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ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~

作者:C.D./hack
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究極の闇

 
前書き
闇が来る。 

 
 アインクラッド 55層

「チッ・・・しつこいヨ、あいつラ!」

オイラは後ろから来る、10体程の雑魚mobに針を投げる。

しかし、ガギィイッ、という音と共に、針が跳ね返ってきた。

「嘘・・・ッ!」

体を腕だけで防ぐが、足に針が突き刺さった。

「う、あっ」

針にはスタンの効果があるものだった。痛みはない。しかし、歩けない。オイラは這いつくばって移動する。

しかし、mobが追いついたのか、脚を引っ張られた。mobの顔が見えた。

下劣な笑み。そいつはナイフを振り上げた。

「いや・・・だぁ・・・」

死にたくない。その瞬間だった。

「オ・・・アアアアアアアアアアアッ!!」

少年の声が響き、脚を掴んでいたmobが吹き飛ばされ、後ろにいたmobが全て赤い閃光に突き刺され、爆散した。

少年は爆発を背に、腕を振った。そしてこちらに近づいて来て、言った。

「大丈夫ですか?」






「立てますか?」

僕の問いかけに女性があ、あア、と答えた。脚を見ると血は出てはいないものの、データの切り口が見えた。

「ちょっと失礼」

そう言って僕は女性を背負った。女性は

「お、お前。ちょっと待テ!!」

暴れるのを無視して聞く。

「あの~・・・。ここってどこですか?そして、僕はどこに行けばいいんでしょう」

「ここが何処カ!?わかってないのカ!!?」

「わかってないとダメなんですか?」

女性が黙る。女性は、ただ一言言った。

「下に降りてくレ・・・。道のりはオイラが教えるカラ・・・」

そしてカナリアが一言。

「ユキ・・・あなたって大胆なのね・・・」

「何が?」

そんな会話をしながら、僕は指示された通りに歩き始めた―――――――――――――――。






 アインクラッド 22層

ユキが55層を出発してから1日。


「白い幽霊が―――――――――――――――!!」

「や、やめてよ、キリトく・・・ひっ」

俺はおかしな声を出した彼女、アスナの反応を楽しんでいた。

「キ、キリト君!あれ・・・」

緊迫した、アスナの声。

「え?」

俺は、アスナの見ている所を見た。茂の生い茂っている所に、ぼんやりとした白い影があった。

少し近づいてみる。

「あれは・・・幽霊なんかじゃないぞ!!」

思わず俺は声を張り上げた。

「ちょ、ちょっと!キリト君!置いてかないで、もうっ!!」

アスナが後ろから追いかけてくる。茂みには見慣れた顔が一人と、見慣れない顔が二人。

「ア、アルゴさん!?」

アスナの声。なにをやってるんだと思いつつ、アルゴを背負う。見慣れない人の内の一人、少年の目が開いた。

「・・・うっ・・・ツ!!」

少年は立ち上がると、腰につけたベルトを撫でた。

「変・・・身ッ!!」

少年のベルトからS字のようなものが出現し、変形して双刀の様な形となる。

「なッ!!」

俺はすぐさまエリュシデータを実体化させ、男に向けた。

「その(ひと)を放せ・・・っ!」

鬼気迫る表情の男の放つ殺気に圧倒される。そこに光を纏った小鳥が出現した。

「待って、ユキ!彼らはアバターよ!」

「あ・・・カナリ・・ア」

ごめん。少年は小鳥に呟いてから、血を吐いて倒れた。

「ユキ!」

小鳥が少年のそばに駆け寄り、ベルトを見た。

「・・・!!あなた、ペガサスフォームを一日中使っていたの!?しかも、シャイニングカリバーまで使って・・・!」

ペガサスフォーム?シャイニングカリバー?いったい何を言っているのだろう。そして、

「血を吐いた?」

武器を使っていたから、アバターだ。しかしデータ上の存在が、血など吐くか?

