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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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エコナは今…

お父さん曰く「僕が得た確かな情報によると、幽霊船はロマリア沖を彷徨っているそうだ!だから行こう!」

私から聞き出した情報を皆に伝え、強引に行き先を設定する我が父。
「と、父さん…ロマリア沖であれば、ルーラを使って頂きたいのですが…」
そのくせルーラを使用しようとしない我が儘っぷり!
「そんなにお前はアルルを強くしたくないの?」
そしてその言い訳が、言われた方にはむかっ腹が立つ口調の台詞!

更には…
「この近くに、僕の愛人が町を作ってるんだよ!ちょっと寄って行こ!」
と、『ただ単に愛人に会いたいだけだろ!』ってツッコミすら無駄に思えるあの性格が羨ましい…





マジ凄い…
数ヶ月前まで何もない場所だったのに、ここには町が出来上がっている。
勿論まだ途中なのだが、でも既に立派な町だ。

「す、凄いですねぇ…この短期間で、此処まで町を作り上げるなんて…」
ハツキさんが感心しながら溜息を吐いている…
これをあの巨乳ちゃんが行ったと思うと………

呆然と造りかけの町並みを観察していると、何時の間にやらエコナさんの屋敷前に辿り着いていた。
しかし私達より先に変な爺さんが居り、門番と押し問答している…

「ちょっと、ご老人相手に何してるんですか!?」
う~ん…この場合どっちが悪いのか判らないけど、取り敢えず老人に加勢するのが常識人よね…
「その老人がエコナ様の邪魔をするから、我々は仕事として追い返しているだけです!」
あら、老人悪者?
「ち、違う!ワシ、エコナと、話したい。それなのに、邪魔、言われる。エコナに、会わせない!」
って、よく見たらこの老人、この場所で町造りを始めたタイロン老人じゃん!
エコナさんの命の恩人よ…

「おい!僕等もエコナに会いたいんだ!」
「ふざけるな!エコナ様はお忙しいんだ…アポイントメントのない者を通すわけにはいかない!」
アポ無しじゃ会えないって…偉くなったもんね~…
うん。とっても悪い兆し♥

(ドカ!)
「最後通告だ!今すぐ快く通さなければ、貰っている給料じゃ割に合わないほどの痛い目に遭わせるぞ…」
わぉ凄い!
お父さんが門番を脅す為、素手で壁を破壊しましたわ…
それを見た門番は、
「ど、どうぞ…」
って、腰抜かして通してくれた。
あはははは、ダッセー!



「お父さん格好いい!娘が皆ファザコンになるのが分かるわぁ~!」
私は思わずお父さんに近付き、褒め称えながら抱き付こうとした…が、
「いってぇ~!!素手でやるんじゃなかったぁ~!」
と、右手を押さえ蹲ってしまった…

「いてぇ~…ベホイミ…ベホイミィ!」
う~ん…こっちはちょっと格好悪い…
「わぁ~…ゴメン…やっぱ、格好悪~い」
未だに掴めないキャラねぇ…



人様のお屋敷ではあるのだが、元仲間のお家と言うことで遠慮がない私達…もとい、私のお父さん。
ズカズカと屋敷内を探索し、会議室の様な部屋へ勝手に入って行く…
「リュ、リュカはん!?どうしたん、急に!?」
勿論驚くエコナさん。
「エコナの事が恋しくなって会いに来ちゃった!」
きっと嘘なんだけど、妻と子供等の前で言う嘘ではない!
躊躇することなく愛人(エコナ)を抱き寄せキスをする。

「うふふ…流石はリュカはんや。嘘でも嬉しいわぁ…女心を良う解ってるやん!」
「でしょ!女心だったら任せてよ!」
うん。嘘であることは否定しない…

「エコナ、ワシ、話しある!」
そんな父に呆然としていると、タイロンさんが突然何かを訴えだした。
「ちっ!………あ、あんな爺さん…悪いんやけどウチ忙しいねん!…リュカはん達にも申し訳あらへんけど、今大事な打合せ中なんや…少し別室で待っててくれる?」
今舌打ちした!
完全に関係が悪化しているじゃん…

「…少しくらいなら構わないけど、僕お腹空いたから何か食べ物をくれる?」
「あ…え、ええで!直ぐに用意させるわ!…しかし相変わらず遠慮が無いなぁ、リュカはんは!」
「まぁね!本当はエコナを喰べに来たんだけど、忙しそうだから…」
「ははは…ま、また今度な…」
重傷ね…
お前を喰べたいって言ったのに、それをやんわり断ったわ。
リュカラブ♡のエコナさんが…



私達は屋敷のメイドさんに案内されて、別室でエコナさんを待つことになった…
お父さんの要望通り、大量のお食事を振る舞われ…
でも、とても食べる気になれない。
何とか“エコナさん破滅”イベントは回避しなければならない…私の所為で彼女が不幸になるのは避けなければ。

