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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第69話 虹色の剣

 
前書き
エイブリルフールやる余裕が無かった………




 

 
静寂が場を包んだ。
鮮やかで鋭い刀の斬撃がクレインを包み、一閃した後、時が止まったかのように2人共動かなかった。

「まさか………」

そう小さく呟き、クレインは倒れ込んだ。全身にはおびただしい斬撃の跡があり、その威力の凄さが分かる。

『これがあなたが目指していた最後の秘奥義ね。………あなたの記憶の通り出来ていたけど、そもそも出来ないからこそあなたは転移や神速を覚えて連続で繰り出そうと考えた。なのに何故今この状態であなたは斬空刃無塵衝を使うことが出来たの?』

静寂な場の空気を最初に壊したのはホムラだった。

「………正直分からない。だけど何故か出来る気がしたんだ。エリスは分かるか?」
『待って………なるほど、分かったわ。出来た理由だけど、零治があの時より魔力操作が上手になった事と、ラグナルのメモリーを圧迫していた私が解放された事により、サポートが出来た事が要因ね』
「………待ってくれ、じゃあ神速を使い連続抜刀とか………」
『必要ないわね』

エリスに淡々と言われてしまった。
御神流の修行の目的は神速を手に入れ、斬空刃無塵衝を完璧な物にするためだったのだが、そんなに難しくしなくても出来る様になった事に多少の虚しさを感じた。

まあ今までやって来た事事態は無駄では無かったのだが………

『………まあいいわ。それよりもクレインは?』

ホムラに言われ、俺も慌てて頭を切り替え、確認する。
あの攻撃を受け、立てる筈は無いだろうが、今までの事を考えると油断は出来ない。

「………心配しなくていい……………私の負けだ……………」

そんな俺達が動くのに気が付いたのか、消えそうな声でクレインが呟いた。

「もう………身体が動か……ない。身体…が自分の………物じゃないみたい……だ」

もう動く事すらままならないのか、ビクビクと身動きするだけで、その場から動けないでいた。

「さて………勝負には……負けた………けど、まだ試合は………終わって……ないよ?」
「試合だ?」
「勝利の………褒美に…良い事を……教えて………あげるよ……………」

そう言って大きく呼吸をしたクレイン。恐らく最後に全て言い切るつもりなのだろう。

「このゆりかごの中枢部はそこのモニターを操作すれば道を出現させることが出来る。それを破壊すれば、今もなお展開されているバリアーを解除でき、アンドロイド達も止まるだろう。そうすれば後は僅か残りのエネルギーで上昇する前にゆりかごを破壊すれば君達の勝ちだ」
「エリス」
『ええ!』

俺の呼び声に答えたエリスは人型に戻り、モニターへと走り出した。

「だけど、君達は選択しなければならない」
「選択………?」
「そう。……………ここで爆発と共に死ぬか、ゆりかごの本来の力を取り戻すのを見逃し、生き残るかをだ!!どちらにしても君は守れない!!自分の命も、大事な家族の未来の両方を!!!」
「何を言っている!?どう言う事だ!!」
「君がどうするか………私は楽しみにしよう………」

そう言い残し、クレインは完全に気絶した。

「クレイン、クレイン!!」

不気味な言葉を残して気絶したクレイン。クレインの言っている事の意味が全然分からない。

「そんな………」
「エリス………?」

震えながらモニターから後ずさるエリス。

『どうしたの………?』
「中枢部についてだけど、その空間を破壊した瞬間、聖王の分まで稼働していた中枢のエネルギーが爆発して、繋がっているこの部屋を巻き込み、完全に破壊してしまうわ………」
「それって………」
「これを破壊するって事は爆発に巻き込まれる事を覚悟してやらなくちゃいけないって事。………恐らくこの規模ならブラックサレナを装備して、フィールドで守っても簡単に破壊されるわね………」
「それほどの………」

先ほどのクレインの言葉、その意味がこんなに早く分かるとは思ってもいなかったが、結果として最悪の内容だった。

「いや、時限式の爆弾みたいな攻撃を部屋に設置して、また道を塞ぎ、ブラックサレナの長距離転移で皆と共に逃げれば………」
「誰がその攻撃を………?それに高濃度のAMFも展開されているし、ここはクレインが作った独自の空間よ、でたらめに転移したら何処に出られるかも分からないわ」
「だが………」
「待ってて………」

