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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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最終話 平凡な日常を望む転生者

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

今まで本当にお世話になりましたこの話で最終話とさせて頂きます。
後書きにも色々と書きましたので、是非読んでいってください。 

 
「久しぶりじゃの」

気がつけば俺は真っ白な空間に佇んでいた。この光景は覚えがあった。

「久しぶり爺さん」

バルトマンとの戦い以来1度も会っていなかった、俺を転生させた神様がそこに居た。

「先ずはお主に謝ればならんことがある」
「エリスの事か?」
「いかにも。だが分かってほしい、ワシは彼女の願いを尊重しただけじゃ」
「別に怒ってないよ。お陰で最後にエリスと会えたし、エリスの想いも分かった。むしろ感謝してるくらいさ」
「………そうか、ならばいい」

そう言ってうんうんと頷く神様。

「それで神様、俺はやっぱり死んだのか?」
「何を勘違いしておるのか知らんが、よく思い出してみよ」

そう言われ、神様の言われた通り、思い出してみる。

「確かセットアップしようとしたらエリスにビリッとやられてそのまま意識が薄れていったんだっけな………えっ!?って事はどうなったんだ!?」
「それは戻ってから聞くが良い。お主にもう1度こうやって会ったのは伝えたいことがあったからじゃ」
「伝えたい事?」
「遠藤エリスは転生する」
「転生………じゃあまた俺みたく………」
「違う。命の法則に従い、歪めた主達のような転生ではなく、新たな個として生まれ変わるのだ」
「それじゃあエリスは………」
「遠藤エリスとして生きていくことはない」

そう言われ、俺はショックで固まってしまった。

「またこうやって再会できたのにか………?」
「そうじゃな」
「これからも一緒に生きていけると思ったのに……何とか出来ないのか?」
「出来ん。……むしろワシはこのままの方が良いと思っておる」
「なっ!?」

不意に呟かれた言葉に怒りが募る。人を簡単に転生させられるからと言って無責任すぎると思ったのだ。

「そう怒るな。主は分かっているのか?デバイスと言うことは彼女はお前が死んだ後でもデバイス自体が完全に壊れなければずっとあのままだと言うことを………」

そう言われ募っていた怒りが徐々に消えていく。

「そうか………あいつは………ラグナルはデバイスだったな………」
「それにお前の幸せを彼女はずっと見続けていかなければならない。それだけじゃない、周りだけ老いていく中、変わらない自分を見てどう思うか………」

神様に言われ、想像していくうちにとても恐くなった。
独りぼっちの苦しさは先輩が死んだ後、身に染みて感じていた。それが永遠と続くとなると本当に恐ろしい。
独りぼっちじゃないかもしれない。俺の子供やなのは達の子供と繋がりは途切れないだろう。だが孫ひ孫と続いていくと考えると気が狂いそうだ。

「分かったようじゃの。遠藤エリスはその事も承知の上でデバイスに封印される事を選んだんじゃろうが、そんな戒めもう必要ないだろう………」
「エリスには………もう会えないんですか?」
「すまんがもう既に新たな命へと転生が始まっておる。会うことは出来ん」
「なら伝えてもらえませんか………?『俺はお前に幸せを貰った。だから今度はお前が幸せになってくれ』って………」
「分かった………」

神様はそう言ってしっかりと頷いてくれた。

「………さて、伝えたい事も伝えられた。これで終わりじゃ」
「そうか………ありがとうございました。結局最後まで面倒を掛けて………」
「なあに、好きでやっていた事じゃ。気にしなくて良い。それよりももう目覚める時間じゃ、達者に生きろ」
「はい………!!」

そう言って深々と頭を下げた。












「………あれ?」

気がつけば目の前には高く白い天井があった。

「俺は………」
「やっと目が覚めたか?」
「桐谷………?」

声がした方を向こうと身体を起こそうとするが………

「………あれ?」
「無理して身体を動かそうとするな。入院している中で一番、お前が酷いんだから。目覚めたのだって事件が終わって1週間経った今だしな」
「えっと………こうすれば………んぐぐ!!」

何とか首だけを動かし、左を見た。そこには身体を起こして本を読んでいる桐谷が居た。

「どうなったんだ俺達………?」
「そうだな………それじゃあ順を追って説明してやる」

そう言って桐谷は話しだした………











桐谷の話はこうだ。
ゆりかごを攻撃し、破壊した大悟。タイミング的には脱出に間に合わなかったバルトマンや桐谷だったが、一時、力とゆりかごでぶつかり合い、拮抗した事で幸いにも逃げ出す事が出来た。

「そしてその後、ゆりかごは大悟の手によって爆散。………って言葉がおかしいと思うかもしれないけど本当に爆散したんだ。俺も初めは信じられなかったよ」

と苦笑いしながら呟く桐谷。とにかくそう言う事でゆりかご攻略戦は終わったらしい。

「それでその後の処理だが………クレインは取り敢えず拘束されて収容所へ送られた。聞く話では尋問にもちゃんと受け答えし、反抗するような態度はとっていないらしい。ただ、何かショックを受けたのか、少々上の空みたいな状態みたいだけどな」
「そうか………」

恐らくこう言う事態になるとは思ってもいなかったのだろう。クレインの出した選択ではこうはならなかったからだ。

(これもエリスのお蔭か………)

