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ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~

作者:C.D./hack
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笑顔

 
前書き
クウガ、その魂。 

 
ユキが隣に立って言った直後だった。狼が吼え、飛びかかってきた。

「まだ来るか・・・!!」

ファングのスイッチを2回押す。

アームファング!!

白い腕に、白い刃が生える。だが狼は、予想外の行動をとった。

「え?」

ユキの顔をベロベロと、まるで飼い犬が飼い主に対し、甘えるように舐めてきたのだ。

「え?ちょ、何?うわあああああっ」

「多分・・・そいつハ、使い魔だナ」

「つ、使い魔?」

モンスターが仲間になるんですか!?と、ユキが素っ頓狂な声を上げる。

「そうダ・・・。滅多に発動することなんてないんだガ・・・・。しかも中ボス」

名前でもきめてやったらどうだ?と、アルゴが言った。

「ん~・・・。切り(ジョーカー)なんてどうだろう?君の立派な牙がファングで、切り札と言っても過言じゃないほど、強い・・・てことで」

狼、ジョーカーはアオンと吼えた。

「それよリ・・・。お前は大丈夫なのカ?」

はい、とユキは答えた。

「自分なりに答えが出たので・・・」

そうカ・・・とアルゴは安心し、行くゾと言って、走り出そうとした。

「アオオオオオオオオオオオオオッ!!」

ジョーカーが吼え、ユキが、

「乗れですって」

アルゴはありがたく乗って、ジョーカーが大地を強く踏みしめ、走り出した。








「ユリエーーーーーーーーーーーールッ!!」

男が叫ぶ。そして、名を呼ばれた女性、ユリエールはシンカーのいる方へと、変わった。

「シンカーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

だが、男の声はすぐ絶叫に変わった。

「来ちゃダメだぁーーーーーーーーーーーッ!!!その!その通路は!!」

アスナ、キリトが驚く。そう、その通路には、

黄色いカーソルが突然出現した。



The fatai-scythe ザ・フェイタルサイズ。運命の鎌。

そして、それは確実にユリエールを死の運命へと誘おうと、鎌を振り上げた。

その時・・・。狼の声が響いた。

アオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ

トリガー!! マキシマムドライブ

「トリガーフルバースト!」

「今だ!キー坊!」

アルゴの声に、キリトが駆け出し、ユリエールを保護する。そして、安全区へと押し出す。

フェイタルサイズは、十字路の左の通路へと逃げていく。

それを追いかけたキリトは茫然とした。呆然とするキリトの後ろからアスナが来る。

「アスナ、今すぐ全員で安全エリアに行って、脱出しろ」

「え・・・?」

「こいつ、やばい。俺の識別スキルでもデータが見えない。強さ的には九十層クラスだ」

アスナは息をのんだ。馬鹿な、とも思った。七十四層で苦戦したというのに、九十層クラスなど、相手にできるわけがない。たった2人で。

「いいや、四人と一匹だ」

ユキとアルゴが、狼に乗って現れる。

「まだまだだ、さっきので終わったと思うなよ」

気合を込めて、ユキが叫ぶ。

「変、身」

黄金の気が、ユキを包み込み姿を変貌させる。

「はぁーーーーっ」

気を払うとそこには、大地と龍の力を持った戦士がいた。

だがお構いなしに、フェイタルサイズは鎌を振り下ろす。

キリトとアスナが剣を交差させ、それを防ぐが、衝撃で跳ね飛ばされた。

ユキはキリト達のHPを見た。すでに黄色へ突入している。

そのときだった。

「ユキさん!!」

少女の声。キリト達が驚く。

「ユイ!?」

「ユイちゃん!?ダメーーーーーーーッ!!!」

「キリトさん、アスナさん」

その声には、もう子供のあどけなさなど残っていなかった。そしてカーソルには、こう書かれていた。

Immortal object 不死存在。

そんな馬鹿な。プレイヤーである二人は驚いた。

「やはり・・・君は・・・」

ユキの言葉。ユイが手をかざすと、ごうっ、という、爆炎と共に、身の丈を超える剣を取り出した。

「協力を・・・お願いします。ユキさん」

「・・・わかった」

はあっ・・・という声が響く。アーマーが燃えるような赤色に染まり、罅割れる。複眼の色は黄色に染まり、オルタリングは、すんだ紫色へと変わる。体表からはプロミネンスが吹き出し、力強さを感じさせた。

燃え盛る豪炎の戦士 仮面ライダーアギト バーニングフォーム

「同時タイミングで、攻撃を仕掛けます!321でお願いします!!」

「3」

ユキがシャイニングカリバーを具現化させ、フェイタルサイズが鎌を振り上げる。

「2」

シャイニングカリバーが、爆炎をその刃に纏わす。ユイに大剣からは炎が溢れだす。

「1」

両者が力をためる。

「0」

ユイとアギトが同時に跳び、鎌が振り下ろされる。

シャイニングカリバーがそれを弾き、より炎が灯る。

バーニングボンバー。合計11連撃。45tもの衝撃が、フェイタルサイズに襲いかかる。

フェイタルサイズの体がぐらりと揺れる。そこに大剣による一撃が叩き込まれ、フェイタルサイズがポリゴンへと還った。


着地した瞬間だった。ユイの左腕が吹き飛んだ。そして表示が変わる。

mortal (死の運命)