そう言ってエリスはモニターを動かし始める。

「エリス、分かるのか?」
「私は一応デバイスよ。それもかなり高性能の」

そう自身満々に答えたながら手を動かす。

「時間は………残り10分!?それに………まだ星達やバルトさん達が居るわ!!」
「星達は今どのあたりに居るんだ!?」
「やっと中間地点を抜けて、外へと向かっているわね………だけど今のペースじゃ間に合わない………」
「そんな………」

出られないとなると例えゆりかごの中枢部を破壊しても大悟の攻撃に巻き込まれてしまう。

「エリス、何か方法は無いか………?」
「ちょっと待って……………うん!こっちから操作して強制転移する事が出来そう!!」
「本当か!?」
「………うん、大丈夫!!クレイン、このモニターを敵に弄られる事は無いと思っていたのか、セーフティも何も無かったから直ぐに出来るわ。………ただし一気に全員は無理ね。3人ずつ位で順番に転移させなきゃいけないみたい、だけどギリギリ間に合うかも………」
「エリス、中枢部への道と皆の転移すぐやってくれ!!」
「分かったわ!!」

そう返事をして数十秒、何も無かった壁に通路が出現した。

「これか………」

ホムラを持ち、警戒しながら奥へ進む。クレインはああ言っていたが罠があってもおかしくはない。

「これが………」

奥へ進むと部屋全体が赤く光った部屋に着いた。その中心にはどっしりと構えたエンジンらしき物がある。

「熱気が凄い………」
『こんな臨界ギリギリまで稼働しているなんて……!!確かに今の状態で破壊したら隣の部屋ごと消しかねないわね………』
「破壊しなくても、さっきのモニターで止めることは出来ないのか!?」
『ゆりかごが…正常に稼動しているのであればそれも可能でしょうけど、無理矢理聖王を止めた影響で、自動防衛モードに変わっているわ』
「自動防衛モード?」
『そう。これが厄介で、1度こうなってしまうと元に戻るまで誰の命令も受け付けないの。不足したエネルギーを補う為に月へ向かい、その後、周辺にある物を消し去る。ここまでやってやっと安全と認識して元の状態に戻るの』
「………って事は」
『止めないとミッドチルダ周辺全て消し去るでしょうね………』

どちらにしてもここを破壊しないかぎりはどうしようも無いのがハッキリと分かった。

「やっぱり転移で逃げるのは無理か?」
『無理ね、間に合わないわ』

確認でホムラに聞いたが、やはり無理みたいだ。

「となれば………」

やはり覚悟を決めなくてはならないようだ………




















『皆、聞こえる!?』
「エリス!?」

不意に通路で放送が聞こえ、その主はエリスの声だった。

「エリス?誰だそいつは………?」
「後で説明するからちゃんと話を聞いてて」
「お、おう………」

ライに注意され、思わず言われるがままになってしまうバルト。

「レイは無事なのか!?」

夜美にしては珍しい焦った口調で問いかけた。

『ええ。ボロボロになりながらも見事にクレインを倒したわ』
「レイ………」

涙目になりながら無事であった事に安堵する優理。他の3人も同じだ。

『だけど、もう時間がないわ。星達がこのまま外へ出ようと進んでも時間切れになるわ、だから今からこちらから操作して出口付近に転移するわ』
「待ってください!!中枢部は?」
『今私達の部屋の付近にあるわ。だから心配しないで』
「ねえエリスさん、桐谷君もそこに居るの………?」

有栖家の面々が次々と質問していく中、なのはが遠慮がちに質問した。

『ええ。負傷しているけど大丈夫よ』
「あの………ドクターは……?」

なのはに続いてか、黙っていたイクトも質問した。

『あなたがイクトね。裏切ったとクレインが言っていたけど本当だったのね………大丈夫、ダメージが大きくて気絶しているけど死んではいないわ』
「そうですか………」

複雑な顔でそう呟くイクト。

「イクト、この際無事に帰ったらちゃんとクレインと話してみたらどうだ?」
「えっ?」
「あんな録音じゃなく、面と向かってちゃんと話すんだ。全てスッキリさせとけ」
「……………はい!」