「アスナ・・・この人も連れて行く」

アスナとなんとか三人を担ぐと、家まで連れ帰った。








目を開けると、よくわからない場所だった。起き上がろうとすると、全身が傷んだ。

「・・・っ」

とてつもない疲労感。ペガサスフォームを一日中使ったからだろう。


ペガサスフォーム。緑のクウガ。空中を浮遊し、人を殺害していたグロンギ、メ・バヂス・バを相手にしたときに解放された射撃形態だ。

ペガサス、緑の力は感覚に特化した形態で、視力・聴力といった五感が極限まで研ぎ澄まされ、情報収集に優れている。

クウガ、先代クウガであるリクと2代目クウガである五代雄介は、これを射撃に用いていた。

しかし、ユキはモンスターに遭遇しないように一日中使用していた。だが、それは恐ろしい行為だった。

ペガサスフォームには、決定的な弱点がある。

他のフォームと比べ、身体能力が低いのは、能力でカバーされている。ならば、決定的な弱点とは何か。

それは変身できる時間が、わずか50秒しか変身できないという点だった。

そもそも、五感をどうやって研ぎ澄ませるかというと、ベルトにある霊石・アマダムから発せられる全身の神経を、極限の緊張状態に陥らせることで能力を発揮する。

それ故に体力の消耗が速く、50秒たつと白のクウガであるグローイングフォームに戻ってしまう。

それを、一日。下手をすれば、感覚が狂って精神崩壊もあり得る。


「・・・」

僕はちらりと隣のベットを見た。そこには、昨日保護した少女とアルゴさんが寝ている。

よかった、無事だったんだ。途方もない安心感と脱力感がやってきた。

そこへ、一組の男女が入ってきた。

「あ、良かった。目を覚ましたんですね」

そう言って、女の人がこちらに温かい飲み物をくれた。

「ありがとうございます」

お礼を言って、飲み物を飲む。

「あの・・・なんで」

なあに、と女の人がこちらを振り向く。

「なんで、僕を助けてくれたんですか?」

僕の中の疑問。それをぶつけた。

「何でって・・・。プレイヤーは助け合いでしょ」

「・・・そういう・・・ものですか」

うん、そうだよ。女性の一言に理解ができなかった。

僕は、生まれてこの方、家族以外に助けてもらった記憶がない。

だから、女の人の行動の理由が分からなかった。

「なぁ、君は・・・」

男の人が口を開く。

「君は・・・何者なんだ?名前は?」

「僕ですか?僕はユキ。クズですよ。どこにでもいる、ね」

「僕は・・・」

「そこからは、私が説明するわ」

カナリアがやって来た。






「私はカナリア。説明するから何でも聞いて」

「じゃあ・・・あなたたちは、何者なんだ?特にユキだ。アバターが血を吐くわけないからな」

「彼は、普通の人間よ。この世界に適応しているだけで。アバターのように、仮想の肉体ではないけどね」

「・・・!!本当の体だっていうのか!?」

キリトは驚いた。

「ええ、そうよ」

「どうやって・・・ダイブしたんだ?」

キリト、いや、アバターが聞いたら、全員聞くであろう疑問。

「それは・・・私がやったという以外、いえないわ」

「じゃあ・・・ユキは・・・。あの剣はなんだ?ベルトから出現した、あの剣。そしてペガサスフォームとはなんだ?」

「あの剣は、聖剣シャイニングカリバー。この世で最も固く、最も切れ味がある剣。ぺガサスフォームは、緑のクウガ。五感が数千倍に近くなる。ひどく言うと、人間ではなくなる。凄まじい五感を持つ、怪物になっていたのよ」

