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ウイングマン イルミネーションプラス編

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桃子、仕掛ける!

 
前書き
クリスマスを目前に健太は、アオイの提案の元、美紅をデートを誘う
一方、桃子とアオイは都市伝説「光る女」の謎を追いかける 

 
1.
桃子はアオイを訪ねて仲額高校の校門の前で待っていた。
真冬にコスチュームで出歩くのには問題があった。コスチュームに守られているので寒さは感じない。しかし、この寒い冬の気候にあの格好では目立ちすぎる。
とりあえず全身を隠せるロングコートを着て出かけた。
終業のベルが鳴るとほどなくしてアオイは校門から飛び出してきた。
「アオイさん!」
予想より早かったので桃子は慌てたが咄嗟に声が出た。
呼び止められたアオイは足を止めた。
「あら、桃子ちゃん、どうしたの?」
昨日の美紅に続いて今日は桃子、何か慌ただしくなってきた。
ただ、桃子が来た理由は想像ができていた。
「ちょっと相談が……」
桃子の言葉にアオイは応える。
「光る女の話じゃない?」
「それは、そうなんですけど……」
いきなり相談内容を見透かされて驚いた表情を見せた。
しかし、光る女のことを知っているのであれば話が早い。
「こっちに来てください」
アオイの手を引いて人気のないビル影に連れ出した。
桃子は少し恥ずかしそうな顔をした。
そして桃子が始めた行動にアオイは焦り始めた。
「桃子ちゃん、ちょっと、どうしたのよ!?」
桃子が急にコートを脱ぎ始めたのだ。
「アオイさんに見てほしくて……」
コートの中はなぜかウイングガールズのコスチュームで、アオイは少し不思議には思ったが、桃子の続く行動に驚いて、そんな疑問は吹っ飛んでしまった。
コスチュームからスカートをめくってパンツを見せようとするのだ。
「ス、ストップ!ストップ! 私、桃子ちゃんは好きだけど、そういう趣味はないから!」
光る女の話のはずじゃなかったの!?
桃子の行動の真意がわからずアオイは動揺してしまった。
「だいたい桃子ちゃんはケン坊が好きだったんじゃないの?」
一人妄想を暴走させたアオイは思わず声を荒げた。
そう言われて、桃子も顔を真っ赤にして固まってしまった。
自分の焦る気持ちがアオイを誤解させてしまったかもしれないと反省したのだ。
「ア、アオイさん、誤解です! 私もそんな趣味ありません! かなわないかもしれないけどリーダー一筋です!」
必死に誤解をとこうと桃子も思わず声を荒げてしまった。
「だ、だったらどうして?」
その声にアオイも少し落ち着いた。
まずは話を聞かなければ。
「私、昨日、イルミネーションプラスに戦ったんですよ」
桃子の言葉にアオイは動きを止めた。
「えっ!?」
驚きの表情を見せるアオイに対して、桃子はお尻を見せた。
当然アオイは驚いた。
桃子がおもむろに見せたお尻は蛍のように光っているのだ。
「そ、そのお尻はっ!?」
桃子はすぐにお尻を隠すと少し顔を赤らめながらも、昨日の顛末を話しはじめた。
「だからアオイさんのディメンションパワーで治せないかと思ったんですけど……」
アオイは桃子を見ながら考えた。
「そうよね。ずっと変身してるわけにもいかないもんね……でも、無理かもしれないけど、とにかく試してみようか……」
ただ、ディメンションパワーを注入するのにどのくらい時間がかかるかわからない。
さすがに一瞬だけならまだしも人通りが少ないとは言え、外で桃子にずっとお尻を出させるわけにはいかない。
「ちょっと捕まっててね」
アオイは桃子を連れて瞬間移動で自分の部屋に移動した。
移動先さえ認識できていればアオイは瞬間移動をすることができる。
「アオイさん、ここは?」
「私の部屋よ」
アオイほ笑んで桃子を見た。
「ここなら安心してお尻を出せるでしょ。」
そう言われると桃子は恥ずかしくなってうつむいた。
「じゃあ桃子ちゃんお尻出して」
戸惑いながらも桃子はパンツをずらした。
そしてアオイの方にお尻を突き出した。
「あん……」
差し出されたお尻をアオイが触れると桃子は敏感に感じた。
しかし、アオイとてそんなことは気にしていられなかった。とにかく触ってみて、ディメンションパワーを注入してみた。
「あ……ん……」
桃子はディメンションパワーを感じてはいた。
何かやさしくなでられているようで、少し気持ちよくもあった。
アオイは額に汗しながら真剣にディメンションパワーをお尻に当てていた。しかし、残念なことにお尻から発せられる光が変化しているようには感じられなかった。
しばらく続けてみたものの、結局、よくなる兆しは見られなかった。
アオイは体力を消耗し過ぎて方から息をし始めた。
「ごめん、やっぱり無理っぽいわ」
そう言うとディメンションパワーの注入をストップさせた。
桃子もお尻をしまって一休みだ。
「やっぱりイルミネーションプラスを倒すしか方法はないってことか……」
桃子はそうこぼした。
確かに桃子の言う通りだろう。
しかし、アオイは健太と美紅のデートのことを思い出した。
せっかく自分が言いだしっぺで作った機会をまた戦いで壊してしまうのは忍びない。
それに桃子の話から活路も見いだせた。
「でも、ディメンションパワーがやつのパワーを抑えるんだったら、私たちだけでもなんとかできるとは思わない?」
アオイの提案に桃子は驚いた。
「私たちだけで戦うんですか?」
「うん!」
アオイは申し訳なさそうに、しかし力強く頷いた。
桃子も自分だけで何かしようと突っ走った結果がこのお尻だ。
アオイが弱いというわけではないが、最終的に敵を倒しているのはウイングマンというのもある。
桃子が疑問を抱いてもおかしくはないことだった。
「何か理由があるんですか?」
桃子はまっすぐな眼差しでアオイを見つめた。
その表情に、少しバツ悪そうに答えた。
「ケン坊は明日、美紅ちゃんとデートだから……」
その約束は自分が健太の背中を押したのだ。
それなのに、相手と戦ってもいないうちに、それをなしにするのは自分勝手過ぎるとアオイは思ったのだ。
「ほら、ケン坊ってば、いっつも戦ってばっかりでしょ。あとトレーニングとか。だからちょっとは息抜きが必要かなって……あたしが背中押しちゃったんだよね……」
そう言ってアオイはごまかし笑いをした。
桃子の健太への気持ちを知っているだけに、本当なら桃子には伝えたくなかったのだ。
そんなアオイの心遣いが桃子に伝わった。
「大丈夫ですよ。美紅ちゃんも友達だし、2人には幸せになってほしいから」
そう言って桃子はアオイの手を握った。
「2人でイルミネーションプラスをやっつけちゃいましょう!」
「そうよ! ケン坊に頼らなくたって私たちだけでなんとかできるって!」
アオイも桃子をぎゅっと抱きしめた。



