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IS レギオン

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第16話

 少しだけ時を戻そう。

 ハワイ沖水中凡そ200メートル水域

『霧の艦隊』の新アジア連合国家連邦所属 改阿賀野型1番艦『常磐(ときわ)

 「あーあ。暇だなぁ、何で私こんな役目を『大和さん』から引き受けたんだろう。何せ『ハワイ諸島に集まった艦艇の数がどれだけいるか探ってきてほしいの。よろしくお願いね。『常磐』さん』なんてこと引き受けたんだろう。まあ、此れが終わったら、ハワイ行っておいしい物たらふく食べよーと」
とぶつくさ言いながら、一隻の軽巡洋艦が水圧などの物理法則を無視しながら、水中を高速で疾駆していた。その艦艇から一人の和服少女が何の防水衣服などを着ていなかったが、その服や顔には一切の水滴が掛かっておらず、その艦の周辺には不思議な膜が包み込んでいた。

 その和服少女の特徴としては、黒髪は肩まで掛かっており其の髪を碧い髪留めを一本で止めており、その目は黒真珠の様な輝きをはなっていた。また服装は、所々に青い雫をあしらった和服で統一されていた。その少女の名は『霧の艦隊』のメンタルモデルである改阿賀野型1番艦『常磐(ときわ)』その人であった。他のメンタルモデルたちからは、『常ちゃん』やら『常磐姉さま』と上からも下からも頼りにされていた。

 『大和さん』から引き受けた任務を全て全うした『常磐』がハワイに向かって帰投していた時に「束による演説」が行われてその電波を傍受した常磐は、
 「この人、頭大丈夫かな?」
と心配しながらもどこか冷めた雰囲気を纏っていた。

 そして、頭上が妙に騒がしくなり、炸裂音や爆発音が多数聞こえていた。

 「なんだか、騒がしいわねえ。何氏ら、行ってみよう。『常磐』緊急浮上せよ!」
と言いながら、『常磐』が急速に海面に向かって浮上を開始し、暫くした後に、明るい水面が見え、そして、太陽が煌めき、海風が心地よい海面に飛び出した。
 「ああー。気持ちいい。やっぱり空があって、空気があって、風が吹いているのって,とても気持ちいいなあ」
と言いながら、海風に靡く黒髪を片手で軽く押さえながらも、気持ちいいと感じをしながら何処か清々しい気持ちになっていたが、突然上空に多数の炸裂音やそれが何かに防がれた衝突音が多数聞こえた。
「何かが、空で戦っている?」
と、常磐が顔を上げ、艦の持っている望遠機能を使いそれを見た。
「あのマークは米軍?それにそれを戦っているのは、確か篠ノ之束とかの言っていた『IS』とかいうものかな?一応『大和さん』とかの皆に伝えよう。『我、『霧の艦隊』の新アジア連合国家連邦所属 常磐 全『霧の艦隊』に緊急伝達。我、『IS』に遭遇せり。『IS』の情報は、直ちに全『霧の艦隊』の総力を持って調べる必要があるものとする。以上』
と言いながら、情報伝達機能をフル稼働させた。

 そして、一機の航空機にISが突撃しようとした時に、常磐は、
「いけない、あの機がやられる。仕方がない。主砲一番てぇ」
と艦橋の上に立ちながら命令した。

 ISと霧の艦隊の一艦である『常磐』が対決しそうな雰囲気であった海域のその上空15,800メートルに滞空していた小型な昆虫と甲殻類の合わせた様な物体が多数とそれとは一回り大きい昆虫と甲殻類の合わせたような物体が一つ空中で止まっていた。

 「何か分かったことがある?そう、分かったよ、ありがとう『プライベート・レギオン』。うん何かあったら教えてね」
と一回り大きい昆虫と甲殻類の合わせたような物体が呟く。そう、その物体こそが『織斑一夏』と分子レベルで融合を果たした、深宇宙生物である『レギオン』であった。いや、今は『サマー・マザーレギオン』と言った方が良いかも知れない。

また、その周辺を守る様に同行している物は、レドーム状の突起物が四方向に飛び出ている物を持つ生物は『サマー・マザーレギオン』から放出された『ソルジャー・レギオン』から派生した『プライベート・レギオン』という名であり、その特徴は、強力な電子戦及び各種偵察傍受に特化した特徴であるが、自らを守るための武器は備わっておらず、各種電子戦や妨害電波などによる攻守一体の兵装が最大の武器である。もう一つの方は、『フィーチャー・レギオン』という虎の子であった。その特徴は、長時間行動が出来、機動性、および、旋回性の機能強化に特化したタイプである。『プライベート・レギオン』には備わっていない、強力な自己攻撃兵装も備わっており、短時間で多数の自己射出用突起状の細胞片をさながら誘導ミサイルの如く撃ち出し、更に暫く時間はかかるが、マイクロ波を集束して打ち出す強力なマイクロ波シェル(母体であるマザーレギオンよりは若干威力が弱いが、戦車一両は十分に蒸発し、破壊することが出来る)を打ち出す。

