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カジノ王

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第一章

                       カジノ王
 アメリカのネバダのインディアン居留地に住んでいるジェロニモ=ローンはそこで小さな雑貨屋を営んでいる、だが。
 その彼はある日店が暇な時に遊びに来た友人達にだ、こんなことを言った。
「何か俺もな」
「ああ、どうしたんだ?」
「いきなり」
「何かこうな」
 何かを掴もうとする様な手の動きをしつつの言葉だった。
「でっかいことしたいな」
「おいおい、アメリカン=ドリームか?」
「それか?」
「そんなところか?」
 自分でもよくわかっていないという感じの言葉だった。アジア系の顔だが赤いその顔で友人達に言ったのだ。
「今でも生活出来てるけれどな」
「まあ一応はな」
「俺達もな」
 友人達も言う、居留地にいればアメリカ政府が保護してくれる。例えネイティブの失業率が異常に高く飼い殺しとさえ言われる状況でも。
「生きているしな」
「西部劇みたいなことはもうないしな」
「ここにさえいれば」
「何とかなるさ」
「けれどそういうのじゃな」
 どうかとだ、ジェロニモは言うのだ。
「何か違うとも思うんだよ」
「それでか」
「何かしようってか」
「そう思ってるんだな、要するに」
「そうなんだな」
「そんなところか?」
 考える顔になってだ、ジェロニモは言った。
「俺にしても」
「何かそこな」
「俺達の場合はな」
「アメリカにいてもな」
「俺達の場合はな」
 ネイティブ=アメリカン、かつてはインディアンと呼ばれていた自分達のことをだ、彼等は思い微妙な顔で言うのだった。
「アメリカ人であってもな」
「アメリカ人じゃないからな」
「アメリカ人っていうのはな」 
 俗にこう言われる国の住人達の話にもなった。
「結局最初からアメリカにいる人間のことじゃないんだよ」
「アメリカに入った人間のことなんだよ」
「だからアフリカ系もアメリカ人なんだよ」
「ユダヤ系でもイタリア系でもな」
「日系人も中国系もメキシコ系だってな」
「アイルランド系もプエルトリコ系も」
 そうしたアメリカの過去の歴史でマイノリティーとされてきたルーツの者達の名前がここで雑然として出されたが、だった。
「アメリカ以外の国、場所から来てるからな」
「だからアメリカ人なんだよ」
「お役人にもなれるし政治家にだってなれる」
「大統領にだってなれるさ」
 彼等の場合は、というのだ。
「けれど俺達はな」
「俺達の場合はな」
 店の中にいる誰もが自嘲を込めて口の箸を歪ませて言った。
「アメリカ人じゃないからな」
「市民権はあるかも知れないけれどな」
「俺達はアメリカ人じゃないんだよ」
「アメリカにいてもな」
「西部劇じゃいつもやられ役だったからな」
 西部劇そのものが『アメリカ』と彼等の戦いを描いたものだった。アメリカが善であり彼等が悪とされてきたのは言うまでもない。
「アフリカ系の騎兵隊だっていたしな」
「カウボーイやガンマンだってな」
 ヒスパニックの者達もいた、そうした西部劇のヒーロー達には。
「けれど俺達はな」
「いつも敵だった」
「凶暴で残忍な」
「正義のアメリカに対するな」
「その俺達だからな」
「アメリカ人じゃないんだよ」
「俺達の場合はな」
 それが彼等だと話すのだった。
 そしてだ、ジェロニモもこう言った。 
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