2.
桃子とアオイは日が暮れてからパトロールに出かけた。
体が発光しているイルミネーションプラスの特性を考えれば、その方が効率がいいと考えたのだ。
その思惑は的中した。
パトロールに出てすぐにイルミネーションプラスを発見することができた。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
桃子が声をかける。
「お前は昨日の……」
イルミネーションプラスは驚いた表情を見せた。
「やはり不発だったか……効いているならとっくにライト人間になっているはずだからな」
桃子は腰に手を当てて、自信満々に言った。
「そうよ! お前の攻撃は私には効かないってことよ。覚悟しなさい!」
そう言って桃子が蹴りかかった。
「それはどうかな? 昨日のオレ様とは違うぜ!」
そう言うと今まで発光していたイルミネーションプラスの体から光が消えた。
上空高いところにいるために街の光は届かない。
しかもイルミネーションプラスが発していた光が強力だったせいで、その光が消えると目くらましのような効果を発揮した。
まるで、消えてしまったようだ。
「しまった!」
そして、目の前が急に明るくなったかと思うとイルミネーションプラスが現れた。
今度はまぶしすぎてちゃんと認識ができない。
危機一髪!
桃子にイルミネーションプラスが体当たりをしようとした。
そこにアオイのディメンションビームが命中したのだ。
「き、貴様、一人じゃなかったのかっ!?」
吹っ飛ばされたイルミネーションプラスは驚きを隠せなかった。
「ヘヘヘ、それに私もあなたの攻撃効かないわよ!」
アオイは高らかにそう宣言した。
桃子だけの実績しかないけど、ディメンションパワーが有効なのはコスチュームで防御されているので間違いないと確信している。
「そんな戯言、信じられるか!」
イルミネーションプラスの手がムチのように変化し、アオイの体に襲いかかった。
しかし、アオイは手にディメンションパワーを集中させてそのムチを受け止めた。
「何っ!?」
イルミネーションプラスには完全に予想外の結果だった。
アオイは攻撃を止めたのだ。そしてその攻撃の影響もない。
やはりディメンションパワーがイルミネーションプラスの攻撃を遮断していた。
「覚悟しなさい!」
アオイがディメンションビームを放った。
イルミネーションプラスはその攻撃を避けたかと思うと今度は桃子がモモコラリアットを仕掛ける。
後頭部に命中し、バランスを崩した。
「貴様ぁああああああっ」」
両手がムチ化してアオイと桃子をいっぺんに攻撃した。
しかし、2人は同時に避けたが、その瞬間、イルミネーションプラスが消えた。
「えっ!?」
すぐさま桃子の前に姿を現して再びムチが襲ってくる。
「きゃあっ!」
「危ない!」
アオイはディメンションパワーでその危機を防いだ。
しかし、続けざまにアオイを攻撃してきた。
アオイはそれになんとか反応したが、少しばかり反応が遅くて胸の辺りにかすってしまった。
「痛っ!」
コスチュームで覆われてはいるが、さっきのようにディメンションパワーは集中していなかった。
しかし、目に見えた反応はなかった。
イルミネーションプラスはそれを見ると攻撃をやめた。
「くそっ、やっぱり効いていない。昨日よりもパワーアップされているはずなのだが……」
表情は完全に焦りの色が伺える。
「認めたくはないが、これは非常事態だな……」
そう言って再び姿を消した。
「アオイさん、大丈夫ですか?」
桃子は慌ててアオイの方に駆け寄った。
「大丈夫よ。かすっただけだから……」
アオイはそう言うが桃子は心配だった。
桃子も攻撃を食らった際には何ともなかった。しかし家でシャワーを浴びた時に発覚したのだ。
アオイもディメンションパワーがあったとしてもただでは済まない可能性もある。
「戻って確認してみましょう」
アオイは桃子の言葉を受けて桃子と一緒にアオイの部屋に戻った。



