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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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ジジイに杖渡す

昨晩の一騒動も過去となり、明けた朝は雨模様だった。
お兄ちゃんの左頬だけに騒動の証拠がクッキリ残り、私達に密かなる連帯感を与えてくれる。

ウルフと共に食堂へ赴くと、既にお兄ちゃんとアルルさんがそこに居て、仲良さそうに朝食を取っている。
昨晩のことを知らない者から見たら、あの二人がイチャイチャするなど珍しい…

私達より一瞬早く入ってきたお父さんが、不思議そうな表情で2人を眺めている。
左頬に紅葉跡があり、それでもイチャつくカップルは興味の的だ!
色事の達人ならばその辺は察してスルーしてくれるかもしれない…けど、

「あ~…ティミー君…その…何だ…それ、どうしたの?」
やはりダメだったか…
流石のお父さんでも、お兄ちゃんの頬の跡が気になって、思わず尋ねてしまってる。

「あ…いや…こ、これは…」
お兄ちゃんにはぐらかすスキルが在るとは思えず、私は慌ててフォローに入る。
「あー!!お、お兄ちゃん!アルルさん!ご、ご相談があるのですが!!今よろしいですか!?」
折角良い感じで進展した2人なのだから、妙にぎこちなくさせたくないです!

「な、何かなマリー」
「ま、まぁマリーちゃん!とっても急用みたいね!」
私の咄嗟の行動に、わざとらしさ大爆発で対応してくれるお二人…
「えっと~あの~…急用…ですわよねぇ…あのね……………あ、そうだ!『祠の牢獄』に行く前に、先にグリンラッドのお爺さんの元へ赴いてほしいんです!先に『変化の杖』と『船乗りの骨』を交換してもらい、何時でも幽霊船に遭遇できるようにスタンバっておきたいんです!」
そ、そうよ…このチャンスを利用して、船乗りの骨を先に入手しなければ!

その後も取り留めない会話を持続していたが、ウルフがお父様に拉致られて食堂の端の方でデコピンを受けている。
ウルフ…アナタの尊い犠牲は無駄にしないわ。


そしてお父さんは幾つかの食べ物を取ると、自室のお母さんの下へ帰っていった…
朝食を食べながらイチャつく予定らしい…

「ど、どうやら誤魔化せたかしら?」
私は彼に労いの言葉をかけた…が、
「ムリだね……俺の一言が原因なのも悟られたね!」
「あ、あのやり取りだけで!?」
いや…いくら何でもそこまで分かるもんかしら?

「マリー…君は自分のお父さんを侮りすぎだ!そう見せないだけで、リュカさんは凄い人なんだから!」
「ほんと、凄い人だよ…もう少し真面目に生きてくれれば最高の父親なんだけど…」
何だかんだ言ってお兄ちゃんもお父さんの凄さを認めているのね…

「ティミーさん、それは違う!考えてみて下さい…程良く真面目なリュカさんを…アルルは絶対にリュカさんに惚れますよ!ティミーさんに勝ち目はありませんよ!」
その通りだ!
そんなステキパパだったら、私もどうなっていたことか…
「ティミー…お父さんが不真面目で良かったわね♡」
あはははは…
不真面目で良かったなんて、どんな父親だよ!






数日経ち、私達は再びグリンラッドのじーさまに会いに来ました。
重要アイテムの『船乗りの骨』を入手する為に。
「じゃ~ん!お爺ちゃん、手に入れたわよ『変化の杖』を!」
「お…おぉぉぉぉ!何と本当に手に入れてくるとは……よ、良し!船乗りの骨と交換じゃ!」
見せびらかす様に杖をじーさんの鼻っ面へ突き付けると、大喜びしながら船乗りの骨を取り出した。
でも…交換しようとした瞬間、お父さんが変化の杖を私から取り上げ、この取引を妨害し始めた。

「な、何じゃ!?この骨との交換の約束じゃぞ!…いらんのか船乗りの骨…」
いや、要るし!絶対に必要だし!!
「爺さん…聞きたい事がある。この杖を使って何をするつもりだ?」
「何って…変化の杖じゃぞ!変化するんじゃよ!」
そうよ。他の用途が見つからないわ!