アスナが悲鳴を上げる。

「・・・!!」

ユキはユイの顔を見た。その顔は涙に濡れていたが、その顔は突然笑みに変わる。

アスナとキリト、そしてアルゴがソレに駆け寄る。

「ダメだーーーーーーーッ!!!それはユイじゃな・・・」

ユイが手をかざす。ボウッ!!と言う音と共に、爆炎がアギトの身を包む。

コレは・・・。この炎は・・・。

ユキはこの炎を知っている。

なぜなら、自分も使っていたから。

そして・・・ユイが見せた笑みも知っている。

アメイジングマイティ、ガドルを倒した黒と金のクウガ。それですら敵わなかった、白き闇。

究極の闇。3万人を笑顔で虐殺した、ライダー史上、最も残虐で最強と言ってもいい究極の怪人。

「超変身!!」

赤と金のクウガ、ライジングマイティへと変身する。

「ユイちゃん、元に戻るんだ!!」

パンチ。キック。その全てをユイは弾いていく。

「超変身!!」

青と金のクウガ、ライジングドラゴン。

ライジングドラゴンロッドを使い、突きを放ち、思い切り投げる。

「次はこれだ・・・!」

緑と金のクウガ、ライジングペガサス。

上空へと投げたユイへ向かい、ブラストペガサスを放つ。

ドッドッドッという音と共に、ユイの体に封印エネルギーが流れ込む。だがユイは、さらに笑みを深めた。

「最後は・・・ッ!!」

紫と金のクウガ、ライジングタイタン。

落下してきたユイへとライジングカラミティタイタンを放つ。

だが、ユイは手をかざす。

「・・・・ぐう・・・あああアアッ!!」

強固な鎧を無視した爆炎が、ユキを襲う。

ダグバとアルティメットフォームの超自然発火能力(パイロキネシス)の原理を説明しておく。

クウガにはドラゴンフォーム、ペガサスフォーム、タイタンフォームであってもモーフィングパワーと呼ばれる物質変換能力を有している。

ドラゴンなら長き物をイメージできるもの、たとえば流木や、木の枝。

ペガサスなら射抜くものをイメージできるもの、拳銃などがそれに当てはまる。

タイタンなら切り裂くものをイメージできるもの、雄介はクウガ専用のバイク、トライチェイサーの起動キーである、トライアクセラ―などを利用して変化させていた。

このようにクウガには、原子・分子レベルで物質を変化させるモーフィングパワーを持つ。

ダグバとアルティメットは、それ以上のモーフィングパワーを持つ。

無の状態から物質を作り出すのだ。そしてそれを変質、プラズマ化させ相手を内側から燃やし尽くす。


「あっ・・・ぐうあっ!!」

肉が焼ける。肉の焼ける匂い。変身が解除される。

「ユキ!!」

全員がユキのもとへ駆けつける。

(今立たなきゃ・・・っ)

みんな死ぬ。

ユキの頭の中で、声が響く。

(君なら・・・きっと)

ユキは何とか顔を上げ、雄介の幻影を見た。

(彼女の笑顔を取り戻せるはずだよ)

「オオオオオオおおおっ・・・」

ユキが立ち上がる。

「オオオオオオオオおおオオおおおっ!!!」

気合を込めて。

「アルゴさん・・・みんな・・・」

アルゴが気付く。

「ユキ!お前・・・!」

やめろ。ユキはその言葉を言わせない。

「もう僕は・・・」

「一人じゃないから・・・!大事なものが・・・!」

あるから。

「みんなの笑顔を守りたいから!!だから、見ていてください!!俺の!!」

「変身!!」

角の形状が禍々しく変化し、数は4本に増え、金色の神経が浮き出す。

肉体に漆黒の鎧を纏う。だが、その周りには闇が漂っていた。

「ユキ・・・!!」

瞳が赤と黒の点滅を繰り返す。

「ゥウゥッ・・・!リャア!!」

闇は払われた。瞳の色は赤色になり、アークルに記されていたワードが変わる。

清らかなる戦士 心の力を極めて戦い邪悪を葬りし時 汝自らの邪悪を除きて究極の闇を消し去らん

ユキはユイに向かい走り出す。

A New Hero. A New Legend.

