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小さな勇気

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第三章


第三章

「だろ?」
「まあそうだろうな」
 仲間達はそれに頷いた。
「あの人遊び人で有名だしな」
「結局御前もその一緒に遊んだ奴の一人なんだ」
「そうだよな」
 その通りであった。言っているうちに自分でも納得してきた。
「それじゃあそう思うか」
「それがいいだろうな」
「それで遊びが終わって」
「あの人は別の相手と」
「俺はどうすりゃいいんだよ」
「別の女の子と遊んだらどうだ?」
「まあそれが一番だろうな」
「うちの学校でもいいしまた桜商業でもいいし」
「何なら柏高校の娘と合コンでもすっか?それとも耳西高校か」
「どっちも何かな」
 康則はそれにはどうも乗り気ではなかった。
「じゃあ樫原高校」
「三つ共な。あまり」
「何でだよ」
「何処も結構可愛い娘いるぜ」
「いや、その三つの高校な、俺の知り合いの娘多いんだ。中学校の時の」
「いいじゃねえか」
「かってのクラスメイトと再会してそのままなんてよ」
「馬鹿言えよ、そんなの出来るかよ」
 康則はそれには絶対に首を振ろうとはしなかった。
「それで地元で言いふらされたらどうするんだよ」
「大丈夫だって」
「そうなったら御前が悪いんだよ」
「・・・・・・そうだけどよ」
 そもそも何か馬鹿なことをやったからこそ言いふらされるのであって何もなければ言いふらされたりはしない。だがそれでも彼はこの話を受ける気にはなれなかったのである。
「何かよ」
「じゃあ御前この三つの学校はいいんだな」
「ああ」
 勿体無い気もしたが諦めることにした。
「パスさせてもらうよ」
「わかったよ、それじゃあ御前はなしってことで」
「俺達だけで行って来るよ」
「若しかしてその三つの学校全部と合コンするのか?」
「ああ、ハシゴでな」
「絶対誰か引っ掛かるぜ」
「だといいがな」
 それで引っ掛かる程世の中は甘くはないのであるが。当たる時はそれこそ神懸かり的な確率で可愛い女の子が当たるが当たらない時は何があっても誰も一緒になってはくれない。合コンにしろナンパにしろそうである。もっともこれは男だけでなく女も同じなのだ。男だけと思うとこれが大きな間違いなのだ。
「じゃあ吉報待ってな」
「そうさせてもらうぜ」
「御前も誰か見つけるんだな」
「どっかにいればいいけどな」
「頑張れや」
 そんな話をしてまた時間を潰す。そして康則は相変わらず一人だった。合コンに言った連中は彼女ができたりできなかったり。それぞれであった。康則は結局そのままだ。それでまた真子先生の話をしていた。
「何かあの先生最近静かだな」
「そうだな、何かな」
 またしても教室で仲間の一人の机に集まってだべって話をしていた。
「全然怒らなくなったしな」
「静かっていうか暗いよな」
「何かあったのかね」
「ああ、最近友達が結婚してばっからしいぜ」
「先生の友達がか?」
「それで結構落ち込んでるらしいんだ」
「結婚かよ」
「あの先生だってもう二十六だろ」
「あれ、二十七じゃなかったっけ」
「二十六だよ、覚えとけよ」
「だったっけなあ」
「女の人の歳多く間違えたらそれだけでえらいことになるぜ」
「ああわかったわかった」
 そんなやり取りの後で話を仕切り直した。
「で、最近それを気にしてるのか」
「あの先生も難しい年頃だよな」
「けどよお」
 仲間内の一人がここで言った。
「あの先生も彼氏とか作らねえのか?」
「彼氏か?」
「そうだよ。あんだけ美人なのによ」
「無理じゃね?」
 すぐにこの突込みが返って来た。
「無理かよ」
「だってあの性格だぜ」
「きついもんなあ」
「職員室でもギスギスしてるだろ」
「ああ」
 真子先生のそうした性格は同僚に対しても変わらなかった。おかげで国語科の中ではかなり浮いてしまっているのだ。そうしたわけで先生は彼氏は出来そうにもない状況であった。

 
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