「それでイクトに関してだが………」
「イクト?………ってあのお付きのクレインの戦闘機人か?」
「ああ。何でもバルトさんが説得して協力してもらったらしい。一応その事を含めて、監視付きだがある程度の自由を得る事が出来た」
「そうか………みんなの状態は?」
「全員ボロボロ。………だが俺達みたいに入院するほどの大怪我を負った奴はいないな。皆数日休んだ後、もう仕事に戻っているよ」
「タフだな………」

流石に鍛え方が違うな。

「………そうだ、アギトにホムラ、それとバルトマンはどうした?」
「アギトとホムラは一度ジェイルさんと所でメンテナンスをしている。お前が目覚めた時に持ってくると言っていたから近いうちに会えるだろう。バルトマンははやて達が秘密裏に聖王教会へ連れて行った。その後どうなったかは聞いていない。」
「そうか………」

一応これで気になっていた事は全て聞いたと思う。

「なあ零治………エリスは………」
「エリスはまた新たな命として生まれ変わるよ」
「!?気づいていたのか?」
「信じられなかもしれないけど、ついさっきまで夢の中で転生した時に世話になった神様とあったんだ。そこでエリスの事を聞いた」
「そんな事が………」
「俺のデバイスとして、今後もずっとそうしていくよりも新たな命としてまた人生を送ってもらった方が良い。………もう会えないだろうけど今度はエリスに幸せになってほしいし………直接は会えなかったけど神様に伝言も頼んだしこれでいい」
「零治………」

不安そうに俺の顔を見る桐谷だが、俺の顔を見て、小さく息を吐いた。

「………羨ましいよお前が。俺もレミエルに………」
「レイ!!!」

何か小さく呟いて桐谷の言葉を遮るように病室へ駆け込む姿があった。

「優理………病室では静かにな………」
「レイのバカ!!!!また無茶して!!!!また離ればなれになったのかと思ったよ!!!!!」

そんな俺の注意など聞いていないのか大声で訴える様に叫ぶ優理。

「優理………悪かったな………」

泣きじゃくる優理を撫でてやりたかったが、まだ身体に力が入らない。

「お………お兄ちゃ…ん………」

そんな優理に続いて、今度はキャロが俺の方へ駆け寄って来た。
赤い目で一生懸命涙を流さないように耐えながら。

「キャロ………」
「うわああああああああああん!!!」

しかし名前を呼んで耐えていたのもが爆発したのか、目の前の優理を吹っ飛ばしって寝ている俺に抱き付いて来た。

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!!」
「ごめんなキャロ………」

俺の存在を確かめる様に首の後ろに手をやり抱きしめてくる。寝ている状態でこんな事をやられれば全身痛いんだろうが、感覚の無い今の俺には苦では無かった。

「キャロ!!痛いんだけど!!」
「ぐすっ………ごめん………」

優理に怒られ、ゆっくりと離れるキャロ。

「元気そうで良かったキャロ」
「お兄ちゃんこそ………お帰りなさい………」

そう言って笑顔で答えてくれるキャロ。

(ああ、癒される………)

「レイ起きたのですね」

キャロと優理が部屋に来てから数分、星、ライ、夜美とフェリアとノーヴェがやって来た。

「悪いな、心配を掛けて………」
「本当だよ、レイのバカ!」
「中々の壮絶な戦いだったそうじゃないか、我等の元へ帰るのを諦めるほどの激戦だったのだろう?」
「………誰がその話を?」
「考えてみたらどうです?」

星に冷たくそう言われ考えてみる。
あの場に居たのは桐谷とバルトマンだけ。………いや、

「アギトとホムラか………いや、アギトは途中から桐谷の応急処置をお願いしてたからホムラだな」
「正解です」

そう淡々と答える星。
いつもに増して雰囲気が恐ろしい。

「………済まなかった。だけどあの時はあれしか思いつかなかったんだ。自分を犠牲にしてでも大事な人を守りたかったんだ………」
「レイの悪い癖だな。いつも勝手に自分自身で解決しようとする」
「だが、あれしか方法は無かった。結局エリスとレミエルを犠牲にして俺は助かったわけだが………本当だったら皆一緒に帰って来たかったんだがな………」

しかしあの時の状態ではそれは不可能に近かった。
それを見て分かったからこそ、エリスも行動に移ったのだろう。

「………責めるのはそこまでにしとけ。最後の零治の判断はあの状況下では仕方がなかったんだ。それは俺もホムラもアギトも散々説明しただろ?」

そんな俺に対して桐谷が助け船を出してくれた。

「それはそうだけど………」
「だがレイにはキツく言っておかなければまた同じことを繰り返すかもしれん」
「それは無いよ夜美」
「何でそう言い切れるんですか?」

夜美よりも早く星が聞いてきた。

「今回の戦いは最初から不利な状態だった。ホムラに操られていた時に神速の過剰使用とその戦闘による負担で、いつもの2割以下の状態で戦わなくちゃいけなかった。桐谷もバルトマンも重傷で、俺も思う様に身体が動かず、手も足も出なくて………もう身を挺してクレインを倒さなくちゃいけないと覚悟までした。だけどそれでも敵わなくて本当に駄目だと思ったときエリスが言ったんだ、『誰かを守るのに自分を犠牲にするやり方じゃ結局誰も救われない、自分を大事に出来ない人が他者を守る事なんて出来るわけない』ってね」