「アオイさん、じっとしててください!」
瞬間移動で部屋に戻ったアオイのコスチュームのブラを桃子がいきなりもぎ取った。
「も、桃子ちゃん、何するのよっ!? 」
「チェックですよ、チェック!」
アオイは反射的に胸を手で隠した。
自分の部屋でそこにいるのは桃子だけだから見られて恥ずかしいというわけでもないのだけれど、いきなりそんなことをされたらつい体が動いてしまった。
「アオイさん、ダメですよ! 隠してたらわからないじゃないですか。手をどけてください」
そう言って桃子はアオイの両手を掴んだ。
「え~っ!?」
アオイの胸を見た桃子は驚きの声を上げた。
「え? どうしたの桃子ちゃ……ん?」
アオイも心配になって自分の姿を鏡で見てみた。
すると自分の乳首が豆電球のように光っていたのだ。
「何よ、これぇ~!?」
アオイは恥ずかしくなって再び手で隠した。
イルミネーションプラスが言ってたように、確かにパワーアップしていたようだ。
ディメンションパワーを身にまとっているアオイにダメージを与えているのだから。
アオイはディメンションパワーを発動させて再びブラを身につけた。
「かすっただけなのに……」
桃子は唖然と立ち尽くした。
「桃子ちゃん、ごめん」
そう言うと、今度はアオイが桃子のパンツをスカートごとずらした。
「きゃあっ! な、何をするんですかっ!?」
桃子はとっさに前を両手で隠したがお尻は丸出しだ。
「うわっ!」
コスチュームの防波堤がなくなると一気にお尻の光は決壊してきた。
いきなり見たからなのか昼間見たときより輝きを増している気がした。
「もしかして少しだけど、光ってる範囲、広がってない?」
「えっ?」
自分のお尻を振り返って覗いてみるがイマイチよくわからない。
「どうでしょう? わかんないけど……」
真剣な眼差しを自分のお尻に向ける桃子だったが、その格好がアオイには少し滑稽に映ってニヤニヤしてる。
「アオイさん、どうしたんですか?」
「いや別に……」
そうは言っているがその視線からアオイの表情の意味を読み取って急に恥ずかしくなった。
桃子は顔を真っ赤にして、慌ててパンツとスカートを元にずり上げた。
「仕方ないじゃないですか! アオイさんのおっぱいだって十分おかしいですよ!」



