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ルイズが赤い弓兵を召喚

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貴族

 
前書き
ルイズさんが別人になった。
すみませぬ。
展開が飛び飛びです。
すみませぬ。
「構わん」って心の広い方はどうぞ。 

 


「おや、ミス・ヴァリエールの使い魔は? 姿が見えないようですが……」

 なぜ今日に限って態々名指しするんですか、先生。
 まったく。
 今日は朝からイライラすることが多い。
 
 部屋のドアを開けたあと直ぐ出会ったツェルプストー。
 いきなり始めた使い魔自慢といつも通りの嫌味を死ぬ気で受け流し、食堂で腰を下ろしさあ朝食だと食べ始めようとすると姿が見えない使い魔から『朝からこんなメニューは……』とお小言が延々と続き、気分一新授業を受けようとしたらこれである。

(マスター、お呼びがかかったようだが?)

 聞こえてるっての。
 大体『レイタイカ』とかなんとか言って姿を消したりしなければこんなことには……。
 いやもっと面倒になっていたかもしれないわね。

「は、ハイ。あの、えっと、ちょっと具合が悪いようなので、部屋で休ませているんです」

 よし、完璧。

「まぁ、それは大変ですわね」

 えぇ本当に大変なんです。

「違うだろ!『ゼロ』のルイズ! サモンサーヴァントが出来なかったから平民を呼んで、寝てる間に逃げられでもしたんだろう?」
「なんですってぇ!?」

 誰よ!? ただでさえムカついている私にケンカを売ってくるのは。
 いい加減買っちゃうわよ!?

(もう買っているようだが……。しかしあの少年、なかなか見所があるぞ、マスター。後半はともかく、前半に関しては間違っていない(・・・・・・・))

 黙ってなさい!

「お黙りなさい、他者を不当に貶めるような発言は許しませんよ」

 もっと言ってやって下さい先生。
 ついでにこの使い魔にも。



――――――――――――



「錬金、やります」

 えぇやりますとも。
 せっかく先生が名指し(二度目)してくれましたし!
 今日はここまで一つもいいことが無かったんだから、もしかしたら爆発なんて起きずに成功するかもしれない、うん。




うあっ眩しっ!



――――――――――――



 サッサッサッ……

「……言いたいことがあれば言えばいいじゃない」

『レイタイカ』とやらを解いて現れた使い魔は、さっきから無言で箒を動かしている。
 どうでもいいけど無駄に手際がいい気がする。

「どうせ内心バカにしてるんでしょ?」

 私だって進んで爆発させようなんて思ってないわよ!

「私が『ゼロ』って呼ばれる理由がこれよ……。どんな魔法を使ったって一つも成功しないでこうして爆発する、使える魔法が『ゼロ』ってわけ」

 なんで使い魔にこんな情けない告白してるんだろう。
 何とか言えっての。

「なに、そこまで気にする必要はないぞ、マスター」

 へ……?

「え……」
「どんな失敗だろうとそこから得る物は必ずある。そら、君の箒捌きはそこいらのメイドと何ら遜色ないほど優れたものだ。失敗した分上手くなったのだろう」

 あれ……?

「それに未熟で才能がないマスターに仕えるのはこれが始めてではないからな。そんなに気を張る必要はないさ」

 あっそう……。
 あぁそう……。

「アーチャー?」
「ん? どうした、マスター」

 うん、分かった。
 言いたい事はそれだけかしら?
 そうよね?

「! ま、まてマスター!」
「今すぐここから出て行けー!!」

 右手の甲が一瞬熱くなる。
 次の瞬間教室に居るのは私一人だけだった。



――――――――――――



「剣を買ってやるわ」
「必要ないな」


 せっかくこの私の休日を使い魔の為に使ってやろうと朝から話しかけた結果がこれである。
 この偉そうな口調はどうにかできないものか。


「あのね、私だって認めたくは無いけど、あんたは一応私の使い魔なのよ? そして私は貴族なの。そんな高貴な私の使い魔がいつまでも手ぶらなんておかしいでしょう? おかしいのよ。平民のアンタにはわからないかもしれないけど、貴族は見栄えだって大切にしなくちゃいけないわ。アンタに完璧なんて求めないけどせめて『見れる』程度には装備を整えてもらう必要があるわけ。お分かり?」


 こいつの赤い外套からはどことなく……こう、なんていうか畏れ多いような、神聖な感じがしないでも無いけど、そこはスルー。
 どうよ、反論できないでしょう?

「マスターの言い分は分かるが、それでもやはり私には不要だ」

 あんですって?
 まさかこれからずっと『レイタイカ』してるつもりじゃないわよね?

「ど、どういうことかしら?」

 落ち着くのよ、ルイズ。
 怒ったらこいつの思う壺。

「言っていなかったが、私は既に剣を所持している。そして私の扱う剣はどれも(・・・)一級品だ。正しく『格』が違う。そこに在るだけで見る者を魅了しよう。だがそんな物を、いや、そんな物だからこそ、おいそれと見せびらかす事は出来ないのだよ」

 いやいやいや。
 言い訳にしか聞こえません。
 それになんか論点ずれてないかしら。
 あとそのわがままな生徒に世の理を諭すような言い方はやめなさい。

「じゃあ見せなさいよ、その剣を。今の言い方からだと、一つ二つじゃないんでしょ?」
「断る」
「ケチくさいわよ」
「それは否定出来ないな。私の師がやたらと出費が嵩む人だったのでね。元より倹約は得意だったが、どうやら倹約根性が魂にまで刻まれてしまったようだ」
「倹約とケチなのは違うと思うわ」
「倹約家でケチなのが私なのだろう」

 
 もう疲れた。



――――――――――――



「戻れ! マスター!」

 アーチャーの怒鳴り声がする。

「嫌よ!」

 ここでフーケを捕まえて私が優秀なメイジであることを皆に証明するんだから。
 それに……。

「魔法を使える者を貴族と呼ぶんじゃない! 敵に後ろを見せない者を貴族とよぶのよ!」

 そう、私は貴族なのだから。
 あぁ、でもやっぱり無理かも。
 このゴーレム大きすぎでしょ。
 あ、大きな拳が目の前に……。



――――――――――――



「私は反対だ、マスター。相手は手練れのメイジなのだろう? 君にはまだ早すぎる」

 出てきたと思ったらこれだ。
 こいつは小言しか言えないのか。

「黙りなさい。いい? 目の前で堂々と学院の物を盗まれて、挙句怖いから誰かに任せて安全な所で待っているだなんて、私にはできないわ。あんたがついて来なくても、私は行くわよ」



――――――――――――



「なるほど、君が私を召喚した(呼べた)理由はその頑固さから、かもしれないな」

 短い走馬灯の後耳元で聞こえた言葉は、いつもの皮肉気なものではなくて、どこか親しみを感じさせるものだった。

「あ、あんた……」
「さてマスター、こんな場面だが言わなければならない事がある」

 ゴーレムの攻撃を私を抱えたままヒラリと躱し、アーチャーは言った。

「私は以前、一級品の剣を持っていると言ったがな、あれは嘘だ」

 


 ふざけんな!
 
 

 
後書き
ルイズ「アーチャーは幽霊なの?」
アーチャー「君には私がそうみえるのか?」
ルイズ「だって透明になれるし……あ、でも足はあるし……」
そのうちルイズは考えるのをやめた。 
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