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ウイングマン ウインドプラス編

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■3.対戦ウイングガールズ!

1.
健太は空を見上げたて3人の戻りを待っていた。
風は少し強くなったような気がするが、3人が飛び立ってからそれほど変わりはなかった。
「ただの天気じゃないの? 晴れてても強風が吹くことなんてよくあることよ」
健太の隣で久美子はレンズをのぞきながら空を見ていた。
望遠レンズもつけているので肉眼より遠くまで見渡すことができたが、レンズから見える先にも晴天が広がっていた。
「そうだよなぁ~」
健太は自分を納得させるかのように、そう呟いた。
「それに、子供じゃないんだからヤバかったら広野君を呼びにくるわよ」
久美子にそう言われて納得した。
確かにその通りだ。
健太も気にしすぎないことにした。



アオイがまず攻撃の口火を切った。
プラス怪人に向けてディメンションビームを放った。

とりあえず強風を出すあの袋を奪取する算段だ。
アオイが前から奇襲をかけ、美紅と桃子が後ろに回って怪人を取り押さえる。そして、美紅が合わせて袋を取り上げる。そんなイメージだった。

予定通りアオイのビームがウインドプラスを襲った。
「うわっ!」
まったく攻撃を予想していなかったプラス怪人は、この奇襲にかなり慌てたがギリギリのところで避けた。
「貴様らか、我々の邪魔をしているの……はっ!?」
続いて美紅が右手を桃子左手を後ろから同時に捕まえた。
「さ、3人がかりなんて卑怯だぞ!!」
羽交い絞めされてプラス怪人は持っていた袋を手放してしまった。

これを美紅が奪うはずだった。
しかし、それに失敗した。
袋だけが飛ばされて空気の漏れた風船のように飛んでいってしまった。

「えっ!?」
これは3人には予想外の展開だった。
怪人を押さえたら袋は萎むものだと思っていた。
それなのに萎むどころか、かなりのスピードで逃げていくように飛んでいったのだ。
まるで吹き出した風がジェットのように加速を助けている。
「桃子ちゃんごめん! 私、袋を追いかけるわ!」

袋は主がいなくなったのに強風を吐き出し続けている。
袋が飛んでいくだけではなく、強風をまき散らしているのだ。
その袋の向かう先によっては被害が出てしまう可能性だってある。
それを野放しにはできない。
怪人を倒すこと以上に急がなければいけないことかともしれないと美紅は反射的に考えたのだ。
美紅はプラス怪人の手を離し、袋を追いかけ始めた。

「えっ!? 美紅ちゃん、ちょっとぉ!?」
元々の作戦から袋は美紅が押さえることにはなっていたが、いきなりすぎて桃子は反応ができなかった。
右手が自由になったウインドプラスは、その手で桃子の二の腕を掴んだ。
プニ。
しかし、いきなり桃子を引きはがそうとはしなかった。
プ二プニプ二。
「お前なかなかいい体してるじゃないか!」
プラス怪人は桃子の二の腕を揉むように触るとニンマリとした表情を浮かべた
そして、その感触を確かめるようにもう一度桃子の二の腕を掴んだ。
「いやあああああっ!?」
桃子は慌てて手を離して後ろずさった。

「このヘンタイっ!」
そう言ってアオイはディメンションビームを放った。
桃子が逃げれるようにするための威嚇だった。
狙いは甘いので当たりはしなかったが、桃子とプラス怪人の間には距離ができた。
「こいつは私が食い止めるから、桃子ちゃんはケン坊を呼びにいって!」
本当は自分たちでやっつけるつもりだった。
しかし、相手がエッチな怪人となれば話は別だ。
コウモリプラスやスノープラスの経験から、自分に対しても含めて、何をされるかわかったもんじゃない。
「わかりました。すぐにリーダー連れてきます!」
桃子もアオイの意図をすぐに理解した。
今まで飛んできた方向に向かって猛スピードで戻っていった。

「ちっ! 逃げられたか……」
桃子の後ろ姿に残念そうな顔をするプラス怪人だったが、目の前に立ちはだかったアオイを見ると顔つきが変わった。
「さっきの女が肉付き的には好みだったが、お前もなかなかいい体をしてるじゃないか!」
そう言っていやらしい笑みを浮かべた。
その表情とセリフに、アオイは背筋が寒くなって思わず身震いした。
「なんで、ライエルからの刺客はエッチなやつばっかりなのよ……」



