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ヴォルデモート卿の相棒

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9と3/4番線からの旅・前編

 
前書き
長いけどカットしにくいので分けました。
二次創作でオリ主がスリザリンの場合アンチになりやすい男No.1、ロン・ウィーズリーが初登場します。 

 
9月1日の新学期初日。
大勢のマグルが行き交うキングズ・クロス駅の9番線と10番線の間に、クレスとアレクは赤茶色の短髪の、モノクルをかけた少年・ジークと共に、修道服の女性に連れられて来ていた。

「眠い……私はなぜこんなに眠いのだ? 昨日徹夜で呪文の研究をしていたことが原因だろうか?」
「明らかにそれが原因だろうがこのバカ」

クレスいかにも眠たそうなジークに呆れたようにつっこむ。

「……いつでもどこでも隙あらば寝ようとする貴様にだけは言われたくないなバカ」
「俺に噛みつく元気は残ってんのかよ、この理屈バカ」
「黙れ単細胞。知能指数アメーバ並」
「お前こそ黙れ根暗。逆上がりすらできないヘタレが」





「「…………表へ出ろゴルァァァァァ!」」

二人は杖を相手に向けて激昂する。周りのマグルが騒ぐ中、今にも攻撃魔法をぶっ放しかねない状況だ。

「やめなさい」
「「いてっ」」

一触即発の雰囲気の中、修道服の女性は微笑みながら二人の頭に拳を落とす。

「ここで事を荒立ててはホグワーツに入学することができなくなりますよ? 二人とも嫌でしょう?」
「「だってこいつが」」
「言い訳しない」
「「あだっ!」」

修道服の女性がニコニコ笑顔のままさっきより強めに拳骨を浴びせる。

「……いいのかよルーチェさん、シスターが暴力振るって」
「これもあなた達を正しい方向に導くためです。主も私めをお許しになるでしょう…………たぶん」
「たぶん……」
「適当だなオイ!?」
「ルーチェさん、意外とちゃっかりした性格だもんね……」

ルーチェと呼ばれた修道服の女性のかなり大雑把な信仰にクレスとジークはシスターとしてそれで良いのかと心底疑問に思い、アレクは苦笑いするしかなかった。

「さ、さあ三人とも、そこの柵に向かってまっすぐに歩きましょう。時間は有限ではないのですから」
(((誤魔化した……)))

ルーチェに先導されるがまま、三人は9番線と10番線の間の柵に向かって一人ずつ歩き出す。
ホグワーツ行き、9と3/4番線……勿論そんな中途半端なプラットホームなど存在しない。
だがそれはあくまでマグル基準で話した場合だ。魔法使いならばプラットホームに行く方法をちゃあんと知っている。
柵を通り抜けた三人の目の前には紅色の蒸気機関車が停車しており、ホームの上には『ホグワーツ行特急11時発』と書いてある。
様々な色の猫が足元を縫うように歩き、沢山の生徒のペットであろうフクロウがホーホーと鳴いている。
あちこちで制服を着込んだ生徒と親らしき人物が言葉を交わし、あるいは入学の不安を語り合っている。

「三人とも、いよいよ出発ですね」

三人に続くようにプラットホームに来たルーチェが一瞬寂しそうな顔をした後、すぐに笑顔になり三人に話しかける。

「クレス、あなたは少し不器用な所があるけれど、いつもジークとアレクの事を気にかけてくれていますね。あなたが二人を守ってくれるから、たとえどこであろうと安心してあなた達三人を送り出せます。……ただ、その喧嘩っ早いところは少々改善してくださいね」
「任されたぜ。後半のやつは保証できねぇがな」
クレスは真っ直ぐルーチェの目を見ながら返事をした。

「ジーク、あなたは何かに熱中すると他のことが疎かになってしまうことが少々ありますが、それは決して非難されることではありません。大切なのは、どのように生きることが正しいかではなく、あなたがどのように生きたいかなのです。ただ、何でも一人でしようとしないで。あなたが困ったときに助けてくれる人は、少なくともここに三人いるのだから」
「……承知した」
ジークはモノクルを外して返事をした。

「アレク、あなたは少々自己主張が苦手だけれど、あなたの心の強さは私が一番知っています。そして和を重んじるあなたの心構えは、何にも変えがたいあなたの人徳です。きっとホグワーツでもうまくやっていけるでしょう。それから、少々暴走しがちな二人の手綱はあなたに任せましたよ」
「……えへへっ。大変そうだけど…わかりました」
アレクは今にも泣き出しそうになりながらも笑顔で返事をした。

そうして三人は車両に乗り込んでいった。

「……主の恵み、神の愛、聖霊の交わりが、彼らとともに、豊かにありますように、アーメン」

ルーチェは三人の未来に十字を切りお祈りを済ませ、プラットホームを後にした。










「なんで俺が三人分持たなきゃなんねぇんだよ」
「では、貴様の鍛えた力はいつ生かすのだ?」
「少なくとも今じゃねぇよ」
「クレス、私が一つ持つよ?」
「気持ちだけ受け取っておく。お前に持たせたら事故るのが目に見えてるわ」
「事故らないよ失礼ねっ!」

三人は仲良く(?)最後尾辺りのコンパートメントに移動し、トランクを客室の隅におさめたあと、窓際の席に座った。

「……限界だ、少し仮眠を取る。いい感じの時間帯になったら起こしてくれ……zzz」
「眠るの速っ……」
「さっきまでの真剣な表情をしたお前はどこに行ったんだ?」

席に着いて早々モノクルを外し夢の世界にダイブしたジークを、二人は呆れたように見る。ちなみに席の座り方は真ん中にテーブルを挟んだ3人用の座席×2の片方に集中してアレク、クレス、ジークの順に座った。はたから見れば多少狭苦しく感じるが三人は気にしていない。