それらの生物達を引き連れながら、空中で止まっており、プライベート・レギオンが今まで捉えた各種偵察傍受を一夏は、プライベート・レギオンを腹部に戻し、それらの情報を確認した後にまた、射出した。その後、ISと呼ばれる新型パワースーツの様な物と米軍が誇る最新鋭無人航空機群及び有人航空機群の集団戦術との戦闘を見て、一夏は、
「どうも、あのISと呼ばれる物は、集団戦法には柔く、多重同時多方向戦法にも柔いな」
という結論を出し、その場から離れようとした時に、そのISが一機の米軍の地上攻撃機に突撃して行った時に
「まずい、あの機の乗員が危ない!助けないと」
と言うのと同時にその場から急降下しようと態勢を立て直そうとした瞬間、一夏の感覚器官が危険信号を鳴らし、その場から生物達を引き連れて緊急回避した。

 その瞬間、今まで留まっていた空間を二条の赤い光線が通り過ぎていった。
「超圧縮粒子光線!まさか!」
と呟くと同時に自ら持つ視覚能力を最大感度にしてその光線が放たれたを見ると一隻の大型船が浮上していた。
「あれは、『霧の艦隊』の一隻。間違えない、あの特徴的な幾学画は、『霧の艦隊』しかない」
糸夏は暫く呆然と眺めていたが、ISが両手を掴んでいる中折れ状態の両刃剣を振りかざして『霧の艦隊』の一隻に向かって急降下していった。
「まずい、こうなったら、あの艦を助けよう。でも、今の状況だと、そうだ『あの手』を使おう。プライベート・レギオン達は収納、フィーチャー・レギオン達は、マイクロ波シェル用意!あと、『ハクサン』たち準備しながら『あれ』も準備しといて、お願い!」
と言いながら、一夏は高速飛翔形態のまま急降下していった。

 「ウソ、何で効かないのよ!参ったわねえ。こうなったら、出し惜しみ無しよ!全VLS機動、弾種対空掃討レーザーミサイル及び多弾頭ミサイル。掃射、てぇ」
と言いながら、『常磐』から夥しいミサイルがISに向かって斉射された。

  軽巡洋艦『常磐』のVLSから放たれた多数の2種類弾頭がISに向かって追尾飛翔した。そして、一部の弾頭から更に多くの小型ミサイル弾頭に分裂し、多方向に包囲を縮めながらISに向かって行った。

 「くそ、邪魔をしてくれたな!許さんぞ。絶対に許さんぞ!破壊してやる!これは絶大な力を持っているんだ。あんなちゃちな船なんて破壊してやる」
と激昂しながら箒が真っ直ぐに常磐に向かって急降下していくと多数小型ミサイルが着弾し、さらに箒は怒りに燃えた。
「くそ、ただの船のくせに生意気すぎるぞ!何もせず只やられてしまえ、それ位しか出来ないくせにこの私の自慢の姉が作ってくれた物の錆と成って仕舞え!ガラクタめ」
と口汚く罵った。

 小型ミサイル弾幕が全弾着弾した後も勢いを止めずに真っ直ぐ急降下しながら常磐に向かってきたが、第二次対空防衛網である対空掃討レーザーミサイルが待ち構えていた。

 それは、弾頭部及び胴体部が別駆動で時計回りと反時計回りにそれぞれ高速回転しながら弾頭部8か所、胴体部24か所から短射程であるが高出力レーザーを高速連射し、文字通りレーザーのゲリラ豪雨を再現出来、しかも今回は手加減無しの為、文字通り豪雨を遥かに超えて、ハリケーン・カトリーナクラスの弾幕を再現した。また後部推進噴射口は逆噴射しながら最大35分以上その場に滞空できる。

 「くそ!あの弾幕を通り過ぎたと思ったら、今度は、レーザーの雨か!なめおって」
「ウソでしょ。あの弾幕とレーザーの豪雨を無視しながらまだ来るの!有り得ないでしょ。まあいいわ、ソレなら、取って置きを使ってあげる。全連装高角砲起動!独立機動モード後、敵目標に向けて全力掃射。あとVLS弾頭換装『振動ミサイル』用意。また、自己防衛力場『強制波動装甲』から最大出力で『クラインフィールド』を発生開始」
と常磐が常磐の艦橋の上で命令を出した。

