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ヴォルデモート卿の相棒

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9と3/4番線からの旅・後編

 
前書き
ちょっと詰め込み過ぎたかな…… 

 
しばらく談笑しているうちに昼頃となり、車内販売の人がやってくると、ハリーは売っている品物(なぜかほとんど甘味)を全て少しずつ大人買いした。好きに使えるお金を持ったことが初めてなことと、魔法界の食べ物に強い興味を持っていたことがこの状況を生み出したようだ。もっとも、少しずつ買っている辺りやりくりは心得ているらしい。
ハリーが買い込んだ物で机を占領する様子をロンは目を皿のようにして眺めていた。

「お腹空いているの?」
「ペコペコだよ」

そんなハリーに対してロンは母親手製のサンドイッチ-大家族のため大量に作らなければならないため、質を高めている余裕はない-を取り出したが、ハリーが購入した物を分けてくれたので、結局ほったらかしになった。

「君達も一緒に食べようよ」
「気持ちだけもらっとく。昼時に甘い物食べんの体に悪いしな」
「それにルーチェさんの弁当すっごく美味しいから」

ハリーにそう薦められたが二人はやんわりと断り、懐から弁当を取り出す。

「それ、何?」
「ルーチェさん特製幕の内弁当だよ~」
「あの人最近日本食ブームらしいからな」

ルーチェはイタリア出身でとにかく食にうるさい。イギリスに移住し、世界一不味いと揶揄され続けるイギリス料理に絶望して以来、いつも食卓に世界の料理を取り込むことに腐心している。
粗食が基本のシスターとしてそれでいいのかと三人は常々思っているが、へそを曲げられて食事が質素な物になっても困るので口出ししないことが暗黙の了解である。

「……すごく美味しそうだね」
「……うん」
「食いたいんならやるよ、ほら」

以外と食い意地の張った二人に対して、クレスはジークの懐から同じ弁当を取り出す。

「……いいの? それ、彼の弁当じゃ…」
「どうせホグワーツに着くまで起きねーよ、こいつは」
「魔法の研究に没頭し過ぎてご飯抜くのもしょっちゅうだしね」

そんな感じで昼食を済ませた後、蛙チョコレート-蛙の形をしたチョコレート。もちろん動く。有名な魔法使いカード付き-と戯れたり、百味ビーンズ-ルーチェが死ぬほど嫌っているお菓子。まあ食べ物で遊んでいるようにしか見えないから仕方がない-に一喜一憂したりしていると、コンパートメントに丸顔の男の子が泣きべそをかいて入ってきた。

「ごめんね、僕のヒキガエルを見かけなかった?」

 4人が首を横に振ると、男の子は自分から逃げてばかりいると言って、とうとう本格的に泣きだした。

「大丈夫よ。そんなに落ち込まないで」
「きっと出てくるよ」
「お前も男ならシャンとしろ、途方に暮れてもしょうがねぇぞ」

ハリー、アレク、クレスはそれぞれ別方向から男の子を励ました。

「うん。もし見かけたら……」
男の子はしょげかえってそう言うとコンパートメントから出ていった。

「…やっぱり私、探すの手伝って-」
「やめとけアレク。ペットの管理ぐらい一人でできねぇようじゃ、この先一番困るのはあいつだ」
「そうだけど……でも……」
「優しいのは結構だが、それがいつも相手のためになるとは思うな」
「……うん」

アレクは悲しそうな表情をしたままだったが、ひとまず納得したらしい。

「どうしてそんなこと気にするのかなぁ。僕がヒキガエルなんか持ってたら、なるべく早くなくしちゃいたいけどな。もっとも、僕だってスキャバーズを持ってきたんだから人のことは言えないけどね」

それからロンはスキャバーズを黄色にしようと思い立ち、トランクを引っ掻き回してくたびれた杖を取り出した。
しかし、ロンが杖を振り上げたとたん、またコンパートメントの戸が開いた。さっきの男の子が、今度は女の子を連れて現れた。女の子はすでにホグワーツ・ローブに着替えている。

「誰かヒキガエルを見なかった? ネビルのがいなくなったの」

なんとなく威張った話し方をする女の子だ。栗色の髪がフサフサして、ちょっと大きめの前歯が特徴的だ。なぜかその女の子を見た途端、クレスの顔つきがやや険しくなった。ついさっき見なかったと言った、とロンが呆れ気味に答えたが、その女の子の興味は既にロンの杖に向いていた。

「あら、魔法をかけるの? それじゃ、見せてもらうわ」と女の子が座り込んだので、ロンはわざとらしく咳払いしてから呪文を唱えた。

「お陽さま、雛菊、とろけたバタ~。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ!」







………………………………………………シーン……………………………………………



しかし何も起こらなかった。


「その呪文、間違ってないの?」
(だろうな……)
(そうだろうね……)

女の子の疑問にクレスとアレクは心の中で肯定する。

「まあ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試してみたことがあるけど、みんなうまくいったわ。私の家族に魔法族は誰もいないの。だから、手紙をもらった時、驚いたわ。でももちろん嬉しかったわ。だって、最高の魔法学校だって聞いているもの……教科書はもちろん、全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

