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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第三十九話 堕天使の策略

 
前書き
デビモンとの邂逅。
ツカイモン[リリカルアドベンチャー、始まります] 

 
?[………まただ…]
デジモンは、彼方へと消える黒い歯車を見つめて呟いた。
彼は誇り高き正義のデジモン、レオモン。
彼には今のデジタルワールドの状態を、みすみす見逃すことは出来なかった。
がらり、岩を擦る足音。
?[死ねっ、レオモン!!!]
叫びとともに、岩の上から宿敵オーガモンが飛び降りてくる。
その右手には愛用のスカルグレイモンの骨棍棒を携えて。
レオモンは腰の剣、獅子王丸で攻撃を受けるが、2人の武器は弾け飛ぶ。
代わりに突き刺し合うのはお互いの鋭い視線。
オーガモン[此処はてめえみてぇな良い子ちゃんがくる場所じゃねぇぜ]
レオモン[黒い歯車のせいでデジモン達が次々と狂暴化しているのだ。見過ごす訳にはいかん!!]
2体は同時に技を繰り出した。
レオモン[獣王拳!!!]
オーガモン[覇王拳!!!]
互角の威力を持つ必殺技が、相殺しきれず空気を揺るがす。
その揺らぎとともに、低く脳髄に響く声があった。
?[それくらいにしておけ…これからお前達は協力しあわねばならんのだからな]
レオモン[この声……デビモンか!?]
薄く喜色を含んだ声音が形になる。
何処からともなく悪魔がその姿を現した。
デビモン[選ばれし子供達を倒すのに、お前達の力が必要なのだよ]
レオモン[何…選ばれし子供達だと!?]
デジタルワールドに古くから伝わる言い伝え。
この世界に残された最後の希望………!!
レオモン[子供達は倒させない!!私の敵は貴様だデビモン!!!]
レオモンの闘魂が牙を剥く。
だが、食らいついたと思った刹那、デビモンの姿は掻き消えていた。
デビモン[甘いな……そんなことで私が倒されるとでも思ったのか?デスクロウ!!!]
レオモン[ぐあああああああ…!!!!]
レオモンの絶叫が魔の山に木霊する。
その余韻すら消えた時、そこに立っていたのは、既にレオモンとは言えない悪の手先だった。
レオモン[子供達………倒す]
子供達に、新たな危険が迫る。





























大輔達はムゲンマウンテンの山頂に辿り着いていた。
すずかが持参していたカメラでムゲンマウンテンから見た風景を写真に写した。
フェイト「大輔、これから何処に行く?」
大輔「そうだな、俺達がこの世界に来るきっかけを作った諸悪の根源を探しに行くしかないと思う。」
なのは「諸悪の根源…誰なの?」
大輔「知らん」
アリサ「はあ!?」
即答する大輔にアリサが反応する。
大輔「だって、俺達の世界のデジタルワールドとこっちのデジタルワールドのことってあんまり分かんないんだよな。俺もまだ選ばれし子供としての経験はまだまだだし」
賢「地道に探すしかないよ」
ユーノ「…とりあえず、山を降りよう。」
ガラガラガラッ!!!
フェイト「何!!?」
ルカ「…道が崩れてる」
大きな音に驚いて振り返ると、今来た道が崩落してしまっていた。
そして、ぬっと姿を現すレオモン。
ギルモン[あいつは…]
チビモン[レオモンだ!!]
すずか「知ってるの?」
ルナモン[とっても強くていいデジモンなんだよ!!]
憧れを隠さずにはしゃぐデジモン達。
ルカ「…逃げて!!」
全員【え!?】
レオモン[獣王拳!!!]
唐突な攻撃。
紙一重で避けはしたが、頬の横の空気がちりりと焦げる。
ブイモン[…っ!!どうやら敵のようだな!!]
チビモン[そんな!!レオモンは正義のデジモンなのに!!]
プロットモン[ここは一旦退きましょう!!]
子供達は一斉にレオモンから逃げる。






























