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白い神兵

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第二章


第二章

「だからだ。今は」
「我々だけで敵陣を突破するしかないのですね、あの敵陣を」
「それしかない。しかしだ」
 大佐はまた言う。
「今の状況では。とても」
「流石に。無理ですね」
「一兵でも欲しい」
 大佐の偽らざる本音であった。
「誰か来てくれれば。本当にな」
「どうしましょうか」
「少なくともこれ以上の戦闘は今は無理だ」
 もう日も暮れようとしていた。夕陽が大きくなりそれが落ちようとしている。損害の面でもそうであったが時間的にもこれ以上の戦闘は無理であったのだ。
「撤収させるか」
「ええ。戦死者及び負傷兵を運び」
「戦闘中止だ。よいな」
「はっ」
 大佐の言葉に敬礼する。これで今日の戦闘は終わる筈だった。だがここで。二人の後方から喚声と共に軍勢が姿を現わしたのであった。
「!?何だ」
「喚声ですか」
「見よ」
 大佐はここでその後方を見てそこを指差した。
「あそこにいるのは」
「はい、彼等は」
「日本軍だ」
 見れば日本軍の軍服を来た者達が銃を手にこちらにやって来る。それは前線の将兵達も見ており彼等もまた喚声をあげる。その喚声の中で大佐と少佐は顔を見合わせたのだった。
「援軍か」
「間違いありません」
 まずは援軍が来たことを確かめ合うのだった。
「これは」
「ではこれより我が軍は」
「はい、戦闘継続ですね」
「援軍と合流し敵陣に総攻撃を仕掛ける」
 大佐の決断は速かった。そしてそこには一抹の迷いもなかった。
「それでいいな」
「ええ。では我々も」
「行くぞ」
「了解です」
 彼等も前線に向かうのであった。ここが勝負の時だと見抜き陣頭指揮にあたることにしたのだ。前線に出た彼等も自ら軍刀を振るい敵陣に向かう。その彼等の横に援軍の軍勢がやって来た。その速さは彼等よりも遥かに上であった。徒歩とは思えない程度に。
「何だ、あの速度は」
「駆けているとは思えませんが」
 大佐だけでなく少佐もまた彼等を見ていた。
「しかもだ」
「ええ」
 そして二人はもう一つあることに気付いたのだ。それは。
「白いな」
「あの軍服は一体」
 見れば奇妙な軍服であった。確かに形は日本軍のものだ。しかしそれは白だったのだ。日本軍の軍服は黒だ。だが彼等のそれはブーツから帽子に至るまで全て白だった。銃でさえも。何もかもが白くその顔まで白かった。どう見ても日本軍のそれではなかった。
「あの様な部隊があったか」
「聞いたことがありません」
 少佐も知らないのだった。首を傾げる。
「あの様な部隊は」
「しかもだ」
 ここで大佐は怪訝な顔で言う。
「我が軍の後方から来たな」
「ええ」
「我が軍の後方に展開している部隊はいない」
 指揮官でありそれは熟知していたのだ。
「少なくとも今急に来られるような部隊はな。ない筈だ」
「では彼等は一体」
「わからん。しかもだ」
 その白い兵士達は前線にそのまま突っ込んでいく。機関銃の銃弾が乱れ飛ぶがそれでも突き進んでいく。しかもここで有り得ないことが起こった。
「なっ!?」
「そんな筈がない!」
 大佐と少佐だけでなく全ての将兵がそれを見て驚きの声をあげた。
「銃弾が当たらないだと!?」
「全て銃弾の方からよけている」
「しかもだ」
 彼等の驚きは続く。
「あの速さ、馬にでも乗っているのか」
「もう敵陣の前だぞ」
 そうなのだった。速いのだ。歩兵とは思えないまでに。しかも突撃しながら放つその銃は的確にロシア兵達を倒していく。物陰にいる筈の彼等を的確に撃っていく。
 
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