2.
その頃、美紅は袋を必死に追いかけていた。
最初はただ袋をつかまえればいいと安易に考えていたのだが、袋は空気の抜けた風船のように無軌道に動いていて、行く先が読めない。
スピードは追いつけないほどではないが近づくとするっと避けていく。
最初は無軌道に飛んでいるだけだと思ったが、どうもそうではないような気がする。
「もう、何なのかしら……これじゃあ、捕まえれないじゃない……」
しかも捕えようとすると美紅に向けて袋の口から強風をぶつけてきているように思えた。
強風をぶつけられると、気を抜くと飛ばされそうになる。
その度に美紅は一旦袋から離れなければならない。
風を吹きかけられると必然と向かい風が美紅を襲ってくる。
何度もそれを繰り返していたら、気が付くとせっかく着物に合わせてアオイの家でセットした髪が乱れてしまっていた。
「もうっ! せっかくわいいって広野君にも褒めてもらえたのにっ!」
美紅は若干不機嫌になったがこの際仕方がなかった。
この大風の原因、袋を抑えるにはこの風に向かっていかなければならないのだ。
しかも怪人をアオイと桃子の2人に任せてきたのだ。
自分の役目をきっちり果たさなければいけない。
袋はなんとしても自分1人で押さえなければいけない。
美紅は意を決して袋に向かっていった。
「でも、まるで生きてるみたいね……」
もちろん、美紅は袋をただの袋だとは思っていなかった。
しかし、武器であって、あくまでもモノとして想定していた。
生物だという考えはまったくなかった。



3人が全然戻ってこないので健太はだんだん心配になってきた。
少し前から風の動きの向きが細かに変わっていた。
時計を見たらもう15分くらいは経っている。
「確かに遅いね。ホントに怪人の仕業なんじゃないかって気になってきたわ……」
久美子は相変わらずカメラを空に向けてファインダーを覗いていた。
「あっ!? 森本さんが戻ってきた!」
健太の肉眼より望遠レンズの分、久美子の方が遠くまで見渡せたので桃子の姿を早く発見できたのだ。。
飛び立った方向から桃子が猛スピードで戻ってくる。
「ピンクだけ?」
頷いた久美子を見て、一大事だということを理解した。
3人で戻ってこないということは何か一大事があったとしか考えられない。
「やっぱり敵の仕業だったか……」
そう思った瞬間に桃子が目の前に着地した。
「リーダー、やっぱり敵がいました! 今、アオイさんが1人で戦っています」
そう言われるとすぐさま健太は変身した。
「チェイング!」
変身してから、はたと気付いた。
「あれ? 美紅ちゃんは?」
アオイが1人で戦っているのなら美紅がどこにいるのか、何をやっているのか疑問を感じたのだ。
「あ、えっと……美紅ちゃんはか、風を追いかけているんです……」
桃子は健太の質問に桃子は適切な答えが思い浮かばなかった。
あの袋をどう伝えればいいかわからなかったのだ。
健太は疑問符を浮かべた表情をしているが、それにも構わず桃子が先に指示を出した。
自分が今来た方向を指差して言った。
「アオイさんはこの5キロくらい先の高層ビルの上で戦っています!」
桃子の表情に今、自分がするべきことを理解した。
「わかった!」
ウイングマンは翼を広げた。
「私は美紅ちゃんをサポートしに行きます。リーダー、アオイさんをよろしくお願いします」
その言葉を聞くと健太は桃子の指差す方へ飛び立った。
そして桃子は健太とは別方向に飛んでいった。


完全に蚊帳の外の久美子は手持無沙汰になっていた。
そして、パシャパシャとシャッターを切った。
何もしていないと本当に1人ぼっちの気がしたからだ。
飛び立った桃子をファインダー越しに覗いていた久美子は何か違和感を感じた。
「ん?」
桃子が飛び立ったとき、一瞬スカートがめくれたのだが、パンツを確認することができなかった。
「森本さんってまさか、Tバックでも履いてるのかしら? ハハハハ、まさかねぇ~」
自分としても適当に撮影していたし一瞬のことだ。見間違えてもおかしくはない。
久美子は自分の目の錯覚だと結論づけた。
しかし、久美子の発言に対して誰も答えてはくれなかった。
そして、桃子の姿が見えなくなると、ふと我に返った。
久美子は完全にひとり取り残されてしまった。
「私を一人にしないでよ~寂しいじゃない!」