これこそが、俺の欠けていた部分だったのだ。自己犠牲だけじゃない、1人で抱え込む事だって、自分を犠牲にして守ろうとしていただけだった。

その事を分かっていたつもりで全く分かっていなかったのだ。

「エリスが………」
「俺はもう間違えたりしない。自分を大事に出来なきゃ大事な人達を守れないって確信したから」

そう、決して間違えない。エリスが教えてくれて、そして未来への道を作ってくれた。それを外れる様な真似を絶対にしない。
これから先も大事な家族と生きていくためにも………

「………悔しいな」
「そうだね………」
「ん?」

俺が話した後、夜美とライが小さく呟いた。

「何が悔しいんだ?」
「結局最後までレイを支えたのはエリスだったんだな………って感じたんです私達。もっと負けないように頑張らないといけないですね」
「いやいやいや、確かにエリスには支えられてきたが、それ以上に支えてくれたじゃないか。星達と会っていなかったら今の俺は居ないし、多分こんな風に笑っていないと思う。こうやっていられる事こそみんなのお蔭なんだよ」
「………それならいいです」

そう呟きながら星は嬉しそうに笑顔を見せてくれた。他の2人も同様だ。

「有栖零治さん、目が覚められましたね。でしたら検査をさせて頂くので一時間後にお願いします」
「あっ、はい………」
「検査結果は翌日お伝えしますので、その時は御家族の方もご一緒に居て頂いてもよろしいでしょうか?」
「分かりました」

パッと現れた看護婦の女性は必要事項だけ伝え、さっさと行ってしまった。

「………みんな来てほしいって事はやっぱり良い報告は期待出来ないって事かな?」
「まあこの怪我だもんね〜」
「レイの事だ、大丈夫であろう」

俺の質問にライと夜美が軽い口調で答えた。
正直最悪下半身不全の様な診断も覚悟しているのだが2人の態度を見ると不思議と大丈夫の様に思えてくる。

「ではレイも起きたことですし、私達は1度帰りますね」
「ああ、分かった」
「それじゃあレイ、ゆっくり休んでね!」
「長い間寝ていたから眠くはならないかもしれないがちゃんと寝るのだぞ」
「分かってるよ」
「レイ、ナースさんに鼻を伸ばしちゃ駄目だよ?」
「………大丈夫だ」

俺の答えに間があった事で、優しかった顔が不機嫌そうになった。

「お兄ちゃん………」
「レイ………?」

「冗談だってキャロ、優理!!」

更にはキャロは涙目で、優理はレイピアを持って俺を見たので慌てて否定した。

「まあ取り敢えず明日また来ますのでゆっくり休んでて下さい」
「ああ、気を付けてな」

まだ不機嫌そうな優理と涙目であたふたしているキャロを連れ、星達は部屋を出て行った。

「………良かったな」
「ん?ああ」

空返事だったが俺の心はかなり満たされていた。

「やっぱり俺は星達がいないと駄目みたいだ」

身体も心なしか先程よりも動きそうな気がする。

「しかし準備していてくれって言われても何も出来ないんだよな………」

結局何も出来ず、迎えに来てもらうまで気が付けば寝ていたのだった………















「ふぅ………」

そして時間通り迎えが来て、色んな機械で身体を調べられて約3時間ほど。
時計を見ていなかったので気が付かなったが、空はすっかりと暗くなっていた。

「お疲れですか?」
「ええ、検査と聞いて緊張してましたから………」

尤も感覚が薄れている今の状態では痛い検査でも平気だと思うが、それでも恐いものは恐い。

「結果は明日ですので、今日はゆっくり休んでください。御家族揃ってからまたお呼びしますので」
「分かりました」

そう話している内に自分の病室に着いた。

「うん?何か騒がしい様な………」

外まで聞こえる声を聞きながら中へ入る。

「それでそれでそれで!!桐谷君はどっちなんよ?」
「どっちも何も………」

はやてにそう問われ、桐谷は困った顔で傍にいるノーヴェ、フェリア、ギンガを見た。

「あらあら………」

そんな様子を見て、看護婦の方が少しにやけた顔で呟いた。

「パッと見て恋敵が揃った状態で何とか和やかな雰囲気でいたのに、いらんちょっかいを出す、関西風のおばさんみたいな奴の影響で一気に修羅場へと変貌した感じですかね………」
「そこまで分かっちゃうのね」
「慣れてますから」

そう、主に実体験で。

「………って誰が関西風のおばさんや!!」
「はやて、久しぶり」

突っ込むはやてを無視して挨拶をする。
実際にこうやってはやてと顔を会わせるのは妖怪大戦争以来だと思う。

「久しぶりやないで!!私達も心配したんやから………」
「ああ、悪かったな………」

この反応は予想外だった。
突っ込んだ態度が一変し、涙目で車いすの前に駆け寄ってきた。
しゃがんで服の袖を掴む仕草は相手がはやてだとしてもグッとくるものがある。

「本当に心配したんやから………」

そのまま動かないはやてに、内心ひやひやしていた。
幸いだったのは星達が居なかった事だろう。はやての発言にはやてを危険視している節があるように見えるので、こういった行動は勘違いさせる事になりかねない。