バルトに言われ、少し迷ったイクトだったが、意を決したのかハッキリと顔を上げて返事をした。

『時間もないし、転移を始めるわ。終わったら真っ直ぐ進んで、直ぐに出口が見える筈だから』

そうエリスが説明した後、バルトとヴィヴィオ、なのはに光の柱が出現した。

「これは………!!」
「凄い!!」

とヴィヴィオがはしゃいだ瞬間、2人は転移させられ、なのはも一緒のタイミングで転移した。

『それじゃあどんどん行くわよ』









「………」
『それで……良いのね?』
「ああ、まだ動ける俺がやるしかないだろ。ホムラは別に付き合わなくて良いんだぞ?」
『私にも責任があるわ、最後まで付き合わさせてもらうつもりよ』

一旦先程の部屋に戻る途中、ホムラと話し合った。

「エリス終わったか?」
「ええ。……そっちはどうだった?」
『クレインの言う通りね。中枢部を破壊したらこの部屋ごと消滅するでしょう。止めるにしても時間が無いのだから、誰かが残らなければならないでしょうね』
「そう………」

予想はしていたようだが、残念そうに俯くエリス。

「だから俺が残る。ブラックサレナになってフィールドを張り、耐え切る。これしかないだろう」
「零治、耐えきれないわ。それに今あなたは普通に動いているけど動いている事すら奇跡に近いのよ」
「だが俺にしか出来ない」

「………だったら俺がやる」

そう声を掛けてきたのは大怪我をして意識を失っていた桐谷だった。

「桐谷!?いくら応急処置したといってもお前は重傷なんだぞ!!」
「そうだよ桐谷!!」

当然傍で処置をしていたアギトも反対した。

「それはお前も同じものだろ………だったらまだ俺の方がマシだ」
「だがお前には自身を守る手段が無いだろうが!死ぬつもりか!!」
「アルトアイゼンの装甲なら耐えきれる」
「んなわけないだろう………」

いつもの桐谷らしくない発言に頭が痛くなってきた。

「冷静になれ桐谷、お前じゃ………」
「お前こそ何を考えている!!今度こそ星達を不幸にさせるつもりか!!!」

いきなり怒鳴られてビクンと身体が反応してしまった。

「不幸って………」
「お前は操られていたから分からないだろうが、お前が失踪してから星達がどんな様子だったかお前は本当に分かってるのか!?星達だけじゃない!!ノーヴェやセイン、ウェンディ、加奈やみんなも!!全員が皆、悲しみの中、僅かな希望を持ってお前を救おうとしたんだ!!!それをまたお前は………」
「だが、桐谷………」
「もう、お前は頑張らなくていい、お前には帰りを待っている家族も居るんだ………」
「桐谷………」

桐谷の優しい気持ちも分かる。だけど一つ、桐谷自身で気づいていない事がある。

「それはお前も同じだろ。桐谷も桐谷の帰りを待ってくれている人達がいるだろ?」
「俺は………」
「クレインが桐谷にステークを構えた時、桐谷は一度諦めた顔したよな?………だけどあの時のお前はハッキリと自分にも守りたい奴が居るって言った。お前は死ぬのを諦めなかったよな?」
「だが………」
「無理をするな、ブラックサレナは伊達じゃない………」

そう言うと桐谷は押し黙った。桐谷自身も相当な覚悟を持って言ってくれたのだろう。

「………だったら俺がやる」

その直後、不意に声をかけられ振り向くと、万全ではないが、痛む身体を抑えながら歩いてくるバルトマンが居た。

「バルトマン、大丈夫なのか?」
「お前こそ。………俺と戦った時よりも強くなったな」
「そうか?だったらまたお前が暴れても難なく抑えられるな」
「バカ言うな………誰が二度も負けるかよ………」

互いに皮肉を言い合い、落ち着く。バルトマンの言いたい事は分かっている。

「零治、俺が………「却下」何だと………?」
「俺はバルトさんと約束したんだ。バルトマンをカリムさんと会わせるって」
「あの野郎………だったらその約束は既に叶った」
「いいや。どうせバルトマンの事だろうからちゃんとゆっくり話せてないんだろ?」
「………いいや、あれくらいでちょうど良い」
「いいや良くない」

そう言って俺は笑顔でバルトマンの腹を殴った。

「ぐうっ!?零治、テメエ………!!」

まだ癒えていない重傷の身体で無理をしたからだろうか、腹を抑えて蹲りながらこちらを睨むバルトマン。

「ビビってないで帰ってのんびり仲良く話してなバルトマン。尤も脳筋のバルトマンには罰ゲームみたいだろうけどな」

苦しむバルトマンは悔しそうに更に鋭く睨むが全くもって恐くない。

「零治、私も!!私とユニゾンすれば零治の負担も………」
「アギトとユニゾンしたらブラックサレナの防御力は通常よりも下がる。そっちの方が生存確率は引くだろう。だからそれは却下だ」
「でも………!!」
「大丈夫だ、確率は低いだろうが、0じゃない。必ずみんなの所へ帰るよ」

そう、先ほどのクレインの戦いだって、もうダメだと思いながらも今の様な状態になった。
諦めなければ奇跡は起こる………!!

