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プロメテウス

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第二章

「そう思うとな」
「しかしこのままでは」
「人は、か」
「火を通していないものばかりを食べ」
 そして、というのだ。
「ものを造ることも温もりもです」
「全て知らずにか」
「獣と変わらぬ生き方をするまでです」
「それは私も思うが」
「火の危うさを考えますと」
「どうかと思ってな」
 だから躊躇するというのだ、ゼウスのその躊躇は強く決断は下らなかった。それでプロメテウスにこう言うのだった。
「若しもだ」
「若しもとは」
「人が火を危うい方よりも恵に使うことが多ければだ」
「その時は、ですか」
「人に火を与えよう」
 こう言ったのだった。
「その時はな」
「左様ですか」
「これでどうだ」
 これがゼウスの考えだった。
「人に火を与える条件はな」
「そうですか、では」
「それではか」
「一つ試してみましょう」
 プロメテウスもゼウスに提案した。
「ある人の家族に火を教えてです」
「そして使わせてか」
「恵に使う方が多ければ」
「その場合にか」
「人に火を与えるということで」
「そうだな、そうしてわかればな」
 その時はとだ、ゼウスも言った。
「渡そう」
「それでは」
「ではだ」
 ここまで話してだ、そしてだった。
 ゼウスはプロメテウスにだ、こうも言った。
「食べるか」
「その火を通した肉を」
「実はそなたの肉も焼いた」
 それで、というのだ。
「共に食しよう」
「有り難きお言葉」
「ネクタルも出す」 
 神の飲むその飲みものもというのだ。
「そちらも飲むか」
「ではそちらも」
「共にな。楽しもう」 
 その火を通してさらに美味になった肉と神の飲みものをというのだ、そうしたことを話してそのうえでだった。
 プロメテウスは肉を口にしてこうゼウスに言った。
「やはり焼いた肉は美味いですな」
「極めてな」
「この味を楽しめることは幸福です」 
 この幸福を人にも与えたいとあらためて思ったのだった、そしてだった。
 彼は人間のある一家を訪れた、その家族にだ。
 まずはその手に燃え上がる赤いものを見せてそのうえでこう言った。
「これは何かわかるだろうか」
「いえ、それは」
「何でしょうか」
「はじめて見ますが」
「何でしょうか」
「これは火というものだ」
 火の存在から教えたのだった。
「あらゆることに使える」
「ではその使い方は」
「どういったものでしょうか」
「それはだ」
 ここでだ、プロメテウスはその火の使い方をその家族に示してみせた。そしてそれから彼等にこう言ったのだった。
「これをそなた達に渡す」
「その様なお力を」
「私達にですか」
「教えて頂けるのですか」
「何と有り難い」
「これで美味いものを口にしものを造り温まるのだ」
 微笑んで言うプロメテウスだった。 
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