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Bistro sin~神の名を持つ男~

作者:黒米
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初めての来店.1

人は何故生きるのだろう?何のために生まれたのだろう?
おおよその人間がそんなことを考えてはいない。
だが、生まれて、与えられ、覚え、育ち、死ぬ。
そうやって生きていく。自分たちが、生まれた意味など考えもしない。
そして人は、人が作ったルールを押し付けられ、それを今度は教え込み生きていくのだ。
いつだって…

とある冬の日、その店はいつものように街の外れでひっそりと営業している。
その日、一人の男が来店した。
扉についた鐘が、カランカランとライトんを告げる。

「いらっしゃいませ」
ウェイターが男の座った席に水を運び、本日のおすすめを告げる。
男はその後、メニューを見て少し戸惑った表情をした。
数分後、ウェイターは注文をとりにそっと席へと向かった。
すると男は、先ずこう聞いてきた。

「すいません、この店のコース料理なんですけど…何故、フレンチのコースとイタリアンのコースと2つあるんですか?あと、この日替わりディナーメニューの中には肉じゃがやシチュー、カレーパンなんてのもある。一体、何のお店なんですか?」
ウェイターが少し困っていると、40代くらいの落ち着いた雰囲気の痩せた眼鏡の背の高い男が近寄ってきた。
「お客さま、私たちの店ではその時お客さまが食べたい温かい料理をなるべくご用意したく、様々な料理をご用意させて頂いております。もし食べて気に入らなければ、お代は結構ですので。」
そう言われると、男はメニューを見てイタリアンのコースを頼んだ。

ウェイターが厨房へとオーダーを告げる。
よく、イタリアンとフレンチを勘違いされがちだが
使う食材や、味付けも全く違う。
更にフレンチは前菜の後に、サラダ、スープ、パン、魚料理、そして口直しのソルベというシャーベットを出し、
肉料理、果物、デザート、コーヒーと来て、プチフールという小さいケーキのようなものをしめに出す。
これに対して、イタリアンはアンティ・パストという前菜から出して、その後にスープ、プリモ・ピアットという炭水化物のメインディッシュを出し、セコンド・ピアットという肉料理のメインディッシュ、サラダ、デザート、コーヒーとなるのだ。
つまりコース料理でも、用意する食器は全く別のものを用意しなければならない。
ウェイターは手慣れた手つきでナイフセットを用意して、料理を待つ。
実は、このウェイターは働きだして数ヵ月の新人である。
名前は山田 賢太郎、まるで新人とは思えないほどの手つきで仕事をこなしていた。
来店した男も、その店にとても魅了された。
結局男は、大変満足してお代を払って帰っていった。
「僕は、古田 浩平。温かい料理をありがとう。また来ます。」
また一人、常連が出来た。

まさかこの時、新たな事件が起きようとしているとは誰も知りはしなかった。 
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