「エリス、ブラックサレナをセットアップしたら桐谷とバルトマン、そしてアギトを転移させる。その後、中枢を破壊するぞ」
「………分かったわ零治」

そう言って手を差し出すエリス。
俺はその手を何の疑いも持たず取った。

「エリス、セット………」
「ごめん零治」
「えっ!?」

その後、不意に俺の身体全身に電流が流れた。

「なっ!?」

微弱な電流であったが、全身に流れた後、一気に身体の調子がおかしくなる。

「エ……リス………?」
「ありがとう、私を許してくれて。だから………」

急激に力が抜けていき、視界もどんどん暗くなっていく。痛みは無かったが疲労感と脱力感が遅い、その場に崩れる様に倒れる。

「あ………あ………」
「お休み零治………」

優しい笑顔を見た瞬間、俺は意識を失った………


















「エリス!?」
「お前、何を………!!」

いきなり崩れ落ちる零治を見て、2人は声を荒げた。

「零治!!何をしてんだよエリス!!」

アギトが慌てて駆け寄り揺するがピクリとも動かない。

「零治には眠ってもらったの。既に限界を超えて無理をしたんだもの、2、3日は絶対に起きないでしょうね………」
「お前何を考えて………」

「私がこのゆりかごの中枢部を破壊します」

桐谷の問いの途中でエリスがハッキリとそう答えた。

「エリス分かってるのか!?そんな事したらエリスが………」
「分かってるわアギト。だけどこうするしかもう手は無い」
「だが、お前は………」
「私はデバイスよ?人間じゃないわ。破損すれば直せる」
「そんな生易しい爆発だと本気で考えているのか?」

桐谷の言葉に何も返せないエリス。

「だけどもう決めた事なの。どちらにしても誰かが犠牲にならなくちゃいけない。だったら目覚めたばかりで知っている人の少ない私が妥当でしょ?」
「妥当って………」
「お前は良いのか?」

桐谷が苦々しく呟く中、バルトマンが神妙な顔で聞いて来た。

「私は良いの。心残りだったことをやり終えて、それも零治は受け入れてくれたから………」
「………そうか」

満足そうな顔で話すエリスにバルトマンはそう答えた。

「バルトマン!?お前何を考えて………」
「こいつの言っている事は間違ってはいない。未だに信じられないが、こいつは零治のデバイスであり、人じゃねえ。だったらこの場合適任だろ」
「お前………!!」
「それに!!こいつの覚悟は本物だ。こいつの事は俺は全く知らない。もしかしたらお前がそこまで気に掛けるほど零治の大事な人なのかもしれないな。………でも、だからこそコイツは決めたんだ」
「ええ、私はここで生きる零治の世界を守ってあげたい。そして幸せになってほしい。それが私の………いえ、デバイスとしてマスターへの想い。桐谷、分かって………」
「くっ………!!!」

拳を握りしめ、悔しそうに唸る桐谷。

「………ちょっとのんびり話し過ぎたわね、もう時間が無いわ。今から直ぐに4人を転送するわ。その後零治とクレインを連れて急いで脱出して!!」
「残り時間は?」
「………5分でこのゆりかごから逃げて」
「人を担いで5分か………距離は?」
「………飛んで5分位」
「ギリギリだな………」