3.
その日、桃子はアオイの家に泊まった。
やはりずっと一緒の服を着てるのをごまかすのは大変だということが一番の理由だった。
それに加えイルミネーションプラスを退治する作戦を考える必要もあった。
あの後、桃子とアオイは一緒にお風呂に入り、ライト人間化の進行具合を確かめた。
姿見の鏡やお互いの目視で確かめたりした結果、結論は確実に進行しているということだった。
桃子よりもアオイの方が進行具合も早そうだということがわかった。
しかし、それはつまりイルミネーションプラスが確実に進化してきているということだ。
ライト人間化の進行を考えればそれほど猶予は残されていない。
それに加え、イルミネーションプラスの進化具合を考えれば、早期に勝負を決めなければ勝機は薄くなることも明らかだった。
「明日、決着をつけるよ!」
「はい、アオイさん」
2人はそう心に決めてコスチュームのまま眠りについたのだった。


次の日、朝、健太は早起きだった。
というよりあまり眠れなかったという方が正しい。
美紅とのデートのことを考えると緊張してしまって寝付けなかった。
毎日のように一緒にいるけれど、デートを意識してでデートをすることが本当に久しぶりだった。
今日は祝日だから早朝のランニングもない。
そして待ち合わせは駅前なのだ。
待ち合わせは10時。
そこから電車で移動して繁華街に出かける。
レストランで食事をして映画を見て街をぶらぶらして、展望台で夜景を楽しむ。
そして、ムードが盛り上がったところで……
そんな当たり前の、マニュアルのようなデートだけれど、それがちゃんとできるかすら不安だった。
デートに誘うのでさえあれだけ緊張したのだから仕方がない。
しかも駅前での待ち合わせは、イヤがおうにも普段とは違う状況を感じてしまう。
だからこそ、服も特別なものを考えていたのだけれど、結局まとまらなかった。
タイムアップで、いつもの格好に落ち着いた。
ただ、待ち合わせの時間ギリギリだ。慌てて必死に走って駅に向かった。
やはりというか当然というか美紅は先に到着していた。
「あ、美紅ちゃん! お待たせ!」
美紅は笑顔で健太を迎えた。
「わ、私も今来たところだから」
いつものおとなしいイメージよりも少しポップに、黄色ベースのダッフルコートを着ていた。
美紅自身も久しぶりのデートをかなり意識していた。
「美紅ちゃん、そんな服持ってたんだ!?」
いつもと少しイメージが違う美紅の格好に健太は驚いた。
「え? 変かな……?」
デートを意識して少し頑張ってみたので、美紅自身も心配だったのだ。
「すごくいいよ! いつもの格好もいいけど、今日の格好もすごくかわいいよ!」
ストレートに褒められて美紅は顔を赤らめた。
「あ、ありがとう……」
いきなりデートに誘われたものだから、ありものでしかコーディネートできなかったので、ちゃんとデートらしい格好ができたのか少し心配していたのだ。
「いやあ、すごくいいよ! 本当にすごくかわいいよ~!」
健太はずっと褒め続ける。しかも声が大きい。
美紅は恥ずかしくなって居ても立ってもいられなくなってしまった。
「広野君、早く行きましょう! 電車来ちゃうよ」
そう言って先に駅の階段を上り始めた。



その日は昼から桃子とアオイはパトロールを開始した。
昨日、遅くまで作戦を考えていて夜更かししてしまったので、朝起きるのが遅くなったというのが一番の原因だ。特にアオイはディメンションパワーと体力が密接な関係がある。ゆっくり休養をとらないことには敵と対峙したときに実力を発揮することができない。
そんなわけで、昼からの活動開始となったのだ。
街で街中はコートを羽織っていればコスチュームを着ていても問題はなかった。
本当は飛び回って探したかったが、ディメンションパワーは温存しなければいつライト人間に侵食されるかわからないという心配も感じていた。
「今頃、ケン坊は美紅ちゃんとデート楽しんでるのかな?」
本当だったら後をつけて様子を確認しようと思っていたのだけれど、それどころではなくなってしまった。
ライト人間に侵食されている今となっては早くイルミネーションプラスを見つけて退治しないと大変なことになってしまう。
「いいなあ、美紅ちゃん……」
桃子は健太とデートする美紅を想像してちょっと切なくなった。
想っているだけで十分とは思っていても、やはり好きな人とデートをしたい気持ちは強かった。
「でも、その前にイルミネーションプラスをやっつけなきゃ!ですよね!」
そう言って桃子は自分を奮い立たせた。
しかし、徒歩でのパトロールは効率は悪い。
それにイルミネーションプラスの性質上、発光する体が目印になっていたが日中だとそれも目印にならないというのもある。
しかし、この季節、日が暮れるのは早い。気がつけば日が陰ってきた。
もしかしたら、そろそろ見つけることができるかもしれない。
そう考えた2人は高層ビルの屋上に登った。
「じゃあ、手分けして。桃子ちゃんは向こうをまかせたわ」
「了解!」
2人は双眼鏡を片手に発光する物体を探した。
するとすぐに見つけることができた。
「いたっ!!!!!?」
アオイは街の上空を物色するかのようにふわふわゆっくりと発行体が飛んでいた。
「桃子ちゃん、行くわよっ!」
双眼鏡を片手に外を眺めていた桃子の手を引いてアオイは展望台を飛び出した。