そんな、とアスナが悲痛な声を上げた。怪物になる。人ではなくなる。それは一体どんな恐怖だろうか。

「そんな・・・そんな危険な力をなぜ!彼に与えたんだ!!」

キリトが叫び、カナリアがすくみ、それは・・・と言う。

「いいんですよ。キリトさん」

ユキが止めた。キリトがこちらを向く。

「君はそれでいいのか・・・?命を捨てているのと同じなんだぞ」

「いいですよ?別に」

だってクズだから。僕はクズだから。どうしようもない、存在だから。だから―――――――――――――――。

「人柱になって死んだっていいんです」

「・・・な・・・で?」

え?ユキは、アスナが何を言っているかわからなかった。

「なんで!?なんで、命をそんな簡単に捨てられるの!?」

悲鳴に近いアスナの言葉が、ユキの心を締め付けた。

ああ、この人は。この人は・・・・

「あなたは・・・僕に姉に似ている」

「だったら・・・」

ユキは、アスナの言葉が発せられる前に言った。

「姉のために生きろと?」

静寂が、周囲を満たした。

「僕には・・・無理なんですよ。クズだから。もう死んでしまったから。帰る場所なんてない。家はあっても、待っている人なんていない。消えちゃたんですよ。だったら、待つ場所が、待っていてくれる人がいる人を助けたい」