但し、人を担ぐ上にバルトマンも桐谷も応急処置を行ったとはいえ、満身創痍である。

「それ以上はもう無理。直ぐに神崎大悟の一撃が来るわ。それまでに何としても逃げて」
「………分かった」

そう言って桐谷は零治を担いだ。

「俺は多分エリスの決断を認められないと思う。零治に何を言ってやれば良いかも思いつかない。………でも多分、零治なら今のエリスこう言うと思う」

そう言って一呼吸置く桐谷。

「エリス、今度はお前が幸せになってくれ」

その一言にエリスは驚いた顔で少し固まってしまった。

「俺の方はOKだ、ユニゾンデバイスのガキンチョもしっかり零治にしがみついておけよ?」
「分かってる!!ガキンチョ言うな!!」

「そ、それでは行きます」

我に返ったエリスは端末を操作し、桐谷達は光に包まれる。

「ん?」

その瞬間だった。

「レミエル!?」

勝手に人型に変わったレミエルが光から出たのだ。

「何をしているレミエル!!」
「マスター、ラグナル………いえ、エリスだけじゃあの中枢を破壊できるとは思えないので私も手助けする事にしましたわ」
「おい、何を勝手に………」
「今まで楽しかったです、私もマスターの幸せを願っています」
「レミエ………」

最後まで名前を呼べず、桐谷は転移されてしまった。

「レミエル、あなた………」
「ラグナル……いえ、エリスでしたね。どうせあなたは自身を自爆させて破壊するとか考えていると思うけれど、もし強固な造りで、完全に破壊しきれなかったらどうするつもりだったの?」
「それは………い、いえ、そんな事より………」
「そんな事じゃないわ。私のアルトアイゼンのステークであれば、例え強固でも突き続ければ必ず貫通出来る。リーゼは無理でもアルトアイゼンなら止まってるあの装置を破壊する事くらい造作も無いわよね?」
「え、ええそうだけど………でも、いいの本当に………?」
「………私も自分のマスターの幸せを願っているの。だからこそ私も守らせてもらうわ」
「レミエル………分かったわ協力して頂戴」

そう言うと2人は中枢部への通路へ向かい歩き出す。

「後は神崎大悟の攻撃の威力次第………頼むわよエース・オブ・エース………」






 












「お姉ちゃん!!!」
「キャロ!!」

ゆりかごを出た星達を迎えたのはヴォルテールに乗ったキャロだった。

「この龍は………!!」
「あの時の龍か!!」

星達3人はヴォールテールを見た事があったが、知らない優理や、バルトさん達は驚きに戸惑っていた。

「これほどの龍を召喚出来たのか………」
「キャロ凄い………」
「キャロカッコいい!!!」

「あ、ありがとう………」

大人達が驚く中、ヴィヴィオだけが目をキラキラと光らせてヴォルテールの姿に見とれていた。

「それよりお兄ちゃんは!?」
「レイは無事助け出せました。その後クレインとの戦闘になったみたいですが、それにも勝ち、後に桐谷と共に脱出すると思います」
「本当に!?………良かった、お兄ちゃん………」

涙を浮かばせながら心から喜びを噛みしめるキャロ。

「それじゃあ星、僕が大悟の所に説明しにいくね」
「お願いします、ライ」
「うん!!」

そう返事をしたライは一足先に飛んで行った………
















「はやて!!」
「来たんか!?」

フェイトの呼び声にはやてはいち早く反応した。

「星達とバルトさん達だ!!ヴィヴィオちゃんも連れてるよ!!!」
「そうか、上手くいったんやな…………」

「はやて!!」

そんな中、スプライトフォームの姿で高速で飛んできた。

「ライちゃんお帰り!!」
「はやてもみんなもお疲れ様!!中での戦闘はバルトさんはヴィヴィオを連れ戻したし、クレインはレイが倒したよ。それでもう時間が無いからって、戦闘していた部屋の端末を動かして、先に僕達は入口近くまで転移させてもらったの」
「クレインの様子は………?」

はやてが質問するよりも早く、エローシュが割り込む形で聞いて来た。
少々不機嫌になるが、聞きたい事は同じだったので、話そうとした言葉は飲み込んだ。

「分からない。時間が迫ってるからって必要最低限の言葉だけ伝えられて転移させられてきたから………それで大悟に伝言があるの」
「大悟に?」

大悟が反応する代わりに加奈が反応した。大悟は目を瞑り、微動だにせず集中していた。

「中で爆発があると思うからそれを確認したら攻撃してだって」
「………了解した」

この時を待っていたかのように目をパチリと開いた大悟は上空にジルフィスを高々と掲げた。

「ちょっ!?まだその爆発は起きてないでしょ!!」
「………エローシュ、残りは?」
「………後4分切りました」
「時間ギリギリまで待つが、それでも爆発が起きなくても攻撃をする。例え強力なバリアーがあったとしても必ず止めて見せる………!!今まで俺を守ってくれてみんなの分の想いをこの一撃に込める!!」

