カプリコーン
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2部分:第二章
第二章
ヘルメスはその陽気な笑顔でだ。ゼウスにあらためて述べた。
「宴の場の騒ぎというのも無粋です」
「その通りだ」
「今から見てきます。そしてです」
「騒ぎを鎮めてきてくれるな」
「そうしてきます」
何でもないといった調子でだ。ヘルメスはその騒ぎの場に向かった。しかしだ。
彼はすぐにだ。血相を変えてゼウスのところに戻って来た。そしてこう言ったのだった。
「た、大変です!」
「何があった?」
「テューポーンです!」
この名前をだ。ヘルメスはゼウスのところに血相を変えて駆け込んできながら出したのである。
「テューポーンが来ました!」
「何っ、あの者がか!」
「はい、見て下さい!」
見ればだ。遠くからだ。
全身が羽毛に包まれた天に届かんばかりの巨人がいた。
人間の身体だが二本の足は太腿から下は蛇の下半身だ。その二本の脚がうねっている。
肩から百の竜が生えていてそれがそのまま頭になっている。そして暴風と轟音を起こしながらだ。その異形の巨人が宴の場に迫っていた。
「来ました!ここに!」
「くっ、我等の隙を衝いたか!」
「ゼウス様、どうされますか!?」
ヘルメスは血相を変えたままゼウスに問うた。
「ここは」
「テューポーンの相手は並の者では無理だ」
その迫るテューポーンを見据えながらだ。ゼウスは覚悟をした顔で言う。
「到底な。だから」
「では」
「そうだ。わしが行く」
ゼウスがだ。相手をするというのだ。
「そうする。他の者は逃げよ」
「そうですか。では我々は」
「一刻も早くだ。この場を去れ」
避難しろというのだ。
「わかったな。そうしろ」
「わかりました。それでは」
こうしてだ。ゼウスは単身テューポーンに向かいそのうえでだ。彼が後詰にもなり他の者達を逃がしにかかった。普段は好色だがそれでもだ。やはりゼウスは天界の主だった。
彼が戦っている間に神々もニンフ達も逃げていく。そしてその中にはだ。
パンもいた。パンは共にいるその川のニンフに告げた。
「早く逃げよう」
「はい、さもないと本当に」
「テューポーンの相手なんてゼウス様にしかできないから」
それ故にだというのだ。
「逃げよう。本当にね」
「はい、川があります」
二人は手に手を取り合って逃げていた。その前にだ。川が見えたのだ。
ニンフはその川を見てだ。すぐにパンに言った。
「あそこに飛び込んで」
「泳いでだね」
「そうして逃げましょう」
こう言うのだった。
「すぐに」
「うん、じゃあ」
こうしてだ。二人は川に飛び込んだ。その時にだ。
パンはニンフに話していた変身の力を使った。魚に変身するつもりだった。
だが彼は焦っていてだ。そのせいでだ。
下半身は魚だ。確かに。しかし上半身は。
山羊だった。その山羊の姿になったうえで必死に泳ぐ。何とか泳げている。
だが山羊の上半身では中々泳ぎにくくだ。もがく感じだった。その姿を見てだ。
隣で泳いでいるニンフは思わず吹き出してだ。こう言ったのだった。
「何ですか、その姿は」
「えっ、何かな」
「あの、お魚じゃなくて」
では何かというと。
「山羊になってますけれど」
「山羊って!?」
「はい、山羊に」
まさにそれだとだ。ニンフは泳ぎつつ笑ってだ。こう言うのだった。
「下はお魚ですけれど上は」
「ええと?」
ニンフの言葉にだ。すぐにだ。
パンは自分の右手を見た。本来は鰭になっている筈だ。しかしだ。
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