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俺が愛した幻想郷

作者:茅島裕
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俺は愛せる? 幻想郷...
俺の名前は....
  第四話 みかんに愛された

いやぁ...さ
あのね
なんて言うか、その

「俺は一体なんでこんな普通にみかん食べて座ってんのさっ!?」

普通の、ふつ〜の家
和風な家だ
外見は見たことはないけど、内装は和風だ
穴を空けたくなるような障子があって、布団やらなにやらが詰め込んでありそうな襖もある

そして今俺は...

居間らしき部屋で炬燵(こたつ)(あた)って頬に冷や汗を垂らしながら恐る恐るみかんを食べてるわけだ

それも狐耳のお姉さんと猫耳の女の子に物珍しそうに観られながら........



ーーーーーーーーーーーーー


そうだ
幻想郷、もとい俺が今から行く世界に行っても住むところがなければお金もない
も、ももも、もしかしてっ! 俺はっ...野宿しなきゃいけないのか!? 仮に野宿しなきゃいけない状況になったとして、幻想郷には野宿すると言う単語が無ければそれが何かもわからない、そもそも野宿出来るような"野"がない可能性だってある... お、俺さぁ... やっとあの世界から抜け出せたのにさぁ..... 死んじゃうの? 直ぐ死んじゃうの? 俺さぁ... 幻想郷愛そうと思ったのよ さっきも言ったようにねぇ? 愛そうと思ったのよぉ... あぁもしかして。異世界って...幻想郷って... 死後の世界ってことなの...? あ...あぁあ.......オワタ

「う....うぐぅ......ぐぐ」

「ふえ!? な、なにっ? どしたのあなた!?」

「うわぁぁぁぁぁぁ!!! 俺死ぬんだぁぁぁぁぁ!! やっと抜け出したのに... 死んじゃうんだぁ...」

「え、ちょ、だからっ! なにて!? 言ってくれなきゃわからないわよぉ!」

紫が困っているので、さっきまで考えていたことを全て話した


「そかそか... ごめんね? 最初にそれ言っておけばよかったね。今日からは私の家があなたの帰る家よ。よしよし...イイコイイコ」

鼻を啜って嗚咽を残す俺(男です。高校生です。17歳です)
そんな俺の頭を撫でて優しく説明してくれる紫、いいえ、紫様

五分

「落ち着いた? イイコイイコ」

「うん... 紫、ありがと」

ヤバい、紫...

こほん... 先ほどは取り乱してすみませぬ
まだ思うことはあるのよ、けっこう重要なことがさ

俺を見て優しく微笑んでいる紫にこう聞く

「幻想郷って、言語は...?」

「ん〜... 日本よ、日本語。日本語を喋れ、ここは日本だぞって魔法使いが言ってたわ」

ま、魔法使い?
それは要するに魔女とかそう言うのなのか? それとも能力か? 魔法を使う能力、みたいな... それはまたあとで聞こう

そうか、日本語か。なら楽だな、言語を勉強する必要がないし
あ。あとそうだ

「お金.... 幻想郷のお金って...? もし日本円だとしても持って来てないや」

「日本円は日本円だけど。今さっきまであなたが居た世界の日本円ではないわ、古い日本円よ。一文とかよ」

文か。文っ!?

「それに、お金の心配は要らないわ。幻想郷はあんまりお金要らないし、必要なら私がおこずかいあげるから」

ほんっと。ヤバい....紫

ちょっと流してたんだけどさ
思ったことがあってね。紫の家が俺の帰る家、すなわち、紫と同居するのか? まぁそこはそんなに問題ではなく。迷惑じゃないのか?これが一番の問題だ
紫の為に何か出来ることは無いだろうか...

と、そんなことを考えていると
ハッと何かを思い出した様子の紫が俺に向かいこう言った

「ん、"スキマ"から出るときちょっと気持ち悪くなるかもしれないけど我慢してね。"ちょっと"だから、ね? "ちょっと"だから」

な、なんだ。すっごい怪しい、顔が怪しい
信じるぞ? 信じるからな?
って言うかスキマってなんだ? この空間のことか? このなんかめっちゃ目がギョロギョロして落ち着かないこの空間のことなのか?
ちょっとどうでもいいことだがこの空間をスキマと言うにはちょっと違う気がするな... あぁ。あれか、紫はこのスキマを操る能力なのか。このスキマは幻想郷と俺の居た世界のスキマ... どのスキマにも出来るか。日本とブラジルにスキマくっつけて行き来できるようにしたりな
スキマって言うより境か?
指図目(さしずめ)、境を操る能力と言ったところかな。別に能力は聞く必要もないだろう
もしもだが、幻想郷の住人に能力を聞くのはスリーサイズを聞くのと同じ感覚だとしたらそのとき俺は捕まることになる。あ。幻想郷って警察いるのかな...