 その命令通りに両舷に装備された8基の70口径8センチ連装高角砲を模した砲塔が艦体から分離し、2基一組になり合体し、常磐の周囲の空間に浮遊し、対空掃射を始めた。

 「くそ、忌々しい!こうなったら、切り札だ!『竜田姫(たつたひめ)』起動!」
と声高に叫ぶと、中折れ状態の両刃剣の刃部分から超高周波の振動が起きた。
「これは、私の姉が開発した超高周波振動刃「オノゴロ」だ。そしてこれが私の最終絶対戦術 『龍田姫』だ。悪しき船をこれを受けて沈んでしまえ」
と声を高々に叫び、『強制波動装甲』から発する最大出力の『クラインフィールド』にぶち当たったが、暫くするとクラインフィールドを突破した。

 「ウソでしょ、有り得ない。そんなまさか」
と常磐がクラインフィールドが突破された事に呆然となり、一時的に思考が停止した。
「しまった!不味い、間に合わない!」
「死ねえ。化け物め」
と箒が常磐に向かって『超高周波振動刃「オノゴロ」』を振り被った。

 「御免なさい。皆さんお別れです」
と、常磐が腹を決め、目を瞑った。

 「間に合えええ」
と何処からか声が聞こえ、ガギンという金属の衝突音が聞こえ、
「どうやら間に合ったみたいだね。大丈夫?」
と優しい声が聞こえ、常磐が目をゆっくりと開いた。

  「貴方が助けてくれたの?あなたは何者ですか?」
とゆっくりと瞼を開いた常磐は目の前に異形の生物に目をした。その生物はまるで、節足動物と甲殻類が混ざった生物であったが、常磐はその生物が私の身をまるで守ったことに安心した風な優しい目をしていた。そして、超高周波振動刃「オノゴロ」とぶつかった前脚を気にしながらも、
「我が名は『レギオン』いや『サマー・レギオン』とか言った方が良いのか?まあいい、其れよりも、大丈夫か?ええっと...」
と声に出していないが、なぜか常磐にそう聞こえた。
「『常磐』よ。正確には、改阿武隈型軽巡洋艦1番艦 常磐 よ。ええ、私は大丈夫。ありがとう、助かったわ」
「そうか、良かった。後は、任せてくれ。」
「いいえ、私も戦うわ。と言うよりも戦わせて!」
と言葉を喋れないレギオンと言葉を交わした。それが、一夏と常磐の出会いであった。

 「何か知らんが、また変な化け物が増えたな」
と箒は、超高周波振動刃「オノゴロ」のゆっくりとぶつかった前脚から離した。そして、一時的に距離を取ったが、再度別角度から強襲し、撫で斬りにしようと,背部一体型のスラスターを全力で吹かした。
「死ねえ、化け物どもめ!『オノゴロ』の刀の錆にしてやる『龍田姫』再度起動!最大出力!」
と言いながら、中折れ状態の両刃剣が灼熱の溶岩の様に赤く光り、少しずつ刃部分が溶解していった。

 「この攻撃は不味い。『ハクサンレギオン』出撃」
と一夏は、胸から腹部にあるエッグチャンバーから多数の『ハクサンレギオン』を放出させた。

 ハクサンレギオンとは、ソルジャーレギオン(小型レギオン)から進化発展したタイプの一つであり、一夏の身体には、無数のソルジャーレギオンと共に同じく多種多様に進化発展した個体も多数収納されている。このタイプは、主に大量の火薬やニトロを推進剤として超硬金属の杭を射出する機構(パイルバンカー)を搭載した、近接戦に特化した系列であり、対象破壊時の飛沫破片などから身を守るため、前方にブロックシールドと呼ばれる巨大な盾を標準装備しており、これは敵弾を防御するためである。ただし、スピードは遅いが爆撃やブロックシールドを使った突撃による攻撃を行う。パイルバンカーの威力も強く、局所戦や防衛戦では強みを発揮する。

 そして多数のハクサンレギオン達が箒が持つ両刃剣『オノゴロ』が切り裂こうとする部分に集結し、幾つもの層の密集体型を作った。そしてハクサンレギオン達は、ブロックシールドを前方に突出し頭部を引っ込めた。

 「「ガギン」」

 という重厚な金属音を辺りに響き渡らせた。

 「なんだと!」
と箒は驚愕の表情を作り呆然とした。なぜなら、最大出力で放った『龍田姫』が全く常磐の艦体に届かないばかりか、ハクサンレギオン達のブロックシールドに完全に受け止められ、中折れ状態だった両刃剣が柄の部分を残して完全に崩壊した。

