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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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人を好きになる事と、愛する事の違い

 
前書き
お久な更新。
皆さん大好き、マリーちゃんです! 

 
「リュ、リュカさん……これは…お、俺の…ミスです…マリー…を…叱らないで…く、下さい…」
ウルフちゃんは大量に出血をした為、喋る事すら大変な事なのに、私を胸に抱き寄せてお父様から庇ってくれる。
そして、そのままの体勢で気を失い、一瞬私の心胆を寒からしめた。

「………ったく………マリー、お前には勿体ないほどの男だな…」
「お、お父様…」
お父様の言葉が胸に突き刺さる…
「マリー…今後、お前が心を成長させなければ、お前等二人を認める事は出来ない…ウルフには、もっと素敵な女性が似合うはず。今のお前の様な娘ではなくな!…ウルフの事が本当に好きなのなら、自分自身を成長させろ…身体ではなく心を!…そんな人生を歩んできたお前には、些か難しい事だと覚悟しろ!」
そう…私にはウルフさんと対等に付き合う資格は無いのだ…
何を見てきても命の尊さに気付かず…ウルフさんを性的欲求の捌け口対象と見ていた私には、(ウルフ)に愛される資格は無いのかもしれない…

その事に気付かされ、私は初めてウルフさんの事を好きに…愛してしまっている事に気付いたのだ。
でも今のままの私では、愛される資格は無い。
私は変わらなければいけないのだ…心を成長させねばならないのだ。
だから…ウルフさんが目を覚ましたら、私の愛の気持ちを伝えよう。
心から愛してしまった、私の気持ちを伝えよう。
今回の件の、感謝の言葉も謝罪の言葉も、先ずは愛しさを告げてからだ!


気を失ったウルフさんをお兄様が抱き抱え、直ぐ近くの袋小路へと移動する私達。
そこにあった2つの宝箱を、お父様が瞬時に破壊して(2つともミミックだった)安全を確保する。
毛布などを敷き、そこにウルフさんを寝かせるとお父様は徐に告げる。
「みんなはここで待機しててよ…まだウルフは動く事が出来なさそうだし…安静にさせないとね。ラーの鏡は僕が取ってくる…その方が身動き取りやすいし」
そう言うとさっさと踵を返し、洞窟内へと姿を消した。

万が一敵が侵入してきた時の為、お兄様とアルル様が入口付近で待機する。
お母様は、ウルフさんとお兄様達の間で携行食の準備をしながらウルフさんの看病をしている。
私は…私はただウルフさんの手を握り、ウルフさんの顔を見つめ、早く回復する事を願うしか出来ない…
不安と、申し訳なさと、悲しみと、そして愛しさで側から離れる事が出来ないのだ。
何も出来ない…何もしてあげられないのに、怖くて側を離れる事が出来ないでいる!


暫くするとウルフさんが目を覚ました…
血の気のない真っ青な顔色で…
ホイミ系は万能ではない。
傷を癒す事しかできないホイミ系は、失った血液の補充をしてはくれない。
傷口を塞ぎ、それ以上の出血を防いでも、失った血は戻らないのだ。
ゲームではHPが1になっても、ベホマを唱えれば完全回復をするのに、現実だと死の危機からは脱する訳ではないのだ。

そんな死の淵を漂っているウルフさんに抱き付き、私は力の限り叫んでいた。
「私は…私はウルフさんを愛してます!だから…だから私を残して死なないでください!私の所為でごめんなさい!ウルフさんを危険に晒すつもりは無かったんです…こんな私の事を助けてくれてありがとうございます!私はウルフさんに対して、これからの人生を捧げ、今回の謝罪と感謝をしていきたいと思ってます。だから私を残して死なないでください!大好きなんです…愛してしまったんです!」
お父様に怒られても、お兄様に嫌われても…私は彼にだけは好かれたい!愛されたい!!その一心で叫び続けた!
でも…
「そんな謝罪も、そんな感謝も…今の君からは受け取れない…」
弱々しく静かな口調なのに、彼の声は頭に響き渡った。

やはり私は嫌われてしまったのだ…
そう思い絶望しかけた時…
「そんな『ウルフさん』とか『ウルフ様』とか…他人行儀に呼ばれる間柄の女性を助ける為、俺は自らの命を晒したのではない!恋人同士なら、敬称は不要でしょ?…ね、マリー!」
ズキュンときた!
間違いなく(ウルフ)は、(リュカ)の一番弟子だ!
だってもう…言葉に出来ない程、好きで好きで…愛おしくなってしまってるんだもの!

私は瞳を潤ませ何も言えず、ただウルフの顔を見つめている。
するとお母様が食べやすく一口サイズにしてくれた携行パンと、在り合わせの食材で作ったスープを私に手渡してくれる。
私はウルフの体を支える様に寄り添い、食事を手伝った。
そして私は小声で呟く…
「ウルフ…大好き…」




この袋小路に陣取り、お父様を見送ってから10時間程が経過した頃…
「ただいまぁ…あー、疲れたぁ!」
まるで遠距離通勤をしているサラリーマンのオッサンの様に、私のお父様は戻ってきた。
「お帰りなさいアナタ。食事にします?お風呂にします?それともワ・タ・シ!?」
すると示し合わせた様に、お母様もノッてきちゃいました!
横になっているウルフが苦しそうに大爆笑…も~、重体なんだから苦しめないでよ~!
きっとこのネタをお母様に仕込んだのはお父様ね!
だってこんなコントみたいなネタ、お母様が思い付くとは思えないもの!

「お!笑えるぐらいまでは回復したか!」
「はい、お陰様で……でも、もう勘弁して下さい。笑うと苦しいので…」
まったくよ…ウルフを苦しめるのは止めてよね!
「そうか…じゃぁ、後1日は此処で待機だな。ほれ、食べ物を買ってきたから…」
え、買ってきた!?
お父様は懐からレバーやほうれん草などの血になりやすい食料を取り出しお母様に託す。

「どうしたんです、これ?」
「え?だから買って来たんだって!」
うん。お兄様の疑問は当然です…だって、わざわざ一旦洞窟から出て買い物をして戻ってくるって…
でもお父様は、さも当たり前の様に答えて気にした様子は無い…
お母様も感覚が麻痺しているのか、気にすることなく託された食材を手早く調理し、ウルフに食べさせる為、私に手渡してきた。

そして、みんな揃って食事の時間に…
一家団欒な雰囲気で、食べる食事はやっぱり美味しい。
こんな状況だし大した料理では無いのに、それでも楽しく食べるご飯は美味しいのです。
私やっと気付きました…
お父様は楽しい雰囲気を作る名人なのですね。
私もこんな家庭を築きたいですぅ!



 
 

 
後書き
頑張ってマリーちゃんの方も完結させま~す。
…先は長いね。 
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