「さてどうする? 暇だしチェスでもするか?」
「クレスあんまりチェス強くないじゃん」
「んだとコラ」
「だっていっつもクイーン単体で攻めてくるし…」
「最強の手札で勝負して何が悪い」
「負けてちゃ意味ないよ~」
「ぐぅ……痛いとこつきやがって」

そんな感じで談笑していると、コンパートメントの戸が開いて、一人の男の子が入ってきた。くしゃくしゃの黒髪に眼鏡が特徴のどこにでもいそうな少年だ。

「……あっ、君達は」
「あん? 誰だよお前?」
「こないだマダムマルキンの洋装店で会ったばっかりでしょ!」
「あー、そういや会ったな…………あれは会ったと言えるのか?……まあ良いか、とりあえず座りなよ」
「え? う、うん」

促されるままに、黒髪の少年はクレスの鋭い眼に怯みつつ対面の席に座ると、少年はしばらく窓の外の赤毛の家族集団のやりとりをやや羨ましそうに、汽車が出発してから見えなくなるまでずっと眺めていた。

「…………(恐らく俺らと同じく親が……これを詮索すんのは野暮だな……)……そういや自己紹介すらしてなかったな。俺はクレスレイ・エシャロットだ」
「私はアレクサンドラ・マッキノンだよ!」
「あっ、そうだったね。僕はハリー・ポッター」

少年・ハリーの自己紹介にアレクは驚き、クレスは面白そうに笑った。

「えっ……あなたがハリー・ポッター?」
「ほぉ……つーことはお前がある意味アレクの恩人か」
「え? 恩人ってどういう……そういえばマッキノンってどこかで……」
「…私の両親は、私を生んですぐヴォルデモートに殺されたの……」
「あっ、そういえばハグリットがそんなことを……」
「まあお互い家族のことはこれいこう詮索しないようにしようや、何のメリットもねぇし」
「うん……君も両親がいないの?」
「まあな、お前ら二人とはちっと事情が違うがな」

親無き子同士三人で話しているとまたコンパートメントの戸が開き、赤毛のノッポの少年が入ってきた。

「ここ空いてる? 他はどこもいっぱいなんだ」
「大丈夫だよ~」

アレクはにこやかに歓迎し、他の二人も特に異論は無いようなので、少年はハリーの隣に腰掛ける。やはりクレスの眼を見ると少々怯んだが。
その後すぐに彼の兄らしき双子の赤毛がやって来た。

「おい、ロン。俺たち、真ん中の車両辺りまでいくぜ・・・リー・ジョーダンがでっかいタランチュラを持ってるんだ」
「ハリー」
双子の片方がハリーに語りかけた。

「自己紹介したっけ?僕たち、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こいつは弟のロン。そっちのお三方は?」
「私はアレクサンドラ・マッキノンだよ♪」
「俺はクレスレイ・エシャロット、寝ているこいつはジークフリート・ゴズホークだ」
「ひゃ~、そりゃまたワケ有りの名家ばっかだな。それで君は何で僕達を睨んでるんだい?」
「生まれつきこういう目つきなんだよ」
「おっと、そりゃしっけい。それじゃ、またあとでな」

双子はコンパートメントの戸を閉めて出ていった。
再び三人だけになった時、おもむろにロンが聞いた。

「君、ほんとにハリー・ポッターなの?」

ハリーが前髪を掻き上げて稲妻の傷跡を見せると、ロンはそれを食い入るように見た後、クレス達の方を向いた。

「それに……エシャロット、マッキノン、ゴズホークってことは君達も……」
「そ。両親がいなく三人ともある人に引き取られた身の上だ。まあデリケートな内容なんであんまつっつかないでくれ」
「うん、わかった」

ロンの質問が一段落すると、今度はハリーがロンに質問する番だ。

「君の家族はみんな魔法使いなの?」

 ロンは3人に色んなことを語った。ウィーズリー家はクレス達と同じく古くから続く由緒正しい魔法族だということ、ロンには兄が五人もいて、みなそれぞれ別な方向に優秀なので、自分が期待に応えるようなことをしたところで兄達の二番煎じになってしまうこと、そして自分のものはみんな兄たちのお下がりばかりだということ……などなど。
ロンは上着のポケットからぐっすり眠った太ったねずみを引っ張り出して、これも兄のお下がりなのだと嘆いた。
その時にアレクが何か腑に落ちないような表情をしたが、すぐに元に戻ったため誰も気にしなかった。
喋り過ぎたと思ったのか、やがて耳元を赤らめ、また窓の外に目を移したロンに、ハリーは何も恥ずかしがることはないと話しかけた。
マグル-それも魔法族に強い偏見を持った-に育てられたハリーだって今まで身につける物は全ていとこのお下がりだったし、誕生日にはろくなプレゼントをもらったことがない……などなどを話すと、ロンは少し元気を取り戻した。
ちなみにクレス達は引き取り手のルーチェに何不自由無く育てられた上、それぞれがかなりの名家のため資産もそれなりに残されていたこともあり、下手に二人の不幸話に関わってもろくなことがないので聞き役に徹していた。

ホグワーツへの道のりはまだ始まったばかりである。











 
 

 
後書き
以上です。
ジーク君は平常時なら今回ほど口が悪くありません。
ストレスがたまるほど毒を吐く男、それがジークです。 
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