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白い神兵

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第三章


第三章

「凄いな」
「百発百中か」
 どんどん敵を倒していく。遂には敵陣に突入し刀を振るいロシア兵達を縦横無尽に斬り伏せていく。やはりその強さは圧倒的であった。
「味方なのは間違いないな」
「それは確かに」
 最早普通の日本軍の将兵達の出番はなかった。大佐も少佐も見ているだけだった。だがその目の前で白い兵士達が敵陣を次々と占領していくのだった。
 気付けばもうロシア軍は壊走しその陣地は日本軍のものとなった。白い兵士達は日本軍を救った、これは疑いようのないことであった。
 しかしであった。その白い兵士達は。陣地を占領するとその姿を消してしまったのである。
「彼等は一体何処だ」
「わかりません」 
 日本軍は陣地に入っていた。負傷して取り残されていたロシア兵達を捕虜にしつつ陣地を一つずつ完全に占拠していく。だがそこにはあの兵達は一人も残っていなかったのだ。
「一体何処に消えたのか」
「一人もおらんな」
「はい、一人もです」
 少佐は強張った顔で大佐に対して答えた。今まさに夕陽が落ちんとしていた。
「いません、誰も」
「何処に消えたのだ?」
「今聞いているのですが誰も何処に行ったのか見ていないそうです」
「そうなのか」
「間違いありません」
 その強張った顔でまた大佐に答える。
「誰一人として」
「そうか。一人としてか」
「彼等が味方だったのは間違いないです」
 彼等のおかげでこの陣地を占領することができた。これは疑いようのない事実だ。しかしそれでも彼等の正体は全くわからないのであった。
「ですが。何者かは」
「このことを上に報告するか」
 大佐は怪訝な顔で少佐に相談した。
「何があったのかを。どうだ」
「報告はすべきです」
 少佐はまずはこのことに賛成した。
「ありのまま。ただ」
「ただ?」
「上層部がこのことを信じるかどうかは別の話です」 
 こう大佐に述べるのであった。
「果たして。この様な話を」
「そうだな。信じられん話だ」
 他ならぬ彼等がまだ信じていなかった。その目で見たというのにだ。
「こんなことはな」
「しかし事実は事実です」
 幾ら信じられない話でもだ。これもまた事実である。
「これもまた」
「では。報告しておこう」
「記録もされるのですね」
「無論だ」
 陸軍軍人らしい几帳面さであった。
「信じられるられない以前にな」
「それでは宜しく御願いします」
「うむ。しかしだ」
 ここで大佐はあらためて周りを見る。それまでロシア軍の陣地だったものが日本軍の陣地になった。これは紛れもない事実であった。
「我が軍が勝利を収めたのは事実だな」
「はい、それは確かです」
 日本軍が勝利を収めこの陣地を手に入れたのは事実であった。そしてこのことも白い謎の将兵達のことも記録に残され報告された。このことは陸軍の領袖である山県有朋や当時首相であったニコポンこと桂太郎のところにも届いていた。桂は難しい顔で報告書を読んでいた。
「これが一つであったならば」
「そうだな」
 首相官邸の首相の執務室には彼の他にもう一人いた。口髭を伸ばした陰気な顔立ちの男こそその陸軍の法皇と呼ばれる山県であった。
「一つならその者の気が触れただけで済む話だが」
「こうも続きますと」
「しかもだ」
 山県は険しい顔でまた桂に言うのだった。
「陸軍だけではないからな」
「確かに。海軍からも」 
 彼等は陸軍がその基盤であるが海軍の話も聞いているのだ。山県も桂も天皇陛下を補佐すべき元老達である。だから国家のあらゆることを聞いているのだ。
 
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