 「今度はこっちの番だ!『パイルバンカー』一斉掃射!」
と言うように一夏は声にならない甲高い叫び声を出した。それに呼応するかのようにハクサンレギオン達は、腹部に装備されたパイルバンカーをISに向けて、超高速で一斉射撃した。

  少しだけ時間を巻き戻して

 「うそ、クラインフィールドがもたない、このままだと強制波動装甲すら届いてしまう!」
と常磐が焦り出したが、隣りにいるレギオン=一夏は全く焦らずに青い瞳を常磐に向け、
『大丈夫。この艦は私達が守る』
という風にすると、胸から腹部に掛けて無数の楯を持った甲殻類と節足動物が合わさった小型生物が多数出現した。

 『全員一斉掃射開始』
という風に一夏が声に鳴らない甲高い叫び声をあげた。その声に呼応するかのように左右甲板など様々な所で常磐の艦体全体に壁を作っていたハクサンレギオン達がISの方向に向け自身の最大兵装である『パイルバンカー』を掃射した。

 「なんだこれは、グウ」
と超音速で射出された。超高硬度のダイヤモンドコーティングされた杭が瞬く間にISの絶対防御壁を障子紙の様に全弾貫通し、ISの全身装甲に着弾し、そのほぼが全てが身体中のあらゆる所に貫通し、箒の皮膚や肉や骨や内臓を抉り破壊し貫通し、背部のスラスターなどを壊し、抜けていった。

 「体が痛い痛い痛い、腕が、足があああ」
と箒が声に鳴らない叫び声が響いた。その身体は、前身穴だらけであり、両手足は無くなっていた。そんな時に箒の頭部バイザーの裏側から声が聞こえた。

 「あーあ、箒ちゃん。折角束ちゃんが、箒ちゃんの為に作ったISをこんなにしちゃってえ。まあいいや、色々と情報が集まったし、もういいや。バイバイ箒ちゃん」
「何を言っているんだ。姉...」
と一方的に束が通信を切るとのを呆然とした箒が言葉を続けようとした瞬間。

『ピピー。IS「緋騎士」の機密保持プログラム保護のため自爆します』
と機械音がした瞬間。IS内に仕掛けられた爆薬が起動し、ISが搭乗者もろとも消滅する爆発音が響いた。


 ハワイ諸島にあるある無人島の束専用機密ラボ
 「あーあ、せっかくISを使って、世界を吃驚させようとしたのに、あの屑のせいで台無しだよ全くもお。それにしてもあの最後に出てきた生物気になるなあ。解剖したいなあ」
とグルングルンと椅子を回転しながら呟いた。
「まあいいや、次のサプライズだよ!」
と言いながらパソコンのエンターキーをポチと押した。

 「姉さん、大丈夫?」
と言いながら、部屋のドアを開けた一つの影が喋った。
「ああー、大丈夫だよ。箒ちゃん」
「そうよかった。私の変わりはまだ居るもの」
と箒が言いながら、パソコン類が占領している束の部屋から見渡せる巨大な水槽に先程の篠ノ之箒そっくりの少女達が大量に水槽の水の中にいた者たちを見た。そして其の傍には、試験管の様な容器が大量に並びその中一つ一つに胎児が沈んでおり、その胎児たちは、ゆっくりと胸の鼓動を響かせていた。

  ISが突然目の前で自爆したのを見て、二人は唖然とした。
「何があったの?」
と常磐が困惑したが、目の前の異形の生物を見ながら、
「ありがとう。助かったわ。色々と」
と言った後に目の前の生物を見た。

 一方その頃、アメリカ本国の国防省 地下機密情報室 
 
 「いったい何があったんだ、なぜあの『UFO-1』が爆発したんだ。くそ、此れであの『T計画』が出来ない。(いや、まあいい、後でその海域を封鎖し海中探索し、残骸を回収すればいい)あの人間擬きが、やったのか?」
とピーター・シルバーマンが叫んだが、隣にいたジャネル・ヴォイトが、
「分かりません。我が軍の軍事用偵察衛星のKH-20がこの海域の衛星写真を送られてきましたが、人間擬きが、乗っている船の近くに未確認生物らしき熱源を確認。これです」
「なんだこれは、まあいい、SWBMを積んだ機は今どこにいる?」
「は、コードネーム『ラグーン1』及び『ラグーン2』はもう現場空域で旋回しながら待機中です」
「わかった。なら『ラグーン1』及び『ラグーン2』に伝達し、SWBMを使用せよと送れ」
「しかしながら、それは、条約違反では」
「何が条約だ、あの人間擬きを仕留めるチャンスじゃないか!それに、もしそれで仕留めたとしても全部UFO-1のせいにすればいいだけの話じゃないか。もう一度言う『SWBMを使用せよ』と命令を送れ。そういえば、お前の故郷のお袋さん如何も体調が悪いそうじゃないか、今度また、手術するそうじゃないか。費用が掛かりそうだな」
「!!?。解りました速やかに命令を伝達します」
「そうそれでいい。それこそが我々が神から授かった力である。我々は、何者よりも強い」
という風に大げさにふるまいながらに室長用の席に座りコーヒーをゆっくりと啜った。

