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ウイングマン ウインドプラス編

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■大凶のインパクト

1.
「きゃあああっ! なに、この風!?」
久美子の元に突然強風が吹いてきた。
一人取り残されてぼーっとしていたら飛ばされそうになってしまった。
ただ、風の吹く方向が横からではなく上からだったので、地面に叩きつけられるような衝撃を受けた。
しかし、そんな状況にもかかわらず、久美子は手にしたカメラだけは離さずに踏ん張った。
「こ、この風は怪人の仕業ね……」
上空に怪人がいると確信して、ファインダーを上に向けた。
そこには袋のようなものと、それを追いかける美紅と桃子の姿が映った。
「えええええええっ!?」
上から2人が袋を追いかけて降下してきているのだ。
らせんを描くようにぐるぐるぐるぐる、それも結構なスピードだ。
久美子は驚いて場所を移動し、建物の陰に身を隠した。
さすがにこの強風の現況が近づいてきて、無事でいられるわけがないのだ。
避難したわずか数秒後に、袋が地上すれすれで折り返し、久美子の前を通っていった。
「な、何なの? あの袋は!?」
続いて桃子と美紅が並んで駆け抜ける。
「やっぱり森本さんに小川さんじゃない!?」
久美子は慌ててカメラを構えた。本能的にジャーナリスト魂がうずきはじめた。
ファインダー越しに2人を追った。
カシャカシャカシャ。
桃子と美紅の飛ぶ後ろ姿を連写した。
何秒もしないうちに2人は久美子の視界から見えなくなった。
追っかけっこをしながらだったが、何せ動きが早い。
飛び跳ねながら袋との追っかけっこだ。
スカートもひらひらひらひら。中が丸見えになってもおかしくないアングルもいくつか撮った。
しかし、久美子は2人のパンツの色を確認することはできなかった。
「やっぱり森本さんはTバック履いてんのかな……?」


袋にとって町中での追いかけっこは煩わしかった。
路地を自由気ままに曲がっていくわけにはいかない。
曲がった先に何があるかわからないのだ
しかし、それこそが美紅と桃子の作戦だった。
思惑通り、袋は着実に動きを封じられつつあった。
袋はだんだんスピードを減速し、2人との間はみるみる縮まり、2人から手がすると今度は追に迫ってきた。
そこで袋は一旦ストップすると、桃子と美紅に向けて強風を放ったのだ。
「きゃああああああっ!」
美紅はジャンプでそれを華麗に避けた。
しかし、桃子は吹き飛ばされた。
そして美紅は桃子の傍に着地した。

そのとき美紅のスカートがめくれたが、桃子は立ち上がろうと下を向いていて、それを見てはいなかった。
しかし、久美子が決定的な瞬間を激写した。
ジャーナリスト魂に突き動かされ。2人の写真を撮るために追いかけてきたのだ。
ビルの角を曲がったところにちょうど2人の姿を見て反射的にシャッターを切った。
咄嗟に撮影をしたので、被写体はちゃん確認できてはいない。
ただ、ファインダー越しに覗いた久美子は違和感を感じた。
「小川さんもTバック?」


「もう、いきなり反撃なんて……」
桃子も膝の汚れを払いながら立ち上がった。
前に見える袋は――
まるで、動物のような4つ足で立っていた。
「な、何なのよ、やっぱり生きてんじゃん!」
桃子は袋がまるで小動物のようになっているのを見て、少しかわいいと思ってしまったのか少し声色が高くなった。
「桃子ちゃん、二手に分かれてさっさとやっつけちゃお!」
美紅が桃子に提案をした。
「えっ!?」
桃子はかわいいものをやっつけちゃおうという美紅の提案にドキリとしたが、あれは敵なのだと思い直した。
「う、うん、わかった!」
美紅は桃子の返事を聞くとすぐに動きだした。
右側から攻めようとした美紅に対して袋はすぐに反応して、強風で応戦してきた。
強風を避けるために得意の側転で攻撃を避けて袋に近づこうとした。
桃子は左側から続いて攻撃を仕掛けるために美紅の動きを確認しようと右側に目をやった。
「…………」
桃子の動きが止まった。
「美、美紅ちゃん!?」
絶句。
側転をした美紅のスカートが豪快にめくれてしまっていた。
重力があるのだから逆立ちしたタイミングでスカートがめくれてしまうのは当然だし、美紅もそんなことは気にしていなかった。
戦いにはよくあることだった。
しかし、自分が何も履いていないということには完全に無自覚だった。
1秒にも満たない、本当に一瞬だった。強風で人がいないということは幸いだったが、美紅の下半身は完全に町中で丸出しになっていたのだ。
後ろを振り向くと久美子もカメラを構えて固まっていた。
「お、小川さん……て、そんな趣味っ!?」



