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劇場版・少年少女の戦極時代

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天下分け目の戦国MOVIE大合戦
  奪われた仲間

 がた、がたた。馬車は砂利道を走るほどに揺れる。その馬車の上、紘汰は片膝を抱えていた。

「――さん、紘汰さんっ」
「うわっ。ミッチ?」

 気づけば光実の顔がすぐ目の前にあるほどに近づかれていた。

「ずっと呼んでるのに上の空でしたね。やっぱり心配ですか。咲ちゃんのこと」
「分かるか?」
「紘汰さんて、本当に何か心配事があるとしゃべらなくなるんですよね」
「う」

 さすがはチーム鎧武のブレーン。紘汰の無意識の癖まで把握しているらしい。

「僕だったら、妹がこっちに迷い込んだら、きっと紘汰さんみたいに黙ってられない。すごく取り乱して、みっともないことになってます」

 光実が浮かべた寂しげな笑みに、どんな意味が込められていたのか。

「殿! 前を!」

 その問いを口にする前に、イエヤスの家臣の一人が叫んだ。

 数人の足軽に、中心には赤いライダースジャケットの男。その男に守られるようにして、丈の短い着物の女。それらの一団が、怪人に追われながらも逃げている。
 追われている一団の中で、唯一、赤い男は刀ではなく西洋剣らしき武器で戦っていた。男は傍らの女に近づいた怪人を、剣で斬って捨てた。

「ヒデヨシ?」
「あれがヒデヨシ!? じゃあ咲ちゃん……月花はっ」

 どこにもいない。あの一団にはアーマードライダーがいない。
 とにかくあの男に事情を聞かないことには、咲の居場所も分からないらしい。

「ミッチ、行くぞ!」
「はい!」

 紘汰と光実は馬車から跳び下り、戦極ドライバーを装着した。

「「変身!」」

 オレンジの鎧が、ブドウの鎧が、紘汰と光実を変身させる。鎧武と龍玄になった彼らは、おのおのの武器を構え、怪人を倒すべく走り出した。

 怪人はどれもインベスには見ない種類ばかりだった。ステンドグラスを体表にしたような怪物、雪男のような妖怪系の怪物。昆虫のような怪物。
 それらに対し、鎧武は大橙丸と無双セイバーを揮った。

「ぐはっ!」

 すぐ横で、イエヤスの家臣が怪人に大剣で斬られて、赤い血を噴き上げて倒れた。

 鎧武や龍玄ならいい。変身している間はダメージも軽くすむ。だが、生身の人間があんな怪人の攻撃を食らってしまっては。

 鎧武はその家臣を襲った怪人を退け、家臣を抱き起こした。

「武神どの、殿を……殿をお守りくださ……」

 最後まで言い切ることなく、その家臣は息絶えた。
 目の届く範囲で、この腕の中で、一つの命が失われた。

『……ゃめろおおおおお!!』

 次々と家臣を屠る怪人たちに向けて、鎧武は叫んだ。咆哮だった。




 龍玄は鎧武と戦場が離れてしまいながらも、彼より先にイエヤスたちに追いついた。途中で白いアーマードライダーと遭遇し、何故かスイカの錠前を投げ渡されるというハプニング(?)もあったが。

『イエヤスさん! 大丈夫ですか』
「おお。何とかな」
『向こうの怪物はあらかた片付きました。今なら迂回すれば馬車に戻れると思います。――そっちの二人は?』
「こいつがヒデヨシだ。紘汰が会いたがってた奴だな。横のはヒデヨシの嫁でチャチャ。本来なら我が領に入れはしないんだが、今日はウチの武神に免じて許そう。武神を失ったばかりと聞くしな」

 龍玄はもっと食い込んだ情報を得ようとしたが、叶わなかった。
 突如として現れ、斬りかかってきた血染めのオレンジの武者によって。

「武神鎧武!」
「あたしらのW(ダブル)をやったヤツや!」

 龍玄は慌ててブドウ龍砲をトンファー持ちに変えて盾代わりにして受け流したものの、ブドウ龍砲を手から弾き飛ばされてしまった。

 龍玄はイエヤスたちを背に庇い、装甲をブドウからキウイに換装した。

《 ハイーッ  キウイアームズ  撃・輪・セイヤッハッ 》

『うおおお!』
『異世界の武神の力も我が手に!』

 スピンをかけながら、武神鎧武のくり出す大橙丸と無双セイバーのナギナタモードを、キウイ撃輪で弾き返す。

 その攻防をしばらくくり返していると、武神鎧武のほうが先に引いた。
 代わりに前に出たのは、例のウツボカズラ怪人。

 ウツボカズラ怪人は緑の触手を何本も体から生やし、龍玄に巻きつけようとする。龍玄はキウイ撃輪で触手を斬っていくが、数が多過ぎる。
 やがて龍玄はウツボカズラ怪人の触手に何重にも囚われ、胴部にある妙な黒い穴に、まさに吸い込まれそうになった。

『ミッチッ!』
『紘汰さん……!』

 鎧武が駆けつけたが、もはや自分がこの怪物に喰われるのは免れない。せめて、と龍玄はスイカの錠前を鎧武に投げ渡した。

 そして、後ろにぐいっと引っ張られ、暗闇に落ちたところで、意識を失した。




 龍玄がウツボカズラ怪人に吸収されるのを、鎧武は見ているしかできなかった。

『みっち…? ミッチ? なあ、嘘だろ、おい!』

 叫ぶ間にも、武神鎧武が鎧武に斬りかかってくる。嘆く暇どころか、事態を受け入れる猶予さえ与えられない。鎧武はもどかしく思いながらも、スイカの錠前を開錠した。

《 スイカアームズ  ヨロイモード 》

 スイカの鎧によって倍になった体躯とダブルセイバーを駆使し、武神鎧武とウツボカズラ怪人を同時に退ける。
 そうしてから、鎧武はイエヤスに男女二人を抱えてその戦場を離脱した。 
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