「余裕が無さそうだな…エコナ…」
不意に呟いたお父さん。
「そりゃ大切な打合せ中に勝手に押しかけ、部下の目の前でキスしたり口説いたりされれば、誰だって取り繕う為余裕が無くなりますよ!」
相変わらずお兄ちゃんは解ってない…

「お前は何も分かって無いな、ティミー…」
「な、何がですか!?」
「はぁ…説明すんのもめんどいから、少し黙っててくれ…」
流石のお父さんも疲れた様だ…

「なぁ爺さん…何があったんだ?」
お兄ちゃんへの説明を回避し、事態の把握の為タイロンさんへ直接尋ねるお父さん。
そしてタイロンさんから語られた、エコナさんの評判…
さ、最悪だぁ………


「はぁ~………そんな事だろうと思ったよ……エコナは視野が狭い!町を大きくする事しか見てない………焦る事無いのになぁ…」
いやいや…まったりこいてる場合じゃないわよ!
何とか助けてあげないと…



「お待たせリュカはん!…けど、あまり時間は無いねん!仕事が溜まっててな………で、急にどないしたん?」
お父さんが一言も喋らなくなって数十分…
やっとエコナさんが私達の前に姿を現した。

「うん…これと言った用事があるわけでも無いんだけど、この近くを通りかかったからさ…様子を見ておこうかなと思って……忙しい所ゴメンね」
珍しく手探りで会話を続けるお父さん。
その間もエコナさんはタイロンさんとは目を合わせない…

「気にしてくれてありがとうな!ウチがお相手出来へんけど、町の様子を見て行ってや!特産物のないこの町を有名にする為、娯楽施設を仰山建てるつもりやねんけど、その1発目の劇場が半月前にオープンしたんや!是非楽しんで行ってや!」
大した用事が無いと聞くや、早々に立ち去ろうとするエコナさん。
町造りに口出しされることを嫌がっているのが手に取る様に分かる。

「エコナ待って!…話したい事があるんだが…」
「………忙しいんで手短に…」
大好きだった人から話しかけられているのに、心底嫌そうな顔をする…責任とは人をここまで変えるのか!?

「…爺さんから聞いたよ。町民を働かせ過ぎてるって!」
「た、確かに…町全体が忙し過ぎやけど、ちゃんと給料は払ってるで!労働に見合う金額を!」
「エコナ…金を払えば何をやっても許されるわけじゃない!人間には休息が必要なんだ…金が有ったって使う時間が無ければ意味がない!」
そうだ…機械の部品じゃないんだから、休ませることも必要よ!

「そ、そないな事は分かってる!でも、今は重要な時なんや!今を乗り越えれば必ず余裕が出来る!…その時までの辛抱や!」
出た!
経営者の言いそうな台詞…『今を乗り越えなきゃ…』その“今”って何時までの事だよ!

「…確かにエコナの言う通り、今を乗り切れば余裕が出来るのかもしれない…でも、その『今』って何時まで続くんだ?…町民達は我慢できなくなっているんだよ」
「そな事言うても仕方ないやん!町を大きくして、この町に住む人々の暮らしを豊かにしたい!その為には、今頑張らなあかんねん!文句を言う連中は、先が見えて無いねん!ウチには責任がある!」
またまた出た!
“みんなの為”的な!

「エコナは町を大きくすると言う意味を勘違いしてるぞ!今エコナが行っているのは、ただ町の規模を大きくしているだけで、町の質を考慮していない!其処に住む人々の心も一緒に成長させなければ、遠くない未来にこの町は崩壊する!」
「な………!!ウ、ウチの苦労も知らんくせに偉そうな事言うな!ウチは忙しいんや!さっさと出て行け!」
図星ズッボシで叫んじゃうエコナちゃん。

「あ!?あ~あ………行っちゃった…」
「行っちゃったじゃないですよ!エコナさんが怒るのもムリ無いです……そりゃエコナさんに不満が集まっているのは分かります!…けど頑張っている人に、あんな言い方は酷いと思いますよ。エコナさんの苦労も汲んであげないと…」
はぁ?このやり取りを見てまだ分かってない男が居る…って、私のお兄ちゃんじゃん!

「それは違うわ、お兄ちゃん!エコナさんの努力が間違っているから、お父さんはエコナさんに注意を促したのよ!」
「努力が間違ってる…?そ、それはどういう…」
解らないの?
町の人達の為って言っておいて、その町の人達を苦しめているのは誰よ!

「町を育てるという事と、町の規模を大きくするという事とは、大きく異なるんだ…町の規模を大きくするだけなら、金さえかければ誰にでも出来る。建物を建てて、商店を誘致して、人々を呼び込めば自ずと町は大きくなるだろう…今、エコナがやっている様にね」
そう…ゲームの世界では金さえあれば町なんて簡単に造れちゃう。

「町を育てるという事は、其処に住む人々と共に育たなくては意味がない!住民が必要としている物を造り、その為に住民が自らの意志で努力する…そうでなければ本当に住み易い町は出来上がらないんだ!町民が望まぬ物の為に、休む間も与えられず働く…果たして出来上がった施設を、町民達は好きになるだろうか?」
う~ん…流石強制労働を10年間やらされ続けてきた人ね…言葉に重みが在るわ。

「………だとしても、エコナさんは頑張っています!他人に丸投げして、一人サボっている何処かの国王とは違います!其処は評価するべきでしょう…父さんも、町民の皆さんも!」
まだ言うか!?
もうお父さんへの対抗心から言ってるとしか思えないわ!