3.
「オレ様はウインドプラスだ」
プラス怪人はアオイをマジマジと見てから名乗った。目つきから紳士的な態度はかけらも感じられなかった。
表情も目つきもいやらしいモード全開だ。
「お前もなかなかいい体してるじゃないか。ちょっと遊んでやろうか」
言葉は強そうだが、その体つきはガリガリでまったく強そうには感じなかった。
「お断りよ! さっさと倒させてもらうわよ!」
いやらしいということを除けばアオイ自身は負ける気がしなかった。
健太の到着を待つまでもない。
そう判断をしたアオイはウインドプラスの顔面に目がけて跳び蹴りをした。
しかし、ウインドプラスの顔が回り始め、アオイの体自体を風の力で跳ね除けた。
「オレ様にそんな攻撃は無意味だ。全部風で飛ばしてやるぜ!」
それならと、ディメンションビームを放った。
するとまた顔を回転させた。
「きゃああああっ」
今度はさらに強い風でビームの軌道をずらした。
それだけでなく、ビームを放ったアオイまで飛ばされそうだ。
「これじゃあ近寄れないじゃない!」
ビームを何度か放ってみるが全部跳ね返されてしまう。
「もう! あんなガリガリでひ弱そうな見た目なのに……」
アオイは一瞬、距離を置こうとした。
「何、逃げてんだ? それじゃあオレ様を倒せないぞ」
ウインドプラスはニヤリと笑った。

「じゃあ、今度はこっちから攻撃させてもらうぜ!」
そう言うが早いかウインドウプラスの攻撃が始まった。
風かはたまたはビームか、どんな攻撃が来るのか身構えたアオイに対して、ウインドプラスの攻撃は予想外だった。
「きゃああああああ、何すんのよっ!」
ウインドプラスはいきなりアオイに抱きついたのだった。
アオイは叫ぶと同時に反射的に手が出て、ウインドプラスの顔面を平手打ちした。
「痛ってぇ~っ!」
見事に顔面にアオイのビンタがヒットし、ウインドプラスを吹っ飛ばした。
その瞬間にアオイは逃げ出し、ウインドプラスから距離を3倍取った。
「な、何なのよ、コイツ……」
近づけば抱きついてくる。ディメンションビームは風で飛ばされる。
アオイには打つ手が思い浮かばなかった。
しかも気を抜くとウインドプラスの方から寄ってきて抱きついてくるから油断もできない。
しかし、アオイが最上級に警戒しているので、ウインドプラスもなかなか手が出せない。
しばらく小康状態が続いた。

「あああああああ、もういいっ!」
しびれを切らしたのはウインドプラスだった。
「触らせろおおおっ!」
ウインドプラスは猛スピードで再びアオイに抱きつこうとした。
当然、アオイは逃げる。
もちろん、ウインドウプラスは追いかける。
完全位立場が逆転していた。
ウインドプラスから必死に逃げるアオイの目に、ウイングマンの姿が見えた。
「ケ、ケン坊っ!?」
ウイングマンの到着に少し安心したのかアオイは少し足を止めた。
そこをウインドプラスは見逃さなかった。
すかさずアオイに抱きついた。
しかし、間一髪、アオイは見事にそれをよけた、つもりだった。
ところが執念かウインドプラスの手がアオイのブラに届いていた。
「アオイさん!」
健太がアオイの前に着いたときに――
ズルッ。
「あ……」
健太とアオイの動きが一瞬止まった。
アオイのブラがずれて乳房があらわになった。
ぼよよよ~ん。
ブラからはみ出したアオイの胸がゆっくりと揺れた。
「きゃあああああああああっ!?」
アオイは慌ててブラをずりあげてウインドプラスにパンチを繰り出した。
「このヘンタイッ!」
しかし、アオイのパンチは空振りだった。
「そんな、何度も食らってたまるか!」
さすがに一発でもなぐらないと気がすまないアオイは、何発もパンチを繰り出したがことごとくよけられてしまった。