レオモンからひたすら逃げる子供達の前方から、笑い声が響いてきた。
オーガモン[いらっしゃーい!!]
岩陰からオーガモンが飛び出してきた。
オーガモン[待ってたぜ、覚悟しな!!]
大輔「あれはオーガモンか!?」
賢「しまった…挟み撃ちか…」
コロナモン[おかしい…レオモンとオーガモンは敵同士のはずなのに!!?]
オーガモン[骨棍棒!!]
レオモン[獅子王丸!!]
2体のデジモンはそれぞれの武器を掲げて、両側から飛び掛かってきた。
デジモン達が一斉に前に出た。
大輔「デジメンタルアップ!!」
ブイモン[ブイモンアーマー進化!燃え上がる勇気!フレイドラモン!!]
チビモン[チビモン進化!ブイドラモン!!]
ワームモン[ワームモン進化!スティングモン!!]
コロナモン[コロナモン進化!ファイラモン!!]
ルナモン[ルナモン進化!レキスモン!!]
ガブモンX[ガブモン進化!ガルルモンX!!]
ツカイモン[ツカイモン進化!ウィザーモン!!]
ギルモン[ギルモン進化!グラウモン!!]
フレイモン[フレイモン進化!アグニモン!!]
9対2。
数の多さもさることながら、パートナーを守りたいというデジモン達の強い意志にレオモンとオーガモンは圧倒される。
大輔「イケる!!今だフレイドラモン!!」
フレイドラモン[ナックル…]
しかし、フレイドラモンの技は不発に終わった。
突如、子供達の真上から巨大な岩がいくつも落下してきたのだ。
アグニモン[バーニングサラマンダー!!]
ブイドラモン[ブイブレスアロー!!]
ウィザーモン[サンダークラウド!!]
フレイドラモン[ナックルファイア!!]
4体の攻撃で、落石は粉々になった。
大輔「みんな、大丈夫か!?」
砂だらけになった大輔が聞いた。
フェイト「こっちは…何とか」
大輔が周りを見ると、退化したデジモン達が倒れていた。
子供達はすぐにデジモンの元へ駆け寄った。
賢「ワームモン、オーガモン達は?」
ワームモン[分かんない。多分、崖崩れに巻き込まれたんじゃないかな?]
すずか「とりあえず、この子達を休ませなくちゃね…」
ユーノ「そうだね……僕達もかなり疲れているし」
どこかゆっくりと休めるところはないだろうか。
休憩所を探して、10人と10匹は歩き続ける。






























デビモン[想像以上の力だ………]
遥か高みから、子供達を見下ろすデビモン。
その口元には小さく笑みが浮かんでいる。
デビモン[…だが、疲れている今なら倒すチャンスは充分にある]
びゅう、と、一陣の風。
それが通り過ぎた時にはもう、彼の姿はなかった。






























ムゲンマウンテンを下山し終えた頃には夕方になっていた。
ブイモン[はあ…]
チビモン[お腹空いたよお…]
チビモンが腹部を摩りながら呟いた。
ギルモン[オラも腹減ったぞ…]
アリサ「…何処かに休めそうな場所は無いかしら?」
アリサが辺りを見回しながら言う。
アリシア「ねえ、あれ!!」
アリシアが指差した方向を見遣ると、全員が歓喜の表情を浮かべた。
洋館である、それも立派な。
子供達は洋館の中に入っていく。






























賢「普通の建物だ。…みんな、今夜はここで休もう」
賢が見遣ると子供達は頷いた。
なのは「わあ、綺麗な絵!!」
なのはが、壁の突き当たりに飾ってある絵画に駆け寄る。
それは純白の羽根を持つ天使の絵。
アリサ「……今更野宿ってのもきついしね」
大輔「仕方ねえ…よな…」
プロットモン[……]
プロットモンは、天使の絵に深く惹きつけられていた。
何故かは分からないが、目を離せない。
コロナモン[ん?]
コロナモンの鼻が、何かを嗅ぎとる。
コロナモン[ご馳走の匂いがする!!]
ギルモン[何!?]
コロナモン[こっちだ!!]
全員、一目散に匂いのする方へ走っていく。
アリシア「…プロットモンどうしたの?」
ずっと絵に釘付けのプロットモンに疑問を持つアリシア。
プロットモン[何でもないわ。行きましょう]
プロットモンは大輔達が向かった方向に向かう。
その頭の隅には、先程の天使の絵がいつまでもちらついていた。
アリシア「うわぁ…♪」
扉を開くとそこには、想像以上に豪華な料理が所狭しと並べられていた。
賢「流石デジタルワールド…何でもありだな」
大輔「食って大丈夫なんだろうな…?」
ギルモン[美味え~!!]
ギルモンが肉にかぶりついた。
大輔「おい?大丈夫か?」
チビモン[平気だよ?]
ツカイモン[何の問題も無いな]
料理を食べていたチビモンとツカイモンが答える。
1時間も経てば、テーブルの上には綺麗さっぱり洗ったように真っ白な皿が、何枚も残っているだけだった。






























