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邪剣

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8部分:第八章


第八章

「そして持ってはいけないものだ」
「そうだな。それはな」
「確かにな」
「持てばそれだけで破滅だ」
 自分の言葉に頷く二人に対してまた述べた。
「それだけでな」
「その通りだ。それでだ」
「うむ」
 クリスの言葉に対して応える。
「どうするのだ?この剣は」
「やはりここにこのまま置いておくのか」
「そのつもりだ」
 ホークムーンは二人の言葉にこう答えた。
「持てばそれだけで身を滅ぼす邪剣。世に出すべきものではない」
「その通りだ。では永遠にここで」
「眠ったままか」
「また封印をしておく」
 ホークムーンは述べた。
「今度は破られた先のものよりも遥かに強い封印をな」
「それがいい」
「このようなものは何があっても世に出るべきではない」
「だからだ。では洞窟の入り口にまた封印をしておく」
「ああ、わかった」
「それではな」
「まずはここを去ろう」
 封印をすると決めてから二人に告げてきた。
「それを施すのはそれからだ」
「よし」
「それならな」
「願わくばこの剣が二度と世に出んことを」
 ホークムーンはアーノルド達と共に剣を背にしたところでこう呟いた。
「永遠にな」
「邪剣は世に出てはならないな」
「うむ。何があろうともな」
 アーノルドもクリスも彼と同じ意見になっていた。やはり彼と同じくその剣を背にしている。目だけを剣に向けて呟いているのだった。
「さて、それでだ」
 ホークムーンはその二人に対してまた言ってきた。
「洞窟を出て封印を施したならば謝礼の話だが」
「ああ、それか」
「忘れていたよ」
「できればこのまま忘れていてもいいのだがな」
「それはできない相談だな」
「僕もだ」
 流石に二人はそれは否定した。やはり報酬なくして冒険者なぞやってはいられないからだ。彼等とてただ剣や魔法を持っているわけではないのだから。
「だからだ。ここは」
「約束どおり黄金や宝玉をだな」
「わかっている。それに森を無事に出させてやる」
「ほう、気前がいいな」
「謝礼だけではなくか」
「龍は気前のいい生き物だ」
 ここで胸を張って言うホークムーンだった。
「それは何があっても覚えておくようにな」
「そうか。それじゃあ謝礼もたんまりとな」
「もらうとするか」
 こうしてホークムーンから今回の謝礼をしっかりと貰うことにした二人であった。だがそれでも思うことは思わずにいられなかった。
「しかし。今回はな」
「そうだな」
 ホークムーンと共に洞窟の出口に向かいながら二人で話す。
「ああいう結果になるなんてな」
「思いもしなかったな」
「人は過ぎた力を持ってはならない」
 ここでホークムーンが言った。
「人だけではないがな。そういうことだな」
「そうか。それであいつは破滅したのか」
「そういうことになる」
 ホークムーンは達観した深い叡智を感じさせる声で述べた。
「過ぎた力を求めてな」
「結局のところそうか。もっともあいつはこれまでの行いが行いだったからな」
「ああ、それはあるな」
 クリスはアーノルドのその言葉に頷いた。
「報いを受けたというのもあるな」
「それでも。あの剣は人が持つものじゃない」
 このことははっきりと言うアーノルドだった。
「絶対にな」
「そうだな。願わくば二度と誰かが手にすることがないようにな」
「祈るとするか」
「後はわしに任せておけ」
 ホークムーンは二人のその言葉に応えて述べてきた。
「もう決して外には出ないようにしておくからな」
 最後に彼がこう言って洞窟を出て後は封印を施し謝礼をして終わりだった。彼等は何もしないで済んだが何かを見たのだった。邪剣は幸いにして世に出て騒ぎを起こすことはなかった。しかしその恐ろしさは彼等の目にはっきりと焼き付けさせその彼等の口から恐ろしさを世に広く伝えることになった。以後この剣を手に入れようと考える者もその為に森に向かう者もいなくなってしまったという。


邪剣   完


                 2008・12・25
 
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