2.
桃子は美紅の姿を見て、自分のことのように恥ずかしくなった。
そして、顔を赤くして固まった。
「どうして履いてないのよ……?」
美紅がパンツを履いていないことに当然、疑問に感じた。
そして、嫌な予感がした。
「!?」
少し前の記憶がフラッシュバックのように蘇ってきた。
着物に下着が合わないということで確か……桃子は記憶をゆっくりと思い返してみた。
アオイの部屋で美紅と桃子はパンツを脱いでいたのだ。
ということは……
「まさか……」
桃子は恐る恐る自分のお尻をスカートの上から撫でてみた。
本来感じるべき下着の凹凸が感じられなかった。
やっぱり――
タラーっ
はいていなかった。
桃子の嫌な予感は的中した。
冷や汗がたれてきた。
自分も今までノーパンのまま派手なアクションをしていたことのだ。
しかも強風の中だ。
気にはしていなかったが、スカートがめくれたことは一度や二度ではなかったはずだ。
人影は見かけなかったが、誰かに見られたかもしれない。
それに久美子だ!
はっきりと撮影してたかどうかはわからないが、自分たちに一眼レフのカメラのレンズを向けていた。
決定的瞬間を撮られたかもしれない。・
あまりの恥ずかしさに頭の中が真っ白になった。
1人で袋に立ち向かっていた美紅は、動きの止まっている桃子の援護がないことに不思議に思い、桃子の方に目をやった。
桃子が完全にフリーズしている。
「桃子ちゃん、どうしたの?」
袋の強風攻撃を避けながら桃子のもとに近寄って、言葉をかけた。
「あ、美紅ちゃん……」
桃子はその言葉に我に返って、一瞬言葉を濁らせた。
知らない方がいいのかもしれないが、このまま無防備に美紅の下半身を晒させることはためらわれた。
「美紅ちゃん、はいてない……」
恥ずかしそうな顔でうつむきながら桃子はそう呟いた。
一瞬美紅はその言葉の意味がわからなかった。
「ハイテナイ?」
美紅は桃子の言葉をオウム返しをすると桃子は恥ずかしそうに頷いた。
「私も美紅ちゃんもパンツはいてないの……」
美紅は顔がみるみる赤くなった。
そして、自分の下半身をスカート越しに触ってみた。
パンツの感触が感じられなかった。
自分がノーパンであることを自覚した。
気にしていなかったが、側転をしたときにスカートがめくれている自覚はあった。
まさか何もはいていなかったとは考えも及ばなかった。
その状況を考えると、恥ずかし過ぎていても立ってもいられなくなった
美紅はスカートを押さえてしゃがみ込んでしまった。
「いや~ん!!!」



袋は蚊取り線香を入れるブタの陶器のような姿で立っていた。
逃げる気配がない。
今まで逃げるだけだったのに、大きな口を広げて、空に向かって風を吹き出した。
まるで犬が遠吠えをするかのようだ。
そして、首を振るように壁に向けて強風を吐きまくった。
辺りはビル風も相まって大型台風のようだ。
桃子は一瞬、ビルの陰に隠れてやりすごそうとしたが、美紅はそこまで気が回らなかった。
ディメンションスーツに包まれている2人にとっては、例え台風であっても竜巻であっても切り抜けることができる。
ただ、パンツをはいていないことを自覚した2人にとってこの攻撃は強烈だった。
さっきまでの行為に恥ずかしがっていたしゃがんで顔を隠していた美紅は、危うく風に飛ばされそうになった。
さすがにいくら悔やんでも過去を帳消しにはできない。
それよりもこれからだ。
美紅はとりあえず、頭を切り替えた。
しゃがみながらも必死にスカートを押さえた。
しかし、こんな状態ではなかなか踏ん張ることができない。
そこでスカートを押さえながらも、必死で立ち上がろうと試みた。
しかし、その瞬間、飛ばされそうになった。
「危ない!」
それを桃子が救った。
美紅の前に盾になるように立ちはだかって風を防いだのだ。
少し風が止んだお蔭で、美紅はなんとか立ち上がることができた。
「桃子ちゃん、ありがとう。もう大丈夫」
その言葉に少し桃子もホッとした。
しかし、それで気が抜けたのか強風でバランスを崩してしまった。
踏ん張ろうとしたのだが、すべって豪快にこけてしまった。
「桃子ちゃん!?」
こけた桃子のスカートがめくれてしまい、お尻が丸出しになっていたのだ。
「いや~ん」
桃子は慌ててスカートでお尻を隠した。
しかし、強風の中では起き上ることもままならない。
そこで、今度は美紅が桃子の前に出て盾になった。
ただ、美紅はさっきまでのアクティブな動きはできなくなっていた。
何と言っても、桃子が飛ばされたばかりなのだ。気を抜くことはできない。
桃子も美紅のお陰で立ち上がることができた。
しかし、この状況からどう脱すればいいのかわからない。
「ど、どうしよう……」
美紅は桃子の顔を見た。
「こんなんじゃ戦えないよ……」
今の2人にとってはこの強風は天敵以外の何ものでもなかった。
しかし――
「なんて、言ってられないよね」
そう言って少し引きつりながらも桃子ほほ笑んだ。
2人には戦わない選択肢はなかった。
「うん」
美紅も大きくうなずいた。
「とにかく取り押さえましょ! 2人でやればなんとかなるわよ!」
しかし、さっきの状況でも捕まえられなかったのだ。
それなのにスカートを気にしながら袋を押さえることができるだろうか。
今までのように大きく動きまわることはスカートの下が晒される危険が高まることを意味していた。
しかも、この強風は何もしてなくてもスカートがめくれる可能性も高い。
それにこの強風、というか暴風。
さらに、背後には一眼レフを構えてシャッターチャンスをうかがう久美子がいるはずだ。
それでも、この状況を打破するにはやるしかなかった。
2人は分かれて、袋を取り押さえにかかった。
しかし、風に阻まれて、まともに近づけなかった。
やはり強風にめくれるスカートを気にしながらは無理があった。
「そりゃあそうよねえ、無理があるわよねえ……」
久美子はビル影から2人の様子をのぞいきながら思った。
しかし、自分の存在が2人の動きをさら制限しているなんて考えもしなかった。