(パシン!!)
「ティミー!貴方はリュカの事をそんな目で見ていたの!?」
思わず怒鳴ろうかと思ったら、先にお母さんが行動に出てしまった。
お兄ちゃんに平手打ちをかまし、泣きながらお父さんを庇う。

「か、母さん…!?」
「ビアンカ、落ち着いて…ともかく座って…」
きっと初めてお母さんに叩かれたんだと思う…
お兄ちゃん、凄く呆然としている。

「ティミー…憶えているかい?何時だったか、子供達全員でクッキーを作ってくれた時の事を?」
そんなお兄ちゃんに気を使ってるのか、凄く優しい口調で語りかけるお父さん。
「…はい、憶えてます…」

「ふふ…じゃぁその時お前は、リュリュのクッキーをどのくらい食べてあげたんだ?」
リュリュお姉ちゃんのクッキー…
私も一口…いや、一欠片食しましたが、思い出すだけで吐き気が蘇る。
アレは食べたことある者にしか分からない地獄…

「………父さんの5倍は食べました」
そんなに食ったの!?
恋の力ってすげー!
「凄いな…あのクッキーをそんなに………じゃぁ次の質問だが、あのクッキーがポピーの作品だったら、お前は僕の5倍もの量を食べたかい?」
「いえ、ポピーの手作りだったら絶対に食べません!アイツに其処までしてやる義理はありませんから!」
どんだけ嫌いなんだよ…双子の妹だろ…もうちょっと好きになってあげなよ………まぁ気持ちは解るけど。

「…お前…双子の妹なんだから、もう少し優しくしてやれよ………まぁいい…つまり、そう言う事だよ」
「はぁ?何がですか!?」
「エコナは町が大きくなる事を楽しんでるんだ!寝る間も惜しんで働いて、町が大きくなる事で喜びを得てるんだ。不味くても大好きなリュリュの笑顔を見たいが為に、お前がクッキーを食べ続けるのと同じ理由さ!…だが住民達は違う!町が大きくなる事よりも休息を欲しがっている…」
なるほど…

「自らする必要のない苦労を勝手にして、それを認め敬えなんて都合(ムシ)が良すぎでしょ!他のみんなは休みを望んでいるのだから!そう思わない、お兄ちゃん?」
凄く解りやすい説明だったわ。

「エコナちゃんは実質この町の長よ!この町を牛耳っているのは彼女なのよ!上に立つ者は、常に皆の心に留意してなければならないの…民が何を望んでいるのかを把握し、そしてそれに応える様努力する。それが町長であり国王なのよティミー!貴方は知らないでしょうけど、貴方のお父さんはそれを実行しているわよ!」
お母さん…まだちょっと怒ってる…口調がキツイもん。

「リュカは常々城を抜け出し、市井の生活を観察してるのよ。そして民に気さくに話しかけ、国民の生活状況を把握し、何を求めているのかを理解しようと勤めてる!その結果、大臣や官僚達が推進する政策は遅らせてるけど、国民が望む政策は優先的に推し進めているのよ!貴方にはそれがサボっている様に見えてたの!?お母さんは悲しいわ…」
えー!?
それは知らなかったわぁ…
そんな事してたんだ?へー…スゲー…

「お母さん、お兄ちゃんを責めちゃダメよ!結果的に国民の思いを理解する事が出来ただけであって、最初はサボってただけなんでしょうから!ね、お父さん!」
絶対そうよ。
最初から狙ってやってないわよ!
「まぁ…結果的にはそうなるかなぁ…」

「ほら!お兄ちゃんは最初の頃の行動だけを見て、サボっている物と思い込んじゃってるのよ!オジロンさんが常日頃から『あのボンクラまたサボって遊びに行きおった!』と、嘆いてるのを目の当たりにしているのも原因かしら?」
だって私だってサボっていると思ってたもん。



「なぁ旦那…今此処で悩んでいても、あのネェちゃんが頑なになってるん、じゃどうしようもないだろう…ともかく今は気分を変えて、劇場にでも行ってみないか!?あのネェちゃんが躍起になって誘致したみたいだし…どんな物か見学しようぜ!」
ちょっと気まずい雰囲気に耐えられなくなったカンダタ。
「良いアイデアねカンダタさん!私も見てみたいし、劇場へ行きましょうよ!」
同じくハツキさんもカンダタの提案に乗っかる形で劇場見学に誘った。

「良いねぇ!みんなでパーッとやりますか!」
うん。やっぱりお父さんは明るい口調の方がいい!
落ち込みムードは我が家の家風に似合わないわよ!
さぁ、話も纏まった事だし、エコナバーグ劇場へレッツらゴー!

……………あら、そう言えば劇場って何かあったわよね!?



 
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