「………」
「フェ、フェリア久しぶり………」
「ああ。相変わらずの様でホッとしたぞ」
「そうだな、零治らしい………」
「あはは………」

ジト目でそう言うフェリアとノーヴェに苦笑いするギンガ。
冷や汗を掻きながらも取り敢えずくっつくはやてに離れてもらい、ベットへ運んでもらう。

「………身体動かないんですか?」
「検査結果はまだだから分からないけど、俺が思うに一時的だと思うけどな。起きた頃と比べたら何となく感覚が戻った気がするし」

ギンガに聞かれ、軽い感じで答えた。
とはいえ、全く動けないのだが………

「それではやて、お前はお見舞いが目的じゃないだろ?」
「………そやね。現時点の色々な情報を教えてあげようかなって病院に行くギンガと一緒に来たんや。その途中フェリアちゃんとノーヴェと会ったんやけど。………でも零治君にはあまり嬉しくない報告かもしれへんで?」
「構わないさ」

この言い回しからもはやて達は既に俺の隠してきた事の殆どがバレてしまったと思われる。………まあこうなってしまっては仕方がないと思っていたので取り敢えず話を聞いてみることにした。

「先ず先に六課と七課についてやけど、結果がどうあれ六課は来年の春までで終了となったんや………」
「まあそうだろうな」

現在の機動六課は原作と比べても異常過ぎる戦力があった。それをそのまま運用するのは難しいだろう。

「ただでさえ人手不足の状態で機動六課に優秀な魔導師やそれを支えるロングアーチの職員を集中出来へんって言われたんよ………」
「機動六課のメンバーで管理局を覆す事だって出来るほどだからな」
「確かにやろうと思えば出来るやろな………」

そう言って苦笑いするはやて。
恐らくはやての頭の中には天変地異を起こしながらミッドチルダを制圧してる構図でも浮かんでいるのだろう。

そしてその様子を満足気に見るはやて………

「………ボスキャラも中々様になってそうだな」
「何か言った?」
「いいや、何も」

思わず零れた言葉を誤魔化し、再び話は戻る。

「機動六課のメンバーに関しては桐谷君にも聞いての通りや。皆、頑張って仕事に取り組んでいるで。………1人を除いて」
「1人?」
「………エローシュのアホや」

そう言って額に青筋を浮かばせながら怒りを堪えて話し始める。

「確かにゆりかごのエンジェルソングを耐えるのに1人奮闘していたのは私も近くで見ていたし、エローシュが居なかったら私達は敗北していたと思う。せやけど!!忙しいのに無理矢理時間を作ってライトニングの子供達に3日間のまとまった休みを作ったんよ!!それなのにエローシュの奴、皆が目を離した隙に居なくなって、それから今日まで音沙汰無し。………ほんまどこ行ったんや!!!!」

そこまでいくとサボりと言うより、何かの事件に巻き込まれたのではないかと思えるのだが、そう思われない辺りが日頃の行いの悪さなのだろう。

「本当に誰も行先を知らないのか?」
「みんな分からないんやって。………ただ、戦いが終わったら一か月は働かないって真白に宣言しとったからきっと雲隠れしとるんや!!」
「流石にエローシュでもそこまで………」

………駄目だ、あいつならやりかねん。

「とにかく、エローシュを見たらすぐに近くの六課メンバーに連絡してな!!」
「あ、ああ………」

あまりの勢いにかなり頭に来ているのが分かる。

(次に会う時、死んでなきゃ良いがな………)

まああいつはゴキブリ並の生命力があるから大丈夫だろう。

「まあ六課のみんなについてはこんなもんやな。次はいよいよ零治君についてやけど………覚悟はええ?」
「………ああ」

そして話は変わる。真面目な顔で姿勢を正し、口を開いた。

「単刀直入に言えば零治君には1年ほど嘱託魔導師として勤務してもらう事になったんや」
「1年?そんなに短い時間で良いのか?」
「クレイン逮捕や、私や大悟の声も踏まえての結果や。そこは感謝してほしいで」
「そうか………」

正直、最低3年位は覚悟していたので、かなり予想外だった。はやてと大悟には感謝だな。

「星達は………?」
「星ちゃん達は私達が協力を要請した事になっとるから問題無し。せやけど魔導師登録だけはさせてもらったで」
「だけど過去の事件についてあいつらは………」
「ああ。それについては時効みたいなもんやから気にせんでええで。こっちでは闇の書事件の方が大きいから殆どの人が覚えていないし、そもそも名前も全然違うからちょっと似てる程度で誤魔化せるんよ」

こちらとしてはありがたいが、それでいいのかはやて………

「まあ兎に角、怪我が治ったら直ぐにでも色んな場所に応援として駆り出されると思うからそのつもりで頼むで」
「分かった」

一年くらいなら大学に行きながらでも何とかなるだろう。もう大学は始まっているんだ、早く戻らないと単位が怪しくなる………

「後は………そうや、一応聖王器の処遇についても決まったで」
「処遇か………それはホムラもか?」
「そうや。順番に話すけど、バルトさんのバルバドス、桐谷君のセレン、そして零治君のホムラに関してはそれぞれの持ち主の手でそのまま使用される事に決まったで」
「えっ?良いのか?特にホムラはクレインと並ぶ主犯の様なものじゃ………」
「ホムラは自分を零治君のデバイスとして使わせる事を条件に、ゆりかごについての詳しい説明と当時の話を色々と話してくれたんや。お蔭で歴史学者達は大喜びで、無限図書の方でも今まで謎な部分が分かるようになって研究がはかどってるってユーノ君が言っとったわ」
「ホムラ………」

俺を気に入ってくれたのか、それともエリスに何かを言われたのかは分からないが、俺をマスターとして選んでくれた事はとても嬉しかった。
エリスが無くなった今、俺にはもう何も残っておらず、どうするか迷っていた所だったからだ。