教科書全暗記の辺りで、ハリーとロンは唖然とし、アレクは純粋に凄いと感嘆し、クレスは心底つまらなそうな表情をした。

「(あー、やっぱりな……)クレスレイ・エシャロットだ」
「私はアレクサンドラ・マッキノン。よろしくね♪」
「僕、ロン・ウィーズリー」
「ハリー・ポッター」
「ほんとに? 私もちろんあなたのこと全部知っているわ。いくつかの参考書に出ていたから」
「僕が?」

ハーマイオニーの言ったことにハリーはさらに唖然とした。数日前まで魔法界の存在すら知らなかった人間が、自分が本に載っていると言われてもピンとこないだろう。

「まあ、知らなかったの? 私があなただったらできるだけ全部調べるけど。……ところで、その男の子は?」
「あ、この子はジークフリート・ゴズホークだよ♪」
「ゴズホーク!? 基本呪文集の著者ミランダ・ゴズホークの!? わあっ、私色々と聞きたいことが-」
「おい出っ歯女」

ジークのフルネームを聞き、やや興奮気味にジークを起こそうとするハーマイオニーをクレスが静止した。

「こいつ今熟睡してんのわかんねーのか? くだらねぇ長話なんざ後でしろ」
「でっ……!……てでで出っ歯女ですってぇっ!? それにくだらない話ってどういうことよ!」
「いいからさっさと出てけよガリ勉、面倒なんだよお前の相手すんの」
「~~~っ! 言われなくてもこんなとこ出てってやるわよ!」

クレスの容赦ない罵倒を受け、ハーマイオニーは顔を真っ赤にしながらネビルを引き連れ、肩をいからせてコンパートメントから出ていった。

「クレス! 初対面の人になんてこと言うの!?」
「一目見た瞬間直感した。あいつ俺の大嫌いなタイプだ、間違いねぇ」
「だからってその、あの…あなたにデリカシーはないの!?」
「そんなもんドブに捨てた」

クレスのあんまりな物言いにアレクは猛然と抗議するもののクレスは取り合わない。態度を改めるつもりがないとわかったのか、しばらくするとアレクも何も言わなくなった。
その後4人は4つの寮の話をしたり、魔法界の大人気スポーツ・クィディッチをしたり(ハリーはともかく、クレスとアレクがあまり興味なさそうなことに驚愕していた。曰く、人生の半分損しているとか)

ロンが熱心にクィディッチの話をしていると、またコンパートメントの戸が開き、男の子が三人入ってきた。
ハリーとアレクは真ん中の少年に見覚えがあった(クレスは忘れたらしい)。マダムマルキン洋装店にいた青白い子だ。

「このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話で持ち切りなんだけど。それじゃ、君なのか?」
「そうだよ」

ハリーは少年の質問に答えたあと、両脇の少年に目をやった。二人とも非常に体格の良い。ニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべているあたり、いかにもいじめっ子といった感じである。

「ああ、こいつはクラッブで、こっちがゴイルさ。
そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
(ドラコ=蛇って……名前からしてスリザリンに入るために生まれたようなやつだな……)

そんなことをクレスが考えていると、マルフォイはクスクス笑いを咳払いで誤魔化しているロンを睨みつけた。

「僕の名前が変だとでも言うのか!? 君が誰だか聞く必要もないね。パパが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、そばかすで、貧乏なくせに育てきれないほどたくさん子どもがいるってね……ポッター君、そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがよくわかってくるよ。間違ったのとはつき合わないことだ。そのへんは僕が教えてあげるよ」

マルフォイはハリーに手を差しのべ握手を求めたが、ハリーは憮然とした表情でそれを拒否した。

「間違っている魔法族なのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま」
(へぇ……人畜無害そうな顔して言うことは言うのな)

遠回しに「間違った魔法族のお手本を見せてくれてどうもありがとう」と言い放ったハリーに対して、クレスは評価を改める。マグルに虐げられて育ったためか、遠回しな皮肉が妙にうまい。
マルフォイはハリーの言葉の真意を読めとれなかったものの、自分の厚意を拒否されたと感じたため、気分を害した表情になる。

「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるけどね。もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道をたどることになるぞ。ウィーズリー家やハグリットみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」

それを聞いてハリーとロンは立ち上がった。
アレクはオロオロと三人を見回し、クレスは面白がっているような表情のまま見物している。

「もう一ぺん言ってみろ!」ロンが叫んだ。
「へえ、僕たちとやるつもりかい?」マルフォイはせせら笑った。
「今すぐ出ていかないならね」ハリーはきっぱり言い放った。

まさに一触即発。今すぐにでも乱闘が起こりそうな空気の中、不意にゴイルが悲鳴を上げた。ぐっすり眠りこけていたはずのネズミのスキャバーズがいつの間にかゴイル指にくらいついていたのだ。ゴイルは悲鳴を上げながら、スキャバーズをぐるぐる振り回し、テーブルに乗っているお菓子の箱などを床に落としたりしながら、やがて窓に叩きつけたあと、三人とも足早に退散していった。