「こいつは手ごわいかもしれないな……」
健太はその光景を見て呟いた。



4.
桃子が美紅を見つけるのはそれほど難しいことではなかった。
風の吹いている方向に向かっていけばよかったからだ。
強風に向かって一直線に飛んでいった桃子は袋と追いかけっこをしている美紅の姿を見つけた。
「美紅ちゃん!」
桃子の声に美紅は振り返って動きを止めた。
「あれ? 桃子ちゃん、どうして?」
美紅は自分に援護が来るとは思っていなかった。
怪人の方が手ごわいに決まっているのだから。
「アオイさんにはリーダーがついてるわ」
美紅はその言葉を聞いて安心した。
怪人をアオイ1人に任せるわけにはいかない。
けれど、健太が向かったのなら安心だ。
今は自分がやるべきことをやればいいのだ。
袋は気ままに飛んでいく。
桃子に合図を送るために少し目を離した間にもだんだんと遠ざかってっている。
しかし、それほどのスピードではない。
ただ、ちょこまかと動くから1人では押さえることができなかっただけだ。
桃子と2人がかりで協力してかかれば、きっとできるはずだ。
美紅はそう考えていた。
「なかなか苦戦しているみたいね」
桃子の声に申し訳なさそうに美べには答える。
「うん。なんかすばしっこくて。まるで生きてるみたいなのよ」
そう言われて桃子も驚いた。
桃子もあの袋が生き物である想定はなかった。
「えっ!? あの袋が生きてるのぉ~っ!?」
「そう決まったわけじゃないけど……私が追いかけてるのがわかってるみたいに、逃げていくのよ」
美紅がそういうのならきっとそうなのだろう、桃子も袋を捕まえるのではなく小動物を捕まえるという方向に考え方を変えた。
そして、桃子と美紅は二手に分かれて袋を追いつめた。
美紅が捕まえにいくと、美紅から逃げるように動いたところに桃子が押さえにかかる。
しかし、桃子もひょいと避けられた。
「あれ?」
確かに美紅の言うように「生きてる」みたいだ。
桃子も逃げられてしまった。
なかなか2人がかりでも袋を捉えることはできない。
しかし、何もできていなかったわけではない。
袋の制空圏を防いだのだ。
「建物も使って袋小路に追い詰めよう。それなら押さえられるわ!」
追いかけっこの最中に、桃子がそう提案したのだ。
「それだわ!」
美紅も桃子のグッドアイデアに乗った。
2人で袋が上にいかなように動きを封じ、だんだんと地上に追い詰める。
袋は美紅と桃子のガードのせいで下に下に逃げていくしかなかった。

「よし、これなら捕まえれるわ!」



アオイは何度もウインドプラスを殴ろうとした。
しかし、すべて空振りに終わった。
「アオイさん、オレにまかせて!」
健太はクロムレイバーを構え、敵に斬りかかった。
ウインドプラスはその攻撃をよけるためにアオイから離れた。
「オレは男なんかに興味はないんだがな」
クロムレイバーは空を切ったが、健太はすぐに切り返した。
しかし、ウインドプラスも逃げ回るだけではなかった。
ウイングマンに向けて強風を吹きかけてきた。

「うわっ¡?」
強風に少しよろけながらもウイングマンはクロムレイバーを振りきった。
自分の力に過信をしていたのかウインドプラスはよけきれなかった。
腕に軽くだが傷をつけられた。
「貴様はなかなか強いな」
ウインドプラスはファイティングポーズを取った。

「俺を誰だと思っているんだ!」
舐められていると思った健太はいつもの決めポーズを取ろうとした。
「悪裂、ウイングマ……んっ!?」
なんと大見得を切っている間に、ウインドプラスは逃げ出したのだ。
ファイティングポーズを取ったまま、後ろ向きに健太たちから遠ざかっていった。
健太とアオイにはその行動はまさに予想外だった。
2人は思いっきりずっこけてしまった。
「ちょ、ちょっと待て! 逃げるな~っ!」
あっけにとられて一瞬出遅れてしまった。
慌ててウインドプラスの後を追いかけた。
ウインドプラスはただ逃げたわけではなかった。
美紅たちが追いかけている袋の元に向かったのだ。
 
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