「そんで大悟のジルフィスと加奈ちゃんのパールバティなんやけど………」
「うん?その2基がどうしたんだ?」
「どちらも聖王教会に返すしたんや。ジルフィスは封印を、パールバティに関しては以前と同じように聖王教会に展示される事になっとる」
「封印?そこまでする必要があるのか?」

確か聖王器はそれを使える者が決まっていて、その者以外は使えない。

「聖王器の担い手は決して1人だけと言うわけでは無いんよ。もし、大悟君以外の人で素質があるとジルフィスは使われてしまう。ホムラみたいに意思が残っていればまたよかったんやけど、基本あの時代はインテリジェンスデバイスなんて無かったから他人でも拒まないらしいんや。だから大悟君は、魔力があればどこまでも強化できるジルフィスは危険やからって封印する事に決めたんや」
「認証システムを組み込むような事は出来ないのか?」
「デバイスが古すぎて、ほぼブラックボックスだから時間がかかるってイーグレイさんが」

スカさんがそう言うのならば難しいのだろう。

「………まあ当人達が決めた事に口を出す気は無いけどな。取り敢えず俺の元にホムラが帰って来てくれるのは嬉しい事だ」
「ラグナルの事はええの?ゆりかごはの破片はかなり広範囲に散らばって、今も撤去作業に追われてるんやけどもしかしたら残骸から出てくるかも………」
「見つけてもらったら嬉しいけど、もう今までの様には動かないよ。あれは普通とは違う特別なデバイスだから」
「特別?」
「まあそこはもう誰にも話すつもりはないよ。それに話した所で何も変わらないだろうし」
「………そう言われるとまた気になるんやけど………まあええや。取り敢えずそんな感じや」

そう言って椅子から立ち上がるはやて。

「帰るのか?」
「もう遅いし、リイン達が待っとるから。もしまた何か気になる事があったら遠慮せずに聞いてや」
「ああ、ありがとう助かる」
「それじゃあギンガ、六課に戻るで」
「あっ、はい!」
「ノーヴェ、私達も帰ろう」
「分かったよフェリア姉。桐谷、零治、また」
「零治さん、桐谷さんお大事に」
「それじゃあ2人ともお休み」

最後はそれぞれ慌ただしく病室を後にした………














「4ヶ月!?」
「ええ。実際はもっと早く退院出来るかもしれないし、もっと遅いかもしれない。経過とリハビリ次第ですね」

翌日検査結果を聞きに来て伝えられた結果。

「それじゃあ大学は………」
「休学だな」

夜美の言う通り全く出られない事は確定してしまった。

「でも前期の単位数が多ければ進級は………」
「星、俺がそんなに単位取っていると思うか?」

そう問うと俯いて黙ってしまった。

「これじゃあお兄ちゃん卒業も危いんじゃ………」
「確かにレイって勉強嫌いそうだしね………」

まさかのキャロと優理にも心配されるほどである。
だけど勉強嫌いって………確かに好きじゃないけど

「えっ、でも来年から頑張れば………」
「俺、怪我が治ったら管理局に嘱託魔導師として奉仕活動しなくちゃならないんだよ………」

そう言うと星達5人が一気に険しい顔をする。

(あっ、まずい………)

「聞いていなんですけど、どう言う事ですかレイ?」
「あっ、いや、昨日お見舞いに来たはやてに言われたんだよ。俺って操られていたとしても色々と事件起こしただろ?その償いと言うか、何というか………まあ兎に角、嘱託として1年奉仕活動をしなくちゃならなくなったんだよね………」
「はぁ!?」

夜美のこんな驚き方は珍しいな………と現実逃避していたが、そんな事で逃げ切れるわけもなく、

「レイ、それを簡単に受け入れたんですか?」
「いや、だって迷惑かけたのは事実だし………」
「僕達に相談も無く………?」
「相談したら絶対反対したろ?」
「当たり前だ!!」

夜美の大きい声に耳がキーンとなる。
よく見るとキャロも優理も何か言いたそうな様子だ。

「あの…………」

話がヒートアップしそうになった所で看護婦の人が申し訳なさそうに話に入って来た。

「ここで話すのはちょっと………」

確かにここは診察室で、しかも次の患者もいるだろう。

「すいません、ありがとうございました」
「お大事に………」

俺達は慌てて診察室から出て行った………



















「全く、レイのせいで恥ずかしい思いをしました………」

行きの時は看護婦の人に車椅子を押してもらったが、戻りは慌てて出た為、星に押してもらってる。

「いや、騒いだのはお前達で別に俺は………」
「騒ぐような事を言ったであろうが!!」

またも大きな声を出してしまい、注目がこちらに集まる。

「………取り敢えず一度外に出ましょう。でないと周りを気にせず話が出来そうにないです」
「そうだね、そうしよう」
「俺は布団に戻りたいなぁ………なんて」

そう呟き気味に言ってみる。
そうするとキャロが俺の前にしゃがみ、

「だ~め」

とてもいい笑顔でそう答えたのだった。

(何か星に似てきたなぁ………)

運ばれていく中、俺はそんな事を思ったのだった………















「さて、ここならゆっくりと話せるでしょう」

そう言って俺の背中から星が話す。
ここは病院の中庭で、一番大きく春から夏にかけて大きく葉が広がる木で、夏になると避暑除けとして散歩がてらに人が多く集まる場所だ。尤も、今は秋なので枯れ葉が地面を多い、木はやせ細った様にスッキリしていた。