なんて、紫を放置して自分の世界に入っていると
くらっと立ち眩みがした。

なんだ?

そう考えるスキに、立ち眩みがもっと酷くなる
足元の感覚がほぼ消えている。無重力に行ったらこんな風になるのだろうか?
なんか... 気持ち悪い。吐き気とは違う。なにか、頭の中が揺らされて....

「.....ぐ......ぐく....」

少しだけ唸り、目を強く瞑った
身体の感覚がイマイチないなか、両手で自分の頭を力いっぱい掴んだ。自分が無くならないように、自分が壊れてしなわないように・・・


「....ぶはっ....ケホッ..ケホッ......ハァハァ」

自分の身体の一部、内臓、心臓が酸素を求めている。必死に求めている。過呼吸だ、酸素を取り入れたくても、肺が着いて行ってくれない

「ハァハァ...くっ...ハァハァハァ」

自分の一番苦しいところ、今一番苦しいところを右手で強く抑える

鼻の先から冷や汗が垂れている


「ハァ.....ハァ........ふぅ........死ぬ...」

死ぬ。その言葉とは逆に、むしろ生き返った
酸素が取り入れたくても取り入れられない状態で死ぬなんて言葉を吐いている余裕はないからな
落ち着いたのだ、気づけば気持ち悪さもなく、頭が揺れてる感じもなく、身体の感覚が戻ったのだ

紫... 嘘つきやがった
ちょっと気持ち悪くなるかもって
ちょっと度頃じゃねぇ... そもそも気持ち悪くなるで済んでねぇ

ん...紫?
あれ...

カッと瞑って居た目を見開く

「何処だ...ここ」

床は畳
木畳みの廊下、障子

どうも和風な感じだ

「おっ、耐えた耐えた。えらいえらい♪」

「...なっ!?」

今まで居なかったところに、俺の目の前に、紫がやって来た

「紫ぃ... マジ死ぬかと思ったんだからなっ!?」

「ん〜、それは代償よ」

「代償?」

「幻想郷に来たのと、私の家にお世話になる代償♪」

この女...
しかも絶対今即興でかんがえたろそれ

「ほらほら、そんな怖い顔しないのっ! そこの襖開ければ居間があるから。炬燵にでも入ってゆっくりしてなさい」

そこの襖と奥に見える襖を指を差してにっこり笑い、スキマの中に消えて行ったのだった

「うわぁ... 優しいんだか優しくないんだかわかんないなぁ、あの人」

あぁ〜
人かどうか聞くの忘れた
まぁ、見た目が人だから人でいいや

右手で後頭部を掻きむしりながら立ち上がり
紫が指差していた襖に向かって歩いた


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして襖を開けると.....

「この通りさ ハッハッハー」

口をポカンと開けて上の空になり、空笑い


襖開けたらね、居たのよ
炬燵に入ってお喋りしてたのよ
楽しそうにお喋りしてたのよ
狐耳のお姉さんと猫耳の女の子がよ
なんだっけな

(ちぇん)?今日はお客様が来られるからな?』

『はい、わかりましたっ!』

なんて会話が聞こえて来るんだよ
俺さ、開けたのよ
襖開けたのよ
開けたのに、俺思いっきり聞いてるのにその会話してたのよ
お客様って絶対俺のことだよね? そうだよね?

でも、俺がここに来るってことをこのお姉さんと女の子が知っていると言うことは
紫は元々、俺を連れてくるつもりだったと言うことか?それも今日ときた。偶然にも程が有るよな



何を話したらいいかわからず
とりあえず渡されたみかんを食べるのであった

 
 

 
後書き
「き、君?」

「あ、はい。俺のこと、ですよね?」

「そ、そうだ。これ、食べるか?」

そう言って狐耳のお姉さんが俺にみかんを渡して来たのだ
どうも、とそれを食べているのであった

そんな俺を物珍しそうに観始める狐耳のお姉さん

ちなみに猫耳の女の子は、狐耳のお姉さんが俺にみかんを渡しているときもずっと俺のことを観ているだけであった。物珍しそうに


そんな観るなよ... まぁ確かに珍しいんだけどさ
俺だって観るよそりゃ、家に知らん人が来たらさ。それも異世界人

はぁ... みかん美味しい 
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