 その通信は、ハワイ上空で待機していたB-91のパイロットに伝えられ、
「了解。SWBMを使用します。3,2,1,投下」
と言った後、B-91の武器扉が開き、そこからSWBMが投下され、SWBMが暫く自由落下後に、自身に後部からパルスジェットエンジンが作動し、目標に向かい飛翔した。

 その頃

 「自分は大丈夫だ。心配ない」
という風に一夏が、常磐を見た。見つめられた常磐は焦った。
 「え、え、え。私の顔に何か付いているの?それになにこの何とも言えない感は!ああ、誰か教えて欲しい!そうだ、『あの子』なら何かわかるかも。直ぐに『あの子』に概念伝達をすれば...」
と言おうとした瞬間、常磐自身の早期危機情報システムが警報を鳴らした。その時、一夏はレギオン化のまま高速飛翔形態になり、空に上がって行った後、暫くした後に突然空が光り、強烈な衝撃が常磐に襲い掛かった。

  アメリカ軍の開発した新型空間制圧兵器『SWBM』は、主に特殊な燃料気化爆弾を弾頭とする弾道ミサイル。弾頭の燃料気化爆弾は燃料が水平方向に広く拡散する様に指向性を持たせてあり、水平方向数十キロに及ぶ範囲で強力な衝撃波を発生させる。グレイプニル背面に備わるサイロから発射されたSWBMは、数十秒~数分の飛翔の後に指定座標及び高度で炸裂し、大気を瞬間的に熱膨張させ、非常に広範囲にわたり、航空機をその圧力で粉砕するが、空域制圧を目的として開発された為、大気の密度や温度の関係上、地表付近では威力が大きく減退する。この為、極低空を飛行する航空機には効果が低いという欠点がある。また山間部や渓谷等、燃料や衝撃波の拡散に対する障害物が多い環境下でも、その威力が制限される場合がある。また、現在アメリカ軍は、この技術を応用して様々な種類の兵器及びそれらを運用する兵器が開発中である。

 その兵器が使用されるのを早期に察知した一夏は、その破壊力は一夏もまだ未知数であったが、何か危険だと思ったが、その時にはもう体の方が思考よりも早く動いていた。

 「何か危険が私とあの子が危険だ。早めに何とかしないと」
と一夏は飛行形態中に思った。そして、その物体を視認した瞬間、『それ』が突然が炸裂した。

その衝撃波と一緒に食らった一夏は、身体の彼方此方に重度の火傷と裂傷や内臓にもダメージを食らった。
「くう、しまった。油断した。身体中が痛い。御免千冬姉、高嶺叔母さん、茂叔父ちゃん」と言いながら、一夏は意識を失った。その瞬間、急降下した。

 そして、急降下しながら落下したレギオンは、そのまま海面にぶつかった。

 その衝撃の余波を食らった常磐は、
「一体何があったの?」
と困惑しながらも、艦体を立て直した時に落下するレギオンを見つけた。
「不味いわ。このままだと海面にぶつかってしまう。全速前進機関全開!」
と艦橋で常磐が叫ぶと同時に軽巡『常磐』の機関が最大出力を出し、レギオンが落下した海面に向かった。

 そして、レギオン落下地点の海域に着いた常磐だが、その海面には、巨大な羽が数枚浮いていただけであった。その羽を常磐が回収した後に常磐が、
 「急速潜行!クラインフィールド展開、ソナー最大出力。あの生物を救い出して、借りを作るのはどうも癪に合わないから」
と叫んでいたが、内心『あの生物』に恋をしたこと秘密である。

「ソナー反応確認。近い」
と常磐の思考に反応した。そして、海中に沈降していくレギオンを速やかに沈降予想地点に先回りし、艦体の後部甲板にその身体をゆっくりとクラインフィールドを緩衝材替わりにし、その身体を横たえた。








 
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