「さて、話の続きですけど………」
「みんな聞いてくれ」

さて、話を再開しようとした星が言い切る前に口を開いた。星に主導権を渡し、皆に責められながら話すよりも自分から話した方が話し易いと思ったからだ。

「俺はさ、今日これまで、管理局だけじゃなく、はやて達にも隠して裏で色々やって来た」

一度は星達の事がバレ、話す事も出来たのに、嘘を付いてその場をやり過ごした。スカさんの為でもあたが、長い間、嘘を付いた事には変わりはない。

「そうですね。ですがそれは私達の為や、ジェイルさんのお願いもあって………」
「そうじゃない。俺は隠れて色々やって来た事がいけないと思っているんだ。管理局はまだいい。だけどはやて達は友達だ。それを今までずっとだましてきたんだ」
「それは………」
「だが、それは我等も同じだ。もしそれが罪と思われるなら我等も一緒に………」
「いいや、俺だけは違うんだ。………今回のゆりかご事件で、俺は操られていたとしても多大な損害を与えてしまった。バルトさんやなのはにも大怪我を負わせたし、俺を助ける為にたくさんの人に迷惑をかけ、そして一番許せなかったのはゆりかご内で星達とも戦ってしまった」

なのはもバルトさんも俺を責めはしないだろう。だが、それに甘えてはいけない気がした。

「そんなの私達は気にしてないよ!!」
「そうです!!みんな、進んでお兄ちゃんを助けるのに協力してくれました!!」
「だからこそ、俺に出来る事はしようと思うんだ。そして同時にホムラの使用者として、ホムラの危険性の無さを見せたいとも思ってる」

ホムラを使う事を決めた以上、管理局員、特に上位の高官達にホムラの危険性が無い事をアピール出来るとも思っている。
そうすれば俺も何も気にせずホムラを使っていけるだろう。

「ホムラをこれからも使っていくんですか………?」
「ああ、エリスがそうホムラに言ったと思うんだ。アイツはそう言う所も気を使ってくれていそうだし」

実際にエリスがそう言ったかどうかなんて分からない。だけどそんな気がした。

「だったらやはり我等も!!我等だって海鳴市で事件を………」
「あれは闇の書事件が大きすぎて殆どの管理局員が把握していないらしい。だから時効みたいなものだし、名乗っていた名前も違うだろう?だから大丈夫だってはやてが」
「それなら僕達が自主的にレイと一緒に………」
「お前達にだってやりたい事があるだろ?その為の大学だ。俺の為にそこまでする必要は無い」

そう言うと黙って考え込んでしまう星達。

「それに嘱託の期間は1年だ。それ以上は管理局に努める気は無いし、その後は平凡に過ごすさ」
「………分かりました」

余り納得した様子ではないが、星が渋々そう呟いた。他の4人も同じような態度だ。

「でも大学はどうするの?」
「取り敢えず最初はどっちも一緒にやっていく。………だけど状況によっては退学するかな。流石に2年も留年するつもりはないから」
「レイはそれでいいのか?」
「確かに大学出た方が、将来色々と幅が広がるだろうが、別に必須って訳じゃ無い。それに俺は家族みんなでのんびり過ごせればそれでいい」

そう、俺にとってそれが第一だ。

「まあ先ずはこの身体を治すのが先だ。そろそろ戻ろう。今日はちょっと肌寒い」
「分かりました」

こうして取り敢えず家族会議は終了した。アギトを除いてだが。


しかしのちに俺は星達の行動に驚愕する事になるのだった………





















そして月日が流れ………
















「さて、いよいよですね」
「ああ」

広いスペースのある競技場の様な場所。ここは以前、初のバリアアーマーと大悟が戦った場所であり、本日、機動六課、七課のエキシビションマッチが行われる会場でもある。

「さて、お前のお手製の部隊の状態はどうなんだ?」
「みんな良いコンディションですよ。七課の方は大丈夫ですか?」
「心配ない、良い戦いが見られると思うぞ?」

と互いに牽制しあっているのは六課、七課の部隊長の2人であった。
ゆりかご事件後、互いの争うはある程度は鎮静化したのだが、関係は相変わらずで、互いに笑いながら火花を散らしている様な状況下であった。

「全く………」
「はやてちゃんおおからに………」
「済まぬな、主が………」
「いえ、お互い様ですから………」

その後ろに控えるのはリインとシグナム、そしてグレアムの娘、オーリスであった。
互いに苦労した顔で、上司の2人を見る。

『それではエキシビションマッチを始める!!』

そして少し離れた上にある観覧席からヴェリエ元帥がモニターに写り、話し始めた。
その後ろには大悟が控えている。

『その前に、ルール変更を。始めは2小隊による戦いを予定していたのだが、ゆりかご事件の折、クレインの造ったバリアアーマーが操られたのは諸君も知っているだろう。そしてそれは機動七課も例外では無い。ただ、ベーオウルブズに関してはイーグレイラボによって造られたバリアアーマーを使っていた為、難を逃れた。現在、イーグレイラボに製造、開発の依頼を出しているが、とても間に合う状態では無かった。よって、1小隊での戦闘をする事にする!!』

