| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

イリス ~罪火に朽ちる花と虹~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Interview12 オトギノヒブン -Historia of “Tales”-
  「偶然じゃなく必然なら」

 インタビューを終えてクランスピア社を出てから、ルドガーはレイアと共に、イリスを呼び出した。リドウが語った「魂の橋」の真実を確かめるために。

 レイアに陰侍していたイリスは、紫の立体球形陣を結んで現れて、告げた。

「本当よ。『カナンの地』に渡るためには、我らクルスニクの中でも特に強い血統者の死が必要。ミラさまがそうお定めになったらしいわ。詳しい経緯はイリスも知らないけれど」

 この時になってルドガーはようやく、ヴェリウスとシャドウに観せられた夢の内容を思い出した。
 忙しさに紛れて忘れた己を殴りたかった。ルドガーはとっくに知っていたのに。

「ルドガー、探そ!」
「レイア?」
「『魂の橋』以外のやり方。リドウさんはルドガーの骸殻を偶然の産物じゃないみたいに言った。偶然じゃなくて、ルドガーの存在が歴史の必然なら。何かあるはずだよ。見つけられるはずだよ。クルスニクの人たちを犠牲にしないで『橋』を架けるやり方!」

 揺れるパロットグリーンの瞳は、それでも希望を探すんだ、と強い決意を宿して。

「――そうだな。当事者の俺がうかうかしてちゃいけないよな。やろう」
「それでこそルドガーだよ」

 レイアがルドガーの両手を持ち上げて握った。他でもないレイアの手の感触に少しは動揺したルドガーだが、そう浸ってもいられない。

「イリスも……手伝ってくれるか?」
「イリスが教えてあげられるのは、審判開始から番犬に封印されるまでの1000年間だけ。それでもいいなら、いくらでも、起きたこと経験したことを話してあげる」
「ありがとう。――じゃあ一端、マンションに戻ろう。作戦会議だ」





 残念ながらイリスの昔語りからは、「魂の橋」以外の方法を探した先祖が失敗した話しか聞けなかった。
 なので、ルドガーとレイアは、イリスが封印されていた1000年間に有効打がないかを探すため、トリグラフにあるエレンピオス国立図書館に通い始めた。


(何でもいい。イリス視点じゃ分からなかったこと。何かないのか!)

 閲覧室でルドガーが読んでいるのは『クルスニク年代記』。一年前までは、精霊信仰のための偽書というのが世間の認識だった。しかし、リーゼ・マクシアの出現と精霊の実在により、内容の再検証が始まった。
 書体が詩であるのが厄介だが、紐解けば2000年前の様子が垣間見える。
 今のルドガーには五体投地して拝みたい書である。

 「魂の橋」についてはジュードたちにも話した。彼らは当然のように、別の方法探しに協力してくれた。

 ジュードはヘリオボーグ研究所職員の立場を使って、過去の精霊学実験のデータを閲覧検索。

 ローエンとエリーゼは六家の、ガイアスは部族の伝承をそれぞれ洗っている。

 アルヴィンは実家のネームバリューを利用して、エレンピオスで有名な歴史学者巡りを敢行中だ。いずれリーゼ・マクシアの古い語り部なども、ユルゲンス経由で訪問する予定だとか。


 ――ページを繰っていると、マナーモードにしていたGHSが鳴動した。
 着信の相手は、ノヴァ。

 ルドガーはレイアに断り、閲覧室を出てから電話に出た。

『うう……助けて、ルドガー、ヘルプミー』
「また借金関係か?」
『それが……差し押さえの相手が、すっっっごい怖い人なんだよ~! 水が5秒でお湯になる勢いで睨んでくるしっ!』
「それでも取り立てるのが銀行員の仕事だろ。俺にしてるみたいに強気で行けよ」
『ムリムリムリ! 今度だけだから! 助けて~』

 ルドガーは長く溜息をついた。こういうところで「お人好し」を発揮してしまう自分自身に対して。

「――場所、どこだ」
『ディールだけど。来てくれるの!? マジ!?』
「今から行く。駅で待ってろ」
『やったー!』

 電話を切って、閲覧室に戻った。
 いまだ文献とにらめっこしているレイアの隣の席に座り直す。

「電話、ノヴァさん? 取り立て?」
「正解。今回に限り、俺じゃなく別件。相手が怖いから助けてくれって」
「行くの?」
「まあ……」

 そこで二度、GHSが鳴動した。着信の相手は、ヴェル。
 ルドガーは、今度は断りを入れず、閲覧室を出てから電話に出た。

『分史対策室です。「道標」存在確率:高の分史世界を探知しました。捜索をお願いします。場所はディールです』
「ディール?」
『? 何か』
「いや、さすが双子。さっきノヴァからディールに来いって要請受けたとこだったからさ」
『言っておきますがルドガー様、クルスニクに関係することは』
「他言無用、だろ。分かってるよ。今から向かう」

 電話を切る。

(『道標』があるならエルも呼ばないと。エルが来るならエリーゼも来るな。レイアには残って、イリスと一緒に調査続けてもらおうかと思ったけど。この分だと結局、全員集合になりそうだな) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