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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語

作者:マルバ
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SAO編  主人公:マルバ
ありふれた冒険譚◆冒険の始まり
  第四話 第一回ボス攻略、はじまる

 
前書き
マルバの戦闘スタイルの紹介で終わる話です。今日の更新はここまで。 

 
ゲーム開始から約三週間が過ぎた。
未だ、第一層の迷宮は突破されていない。

僕はひたすらずっと独りで迷宮区でレベリングをしていた。ポップした敵を片っ端から斬り上げては殴り飛ばし、弾き返しては斬り下ろししても、ようやくレベルは8になったところだ。なにせ、HP0は死を意味する。危険なことはできない。


ここは迷宮区の奥深く、ボスの部屋の近くだ。十分なコルも稼いだし、そろそろ帰るか……と思ったその時。十メートルほど先に人型のモンスターがポップした。コボルト、とか言ったっけ。ちょっとした強敵だ。しかも二体。
腰のポーチから小型ナイフ(始まりの街でたった15コルだった)を取り出し、バックブレードをつまんで右肩の上に構える。先手必勝(ファーストアタック)、スナップを効かせて投げつける!投剣基本スキル、『シングルシュート』。スナップを効かせたのになぜか回転せずに飛んでいくナイフ。茅場、こんなとこで手を抜くなよと毎回思うシーンだ。柄が命中してダメージを与えられないなんていう事態を防ぐためのものなのだろうが、何度見ても不自然である。見事後頭部に命中(クリティカルヒット)、ぐいとHPバーが四割ほど削れる。と同時にモンスター二体のカーソルが赤色に変化する。戦闘態勢に入った証だ。
マルバは右腰の主武器(メインウェポン)を抜くと左手に逆手に構え、左腰の副武器(サブウェポン)を右手に、やはり逆手に構えた。最近考えた、マルバ独自の戦闘法である。
本来、二つ以上の武器を同時に装備するとシステムにイレギュラー装備状態とみなされてしまうが、短剣はその限りではない。なぜなら、短剣は武器であると同時に追加装備でもあるからだ。要するに、普通のナイフも投げナイフとして装備できるのである。
右手の剣を右肩の上に構えると、剣が光を放つ。これは()()基本突進系スキル『リーバー』の開始モーションだ。このまま打ち込めば『リーバー』が発動し、一気にモンスターとの距離を詰めて攻撃できるが、モンスターはすでに円盾(バックラー)を構えて突進に備えている。このまま攻撃すれば大したダメージが見込めないどころか長い硬直時間を強いられるだろう。
それにも関わらずマルバは短剣を前につきだした。ソードスキルが発動し、マルバの右手は剣に引きずられるように動き……その動きの途中でマルバは剣を手放す。投剣基本スキル、『シングルシュート』。防御態勢のモンスターの円盾の上を素早く通り過ぎ、見事に頭に突き刺さる。クリティカルだ。すでに六割だったHPがさらに減って二割ほどになる。マルバはそのままリーバーを発動させたかのように突進し、左手の短剣を一閃。横斬りの一撃、『スライスエッジ』だ。速いだけが取り柄のスキルだが、予想外の事態に対応しきれていないモンスターのHPを二割削り取るには十分だった。そのまま武器を右手に持ち替え、やっと立ち直ったもう一匹のモンスターに向き直った。



「まあ、こんなところか……」
独りつぶやき、ナイフを腰の鞘にしまう。残りのポーションは五個。そろそろ帰るころだ。


帰る途中、顔見知りに出会った。

「やあ、久しぶりだな。どうだい、調子は。」
片手剣の剣士、キリトだ。エギルの紹介で知った。ベータテスター出身者で僕と同じソロプレイヤー。条件は同じはずなのに、こいつは、なんで……
「ねえ、キリト。君、今レベルいくつ?」
「お前なあ、いきなりそれ訊くのか?まあいいけどさ…。今日でレベル13になったぞ。」
……なんでこんなに差がつくかなぁ。
「君、相当効率いい狩り方してるよね。いいなあ、僕ももっとレベル上げたい。3日でレベル1つ上げるのが限界だもんなあ……。」
「あ、ああ。何事も経験だよ、経験。うん。そのうち効率もよくなるさ。」
「なんかあやしいな~。なんでどもるの。まあいいけどさ。ふん。」

そう、ベータテスターたちは総じて狩りの効率がいい。そして、何故か効率がいい狩り方を教えたがらない。理由は不明だけど。

「うう、あやしくなんてないぞ。断じて。あー、ところでさ、今度第一回ボス攻略会議があるじゃん?お前、出るの?」
「当たり前じゃん。なんのためにレベリングしてると思ってるの。」
「へえ、出るんだ。いや、なんかマルバってそういうのに出るタイプじゃないと思ってたよ。意外だなあ。」
「じゃあなに、君は僕がただ生き残るためにレベリングしてるとか思ってたわけ?失礼な。」
「えっ、違うんだ……。そっか、君は強いな。俺はいつだって自分のためだけにレベリングしてきたからなぁ。」
「なーに言ってるの。キリトだってボス戦参加するんでしょ?じゃあ、自分のためだけのレベリングじゃないよ。君のレベリングにも意味はある。」
「そういってもらえると嬉しい。……悪いな、マルバ。励ましてもらっちゃって。」
「やー、励ましてない励ましてない。ボス攻略、がんばろうよ。」
「ああ、そうだな。お互い、がんばろう。」

僕はキリトと拳を突き合わせた。
僕の物語は、ここから動き始める。そんな気がした。 
 

 
後書き
キリトくんが登場しました。まだビーターじゃないです。
また新たな設定が入ってしまいました。まず、『スライスエッジ』です。ほとんど初動モーションなしで発動できる技で、基本スキルのすぐ後に覚えられる、あまり役に立たないスキルという設定です。でもマルバくんのヒットアンドアウェイ戦法ではちょっと活躍するかも。敏捷性パラメータがスキル攻撃力に加算されます。『リニアー』と同じですね。
一応、短剣が投げナイフとして使えるのはプログレッシブ1巻に出ていたので公式設定に則った戦い方です。擬似二刀流といったところでしょうか。片方を投げナイフとして使う限り、短剣を二本装備して戦うことはできるんです。
……カーディナルシステムはどうやってその短剣が投げナイフかどうか判断するんだろう……。 
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