「またお前らか」
アオイと桃子を見つけたイルミネーションプラスは不敵に笑った。
「やはり昨日の攻撃も効いていないようだが、今日のオレ様は昨日のオレ様とは違うぜ」その言葉は疑いようもなかった。イルミネーションプラスは強化されていることは見た目でわかった。
頭にはヘッドギアのようなものがつけられ、両肩にも強化パーツがつけられていた。
「ふん、そんな見掛け倒しには惑わされないわよ!」
アオイが啖呵を切ると2人は攻撃態勢に入った。
桃子はキックを仕掛け、アオイが指からディメンションビームを放った。
「性懲りも無いやつめ!」
イルミネーションプラスも素早くそれに対応し、その攻撃を避けるとまた両手をムチに変形させ、それぞれで2人を襲った。
アオイはその攻撃を避けると叫んだ。
「ウイナアウイナルドシルエット!」
それと合わせてまたビームを放った。
イルミネーションプラスはその掛け声によってビームを特別な攻撃のように思ったのだが、実際は今までのものとは変わりなかった。
「モモコラリアット!」
桃子が背後から一撃を食らわす。
しかし、見た目に合わせてイルミネーションプラスは強化されていた。
スピードが早く、あっという間に2人の攻撃を避けたのだ。
日も落ちて辺りが暗くなってきたせいか、イルミネーションプラスのボディの輝きは一層増した。
さらにパワーアップしたように感じられた。
そして、つぎの攻撃を繰り出す前に桃子の足にイルミネーションプラスのムチが絡みついた。
「これで貴様もライト人間だ! 覚悟しろ!」
「させないわよっ!」
イルミネーションプラスの言葉に矢継ぎ早にアオイが反応してディメンションビームを打ち込んだ。
しかし、その攻撃はイルミネーションプラスに読まれていた。
だが、その次があった。
アオイではないところからビームが放たれたのだ。
それがイルミネーションプラスのムチを切断した。
「な、何っ!?」
ウイナルドが危機一髪の桃子を救ったのだった。
「これで3対1よ。こっちだってパワーアップしてるんだから!」
アオイは再び啖呵を切った。



健太と美紅のデートは思いのほかデートらしいデートになった。
ポドりムス決戦前のデートでは先の決戦が気になって健太は正直、デートを楽しめなかった。それに美紅もそんな健太の心象を感じ取って、楽しむことができなかった。
しかし、今回はライエルたちの魔の手が迫っているとはいえ、まだ本格的な戦いには至ってない。だから、健太にしてもまだ日常を楽しめる余裕があった。
もともと普通に仲のよい2人なので、ぎこちなさが取れれば2人ともデートを楽しむことができたのだ。
そして、映画を見てお茶して、夕方ころには街のイルミネーションと共に2人はいい雰囲気になっていた。
「きれいね」
美紅も雰囲気に酔ってきて健太の手を握った。
健太もその手をギュッと握り返した。
「うん。クリスマスの雰囲気にこのイルミネーションは合ってるよ」
そして、街のイルミネーションを見上げて呟いた。
健太はライエルとの戦い、それに受験もあって落ち着いて街の景色を見たことがなかった。
「美紅ちゃんに見せたいものがあるんだ」
この街の名物である巨大なクリスマスツリーを美紅に見せようと思っていた。
そのクリスマスツリーを見たカップルがその後、丘の見える公園でキスをすればそのカップルは別れない、というジンクスがあった。
健太はこの機会にさらに美紅と親密になれればということも考えていた。
美紅も向かっている方向にクリスマスツリーがあることは知っている。
そのジンクスも知っていた。
健太にうまくリードしてもらえるなら、自分も覚悟はできていた。

