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詩集「棘」

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現の幻 春の月




真夜中に貨物列車の音が響く
通り過ぎた後の静けさは
物悲しさを強調する

風が草木をざわめかせる
そこへ君の声が聞こえたようで
我慢出来ずに君の名を呼んだ…

現の幻 春の月
光の中に在りし日を垣間見せる
振り返っても君はいない
僕は魂(ココロ)の抜けた人形(マリオネット)


暗闇の点滅信号の微かな光
それがあまりに寂しく見えて
足早に通り抜けてく

走り去る車 目で追い掛ける
そんな僕はとても愚かだったね
君はもうここにはいないのに…

現の幻 春の月
ささくれだった心を癒すように
月の光は包み込んだ
この無慈悲な世界の片隅で…

現の幻 春の月
届かぬ幻(キミ)を鮮やかに映し出す
桜は風に舞い上がり
いつしか僕も消えていた…



 
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