ユキもまた、伝説を塗り替えたのだ。

ユイも走りはじめ、拳を叩きつける。ユキはひるみ、後ろに下がるがユイの胸へと蹴りをいれる。

「ユイちゃん・・・!」

ユキはユイの拳を受け続ける。

「どうしたの?もっと強くなって・・・もっと私を笑顔にしてよ」

「っ・・・!」

ユイの背はとても低い。それを利用し、懐へもぐりこんだユイはアークルへと拳を叩きつける。

「・・・!あぁ!!」

ユキもユイの腹部へと拳をいれる。ユイは少し顔を歪ませたが、すぐに笑みに変わる。

「・・・!!」

ユキはあることに気付いた。ユキは戦闘態勢を解く。

ユイの連撃が、次々とユキの体に叩き込まれる。

「どうしたの?もっと、私を」

笑顔にしてよ。キリト達が乱入しようとする。

「来るな!!」

ユキはユイと自身の周りに爆炎を発生させ、キリト達が入れないようにする。

「ユイちゃん・・・!」

「ほら、もっと・・・!」

「ユイちゃん!!」

ユキは拳を受け止める。舌打ちしたユイはもう片方の拳を振りかざす。

「なんで止める!?もっと!!私を!!」

笑顔にしてよっ!!ユイの、ダグバの絶叫。

「じゃあ!!!」

ユキが叫ぶ。

「何で君は泣いているんだ!!」

ユイの動きが止まる。

「君がしたかったのは!!」

こんな事だったのか!?

「ダマレ・・・・ッ!!」

「君は・・・僕と同じなんだ!!」

「だから・・・大丈夫!!戻れるよ、絶対に!!戻ろう・・・アスナさんやキリトさんが望んでいる君に・・・!!」

「アアアアアアアアアアアアッ!!!」

ユイの絶叫。

「ほら・・・」

キリトとアスナがユイを抱きしめる。闇が抜けていき、白い青年の形へと変化する。

「もう終わりだよ・・・。ダグバ・・・」

雄介の幻影が現れる。

「クウガ・・・ッ!!」

僕はまだ戦いたい。もっと人を殺したい。

「ユキ君・・・。彼にとどめを」

コクリと頷いたユキは両手を大きく広げ、右足を後ろにして下がる。

幻影がクウガの形となって、ユキと同じ構えをとった。

両者は、ダグバへと走り出す。両足が黄金色に輝く。そして跳躍して蹴りを叩きこむ。

「オリャアアアアアアアアアアアッ!!!」

ダグバがそれを受け、大きく後退し笑って言った。

「強くなったね・・・クウガ・・・」

閃光、爆発。闇は消え去った。彼は、笑いながら逝っていった・・・・。



「ユイちゃん・・・」

ユキはユイの近くによる。

「ユキさん・・・。ありがとうございました」

あっさりと立ち上がる。

「キリトさん、アスナさん・・・」

ユイは自身の正体を話しはじめる。カーディナルの正体、プレイヤーを心理的に癒すためのシステムだと、彼女は告げた。

「これも・・・この涙も偽物なんです。全部・・・」

そんなことない。彼女の涙は温かかった。ユキの言葉。

「ユイはもう・・・システムに縛られていない。もう自由だ。望みを言葉にできるだろ?」

「私は・・・。私は、パパとママと・・・皆さんと一緒にいたい」

「だけど・・・もう時間です」

「え?」

「私が記憶を取り戻したのは、あれに触れたからです」

ユイが指差したのは、黒い立方体。

「さきほどアスナさんが渡し、安全地帯に退避させてくれたとき、私は偶然あれに触れ、全ての記憶を取り戻しました。あれは、ただのオブジェクトではなく、GMがシステムに干渉するために設置されたものなんです」

ユイが手をかざすと、ブン、と言う音と共に光の柱が出現する。

「先ほどのボスも、プレイヤーにあれを触れさせない為に、カーディナルが配置したものでしょう。しかし、私とユキさんがそれを倒してしまった。そして先ほどの闇は、私とそれを見た人を抹消するためのものでしょう」

「君のカーソルと名前が変わったのはそれのせいか」

はい、とユイは頷く。

「そして、ユキさんが闇を倒してくれたおかげで何とか私は形を保っていますが、そろそろ消えてしまうと思います・・・」

光がユイを包み始める。

「パパ、ママ・・・。コレでお別れです。二人の喜びを・・・大勢の人に分けてください・・・」

「やだ!やだよ!ユイちゃんがいないと、私笑えないよ!!」

全員が悲痛な顔になる。ユキが近づく。

「みなさん笑って・・・」

ユキがユイに話しかける。

「ユイちゃん・・・。満足かい?」

「満足、してます」

短い間だったけど。こんなに皆さんが悲しんでくれる、思っていてくれる・・・。

「ただのAIが、こんなところまで来れた・・・」

それだけで・・・。

「ユイちゃん、一つだけお願い」

「笑って」

ユキの一言に、ユイが満面の笑みで答えた。

涙でぐしゃぐしゃだった。それでも・・・ユイは心の底から、笑って。

「ママ・・・笑って」

そう言ってユイは消えた。響く二人の嗚咽が静寂を満たした。



「あぁ・・・ここはいいなぁ・・・。兄弟」

「そうだね・・・。兄貴・・・」



しかし、着実にこちらに近づいてくる、地獄からの兄弟がいた。


 
 

 
後書き
兄弟、参戦。

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追記、誤文を修正しました。 
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