えた。彼の本性を知る架とルイズはその皮の被りように内心「うわぁ・・・」と呆れていたが。
 ワルドは探るような目でヴァロナを見ていたが、ルイズたちの様子から彼の言い分に嘘がないと判断すると幾分か警戒を解いたようだ。

「ふむ、それで姫殿下は。」
「学院長であるオールド・オスマンの元でございます。此度の任務を生徒に任せる以上、学院長に話を通さないわけにもいかないでしょう。」
「よろしい。ではミスタ・ヴァロナ、君もこのことは一切他言しないように。」
「御意に。」

 ヴァロナとの事務的な会話を終えたワルドは、改めて皆を見渡すと「それでは出発する!」と宣言した。
 先頭をワルドとルイズが乗るグリフォンが空を駆け、残りのメンバーの馬たちがそれに続く。
 ヴァロナは一人一人に「いってらっしゃい。」と笑顔で声をかけている。
 そんな彼に、最後尾の架が馬の上から体勢を低くして耳打ちした。

「少し、頼みがある。」
「あん?」

 返ってきたのは彼本来の声音とスゲェ嫌そうな顔だった。









 もう見えなくなったルイズたち一行に向けて、アンリエッタは手を組んで祈っていた。

「始祖ブリミル、どうか彼女たちにご加護を・・・。」

 場所は学院長室。彼女以外に部屋にいる人物は二人、オスマンとコルベールだ。学院側で任務のことを知る者はヴァロナを含めるとこの三人だけ。本来コルベールは一般教師なのだが、ロングビルがいなくなってからというもの秘書代理として助手共々雑務を任されている。その故あって、ことの一件を知ったのだった。

「心配無用ですよ、姫様。彼らはきっと無事に帰って来るでしょう。」

 アンリエッタが祈りを捧げている隣では、オスマンは呑気に鼻毛を抜いていた。

「ですが・・・」
「既に杖は振られた。もはや我々にできるのはただ待つだけですぞ。」
「ですがなぜ、そんなに余裕が持てるのですか?」
「ん、まあ彼がおりますからの。」
「彼・・・もしかしてあのルイズの使い魔ですか?」
「む?姫様、彼をご存じで?」

 ええ、と答えながらアンリエッタは思い返す。ルイズに任務を頼もうとした際、真っ向から反対してきた彼。王宮ではこちらに媚びへつらう貴族たちばかり見てきたため、彼の言動は衝撃であり新鮮でもあった。

「私は・・・間違っていると。」
「・・・ふむ。」

 憂鬱そうなアンリエッタを眺めるオスマン。架の言う「間違っている」ことというのは恐らくこの任務をルイズたちに任せることだろうと当りをつける。彼自身、学院長としては生徒に危険な真似をさせるのはあまり良しとは思っていないからである。
 しかし、彼女たちは行った。生徒としてではなく、このトリステインの名を背負った貴族として。ならば自分が止めたところで無駄だろう。今更この決断に後悔はない。さて、では目の前で後悔してそうな人の慰めでもしてやるかのう。

「彼・・・カケル君はこの学院に来てまだ日は浅くての。ロクに会話したことがあるのはただ一度だけなのじゃよ。」
「・・・・・」
「最初私は思った。彼は一体何をするつもりなのかとね。」
「・・・?」
「彼の力は強力だ。事実、召喚されてすぐ、ドットとはいえメイジをものの数分で圧倒し、さらに姫様もお聞きしているとおりトライアングルクラスの土くれのフーケまでも撃退している。おまけに恐らく彼はまだ本気を出しておらん。正直、もし彼がこの学院に剣を向けたら総員で挑んだとして勝てるかどうか・・・」
「そんな・・・」
「だから私は確かめたかった。その力を彼は何に使うつもりのかを。そしたら彼はこう言ってきた。『ルイズのために使う』と。」
「!」
「使い魔なら当然かと思いますか?それは違いますな。確かに使い魔は主に好意的ではありますが、真に忠誠を誓うのは全てではありません。それが人間という確かな思考回路や感情を持つ生き物なら尚更の。」
「では、彼は・・・」
「左様。彼は自らの意志でミス・ヴァリエールに従うと決めたのじゃ。彼の目は本物じゃった。彼は決してルイズに不利益なことはしないと信じられたよ。」

