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カジノ王

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第二章

「俺なんてな」
「その名前がな」
「そのまま西部劇だからな」
「偉大なる酋長の名前じゃないか」
「ジェロニモなんてな」
「いい名前だろ、けれどな」 
 それでもとだ、ジェロニモもまた自嘲の笑みを浮かべて言った。
「俺もアメリカ人であってアメリカ人じゃないだよ」
「だからここにいてか」
「飼い殺しみたいに生きている」
「そういうことなんだな」
「ああ、けれど何か俺もな」
 例えだ、ネイティブだとしてもというのだ。
「ちょっと上に行きたいって思っているんだよ」
「大統領にでもなるのかい?」
 友人の一人がジェロニモに笑ってジョークで返した。
「上っていうと」
「おいおい、アフリカ系の大統領は出てもな」
「俺達の場合はか」
「なれないってのか」
「それはもうさっき言っただろ」
 彼等がアメリカ人の中であまりにも異質な存在だからだ、アメリカ人であってもアメリカ人でないという。最初からいたにしても。
「俺達だけはアメリカ大統領になれないんだよ」
「オバマにはなれない」
「何があっても」
「そうさ、勿論他の偉いさんにもな」
 世間でそう言われている立場にもというのだ。
「なれないからな」
「じゃあ何になるんだよ」
「何があるんだろうな」
 ジェロニモは友人の問いに問い返した。
「一体」
「だからそれは御前が考えてることだろ」
「まあそうだけれどな」
「犯罪はしないだろ」
「馬鹿言え、俺はアル=カポネじゃないぜ」
 笑って一九二〇年代の暗黒の帝王は否定した。
「犯罪なんかするか」
「じゃあイチローになるかい?」
「スポーツはどれも苦手だよ」
 こちらも否定するのだった。
「だからな」
「それもなしか」
「スポーツも」
「それにスポーツ選手になるには歳を取ってる、もう二十五だぜ」
 自分の年齢のこともここで言った。
「ハイスクールは出たけれど学歴も専門技術もないぜ」
「あるのはこの店だけ」
「それと博打は強いな」
 友人達はジェロニモの特徴についても話した。
「御前が店に入ってから売上上がったらしいな、店の」
「それで博打は何でも負け知らずだな」
「そういった才能はあるんだな」
「商売の才能と博打の才能は」
「その二つか、そうだな」
 ジェロニモは友人達の指摘をまずは頭の中に入れた、そのうえで頭の中で考えてこんなことを言い出した。
「カジノでもするか」
「ラスベガスみたいにかよ」
「それをはじめるのかよ」
「それでカジノ王になるか」
 こんなことを言い出したのだった。
「商才と博打の才能を活かして」
「それでのし上がるのか」
「カジノをやって」
「そうなるか、どっちにしてもこのままじゃな」
 居留地でしがない店をしていてもというのだ。
「一生うだつが上がらないままでな」
「飼い殺し状態で生きていく」
「それじゃあ嫌だってのか」
「それでカジノでか」
「アメリカン=ドリームを掴むのか」
「ああ、ナイティブでもな」
 それでもとも言うのだった。 
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