大輔「ふう…」
風呂に浸かりながら、溜め息を吐いた。
ユーノ「それにしても、風呂まであるとは至れり尽くせりですね」
フレイモン[何ならもっと熱くしてやろうか?]
ユーノ「全身全霊でお断りさせて頂きます」
拳に炎を纏わせるフレイモンにユーノはキッパリと断った。
ルカ「…熱い」
ボソッと呟いたルカの声は誰にも聞こえなかった。
大輔「まあ、とにかく」
大輔がニヤリと笑いながら切り出す。
大輔「こういう、男子しかいない所でしか出来ない話ってあるんじゃねぇか?」
その笑みはまっすぐ賢に向けられていた。
賢「え!?」
ユーノ「あ~、それ僕も結構気になりますね」
ルカ「…何の話?」
大輔とユーノが笑いをこらえきれない中、1人話が飲み込めていないルカ。
大輔「鈍いなルカ。これは将来、相手が苦労するぜ…賢とはやての関係、気になんねえのか?」
ルカ「……関係?…友達じゃないの?」
賢に向けられる好奇の視線。
賢「なっ…はやては僕にとって妹のような存在で!!」
大輔「え~?絶対にそれだけじゃねえだろ!?」
ユーノ「いつもはやての側にいますもんね」
ルカ「僕、昨日の夜、賢さんとすずかさんがくっつい…」
賢「わああぁ!ルカ、黙れ!!!」
ブイモン[黙れって…]
賢「だったら大輔はどうなんだ?」
大輔「ん?だって俺達はプレシア公認の仲だし♪」
話を逸らすこと叶わず、結局からかわれ続ける賢。
真っ赤になって見上げる賢に、大輔は勝ち誇ったように笑ってみせる。
賢「………っ!!!!」
しまったやられた。
あっさりと友達だと言っておけば!!
気付いた時にはもう遅い。
風呂を上がるまで(上がってもなお)賢はひたすらからかわれていた(ルカは相変わらず無表情)。






























アリシア「ねえフェイト、大輔お兄ちゃんとどこまでいった!?」
フェイト「ええ!?どこまでって…」
すずか「大輔さんってかなり積極的そうだけど…」
女の子の栄養は恋愛なだけあって、追及の仕方も変化球無しのストレートだ。
フェイト「その…大輔の両親に確認は取っていないけど…結婚前提のお付き合いです…」
アリサ「えっ!?」
すずか「えええ!?」
結婚前提の付き合いという言葉にすずかと大輔に好意を抱くアリサは目を見開いた。
すずか「…ということは…」
すずかがアリサを見遣る。
なのは「アリサちゃん、どうしたの?」
なのはが俯いているアリサを見て首を傾げる。
ルナモン[アリサはね、大輔のこと好きなの]
フェイト「え!?」
フェイトが驚いてアリサを見遣る。
アリサ「ええ、そうよ…私は大輔のことが好きなのよ…」
なのは「アリサちゃん…」
アリサ「私は…大輔のこと諦めるつもりはないわ。あんたが大輔と結婚するまでは絶対にね」
フェイト「アリサ…、私は大輔を譲る気なんて全くないから」
アリサ「そうこなくちゃね、勝っても負けても恨みっこ無しよ」
フェイト「うん。負けないよ私」
お互い笑みを浮かべるアリサとフェイト。
アリシア「ねえ、だったらアリサとフェイトが大輔お兄ちゃんのお嫁さんになればいいんじゃないの?」
フェイト、アリサ「「!?」」
なのは「え、ええ!?」
予想外なアリシアの発言に全員が目を見開いた。
アリシア「だってアリサとフェイトは大輔お兄ちゃんのこと好きなんでしょ?私もお兄ちゃんのこと好きだし、だったら皆で分け合えばいいよ!!」
はやて「…確かに一理あるような気はするんやけど…」
すずか「大輔さん、物扱い…?」
はやてとすずかが顔を引き攣らせた。
フェイト「そう…だね…私とアリサで大輔を…」
アリサ「分け合う…確かにそれなら私やフェイトにメリットはあってもデメリットは無いわ…」
なのは「アリサちゃん、すずかちゃん?」
ぶつぶつ言ってる2人を不思議そうに見遣るなのは。
アリサ「フェイト、大輔を分けない?」
フェイト「いいよ」
全員【ええええええ!!?】
アリサの発言とフェイトがアッサリと承諾したことに全員が驚愕した。






























寝室には13台のダブルベッド。
大輔を除いた子供達はパートナーと布団に潜り込む。
アリサ「それにしてもデジタルワールドに来てから、1週間位経つわよね」
すずか「そうだね、色々あったけど」
なのは「そういえば、私達の世界はどうなってるんだろうね?」
賢「おもちゃの町で改造したパソコンで調べてみたけど、デジタルワールドと現実世界とじゃあ、時間の流れが違うから、僕達の世界じゃあ7分位しか経ってないよ」
賢の言葉に子供達は目を見開いた。
はやて「そ、そんなに時間の流れが違うんか?」
なのは「じゃあ、お母さん達は私達が薪を集めている最中だと思ってるんだ…」
賢「そういうこと。ちなみにデジタルワールドの1年は現実世界の約6時間」
ユーノ「へえ…」
ユーノが興味深そうに聞く。
大輔「皆、明日も早いんだ。もう寝た方がいい」
フェイト「うん。そうだね、お休み」
子供達は布団に包まると、目を閉じた。






