 だから何も心配はいらないんじゃよ。とオスマンは締めくくった。そこへ、

「自分も一つよろしいですか。」

 脇でずっと控えていたコルベールが発言するために一歩前に出た。

「私も彼と何度か話をしましたが、彼は考えなしにものを言う人ではないと思うのです。だから、その、彼にも何か思うところがあるのではないかと思いますよ。」

 コルベールの言葉を聞いたアンリエッタはもう一度窓の外へと目を向けた。もう見えるはずない、一人の男を眺めながら。
 もう一度彼と話がしてみたい、そう思った。




 再び考え事に耽ったアンリエッタはその横での会話を聞き流してしまった。

「ふむ、ところでコルベール君。今日はヴァロナ君はどうしたのかね?」
「はあ、実は先ほど連絡があったのですが、何でも二、三日有給をとりたいと・・・。」
「まったくしょうがない奴じゃのう。仕方がない、それじゃあそこの書類の山は君一人でやりなさい。」
「えええ~~~!?」








「おい、ギーシュ。」
「何だい?」
「俺は港と聞いていたんだが。ここはどう見ても山なんだが。」

 架たちはラ・ロシェールという港町へ来ていた。学院からここまでは本来馬で二日間かかるのだが、途中からタバサのシルフィードに乗り換えたため、一日で来れてしまった。向かうアルビオンへというのは船を使わなければならないというのは道中説明された。だが実際着いた町というのは、狭い山間に周りの崖に建物が並んでいるものだった。架の想像していた海の見える町とはほとんど真逆の光景である。
 今はこの町で最高級の宿である『女神の杵』で休憩をとっている。今日はここで一泊して明日アルビオンへ向けて発つ予定だ。
そんな時漏らした架の感想を聞いたギーシュは、呆れながら言った。

「君はホントに何も知らないんだねぇ・・・。まあそれは実際にその目で確かめた方がいいだろ。それより見てくれ!ここ建物たちを!これらは全て一つの岩から出来ているんだ。土系統のスクウェアクラスのメイジだからこそできる正に匠の業なんだよ!!」

 同じ土系統のメイジとしてテンションが上がりまくるギーシュ。はぐらかされた感満々だったが、まあ明日には分かるからいいかと前向きに捉えることにした。他の面々もギーシュに賛成なのか誰も教えてくれる気がしないし・・・。

「それにしてもワルド子爵とルイズは遅いわね。船に乗る交渉をしに行っただけでしょう。」
「・・・来た。」

 タバサの声に皆宿の入り口に目を向けると丁度ワルドとルイズが入ってくるところだった。椅子に座る二人はどこか困った様子だった。

「何かあったのか?」
「・・・別に。」
「おいおいそれはないだろうルイズ。実は・・・アルビオン行きは二日後になりそうなんだよ。」
「どうしてですの?」
「明後日の朝がアルビオンがラ・ロシェールに最も近づくからさ。そこまで近づかないと船は出せないらしい。」
「なるほどね。」
「???」
「それまではここで待機といこう。幸い、ミス・タバサの風竜のおかげで予定より早くここまでこられたからね、余裕はある。」

 ワルドの言葉にタバサはどうも、という意味かぺこりと頭を下げた。
 架は依然アルビオンについて分からなくなったが、まあ明後日には以下略、ということで何とか耐える。

「では部屋割りをしようか。三部屋とれたから僕とルイズ、ミス・ツェルプストーとミス・タバサ、ギーシュ君と使い魔君でいいかな。」
「ちょっ・・・ダメよワルド様!私たちまだ結婚してるわけじゃないのに、ど、同室なんて!」
「大事な話がしたいんだ、二人きりでね。使い魔君はどうかな。」
「・・・・・別にいい。」

 架は無表情で答えると、ガタリと席を立った。

「あらダーリン、どこへ行くの?」
「見張りだ、念のためにな。それにちょっと外を見たくもある。」

 架はそのまま宿を出ていった。ワルドは苦笑しながら「やれやれ、よほど嫌われたらしい。」と呟いた。

「も、申し訳ありませんワルド様!私の使い魔がとんだ無礼を・・・」
「いや、いいんだよルイズ。それに元々僕は貴族風を吹かすのは好きじゃないからね。先に部屋に行ってるよ。君たちも好きにしてくれたまえ。」