「先に僕のドラゴンの杖で、屍に変化させるぞ!変化して何するのかって聞いてるの!…悪用されると困るのだが…」
ちょっと…そんなに怒らないでよ…怖い…
「悪用ぅ?変化する事しか出来んのに、どう悪用するんじゃ!?」
「どうもこうも、他人に化けて悪事を働く事は出来るだろ!」

「安心せい!ワシはグリンラッドから出る気は無い!時折やって来る者を驚かしたいだけじゃ!」
じーさんと睨み合うお父さん…
サマンオサの悲劇が相当心に残っているのね…
でもそれがないと先に進めないんだけど………

「お、お父さん…お爺さんの事を信じましょうよ…この人は悪い人じゃ無いですよ!」
「そ、そうですよリュカさん!マリーの言う通り、この爺さんなら大丈夫だよ!万が一変化の杖を悪用されても、俺達にはラーの鏡があるじゃんか!」
私もウルフも、口を揃えてじーさんの安全性を力説する。

「……………」
お父さんは目を瞑り、少しだけ考えると私の手を取り、
「マリー…ちょっと……………あ、他のみんなは待ってて!」
小屋の外へと連れ出した。


ハンパなく寒いんですけど…
早く室内へ戻りましょうっよ~…
「なぁマリー…」
「な、なんですかぁ?寒いので手短にお願いしますぅ~…」
「あの船乗りの骨って何に使うアイテムなの?絶対に必要なの?」

「えっと…船乗りの骨がないと、幽霊船が見つけられないんです。そうすると幽霊船内に在る『愛の思いで』ってアイテムが手に入らなくなり…『愛の思いで』がないと『ガイアの剣』が手に入らず…最終的には『シルバーオーブ』が入手不可になるんです!だから絶対に杖と交換しなければならないんですよ!」
何を心配しているのかは分からないけど交換は必須なんだから、早く暖かい室内に入って交換を済ませちゃいましょうよぉ~

「う~ん…そう言うことか…」
お父さんは暫く考えると、寒そうに体中を擦りながら、みんなが待つ室内へと騒がしく戻って行く…
「さみー!外、ものっそい寒いよ!バカじゃないの!?」
そんな馬鹿みたいな事に付き合わされた私って…

「おい爺さん!数ヶ月間の物々レンタルって言うのはどうだ!?」
「…何じゃ、物々レンタルってのは?」
物々交換とは違うの?

「爺さん…悪く思わないでほしいのだが、やっぱりこの杖を他人に託すわけにはいかない!この杖の所為で、大勢の弱者が虐げられるのを目撃してしまったからね…」
「何と失礼なヤツじゃ!ワシは悪用しないと言って居るだろうに!」
大丈夫だって…こんなジジイに大したことは出来ないって!

「勘違いしないでくれ…爺さんの事は疑ってない!むしろ、その後の事が心配なんだ!」
「「「その後?」」」
その後って何だ!?

「失礼な言い様だが、爺さん…アンタはもうそれ程長生き出来ないだろう…しかも家族も居なさそうだし…」
まぁ…保って10年ってとこか?
「全く持って失礼だが、その通りじゃ!それが何じゃ!?」
「爺さんが死んだ後、この杖はどうなる?誰の物になる?」
「……………」

誰の物って………誰の物!?
そのまま忘れ去られ、風化しちゃうんじゃないの?
で、でも確かに…
また悪者の手に渡ったら大変なことになるわねぇ…

「う…ぐ…で、では船乗りの骨は諦めるのじゃな!?」
いや、それは出来ない!
絶対に必要なんだから!!

「いや、だから物々レンタルを提案したい!…つまり、爺さんの『船乗りの骨』と、僕等の『変化の杖』を、期間限定で交換しようって事!」
あぁ!なるほどねぇ…
用が済んだら取り戻せば良いのね!
わ~お、頭良い!

「……………なるほど。確かに、ワシの死後はどうなるか………じゃが、もしワシが断ったらどうする?おヌシ等にはこの骨が必要なんじゃろ?」
「いや…正直言うと、今の段階では大して必要じゃない!だから今は諦めるだけだ………だがもし、僕等の旅に必要な物になれば、アンタを殺してでも手に入れるつもりだ!本当はそんな事はしたくないけどね…やむを得なくなれば、アンタ一人の命は犠牲にする!」

流石は国王…交渉上手ねぇ…
“今”は必要じゃないってのがミソね!
じーさんは今すぐにでも杖が欲しい訳だし、ここで断ったら杖が遠退く。
老い先短い身としては、断り切れないわよねぇ…

「…分かった…物々レンタルに応じよう…それが一番、ワシにとって得なようじゃ」
凄いわぁ…ちゃんと先のことも考えているなんて…
ホントに惚れそうだわ。
ウルフが側に居なかったらヤバかったかもしれない…



 
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