そう宣言すると集束していた魔力が一気にジルフィスにへと放出されていく。そしてその魔力をそのまま纏っていきジルフィスは段々と伸びていった。

『!?』
「何これ………?」

その刃は留まるところを知らず、どんどん伸びていく。既に巨大ロボットが扱うような大剣へと姿を変えているが、それでもまだ伸び続けていた。

「どれだけの魔力を集束したんだ………」
「あれだけ質量が大きいのにその密度も濃い。これがSSSランクの魔力………」

その光景に流石のトーレも言葉を失い、その隣のティーダにも冷や汗が流れた。
仲間である彼等でも戦慄するそジルディスの大剣。

「これに一番合う名前は決めているんだ」
「何をいきなり………」
「約束された勝利の剣。技名は真似だけど、これでこの戦いに終止符を打つ」
「大悟………」

そう言う大悟だが、その顔は青白く、限界まで魔力を集束し、放出したのが加奈に分かった。

「全く………」

そう呟いた加奈は大悟の横に並び、大悟の手の上から剣を握った。

「加奈?」
「そんな状態じゃ満足に剣を振るえないでしょ?気休めかもしれないけど………キュア!」

優しい光が大悟を優しく包み込む。

「これは…………」
「一応傷を治す魔法だから疲労にまで影響を及ぼすかは分からないけど………少しでも楽になった?」
「ああ、ありがとう加奈!」

そう元気よくお礼を言った大悟は再度ゆりかごへと目を向けた。

「零治、早くしろ………」

ゆりかごを見て大悟は小さく呟いたのだった…………

















「残り2分切ったわ」
「じゃあ私達も準備しましょう」

モニターで様子を確認するのを止め、隣の部屋へ移動する2人。

「ねえレミエル」
「………何よ?」
「あなたってもしかして、私と同じ様な………」

「………さあ準備をしましょう」

エリスの質問に答えるつもりは無いのか、無視してエリスの手を取るレミエル。

「それじゃあいくわよ」

その言葉の後、レミエルは光に包まれ、エリスに赤い装甲が纏われた。

「うっ、重い………!!」
『それぐらい耐えなさい。アルトアイゼンに搭載されている実弾を使えば魔力が無いあなたでも使えるし、AMFに包まれたこの部屋でも攻撃できるでしょう。………むしろこの手以外でどうやって破壊する気だったのか不思議なくらいだわ。……まあそれでも実弾の全てが通るかは分からないわ。だからステークで中枢部に亀裂を入れてクレイモアで全弾発射。………これで行きましょう』
「分かったわ」

重々しく一歩一歩進み、中枢部の中心へと向かっていく。

「意外だったわ」
『何が?』
「あなたってだらけている印象しかなかったからこういう姿は意外で………」
『一応私だってデバイスの誇りがあるわ。マスターの為に力を尽くすのがデバイスでしょ?』
「そう…ね………」

この時、エリスは無駄にデバイスと強調したレミエルをおかしいと思ったが、口に出す事は無かった。

『さあ、後1分切ったわ』
「………それじゃあやりましょうか」

バンカーを構え、しっかりと狙いを定める。

「20秒を切ったら始めるわ」
『了解。50秒前……49…48…47…」

それからレミエルはゆっくりとカウントを数え始める。

(これで私のラグナルとしての人生も終了かぁ………)

神様との話から今日まであった様々な出来事が走馬灯の様にエリスの頭の中を流れていく。

(本当に色々あったな………一番零治が苦しいときに手を差し出せなかった時は本当に辛かったけど………結果的に零治にとって最高の人達との絆を深められた。ちょっと嫉妬しちゃうけど本当に良かった………)

それこそが偽りの無いエリスの本心であった。

(あの時に、私も孝介も死んでいなかったらこんな生活が待っていたのかしら?……………ふぅ、駄目ね私。結局未練があるみたいに思い返して………)

そう心の中で苦笑いする。

『30………』
「みんなで幸せに………零治。そしてあなたが望む平凡だけど幸せなそんな生活を私も遠くから見守ってるから………」
『22……21……20!!』
「さようなら零治!!!」