3.
戦いに転機が訪れたのはそれから間もなくのことだった。
スカートを気にしながら、袋を押さえるチャンスをうかがっていた美紅と桃子は、しかし何もできないまま手をこまねいていた。
そこに――
ドスーン!!!
大きな怒号と共に空から何かが落ちてきた。
まるで袋を踏みつぶすかのように袋の真上に落ちたのだ。
地響きと砂埃をが収まった。
同時に暴風も落ち着いた。
そして、落ちてきたものの正体が姿を現した。

袋の上に落ちてきたのはウインドプラスだった。

「えっ!?」
桃子と美紅の表情が引きつった。
ウインドプラスだけがここに来たのだから、アオイと健太に何かあったのかと思ったのだ。
「広野君……」
「アオイさん……」
自分たちにこれから待ち受けているかもしれない災いよりも健太とアオイの安否を気にかけた。
しかし、その心配は杞憂だった。
すぐにウイングマンとアオイが後を追って現れた。
「広野君!?」
「リーダーっ!?」
桃子と美紅は驚きの声を上げた。
健太とアオイの登場を喜んだが2に人だったが、はたと気づいた
ここでスカートがめくれてしまえば、健太に見られてしまう!?
それだけは絶対に避けたかった。
思わずスカートを手で押さえた。
美紅と桃子は顔を見合わせた。
2人の考えているところは同じだった。
「ぎこちない動きをすれば気づかれちゃうかもしれないし……」

しかし、ウインドプラスはそんなことを考える暇を与えてはくれなかった。
「オレ様が何のためにここに来たと思う?」
プラス怪人はウイングマンとアオイに向かってそう言った。
「こんなところに来たのは失敗だったんじゃない?」
アオイは美紅と桃子を指差した。
指された2人は焦った。
健太とアオイが来たことで敵に対して警戒心を解いていた。
しかし、今は風は止んでいるが、いつ強風が吹くかわからない。
ついついスカートを気にしてしまって、話をちゃんと聞いていなかったのだ。
そこで、そんなことを言われてしまった。
「え、ええ」
戸惑いながらも2人は返事をした。
ただ、アオイも健太も2人を変だとは感じることなく話を進めた。
「こっちは4人になったのよ」

ウインドプラスをアオイの言葉を聞いて満足そうに笑った。
「何を言う、女を2人も用意してくれるなんてオレのことを考えてくれてるんじゃないのか?」
健太はそれを強がりと受け取った。
「何を言うっ! 2人相手に逃げ出したくせに!」
しかし、ウインドプラスはその言葉に動じる様子はなかった。
それどころか反論を口にした。
「俺様は逃げたんじゃないぜ。こいつを取りに来ただけさ」
そう言って下敷きになっていた袋を手にした。
そして、それをマントのように肩から羽織ったのだ。

袋に覆われたウインドプラスの体は一瞬で変化した。
ガリガリだったウインドプラスの体の筋肉が成長し、筋肉隆々の体に変った。
「なにっ!?」
健太もアオイも驚きの表情を隠しえない。
あの俊敏なウインドプラスに筋力がつけば強力なパワーを発揮するかもしれない。
「こ、こいつは強敵だ……」
健太はその姿に脅威を感じた。
アオイは健太の後ろに下がり、美紅と桃子の方を見た。
「ごめんなさい。結局、抑えられなくて……」
美紅はアオイに謝罪するとアオイは首を振った。
「仕方ないわよ。ただの袋じゃなかったみたいだし」
アオイは美紅の頭をポンポンと撫でてからウインドプラスを指さした。
「とにかくあいつを倒さないと。みんなで協力すれば倒せるはずだから」
「はい」
桃子が一歩前に出てアオイの横に並んだ。
そして美紅も桃子の横に並んだ。
「みんな、いくよ!」
 
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