見ている者達に特に動揺は無かった。これは既に決められた事でもあり、一応通達されていたからだ。
そしてその続きを再び話し始めた。

『更に、今回聖王器の担い手として選ばれた佐藤加奈、バルト・ベルバインに関しては既に新人離れしているとし、不参加とさせてもらう』

この通達にバルトは納得が出来ないと暴れ、なのはとの激しい戦いに勃発していたりする。

『そして、ベーオウルブズには人数が足らない為、1人補充員を加えての試合となる』
「「「補充員?」」」

これに関してははやて達機動六課組には何も伝えられていなかった。

「どう言う事です、グレアム部隊長?」
「さして問題なかろう。それとも1人増えた位で負ける不安か?だったらそちらは残りのスターズ、ライトニングの全メンバーでの戦闘も構わん」
「ちょ!?部隊長!?」

これにはオーリスも驚き、思わず聞き返してしまった。

「随分と余裕ですね………」
「何、強力な助っ人を見つけられたからな。徹底的に潰して、その大きな態度を改めさせようと思っただけだ」

そんな挑発的な態度を取られたはやては明らかに顔が引きつっていた。

「………いいでしょう、分かりました。ですけどそちらも負けてから人数が少なかったからとか惨めな言い訳はしないでくださいね」
「ふん、いらん心配だ」

そう言って互いに言葉は交わさなくなった。

「はぁ………この様子だと既にもう通達しているのでしょう。すみませんうちの部隊長が勝手な事を………」
「まあそれはいいのだが………そちらこそ良いのか?明らかにそちらが不利な条件だが………」
「ですよね………一体部隊長は何を考えて………」

と謎が残る中、メンバー紹介になった。

『それでは、両方の部隊のメンバーを始めよう。それでは佐藤加奈一等准空尉よろしく頼む』

そう説明があると元帥の後ろから加奈が現れた。

『それでは私が元帥に代わり、紹介させて頂きます。先ず機動六課スターズ・ライトニング混合部隊。
ティアナ・ランスター一等陸士、スバル・ナカジマ一等陸士、ギンガ・ナカジマ陸曹長、エリオ・モルディアル二等陸士、有栖キャロ、ルーテシア・アルピーノ、真白雫、江口伸也。以上八名。そして次に機動七課です』
(この8人もゆりかご事件でかなり活躍しとったんや。それを聞いていない筈ないのにあの余裕………一体どんな助っ人を………)

そんな考え事をしていたはやてをよそに紹介が始まった。

『機動七課、ベーオルブズ隊長加藤桐谷、ウルフ1ボウカー・カウフマン准陸尉、ウルフ2リーガル・ジスト一等陸尉、ウルフ3リーネ・マクリティ一等陸尉、ウルフ4フィーネ・マクリティ陸曹長。そして今回追加人員として………えっ!?元帥、本気ですか!?』

思わず素で、聞いてしまった加奈に会場にどよめきが走る。

『ああ、間違いは無い。それで進めてくれ』
『わ、分かりました………皆さん失礼しました。それでは発表いたします。機動七課追加人員として嘱託魔導師の有栖零治が参加します』
「はあああああああああああああああああああ!?」

思わず身を乗り出し、大声を上げるはやて。

「おい、どうしたそんな大声を上げて」
「中将!!一体どういうことや!!」
「おい、八神部隊長、ワシの事は部隊長を付けろ」
「そんな事はどうでもええ!!零治君の事はどうなってんや!!」
「お前は上司に向かってその口はなんだ!!」
「今は同じ部隊長や!!」

「は、はやてちゃん………」
「あ、主、抑えて………」
「部隊長も………」

「「うるさい!!」」

外野の静止の声を振り切り、口喧嘩を始める2人。
2人の怒りは試合が始まるまで収まらなかった………















「聞いてねえよ!?」

さっきまで「あっちは5人、こっちは8人。桐谷さんさえ抑えれば余裕余裕~」などと調子に乗っていたエローシュだが、放送を聞いて、顔を真っ青にし、大声を上げた。

「キャロ知ってた?」
「知らなかった………」

キャロは驚いた顔で固まっていたので知らなかったことに嘘はないだろう。

「良い機会だ、どれだけレイ兄に通用するか試してやる」
「………おいエリオ、お前分かってんだろうな?」
「何がだいエローシュ?」
「何がって………昨日あれだけ言ったよな?戦闘の指揮を執るのは俺とティアナさんだ。今までみたいな勝手な行動されちゃ勝てるものも勝てなくなるんだぞ?」
「………分かってる。だけど僕が桐谷さんとレイ兄を倒す」
「お前………!!」

エローシュは怒りの形相でエリオの胸ぐらを掴んだ。

「離せよエローシュ」
「お前何1人で戦おうとしているんだ!!俺達はチームなんだぞ!?」
「だから足止めにもクロスレンジで戦える僕が桐谷さん達と戦うのが妥当なんじゃないか」
「そんなの戦況次第でいくらでも変わる!!お前の勝手な行動がチームのみんなを危険に晒すんだぞ!!」
「そうはならないよ。僕がみんなを守るから………」
「!!てめええ!!!」
「伸也君!!」