 特に気分を害した様子もなくワルドも席を立った。暫くするとルイズがこの場にいない人物に怒り出した。

「何よカケルったら!私だけじゃなくてワルド様にまであんな態度をとって!!」
「いやカケルの方は君が一方的に・・・・・いや何でもありません。」

 架を庇おうとしたギーシュだったが、ルイズの一睨みであえなく萎縮してしまう。そんな時、キュルケがはあとため息をついた。

「まったく、ダーリンも結構鈍感だと思ってたけど、あなたもそこそこ鈍いのね~。」
「どういう意味よ!」
「言葉通りの意味よ。あなたどうしてカケルがアルビオン行きに反対してたか分かってるの?」
「それは、戦地に行くのは危ないからって・・・。」
「何よ分かってるじゃない。」
「でも私は貴族なのよ!貴族なら国のために動くのは当然でしょ!それにアイツは私の使い魔!主人の意見に従うものでしょ!」

 キュルケは再びため息をついた。やっぱり分かってなかったか・・・。

「あのねえ、貴族がどうとか使い魔がどうとか、そんなものカケルには関係ないのよ。」
「そんなものって何よ!私は・・・」
「そんなものなのよ、あなた自身のことに比べたらね。」
「え・・・?」

 いまいちよく分からなかったらしく、ルイズはようやく声に落ち着きを取り戻した。

「彼は、貴族でも何でもない一人の『ルイズ』っていう女の子に危険な目に遭ってほしくないのよ。」
「で、でも・・・」
「それに彼、出発前に言ってたわ。『ワルド子爵は危険な匂いがする』って。」
「ワ、ワルド様が!?」
「それっきり凄かったわよ。移動中私が頻りに話しかけても言葉は返してくれてたけど目はあなたとワルド子爵に向けたまま。もう異常よ異常。」

 ルイズは絶句していた。知らなかった。道中そんなことがあったなんて・・・いや確かにキュルケのイチャイチャした声は聞こえていたけど。ワルド様は気付いていたのかしら。
 ルイズが完全に落ち着いたのを見て、キュルケは微笑みながら立ち上がり、最後の助言をした。

「あなたが姫殿下に尽くす気持ちは分かるわ。でもあの人の気持ちも少し考えてあげて。」


 ―――――カケルの、気持ち・・・






「ダーリン!」
「キュルケか、どうした?」
「ん~、別に~?」

 宿屋のすぐ近くの見晴しのいい所に架はいた。丁度夕焼けが町を染めて何とも美しい光景だった。そんな中、架の腕を組んでいるキュルケはまあ他人からは恋人同士にしか見えない。
 最近こういうのに慣れてしまったな・・・と架が考えているとキュルケが話しかけてきた。

「ルイズが心配?」
「ん、まあな。」
「ならなぜそう言ってあげないの?ルイズに変に誤解されるわよ。」
「あいつが危険を承知で行くって言っているんだ。だったら止めても無駄だ。だが納得してはいない、それだけだ。」

 「それに・・・」と架は続ける。しっかりとした決意を持った表情で。

「俺はあいつを守ると決めた。それを実行すればいいだけの話だ。」


―――――もう、失うのは御免だ。

「・・・・・」

 はあ~、ルイズあなたってホント幸せ者よね~。とキュルケは思った。でも・・・

「ダーリンも不器用ね。そこが魅力的なんだけど。」
「?何の話だ?」
「なーんでもない!とにかくもう一回ルイズとしっかりお話してみたら?今の言葉だってルイズに言ったら喜ぶわよ。」
「・・・言う必要もないと思うんだが。」
「それがダメなの!言葉にしないと伝わるものも伝わらないわよ。」

 それからキュルケは架から離れ宿屋に戻ろうとしたのだが

「あ、そうそう。」
「なん・・・んっ!?」

 また近くまで来たと思ったら、いきなり口を口で塞がれた。

「~~~~~っっ!!??」

 数秒間固まっているとやっと解放された。キュルケは頬を赤く染めながら、

「私は私で諦めてあげないから、覚悟しててね!ダーリン!」

 そう言うと、今度こそキュルケは宿まで駆けていった。
 暫く呆然としていた架はやっとのことで一言だけ呟く。

「な、なんだったんだ・・・一体。」









「どうしたんだい、ルイズ?」
「い、いえ!何でもありませんわ!」

 夜。ルイズとワルドの借りた部屋。そこでワルドが「久しぶりの再会に一杯やろう。」と言ってきたのだ。キュルケに言われて以降、ルイズは考え事で上の空状態だったが、気が付いたらもう準備ができていた。
 