年末にもなると日が沈むのも早い。
クリスマスツリーの前に着く頃にはすっかり日も暮れていた。
イルミネーションの輝きも相まって恋人たちのムードを高める雰囲気は出来上がっていた。
「わあ、すごくきれい!」
20m大の巨大クリスマスツリーに、美紅は感動の声を上げた。
ちょっと健太も満足気な表情を浮かべた。
「美紅ちゃんと一緒にこのクリスマスツリーを見たかったんだ」
そして健太は手を美紅の肩に回した。
美紅も健太に身を寄せた。
「広野君、ありがとう……」
2人に並んで美紅はクリスマスツリーを見上げた。



4.
アオイ、桃子の2人とウイナアの1体でイルミネーションプラスを取り囲んだ。
しかし、動じる様子はない。
「ハハハ。貴様ら、人数を増やせばオレ様に勝てるとでも思っているのか?」
そう言うと高笑いをすると、イルミネーションプラスはムチ化していた手を元に戻した。
「さあね。やってみなきゃわからないけど、悪くない勝負はできるんじゃないかしら」
控えめな言葉とは裏腹に、アオイのその態度は勝ちを確信しているように見えた。
あそして、その態度はイルミネーションプラスの癇に障った。
「なめるなああああああっ!」
そう叫んで、怒りを顕にしたのだ。
しかし、これはアオイの作戦だった。
相手の能力がわからないのだ。もちろん、勝てる自信など持てるはずはない。
しかし、挑発すれば最大限の能力を見せてくれるに違いないと考えた。
それさえわかれば手の打ちようがある。
ディメンションパワーはかなりの割合でイルミネーションプラスの攻撃を防いでくれることはわかっていた。
改良されているとはいえ、ある程度は防御壁になれるはずだ。
きっと勝機はある。

イルミネーションプラスの全身がビリビリと光始めたかと思うと、地上の電気による光が一気に消えた。
一瞬で辺りは真っ暗になった。
アオイにも桃子にも何も見えない。
真っ暗なになった地上のあちらこちらから悲鳴が聞こえ始めた。
そして、真っ暗になったかと思うと地上からが逆に電流が放たれた。
それはまるで地上から放たれた空中を引き裂く雷のようだ。
そして、その電流がイルミネーションプラスに吸い取られていく。
「えっ!?」
アオイと桃子は完全に固まってしまった。
予想よりも相手の力は強力に思え、体が震えた。
「こんなの相手にどうやって勝てばいいのよっ!?」



「広野君っ!?」
クリスマスツリーに見とれていたときに、いきなり街の光が消えた。
周りの人たちがざわざわと騒ぎ始めた。
どこかから悲鳴も聞こえてくる。
真っ暗になったせいでパニックになっている人間もいるようだ。
でも、何か被害が出た様子はない。
単純に、いきなり停電したことに動揺して発せられた悲鳴だった。
「停電かしら?」
リメルやライエルの怪人たちとの戦いを潜り抜けてきた美紅は停電程度では慌てることはなかった。
「いや……」
健太は冷静に空を見上げた。
ヒーローのカンがうずいた。
その時、雷のような光の柱が遠くに見えたのだ。
ヒーローのカンが確信に変わった。
「あれを見て。美紅ちゃん。きっとライエルたちが刺客を送り込んだんだ……」
冷静に健太は言った。
その言葉を受けて美紅はポケットからバッジを取り出した。
「じゃあ、早く行かなきゃ!」
ウイングガールズに変身をしようとする美紅を健太は止めた。
「ちょっと待って。美紅ちゃんはここにいて」
健太の表情がいつになく真剣な顔だ
「オレがいく。美紅ちゃんには今日1日、デートの時間を過ごして欲しいんだ!」
そんな顔をされたら美紅としても頷くしかなかった。
「わかった。待ってる。でも無理しないでね!」
「もちろん!」
そう言って健太は暗闇にまぎれウイングマンに変身した。
そして、光の柱の方に向かって飛んでいった。

今日みたいなタイミングで健太のデートにアオイが、ちょっかいを出してこなかったということは、きっとそれ以上に重要なことがあったからだ。
アオイにとって一番重要なこと、それはライエルの刺客を倒すこと。
きっとあの光の頂点でアオイが刺客と戦っているのだ。
健太はそう確信した。
「待ってて、アオイさん。今、行くから!」
 
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