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俺の名はシャルル・フェニックス

作者:南の星
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火巫女と不死鳥

俺の名はシャルル・フェニックス。

5歳、片手をパーでつきだすだけで相手に年齢を伝えられるという利点がある年齢だ。

いや、まぁ、本当に5歳だ。

20を超えた大人が幼児服を着て「ぼく、5さい、だっこしてー」とか言う羞恥プレイをしてるわけではない。

断じて違う。

もう一度言おう。

俺の名はシャルル・フェニックス。

前世の記憶を持つ珍しい5歳児だ。

会社から帰り仮眠をとり、目を覚ましたら生まれて間もない赤ん坊となっていた元社会人。

精神年齢は三十路が迫った29歳。

赤ちゃんプレイという恥ずかしすぎて泣ける体験をした元大人、現幼児。

要するに転生という体験をしてしまったわけだ。

ちょっと泣きたい。

ようやく人生といものが軌道に乗ったのにリセットってどんな虐め?

ここまで悪質で大それた虐めなんて俺初めてだよ。

裁判すら起こせねえよ。

っていうか、誰に対して裁判を起こせばいいのかすら分からんね。



そして








なんか、悪魔やってます。


フェニックス。

37番目の悪魔。

またの名を不死鳥。

そしてファンタジーでよく出てくる焼けた鳥。

俺にはそれくらいの知識しかないが、まぁ、そんな知識でも俺の転生先であるこの世界がどんな世界なのかははっきりと分かってしまった。

ハイスクールD×D。

それが俺の転生先たる世界につけられていた名だった。

そして、その二巻目に出てくる敵役、ヒロインのリアス・グレモリーの婚約者、フェニックス家の3男坊ライザー・フェニックス。

ホストみたいな性格をした焼鳥。

そんな腹違いの兄を持つフェニックス家の4男坊、シャルル・フェニックス。

それが俺だった。

そして今、何故か日本の神社に預けられることとなった。

親父様に人間界を見て回りたい、と言ったらこうなった。

まぁ、親父様も義母様も俺との距離を計りかねてるからな。

仕方ないっちゃあ仕方ない。

期間は4ヶ月程度。

その後は欧州、中国と各々4ヶ月程度。

つまり、1年間の旅だ。

ワクワクするね。



フェニックス家の使用人が運転する車に揺られること30分くらい。

どうやらついたらしい。

そういやぁさ。

悪魔である俺と使用人の二人が神社なんかに入っていいのかね?

一応敵側って認識で間違ってはないはずなんだがな。

いったいどうなってるやら。

「シャルル様、お着きになりましたよ」

へいへい。

わぁーってますって。

降りりゃあいいんでしょ?

開けられたドアから車を降りる。

目前には掃除の行き届いた石段。

それを登ると小山の頂上に鳥居がある。

5歳児に石段を登らせるって虐めか!

クッ……いつか、虐め返してやるッ……。

怨めしげに石段を睨み付けてから、はぁ、と重い溜め息をついて一歩一歩恨みをぶつけるように踏みしめて登っていく。

まぁ、数えたくなくなる程の石段だったが、5歳児と言っても悪魔なわけで。

そこらの5歳児よりも体力があるのでちょっと疲れたな、くらいで登れた。

でも、まさか今日から4ヶ月間この階段を毎日登り降りする訳じゃないよな?

だったら駄々をこねる自信あるんだけど……

まぁ、嘘だけど。


それよりも、ここ神社?

鳥居以外漆喰の塀で囲まれてるんだけど……

まるで武家屋敷みたいな…………

やべっ、すっげぇ嫌な気がしてきた。

そう言えば、ここに来る前に親父にここについて聞いたような気が……

確か……ホトギ神社って…………

そのホトギって星伽じゃあるまいな。親父様。

ま、そんなわけねえか。

「えっと……は、初めてまして……
星伽白雪と言います……」

HAHAHA、聞いてくれよジョニー

目の前にいる大和撫子の権化とでも言っていい少女がさ。

あの"星伽白雪"って名乗ったンだぜ

そん時、俺は思ったのさ。

原作って何でしょうねってね。

HAHAHAHAHAHA!!

「あの……どうかしたんですか……」

壊れかけていた俺をみて不安そうな顔で尋ねてきた。

「何でもねぇさ。
そんな綺麗な黒髪初めて見たからな。
ちょっと見惚れてただけさ。
俺の名はシャルル・フェニックス。
よろしくな」

いや、まぁ、前世で見慣れてるけどシャルルとしては初めてだからまぁ嘘は言ってない。

それよか、ちゃんとリカバリーできた俺を褒めたいね。

「……あ……えっと……よろしくお願いします……」

綺麗な黒髪と言われたのが嬉しかったのか少し照れながらもペコリと頭を下げた。

もしかすると、星伽候天流(ほとぎそうてんりゅう)使えんのかね?

なら、ぜひ眷属に欲しいね。

頑張ってアプローチすりゃあスカウト出来んかな?

「ああ、じゃあ、案内してくれねぇか?」

「……あっ、はい。
こっちです」

白雪の案内のもと俺は星伽神社を探索した。

いてもいなくても変わんないけど使用人はもういない。

完全にアウェイだが、まぁなんとかなるだろ。

眷属スカウト。


今日から4ヶ月間、基本白雪と一緒にいた。

最初は固かったが、まぁ、互いに5歳児(片方は精神年齢三十路間近)だから、遊べば心を開いてくれた。

まぁ、4ヶ月間ずぅぅぅぅぅぅっと境内だったことには不満だったが……

これじゃあ、本当に籠の中の鳥じゃねぇか。

だから、白雪を連れてこっそり抜け出しても仕方がないと思う。

そんなこんなで4ヶ月も過ぎ、白雪とはお別れとなった。

俺は星伽神社に送りに来た使用人が運転する車に乗り窓から白雪に別れの挨拶をしてる。

「なぁ、駒貰えたらさ。
俺の眷属になってくんね?」

「駒……?シャルちゃん将棋で遊ぶの?」

白雪は目を潤ませながら、ぐすっと鼻を啜りながら検討外れなことを応えた。

まぁ、星伽神社にチェスなんかなかったから仕方ねぇか。

それ以前にまだ5歳児だかんな。

「そっちの駒じゃねぇって。
上級悪魔はな眷属を作るために『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』って駒を与えるんだ。
そんで転生悪魔に成るんだけど……まぁ一万年俺と一緒にいてくんねぇかなってお誘いさ。
考えといてくれな。
また会った時に聞くからよ」

「…………わかった……待ってるから。
迎えに来てね」

迎えに来てね、か。

これはOKってことなんかね。

でも、まぁ、所詮5歳児だしな。

気も変わるかもしんねぇ。

期待して待っとくかね。

「ああ、んじゃあな。
元気にしてろよ」

「うん。シャルちゃんもちゃんとご飯食べてよく寝てね。
あっ、歯磨きもちゃんとするんだよ」

「りょーかい。もう行くからな窓閉めんぜ。
離れな」

「……うん」

数歩白雪が後ろに下がるのを確認してから車の窓を閉める。

すると、ゆっくりと車が発車した。

「シャルちゃ――ん!!
ぜったいだよおお――!!」

ブンブンと手を振り、見送る白雪に手を振り返し。

ニヤッと笑う。

まぁ、当然だろってことだ。

それから白雪が見えなくなるまで俺は手を振り続けた。


さて、次は中国か。

中華料理を食ってみたかったから行くことになったんだよな。

まぁ、たらふく食いますかねー。


 
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