デビモン[やはり子供だな…他愛もない]
広間に低く低く、静かに染みていく声。
あの天使の絵を裂いてデビモンがその姿を見せた。
その両隣には、レオモンとオーガモン。
そう、これは罠だったのだ。
デビモン[さぁ、やれ。今なら仕留められる]
オーガモン[一思いに叩き潰してくれるぜ]
レオモン[子供達…倒す]
レオモンとオーガモンが寝室に向かう。






























大輔「…っ!!」
何かを感じた大輔は起き上がると声を上げた。
大輔「みんな起きろ!!何か来る!!」
全員【え!?】
全員が同時に飛び起きた。
それと同時にレオモンとオーガモンが寝室に入って来た。
そして…。
デビモン[大人しく眠っていればいいものを…]
なのは「デビモン!!?」
レオモンとオーガモンと共に現れたのは、デビモンだった。
デビモン[夢はもう失われた…]
賢「これは!?」
寝室に賢の声が響いた。
尤もそこは既に寝室とは言えそうもなかった。
立派な建物は朽ち果てた廃墟となり、壁は崩れ天井もない。
辛うじて支えられた2階部分に、真新しいベッドと子供達だけが残されていた。
ユーノ「くそ…完全に嵌められたか」
フェイト「チビモン、進化を!!」
チビモン[力が出ないの…あんなに食べたのに…]
デビモン[当然だな、食べ物も風呂も全て幻だったのだよ]
アリサ「何ですって!!?」
賢「どうして僕達を狙う?お前の目的はなんだ?」
デビモン[分かりきったことを…それは、お前達が“選ばれし子供達”だからだ。私にとってお前達は邪魔な存在なのだ。黒い歯車でこの世界を覆い尽くそうとしている私にとってはな…!!]
デビモンが両腕を掲げると、ベッドが浮き、島全体が揺れ始めた。
地面が割れ、その亀裂からファイル島が分断されていく。
デビモン[ファイル島はすでに黒い歯車で覆い尽くした…]
分断された小島は、ムゲンマウンテンを中心に八方へと散り散りに流され始めた。
デビモン[次は海の向こうの世界全てだ…]
大輔「何だと!?」
デビモン[お前達を始末してな!!]
レオモン[子供達…倒す…]
レオモンが子供達に襲い掛かる。
ブイモン[くそ!!]
ブイモンがレオモンに殴り掛かるが、かわされる。
レオモン[獣王拳!!]
レオモンの技を食らったブイモンは吹き飛ばされ、大輔にぶつかった。
その拍子にD-3が落ち、レオモンの足に触れた瞬間、画面から光が放たれる。
レオモン[…っぅぐぁああぁ!!!!!]
叫び声とともに、レオモンの身体から暗黒の力が抜け落ちる。
レオモン[邪悪消滅!!]
レオモンの目に正気が戻った。
アリシア「レオモン…?」
レオモン[君達が選ばれし子供達だったのか…]
デビモン[まずい…]
その様子にデビモンは焦りを見せた。
レオモン[デビモン…貴様よくも私にあのような卑劣な真似を……許せん!!獣王拳!!]
デビモンを獣王拳で牽制すると、レオモンは大輔達に言い放つ。
レオモン[子供達よ。ここは私に任せて逃げろ!!]
大輔「レオモン…ごめん!!皆、あの島に!!」
大輔達は近くの島に移動しようする。
デビモン[させるか!!]
デビモンが腕を動かすと、大輔達がいた島が更に分断された。
フェイト達は咄嗟に跳び移るが、大輔とアリシアは間に合わず、大輔とアリシアは別々に分断された島に取り残されてしまう。
ユーノ「アリシア!!」
すずか「アリシアちゃん!!」
アリシア「皆ーーーっ!!」
デビモンは更に島を分断しようとするが、レオモンの妨害を受ける。
大輔「レオモン!!」
レオモン[君達はこの世界に残された唯一の希望!!どうか生き延びてくれ…]
島が廃墟から遠く離れた時、レオモンの絶叫が夜闇に響き渡る。
大輔とアリシアと離れ離れになってしまった子供達。
子供達は大きな不安を抱きながら、廃墟を見つめるのだった。
 
 

 
後書き
大輔とアリシアが仲間と離れ離れに。 
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