「二人きりの夜に。」
「・・・ありがとうございます。」

 カチンとグラスを合わせ、二人とも酒を煽る。ルイズはまだ若いが、こうして挨拶程度に飲むくらいには慣れていた。

「それにしても凄いじゃないかルイズ。」
「え、何がですか?」
「あの使い魔君さ。まさか人間を使い魔にするなんてね。」
「やめてくださいよ、あれで手を焼いているんですから。」
「そんなことないさ。あの使い魔君の左手に刻まれたルーン。あれこそが伝説の使い魔であり、君が特別な存在の証さ。」
「伝説の・・・使い魔?」
「ああ、始祖ブリミルが使役したとされる四体の使い魔の内の一人『ガンダールヴ』。彼のルーンはその『ガンダールヴ』の印なんだよ。」

 ルイズは架がサーヴァントというワルドとは別の意味で特別な存在だということは知っている。だが、ガンダールヴという言葉は初めて聞いた。ということは架も知らないことだろうか。同じサーヴァントのヴァロナは持っていないみたいだし・・・

「ルイズ。」
「え・・・きゃっ!」

 ふと気が付くと、ワルドはルイズの手をとってきた。憧れの人に手を握られ、思わず赤面してしまうルイズ。そんなルイズの顔を覗き込むように見ながら、ワルドははっきりと告げた。

「この任務が終わったら・・・・・結婚しよう。」
「え!?」
「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない。いずれは国、いやハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている。それには君が必要なんだよ。」
「で、でも、そんな、急に言われても・・・」

 いきなりのプロポーズにルイズは慌てふためく。しかしワルドの顔を真剣そのものだった。

「ルイズ、昔君のお屋敷での約束を覚えているかい?」
「約束?」
「ほら、君がお姉さんたちと魔法の出来を比べられて、小船の中でいじけていたじゃないか。」
「い、嫌な思い出ね・・・。」
「ははは、ごめんごめん。でもその時の僕の言葉も思い出してほしいな。」

 そうだ、あの時・・・



――――――大丈夫だよルイズ、僕がついてる。


 そうだ。魔法が上手くできなくていじけてた時、目の前の男は自分を肯定してくれた。
 それが堪らなく嬉しかったのを憶えてる。






  あれ?





  前にもどこかで似たようなことを言われたような・・・






  誰だっただろう・・・







「何も心配することはないよ。今回の任務だって上手くいくさ。僕がいるんだからね。」

 いつの間にか席を立ち、ルイズのすぐ隣まで回ってきたワルドはルイズの頬に手を添えて囁くように言った。

「大丈夫だよルイズ、君は・・・」


今度こそ・・・お前を・・・


「僕が守る。」


守らせて・・・



 ああ、何で忘れてたんだろう・・・。自分を認めてくれたのはすぐ近くにもいたんだ。もし、私がワルド様と結婚したらアイツはどうするのだろう。傍にはいてくれるかもしれない。でも、今の関係ではなくなってしまうかもしれない。それは嫌だ!!
 それに自分はカケルの過去を少し知っている。アイツは昔大切なものを失くしてしまった。そして、新たに自分を大切な存在としてくれている。もし私が離れたら、彼は今度こそ壊れてしまうかもしれない。それはダメだ。私が彼を必要としているのと同じように彼も私が必要なのだ。

「・・・・カケル。」
「ルイズ?」

 たまらなくなりルイズは呟いた。今自分が求めている人を。自分を求めてくれている人を。

「・・・・・ごめんなさい、ワルド様。今のままでは私は貴方と結婚は出来ません。」
「・・・君の心に、誰かが住み始めたようだね。」
「それは・・・」
「いいさ。でも僕は諦めない。この任務が終わる頃には君の心は僕に傾くはずだ。」

 もう一部屋借りてくるよ。そう言って、ワルドは部屋を出ていった。
 
 

 
後書き
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