「なんだよ、闘わねぇのかよ」
「闘わねぇのかよ、じゃないでしょ! 何で止めてくれなかったの!?」
「あー、すまんな。アレクは5人仲良く地に沈めて欲しかったのか」
「なんでそんな暴力的な止め方!? ……ルーチェさん、この二人の手綱を握るの、思った以上に重労働だよ……」

二人がそんなミニコントを繰り広げていると、ハーマイオニー・グレンジャーがコンパートメントに乗り込んできた。

「いったい何やってたの!?」

床いっぱいに菓子が散らばったコンパートメント内を見回しながら言うハーマイオニー。見回す過程でクレスを視界にいれた途端キッとした表情になり露骨にそっぽを向いたが、クレスはハーマイオニーなど眼中にもないかのように無視した。
マルフォイについてハリーと話し込んでいたロンは、一段落した後ハーマイオニーの方を振り向いて尋ねた。

「何かご用?」
「急いだ方がいいわ。ローブを着て。私、運転手に聞いてきたんだけど、もうまもなく着くって。二人とも、ケンカしてたんじゃないでしょうね? まだ着いてもいないうちから問題になるわよ!」
「スキャバーズがケンカしてたんだ! 僕たちじゃないよ! よろしければ、着替えるから出ていってもらえませんかね?」

ハーマイオニーの発言に気分を害したのか、しかめっ面でにらみながら言い放った。

「いいわよ。みんなが通路でかけっこしたりして、あんまり子供っぽい振る舞いをするもんだから、様子を見に来てみただけよ。それとあなた、」
「えっ、私?」

小バカにしたような声でロンに応答した後、ハーマイオニーはアレクに声をかけた。急に話を振られたアレクはキョトンとした表情になる。

「あなた女の子でしょ、私達のコンパートメントで着替えたらどう?」
「あっ、そうだった! わざわざありがと~」
(そういやそうだったな……)

どうやらクレスもアレクも幼いこらから兄弟のように育てられたため、お互い異性であることを忘れていたらしい。アレクを連れてコンパートメントから出ていく様子を、ロンはずっとにらめつけていた。

「なんだよあのムカつく物言い!? あんな奴とは絶対仲良くなれないよ!」
「……お前とは仲良くなれそうだな」
「あはは……」

憤慨するロンとそれに同調するクレスに、ハリーは苦笑いしながらも自分も二人と仲良くなれそうだと思うのであった。

「いい加減お前も起きろ(バチンッ!)」
「へぶぁっ!? …………貴様もう少しまともな起こし方はできんのか!?」

頬に全力でビンタされ飛び起きたジークは、元凶であるクレスに凄い剣幕で抗議したがクレスは無視してローブに着替え始めた。







「わざわざ着替えるスペース貸してくれてありがと~」
「気にしなくていいわ。アレクサンドラ」
「長いからアレクで良いよ~♪」

アレクはハーマイオニーのコンパートメントでローブに着替えていた(ちなみにネビルを含め何人かいたのだがハーマイオニーが問答無用で追い出した)。

「……ねえアレク」
「なに?」
「あなたなんであんなデリカシーの無い奴と友達なの?」
「デリカシーの無い奴……って、クレスのこと?」
「そうよ! 初対面であんな失礼なこと言われたの生まれて初めてだわ! あんなのと仲良くしててもあなたのためにならないわよ!」

どうやら先ほどのことを根にもっているようだ。同時にハーマイオニーは疑問に思う、どうしてアレクがクレスと仲良くやっているのか。
少しの間接しただけでもクレスとアレクの性格が正反対だとわかる。クレスとアレクがどうして友達関係にあるのかいくら考えてもハーマイオニーには理解できない。

「う~ん……私とクレスとジークは友達と言うより家族なんだよ」
「家族?」
「うん。私達三人とも両親がいなくて、ある人に引き取られたの」
「そ、そうなの……」

踏み込んではいけないことを聞いてしまったと思ったのか、ハーマイオニーがバツの悪そうな表情になる。

「それからね、ハーマイオニー」
「な、何かしら」

アレクはハーマイオニーの目をしっかり見据えて言い放った。

「そんな風にお高く振る舞ってたら、友達なんてできっこないよ。自分から歩み寄ることを覚えなきゃ」
「!? …………~~~~っ! 余計なお世話よ! 着替え終わったのならさっさと出てって!」

アレクに諭すように言われ、ハーマイオニーはしばらく首をを握りしめられたような表情をした後、顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。

「うん……着替え手伝ってもらってありがとね」

そう言うとアレクは悲しそうな顔をしながらコンパートメントから出ていった。




「………………だったら、いったい私はどうすれば良いのよ…………」

ハーマイオニーは泣き出しそうな表情でうつむくだけであった。






そしてとうとう、汽車はホグワーツに到着した。 
 

 
後書き
ようやくホグワーツに到着しました。
クレスとハーマイオニーの相性はとてつもなく悪いです。完全に水と油と言っていいほど悪いです。ですのでこれから先たびたび衝突します。
アレクは他人の心情を察することに長けており、実はハーマイオニーは友達を欲していることを見抜き、割とストレートにダメ出ししました。 
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