「それでも・・・!」

「クズである僕ができる事は、それだけなんだ!!大事な人もいないんだから!!」

ユキは、アスナの目をじっと見つめた。

「すみません」

謝罪の言葉が、空間を支配した。

「・・・あっ」

アスナが気付く。少女の目が開いていた。アスナがかけより、少女に質問を始めた。

「よかったぁ・・・。目が覚めたのね。自分がどうなっていたか、わかる?」

少女が首をかしげた。

「そう・・・。自分の名前はわかる?」

少女はゆっくりと、ユイと答えた。

そのあと、自己紹介したが帰ってきたのは、赤ん坊のような口調だけだった。

「君は・・・君はどうして、あんなところにいた?」

ユキの質問。キリトがあんなところ?と首をかしげる。

「なぜ、こんな22層にいたんだ?そして・・・その装備でどうやって?」

それに対し、ユイは

「わかんない・・・なんにも、わかんない・・・」

そう答えた。

「この子は、カラスの事件の時のライダー達と同じなのかしら?」

ユキは考えた。この子を救うには。アルゴさんを頼ろう。

「お呼びかナ?」

アルゴはすでに起きていた。






「う~ん・・・。その子のうわさは聞いたことないナ~」

「なら・・・一層に行こう」

始まりの町・・・。アインクラッド全てが始まった場所だ。

「なら、オイラは先に行くヨ。情報収集しといたほうがいいだろウ?」

お願いしますという、アスナの一言。

「僕も行きます。この世界のことは知っておきたいので」

「まァ、いいヨ」

ユキとアルゴは、その場を後にした。










 アインクラッド 第一層


「ん~。なかなかそれっぽい情報はないネ」

現在、転移結晶を使って始まりの町に来てから一時間。

「黒髪の女の子の情報はないんですが・・・」

僕はそう言った。

「ただ・・・」

僕にはある考えがあった。

「アルゴさん・・・。あの子って、AIの可能性はないんですか?」

「・・・どういうことだイ?あの子は、NPCじゃないヨ?」

「昨日のお話をしましょうか」

僕は昨日の話をし始めた。

「僕はあなたを背負って、22層まで行きました。そこであの女の子を保護したんです」

「僕は、何してるの?て聞いたけれど、無言でした。だから、あの子、ユイちゃんを保護したんです」

「そして・・・僕の体力の限界が来ました。そして茂みへと体を預けたんです。」

「そしたら・・・」

僕は言葉を切った。アルゴさんが聞いてくる。

「そしたら?」

「彼女が言ったんです。ユキさん、あなたの心が泣いてる・・・って」

「・・・お前が悲しそうな顔でもしてたんじゃないのカ?」

「僕は・・・あの子を保護した時、あなた以外に名前を言っていないんですよ」

「・・・!!!」

アルゴの顔が驚きに変わった。

「NPCじゃなくても・・・。システム自体に搭載されている、AIだったとしたら?」

「じゃア、なんデ・・・記憶を失うんダ?」

「そうですね・・・」

僕らは、ユイという女の子のことを考え始めた。が、

「ぎゃあああああああああ」

路地裏から悲鳴が聞こえた。先に動いたのはアルゴさんだった。後を追って僕も走る。

路地裏に入った、アルゴさんの声が聞こえる。

「お、オマエハ!!」

大型の短剣(ダガー)を持った男が立っていた。

「よう、鼠」

男は加速して距離を詰め、僕が

「アルゴさん!!」

と叫ぶと、顔を凶悪な笑みに染めてアルゴさんを斬り付けた。

「―――――――――――――――っあぁ」

「アルゴさぁぁぁぁぁぁあああぁん!!」





目の前に転がるアルゴ。守れなかった。

守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった守れなかった!!

男の声。

「おう、坊主。鼠の知り合いか?じゃあ、オマエも・・・」

「・・・お前が死ね」

「死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!オマエガ!!シネ!!」

「ユキ、ダメよ!!そのまま変身したら」

「あなたは―――――――――――――――」

カナリアの声は届かず、彼は変身する。

「変身・・・」

漆黒がユキの身を包む。全身に金色の神経が伸び、肘・肩・脚が鋭く尖る。

「オ・・・オオオオオオオオオ・・・・・」

聖なる泉枯れ果てしとき

「オオおおおおおおおおおおおおオオッ・・・」

凄まじき戦士雷の如く()

「オオおおオオおおオオおおおっ!!!!」

太陽は闇に葬られん。

空が、漆黒に染まる。

「コロス」

闇の一言が静寂を満たした





聖なる泉枯れ果てし時 凄まじき戦士雷の如く出で 太陽は闇に葬られん

古代の超戦士である、仮面ライダークウガ。その各フォームには、アイデンティティワードが存在する。


赤のクウガと呼ばれるクウガの基本形態、マイティフォームのアイデンティティワードは

邪悪なる者あらば 希望の霊石を身に付け 炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり


青のクウガと呼ばれるクウガの俊敏形態、ドラゴンフォームのアイデンティティワードは

邪悪なる者あらば その技を無に帰し 流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり


緑のクウガと呼ばれるクウガの射撃形態、ペガサスフォームのアイデンティティワードは

邪悪なる者あらば その姿を彼方より知りて 疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり


紫のクウガと呼ばれるクウガの格闘形態、タイタンフォームのアイデンティティワードは

邪悪なる者あらば 鋼の鎧を身に付け 地割れの如く邪悪を斬り裂く戦士あり


そして凄まじき戦士、アルティメットフォームは上記のものの他に、ベルトに書かれたものがある。

心清き戦士 力を極めて戦い邪悪を葬りし時 汝の身も邪悪に染まりて永劫の闇に消えん

つまり、邪悪と相対したとき自身も闇も染まり、闇に消える。

それに、ユキは変身した。いや、ユキではない。あえてここは、究極の闇とする。


究極の闇と相対した彼、PhO(プー)は、目の前の存在に寒気を覚えた。

PhOは、ラフィンコフィンのリーダーだったが、討伐戦で多くの仲間を失った。

PhO自体は、仲間がいなくなっても問題なかったのだが・・・金がなかった。

この始まりの町では、(軍)と呼ばれる集団が徴税と称したカツアゲが行っている。

それをPhOは狙ったのだ。計画は順調だった。アルゴの前に殺した奴が叫び声を上げるまでは。

斬られ、叫んだ男が消滅した後、自分が見知った顔が飛び込んできたのだ。

鼠のアルゴ。情報屋。しかしPhOはその顔を見た途端、斬りつけた。

イラついていたのもある。しかし、PhOはアルゴのアイテム、金が欲しかったのだ。

そしてそこに来たのは少年だ。少年は叫んだ。PhOは少年を殺そうとしたが・・・漆黒の姿となって、少年はPhOの前に立った―――――――――――――――。

戦慄が、殺戮が、憎悪が、究極の闇がPhOの前に立ちはだかった。
 
 

 
後書き
とんでもなく長くなった。読みにくくてすみません。

ライダーの解説は、なるべく詳しくやってます。

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