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堕天使

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3部分:第三章


第三章

「殺し合いになるからな」
「ですよね。本当にそれだけで」
「人間とはそういう醜いものだ。だからこそ」
「こうした人間達も」
「殺される。だがそれはだ」
 何かというと。マキエルはもうわかっていた。
 そのことだ。また言うのだった。
「神の定めたもうたことなのだ」
「ですからそれは」
「正しいのだ」
 過ちでは有り得ない、そうだと言うのである。
「絶対にな」
「ですがですよ」
「若し神の御命令通りにすれば」
「あの神父達にしても」
 そうしてだった。
「他の人間達もです」
「皆どうなるかわからないな」
「死ぬ人間がかなり出ますよ」
 そのことは間違いないとだ。サトエルも言う。
 そしてその曇った顔でだ。マキエルにさらに話す。
「それこそ何百万と」
「神はこの度の戦争はかなりの数の人間を死なせるおつもりだ」
「何百万もですか、本当に」
「いや、一千万はいくか」
 そこまでに達するというのだ。
「とにかくかなりの数だ」
「一千万も悪人がいるのですか」
「いや、そこまではいないだろう」
 流石にそこまでの数はいないというのだ。どうしようもないまでの悪人はだ。
 だがそれでもなのだ。神はというのだ。
「だがそれでもだ」
「神はですね」
「決められた。多くの人間を死なせる」
「善人も巻き込んでなのですね」
「善人か悪人かは神が定めたもうものだ」
 そうなることだった。神こそが絶対の正義だからだ。
 そして天使はその正義を遂行するものだ。だが今マキエルはだ。
 深刻な顔になりだ。こうサトエルに漏らすのだった。
「だがそれは」
「マキエル様もなんですね」
「それが正しいのか」
 こう漏らすのである。
「果たして」
「どうなのでしょうか」
「まだ時間がある」
 今度はこう言うマキエルだった。
「揉めごとをばら撒くにはな」
「ではその間は」
「少し見よう。両国に各国をな」
「わかりました。それじゃあ」
 こうしてだ。マキエルとサトエルはそれぞれの国の人間達を見ることにした。そうして見ているとだ。彼等はまた気付いたことがあった。それは何かというと。
 どの国でもだ。殆どの人間達がだった。
 平和に、そして善良に暮らしている。どの国でも同じだった。
 ある人間は家族で店を持ちそこで客達の笑顔を楽しみにしていた。
 ある人間は学校で勉強しクラスメイト達と仲良くしていた。そうしたものを見てだ。
 マキエルはだ。また難しい顔でサトエルに話したのだ。
「やはりだ。殆どの人間達はだ」
「善良ですよね」
「死んではならない者達だ」
 神が起こすだ。その戦争によってだというのだ。
「そうなってはならない者達だ」
「ですね。しかしです」
「神は定められた」
 戦争で多くの者、その善良な者達を含めて死なせることをだ。
「それをだ」
「ではやはり戦争を起こされますか」
「いや、神にお話しよう」
 マキエルはサトエルに言った。
「そうしよう」
「神にですか」
「そうして考えなおして頂く」
「戦争を引き起こすことをですね」
「要は不心得者、悪人だけを罰せばいい」
 これがマキエルが至った考えだった。
 
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