| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

虎退治

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

2部分:第二章


第二章

 そうしてだった。そのうえで話を続けるのだった。
「完全にな」
「ここにいるのは俺達四人だけか」
「部隊はずっと後ろまで逃げちまった」
 それが現実だった。
「それで俺達も逃げることになるがだ」
「できるか?それ」
「ソーセージ野郎がすぐそこに来てるんだろ?」
 四人の顔は曇っていた。そうしてだった。ドイツ軍のことも言い合うのだった。
「どうするよ、それで」
「どうするってよ。逃げるしかないだろ」
「そうだな」
 あらためて逃げる、つまり撤退のことを話すのだった。
「さもないとあのでかい虎が出て来てな」
「終わりか」
「あの八八ミリまともに受けたら終わりだぞ」
 それは確信していた。
「絶対にな」
「だよな。じゃあ今のうちに逃げるか」
「幸い戦車の燃料は満タンだぜ」
 エドワードが三人に告げた。
「だからな。これ食ったらな」
「ああ、西に行くか」
 ジョーンズはポケットから磁石を取り出していた。それで方角をチェックしていた。
「今からな」
「そうだな。じゃあ食い終わったらな」
 バージルが最後に言う。こうして彼等は西へと撤退をはじめた。しかし暫く進んでからだった。
 ハッチから顔を出して周りを確かめていたチャーリーがだ。車内にいる三人に言ってきた。
「やばいぜ」
「何だ?」
「虎が出て来たのかよ」
「残念だがそれだ」
 こう問いに答えるチャーリーだった。
「しかもあの王の虎だ」
「おい、やけに冷静だな」
 エドワードはそんなチャーリーに対して突っ込みを入れた。
「やばいだろうがよ」
「しかもな。こっちに照準を合わせている」
 さらに悪いことであった。
「どうするよ」
「逃げるしかないだろ」
 運転をするバージルが言った。戦車の中は始終激しく動いている。彼は戦車の小さな窓から正面を確かめることしかできないでいる。
「そんなのな」
「反撃できるか?」
 彼の横にいるジョーンズが問うた。
「虎にな」
「無理に決まってるだろ」
 エドワードは一言で彼に返した。
「前に攻撃してどうなった」
「全然駄目だったよな」
 ジョーンズもこのことはよくわかっていた。その目で見たからである。シャーマンの七六・五ミリ砲ではキングタイガーには効果がなかったのだ。
「全然な」
「そういうことか」
「そうだよ、だからやっぱりな」
「逃げるしかないか」
「それだよ」
 結局結論はそれしかなかった。森の中の道を進みながら後ろから来るキングタイガーから何とか逃れようとしていた。
「じゃあジグザグに進んでくれ」
「わかった」
 バージルはチャーリーの言葉に頷いた。
「まっすぐに進んでいたら撃たれるだけだからな」
「そういうことだよ。狙ってるからな」
「狙うなよな」
 バージルはここで自分の立場に立ってそのうえで言った。
「全くよ」
「向こうには向こうの都合があるからな」
 エドワードが言った。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