エリオを殴りそうになったエローシュを真白が止める。

「喧嘩はそこまで。もう試合が始まるわよ」

ティアナにそう言われ、エローシュもそれ以上何も言わなかった。

(………ティア、ライトニング大丈夫かな?)
(昨日の時点でエローシュがエリオに付いて何かするみたいだなら気にしなくて良いわ。それよりも私達も目の前の事に集中しましょう)
(えっ、でも何かするって………ここで負けたらはやてさんに何言われるか………)
(エローシュは既に勝ち負けを気にしてなんていないわ。それ以上にエリオをどうにかしようと思ってるみたいね。………だから今回は私達だけで何とかするしかないわ)
(………形式上はこっちが有利でも実際はかなり不利ってわけか………)

移動しながら念話で会話するティアナとスバル。
後ろではギンガと今回スターズと共に戦うキャロが険悪な雰囲気が漂うライトニングを心配そうに見ていた。

「何にせよ、私達は私達の出来る事をするわよ」


























「準備は良いか零治?」
「ああ、大丈夫だ」

桐谷の声に答え立ち上がる。こうやって表舞台で戦うのはあのゆりかご事件後初めてになる。

「連携は………」
「俺達に気を遣わなくて良い、大丈夫、これもアーベントには劣るけど、充分戦える」

リーネの質問に自信満々に答えた。そしてスカさ………ジェイルさんに貰った新たなデバイスを見つめる。

「それよりも悪いな桐谷、俺のわがままに付き合わせて」
「いいや、構わん。どちらにしても小隊の指揮はボウカーに任せようと思っていたからな。………だが、そんなに深刻なのかエリオは?」
「………ああ、今のアイツじゃ自分自身で気が付けない。だから誰かが無理矢理気づかせるしかない」
「確かに目覚ましい成長を遂げたからな………」
「だからエローシュも心配だったんだろう。アイツの思いつきには本当に驚く事ばかりだ」

今回の零治の参戦はレジアスに依頼された時には断るつもりだった。まだ試作段階で、ギリギリの時間帯で戦闘をしなくてはならなかったのと、一応病み上がりでやっと本来のカンを取り戻した時に、バリアアーマーでの戦闘は悪影響を及ぼすと思ったからだ。

しかしその後にエローシュにお願いされ、零治は参加する事に決めたのだ。

「後は俺達が負けなければ問題無し。桐谷油断するなよ?」
「お前が言うな!!」

互いに拳を当てあい、会場へと赴く。




ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!




まるでスポーツの祭典の様な観客からの歓声が俺達を出迎えてくれた。

(眩しい………)

そんな事より俺は会場に出た際に照り付けた日差しに反応し、空を見上げた。

(綺麗だ………)

本日は晴天で澄み切った青空が俺達を迎えてくれる。

(エリス………世界はまだまだ色々な問題だらけで、平凡な日常は程遠いよ………)

自分自身の事、エリオの事、クレインの事、大悟に聞かされた聖王教会の真実、そしてゆりかご事件の裏で起きていた事件、俺の周りだけでなく世界ではまだまだ俺の知らない所でも様々な事が起きている。

(それでも俺は星達家族と共に過ごす平凡な日常を目指して、これからもこの世界で生きて行くよ………)

これから先も何か大きな事件があるかもしれない。それでも俺は負けるつもりは無い。

「さあて、行くか桐谷」
「ああ」

観客席に座る星、ライ、夜美、優理、アギトの顔を見て呟く。
5人とも笑顔で手を振ってくれた。

「ふっ………」
「何だ突然?」
「いや、何でも無い」

思わず笑みが零れたがごまかしデバイスを手に取った。

「アルトアイゼン………」
「ヴァイスリッター………」

「「セットアップ!!」」

赤き鋼狼と蒼き騎士が並び、会場を圧巻させる。

「桐谷!!」
「何だ今度は!?」
「平凡な日常はまだまだ遠いな!!」
「………ふん、何だかんだお前は平凡な日常からは無縁そうだけどな」

いきなりそんな事を言った俺を不思議そうに思ったみたいだが、皮肉交じりに返してくれた。

「それでも俺は、平凡な日常を目指していくよ。大事な家族と一緒に!!」
「………ああ、それでいいだろう」

言葉にしてみるとより一層強く思える。

「行こうぜ!!」
「ああ!!」

そうして俺は戦闘開始の合図と共に駆け出したのだった…… 
 

 
後書き
最終話らしくない終わり方だなぁ………(遠い目)


先ずは6年もかけて書いて行きましたが、一応これをもって区切りとさせて頂きます。長く時間をとらせ、最後も中途半端な終わり方ですが、これで平凡な日常は終わりです。最後まで読んで下さった方々には本当に感謝しています。飽きっぽい自分がこんなに長い間、続けてこれたのはやっぱり読んでくれた人達や応援してくれた人達が居てくれた事が大きいです。

改めて本当にありがとうございました。

後は後日談として零治が言った問題点を中心に書いて行こうかと思います。因みにそれ以外も書く予定です。(IFや放置していた投稿作品)
後日談に関してはおまけみたいなものなので、ここで終わりと言った区切りはしないつもりです。なので思い出した頃にまた投稿なんて事もあるかも………

続編は書く予定は無いです。心機一転と言う事でまた新たにリリなのとは別の作品を投稿しようと思ってます。
それと近いうちにつぶやき欄に、平凡に関しての反省や、その他色々と書こうと思ってるので、良かったら見て下さい。


最後にここまで書いた文字数を………

平凡な日常(IF含め) 975,602文字
平凡な日常STS    916,312文字
合計          1,891,914文字

原稿用紙 約4729枚

と6年間で大体これ位書いてましたね………
読んでくれた方もお疲れ様でした……… 
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