そう叫ぶと共にステークを勢いよく突いたのだった………















「桐谷、立ち止まるな!!」
「くっ……!!」

互いにバルトマンがクレインを、桐谷が零治を担ぎ、出口へ向かって飛ぶ。限界の身体ながら懸命に進んだ。

「あと何分だ!?」
「あと1分!!」
「ちっ、くそっ!!」

アギトの言葉に舌打ちをしつつ、叫ぶ。
もう時間は残されておらず、目の前にやっと外の光が見えてきた程度の距離。今の状態じゃ間に合わない距離だ。

「こうなりゃヤケだ!!桐谷俺に掴まれ!!」
「な、何を……!?」

桐谷に有無を言わせず、自分の服をしっかりと掴ませたバルトマン。

「はあああああ!!!」

雷を帯び、自身の身体能力を向上させる。

「雷神化………!?」
「もどきみたいなもんだ。今の俺じゃ完全には無理だ。これでもかなり無理してるからな。………さて、しっかりと零治を掴んでろよ!!」
「おおっ!?」

そう言った後、猛スピードで駆け出すバルトマン。

「アギト、手を離すなよ!!!」
「わ、分かってる!!!」

ぐんぐん距離が縮まっていく。

「後20秒!!」

もう目の前には入口が見えていた。
その瞬間、大きな爆発が奥の方から響いて来た。

「爆発!?」
「ヤバい!!バルトマン急げ!!!」
「はぁ?………って何だこのバカみたいな魔力は!!!?」


















「後30秒!!」

フェイトのカウントと共に、大悟の周りに居るメンバーにも緊張が走る。

「レイ達はまだですか!?」
「まだ確認出来てないです」
「シグナム、キャロをさがらせてな!!」
「分かりました。キャロ下がれ!!他の隊員もゆりかごから即時離れろ!!」
「エローシュ、地上班の退避は!?」
「既に終わってます」

様々な言葉が飛び交う中、大悟は不思議といつも以上に集中出来ていた。

(不思議だな………今までに使った事の無い魔力を使っているからかいつもと感覚が違ってる。………けれどむしろ良い)

「24……23……22……21……20!!」

フェイトの20のカウントと共にゆりかご内部から外にまで聞こえる大きな爆発音が鳴り響いた。

「大悟!!」
「待ってレイ達がまだ!!」
「零治達なら大丈夫!!きっとだ!!だから………これで最後だ!!!エクス……カリバー!!!!」

上空に大きく伸ばした長く巨大な大剣をそのまま振り下ろす。

空の雲を裂き、現れた大剣はゆりかごをそのまま両断出来るほどの大きさになっており、それを扱う大悟も必死の形相で振り下ろしていた。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

バリアーの無くなったゆりかごに巨大な大剣が直撃する。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

髪が逆立ち、体中の血管が湧き出るほどの力を籠め、ゆりかごを力任せに斬ろうとする。
刃は徐々にゆりかごの装甲を斬り裂いて行く。上昇を止める事は出来たが、そこから膠着状態になってしまい、予断を許さない。

「そんな………中枢部を破壊して、聖王も居ないのにまだ動くんか………」
「負ける………もんか!!!」

そんな中、更に気合を込める。

「大悟!!」

そんな大悟を後ろから支える加奈。

「加奈!!!」
「私も!!!!はあああああああ!!!!」

加奈の魔力をジルフィスに送り、更に強度を増していくジルフィス。

「他人の魔力も使えるんか!?せやったら!!」

加奈に続いて、はやても大悟を後ろから支えた。

「我達も!!」
「テスタロッサ!!」
「うん!!」
「バルトさん!!」
「なのは、お前は下がってろ!!」
「なのはお姉ちゃんも分は私が送るよ!!」

はやての行動に続き、有栖家の面々、フェイトにシグナム、バルトにヴィヴィオと次々に大悟に魔力を送っていく。

「俺も!!」
「私も!!」

そしてその動きはその場にいた魔導師全員が動いていた。

(これほどの力………皆、明日を望んで、この世界でこれからも生きて行く事を願っているんだ………)

その事に大悟は心から嬉しく思い、力が湧いてくる。

「みんなの力をこの剣に乗せて!!!」

ジルフィスの大剣が虹色に輝く。

「セイグリッド………セイバー!!!!」

その技名と共に、斬り裂いていく。

「セイグリッド………バースト………」

そして中心あたりで止め、虹色に光る刃を爆散させたのだった……… 
 

 
後書き
次で最終話です。

一足先に。
ここまで読んで頂きありがとうございます。最終話もなるべく早く投稿しようと思いますので最後までよろしくお願いします!! 
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