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昼は天使、夜は悪魔

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第一章


第一章

                    昼は天使、夜は悪魔
「可愛いよなあ」
 岩尾恵一はもうメロメロだった。頭の中は彼女だけになっていた。
「本当に。何であんなに可愛いんだろう」
「御前そればっかりだよな」
「だってさ」
 恵一は友人達に冷やかされてもそのメロメロなまま話すのだった。
「可愛いだろ、彼女」
「まあそうだな」
「可愛いことは可愛いな」
 彼等もそれは認める。
「性格もいいしな」
「大人しいし気が利くし素直で」
「だからいいんだよ」
 その大柄で四角い、アメリカンフットボーラーかラガーマンみたいな姿で両手を組んで祈るようにして言う。本当にそれだけしか考えられなくなっていた。
「天使だよ。姫様だよ」
「何が姫だよ」
「御前眼科行って来い」
 あまりに酷いのでこう言われる始末だった。
「恋は盲目って言うがよ」
「御前は幾ら何でも異常だろ」
「異常か?」
 本人には自覚はないのだった。その童顔をキョトンとさせている。
「俺は別に」
「だから異常だって」
「何でそこまでベタボレなんだよ」
 彼等は口々に言う。
「しかも急に」
「何があったんだよ」
「好きって言われたんだよ」
「彼女にか」
「ああ、そうなんだ」
 本人の言葉によるとどうもそうらしい。それで浮かれているのだ。
「この前の放課後な、いきなり校舎裏に呼び出されて」
「また随分と古典的な告白だな」
「そうだな」
 告白とかではよくある話だった。それで皆その話を聞いて言い合うのだった。
「それで告白されたんだよ。好きですってな」
「で、そうなったと」
「というと付き合ってるのか」
「ああ、そうさ」
 正直に皆に答えるのだった。答えるその顔もやはりメロメロだった。目が完全にピンクのハートマークにさえなっている。最早人相が変わっている。
「それで付き合わない奴いるか?しかもあんなに奇麗でな」
「確かに可愛いけれどな」
「それはな」 
 皆もそれは認めるのだった。一応は、といった感じで。
「しかしそれでもな」
「今の御前本当にやばいぞ」
「小柄で三つ編みで丸眼鏡で」
 皆の言葉をよそに今度は彼女の外見について話す。
「目は大きくて奇麗だしな。唇だって小さくて赤くて鼻立ちだって整ってるし肌は白くて」
「美少女って言いたいんだな」
「天使だよ」 
「またこれだ」
 思わず仲間の一人に突っ込まれていた。
「天使だよな、あれは」
「御前さあ、天使天使って言うけれど」
「相手だって人間だぞ」
 皆もういい加減うんざりしてきてこう言ってきた。恋の病も傍から見れば鬱陶しいことこの上ない。そういうことだった。
「それで何で天使だの女神だのって」
「御前彼女の性格知ってるのか?」
「純情可憐だよな」
 やはり両目をピンク色のハートマークにさせての言葉だった。
「よく気か利くし真面目だし」
「つまり完璧だって言いたいんだな」
「性格は百点満点だ」
「じゃあ容姿は?」
「容姿も百点満点だ」  
 完全にやられていた。すっかり彼女以外見えなくなっている。
「あそこまで凄い娘はいないよ」
「俺ここまで言う奴はじめて見たぞ」
「俺もだ」
 うんざりを越えて呆れてきていた。
「ベタボレなんてものじゃないな」
「こりゃもういくところまでいったぜ」
 いかれていると言いたいのだ。実際にある意味かなり危ない顔になっているのでそれは当たっていた。だが本人はそれでもよかったのだ。
「で、御前デートとかしてるの?」
 だがその中で一人が彼に尋ねてきた。
 
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