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最強イタリア軍

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第三章


第三章

「折角捕虜になりに来たのに!」
「何でなんだ!」
「白旗が見えないのか!?」
「銃もほら!捨てるぞ!」
 実際に銃を砂漠の上に一斉に捨ててみせる。整備のことは考えていない。
「だから捕虜にさせてくれ!」
「降伏したいんだ!」
「戦いたくないんだよ!」
「そんなに言うなら向こうのアメリカ軍の陣地に行け!」
 またイギリス軍から返事が来た。
「そこで好きなだけ捕虜になれ!連絡はしておく!」
「えっ、じゃあイギリス軍のまずい飯を食わなくていいのか!」
「それはいい!」
 アメリカ軍の捕虜になると聞いてだ。一斉に顔をあげてだ。彼等は口々にこう言った。
「じゃあ今から行くか!」
「ヤンキーのところでステーキを食うか!」
「そうしよう!これで捕虜だ!」
「戦わずにただで飯が食えるぞ!」
 こうしてであった。彼等は嬉々として砂漠を駆けてだ。アメリカ軍の陣地の位置も確かめないで捕虜になりに行った。彼等が捜索に出ていたアメリカ軍に投稿したのは真夜中のことであった。
 外での戦争はこんな有様だった。そしてだ。
 戦局はイタリア軍にとって悪化してだ。シチリアからイタリア本土に上陸された。ここでもドイツ軍は彼等に悩まさせられるのであった。
 教会がだ。いきなり爆発したのだ。
「な、何だ!?」
「落雷で爆発しただと!?」
「教会がか!?」
「避雷針はあっただろ!」
 この時代では最早常識のことだ。当然イタリアでもだ。
「それで何で教会が爆発したんだ?」
「燃えたんじゃなくて爆発したとは一体」
「何があったんだ!?」
「連合軍の爆撃か?」
 こんな言葉も出た。
「まさか。雨の時を狙ってか」
「馬鹿を言え」
 だがそれは否定された。すぐにだ。
「幾ら連合軍でもそれはできないぞ」
「雨だとやっぱり無理か」
「あの連中でも」
 この時代はまだ全天候の航空機はなかったと言ってもいい。それが可能になるのはこの戦争からまだ先のことであったのだ。
「じゃあどうしてなんだ?」
「教会の爆発なんて尋常じゃないぞ」
「イタリア軍が何かやったのか?」
「また奴等か?」
 彼等も自然とこう考えるようになった。そしてその予想は正解だった。何とだ。
 イタリア軍はだ。教会の中に火薬を保管しておいたのだ。しかもだ。
 教会にだ。避雷針を置いていなかった。肝心のそれをだ。
 それを知ってだ。ドイツ軍の将兵達はこれまた唖然となった。
「何で火薬を教会に置くんだ?」
「何故避雷針を置かないんだ?」
「あの連中今度は何考えてたんだ」
「一体」
 その謎はだ。他ならないイタリア軍の将兵達から話された。その理由は。
「だから。教会だからだよ」
「教会は神様の場所だよ」
「だから。神様が守って下さるから」
「それでなんだよ」
「だから避雷針を置かなかったんだ」
「火薬も保管したんだ」
 それでだというのであった。
「いやあ、けれどね」
「神様は守ってくれなかったね」
「神様も厳しいよ」
「全くだね」
「せちがらい世の中だよ」
 いぶかしみながらこんなことを言う彼等にだ。ドイツ軍の将兵達はこれまた呆れるしかなかった。そうしてソーセージに黒パン、ジャガイモという質素な食事を採りながらだ。愚痴めいたことを話すのだった。
 
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