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バカとテストと白銀(ぎん)の姫君

作者:相模
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sceneⅢ 寝返り工作

約束をしてた二人が、こっちの座る席の後ろに腰を下ろし直した。
「随分と変わった話し合い方だな、浅井」
「済みません、お待たせしましたね。」
「待つのは構わないよ。とは言え、こういう形になるのはしかたないだろ、何と言っても根本派の人間にばれたおじゃんなんだから」
背中越しに二人に言葉を返す浅井
Bクラスに所属しており、一部では試召戦争での前線役にうってつけだと言われている彼には一つ悩みがあった。
それは、根本が仕切っているクラスの為に働くというのが、どうしても嫌だったのだ。
彼は表にこそ全く出していないが根本のことを憎悪している。
しかし、Bクラスの勝利のため(勝たなければ設備が悪くなるが故に)自分もやる気を出して戦わないといけないと理解もしている彼は、クラスと私情の間でジレンマに陥っていた。
そこに目を付けたFクラスから根本の代わりに代表に成らないかと誘われ悩んだ結果、彼は話だけはしてみようと言う結論に至った。
彼としては裏切ることに、特にクラスの設備の現状維持と根本を追い落とすことができるならば何だってよかったのかもしれないが。
「それで、お前は何がどうなれば寝返ることが出来ると考えているんだ?」
「そう焦らせないでくれ、Bの内部は今かなりギスギスしているから、逆に安定状態に成っているんだよ。いつ、誰が爆発を起こすかによっては誰の受ける被害がきつくなるのかさえも変わってしまうのだから。」
「そうでしょうね…やはりBクラスが戦争に加われ無いようにするには力で押さえ込まなければ成りませんか…」
女の言葉は諦めが滲んでいたが、語調からむしろ計算通りと言った感じなのだろうかと彼は思った。
「そうだろうね、もし反乱を起こすとすれば試召戦争の時だろうけれどこっちはこっちできついと思うよ。何せ根本の野郎のことだ、Cクラスからの援軍を無理矢理にでも出させるだろうからね。」
Cクラスの話はあまりしたくないけれども、Bクラスに所属する人間としてはしなければ怪しまれるだろう。
Cクラスと新学期早々に結んだ同盟関係が二年の中で一際バランスを崩すことに成っているのは誰しもが思っていることだ。
学年序列第二位と第三位が同盟を結ぶことによって、明らかにAクラスを攻撃する意志と下位クラスへの威圧感が増した。
そんな中でFクラスがDクラスを破るという奇跡が起きたのだから、根本としては面白くないであろう。
遅かれ早かれ、どこかの段階でBはFに対して干渉をするだろう。
「参謀、Bクラス単体と戦うことになったとき勝率はどれくらいある?」
「そうですね、順当に考えて今ならば7割でしょうか?」
「それはBに対する挑発なのか?それとも脅しなのか?」
「ご判断にお任せします、しかし浅井君のように不満のある人間をそう簡単にまとめることなど至難の業だと(わたくし)は思いますが」
なるほど、確かに『普通』に考えればそうだ、どうも自分は異常事態に慣れきってしまっているようだ。
「不満のある奴の弱みを着々と握っているような相手に対して、いや握られている奴はリーダーの言うことを死ぬ気で成し遂げようとするだろうけどな。死兵状態のやつらがどんなに恐ろしいか、二人は分かっているのか?」
「あいつは……そんなことまでやっているのか…」
「そんな…信じられません…たかだか学校の一部分の事柄に対してなのに、そんな事まですることなんてありません…」
「こっちの要求はただ一つ、根本を引きずり降ろすための手引きをしてくれってこと。そのためなら多少の冒険はしてやるさ」

 浅井が根本に対して憎悪の感情を胸に秘めていることを知っている者は、彼の正義感が根本のやり方に反発を覚えているのだろうと思っている。
確かにそれも一要素であり、当たらずも遠からずである。
(許さない、アイツを傀儡にしたことを、絶対に後悔させてやる……) 
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