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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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たとえ今日負けても、人生は続くのさ



たとえ今日負けても、人生は続くのさ。

—メチージュ—



18歳の誕生日の朝が来た


相も変わらず軟禁・地下生活


度々吹っ飛ぶ記憶に、自分に何らかの障害が起きていることが理解できた

肉体的なもの以外に精神にも異常があることから、生まれながらの虚弱体質が原因だと断言できない



九尾の声・・・あぁ、そういえばパルコと呼べと言われたっけ

尾獣・パルコの呼びかけがある度に発熱するのが、異常の原因なのか

生まれつきの虚弱体質か、それともこの地下での軟禁生活か

あるいはこれら全てが原因なのか


パルコの言では、このまま行くと、俺は30歳ぐらいで死ぬ確率が高いようだ

熱に魘されながら、早死にやだなーとおぼろげに考えていた日が懐かしい

俺はきっと、今日にでも死ぬのだろう

腰元に迫りくる水を眺めながら椅子に座した





昨日初めて知ったことだが、なんとこの世界にも”暁”は存在していたのだ


ここ最近信徒さん来ないし、里上層部も傍付きの医療忍者も慌ただしいので聞いてみたところ


この国、他国と絶賛・戦争状態だそうです



昨日、敵国の雇われ集団”暁”に襲撃されたそうだ

そして本日未明、暁による地下神殿への襲撃が始まった

傍付きの誰かと暁が交戦したらしく、水遁が使用され水責めに近いことになっている



原作でも同じように何処かに雇われていた暁だが・・・この世界でも同じらしい

ということは、だ

尾獣狩りも行われている可能性がある

木の葉の里ないけど、マダラとかいるの?と思ったけれど別人が黒幕かも知れん

予想でしか考えられないが、人柱力である俺が狙い・・・なのか


もしそうなら、近いうちに尾獣を抜かれて俺は死ぬ


里の人間は助けてはくれないだろう

我愛羅のように、命をかけてくれるような人は・・・いないから








「九尾の人柱力か」








ついにやってきた雲の外套の男たち・・・って、八人もいる?

おいおい、たった一人の人柱力相手に大人数で囲むとは大人げねぇ

俺に戦闘能力があれば原作知識で逃げ切れるんだろうけど・・・

病弱巫子様の噂は他国にも流れてるって言う話はどこに行った


しかし原作通りのメンバーだな・・・いないのはペインと小南の2人か

トビがいるということは原作通りマダラが黒幕かな


「・・・なー旦那、あれマジで人柱力かな?
 なんかすげえチビなんだけど、うん」


生”うん”頂きましたありがとうございます

しかしサソリはヒルコの姿か

ご婦人方の間で美少年と名高い本体を見てみたかったな

「・・・小さすぎるな」

「やっぱり?座ってるからかなーって思ってたんだけどさ、うん
 鬼鮫の腰ぐらいしかないよな、うん?」 


そんなに身長が気になるんだったら立ってやるよ勝手に測れ


「あ、立ちましたよデイダラセンパイー
 うわ、ちっちゃ」

「・・・大体140㎝といったところだな」

「肉食わねえからじゃねーの?
 ほら、坊主とか肉食禁止してんだろ?」

「えーっ太陽教にそんな戒律ないっすよー
 ボク信徒だから知ってますよ!」

なんだかノリがとてつもなく軽い

原作の凄味はどこへやったんだ

飛段とトビはともかく、角都、目測で身長を当てるな悲しくなる

ギャーギャーと敵地で騒ぎだす男たちを押しのけて、1人前に出てくる

・・・イタチだ


「信徒として非常に心苦しいが・・・巫子殿、抵抗せず御同行いただこう」


トビいや、マダラもイタチもうちの信徒?

うちは一族は月隠れに住んでいたのだろうか

この世界における木の葉隠れの里は月隠れの里ってことでいいのか?

・・・どうでもいいか

両手をあげて降参のポーズ、意味は通じたようだ

水の抵抗により、足取りは格別に重く、牛以下の歩みでイタチに近づいて行く



——宿主、正気か?! 彼奴等に大人しくついて行くなど、何を考えているのだ!——



パルコの切羽づまった声が響く

ズキズキとした痛みに顔を顰める

直に発熱して、倒れてしまうだろう

だけど、今は、今だけは倒れちゃだめなんだ

何も出来ない俺が出来る、唯一の意地の張り所なんだから

胃の腑から何かがせり上がってくる

喉を逆流し、口の端から垂れ下がる液体




「・・・暁の、目的は———」



わずかに目を見張ったイタチを尻目に、問いかけた

真っすぐ天をさし、疑問を浮かべた男たちがその指に注目する

口を開くたびに赤い飛沫が見えた

トビに向かい、問いかける



「———月か?」



———何を、宿主よ、何を知って———



九尾の困惑、迫りくるトビ

あぁ、やっぱり原作と同じだったんだ

熱を上がってきたのがわかる、もう立っていられない

目にも止まらぬ速さで俺の顔を覗き込んだその目は、赤く、ぎらついていた

軽く笑ってみたら、有無を言わさず気絶させられた

































何がどうなったのか

我が精強なる月隠れが、傭兵集団ごときに敗れ去るというのか





眼下に項垂れる負傷者たちにかける言葉も見つからず、里長としての責務も忘れて神殿に向かう





あの地下神殿が顕在であれば、他国に散らばる信徒たちを焚きつけて奴らに対抗する事が出来る

早く、早くと焦りすぎたせいか、側近たちは周りから姿を消していた

しかし、早く到着する事が出来たことに安著したのも束の間のこと



信徒用に作られていた、重厚な石造りの入り口が無残にも爆破されていた

神殿関係者のみに教えられる出入り口から地下へと降りる

クナイや手裏剣、爆発や様々な術の痕跡

地下に降りるたび、その傷跡は深く、激しい戦いがあったことを知らされる


水浸しとなった大広間へとたどり着き、柄にもなく叫んだ

仮面の男が子供、いや、小柄な青年を抱き上げている

口から血を流し、青褪めながら気絶しているその青年は、まぎれもなく我が里の人柱力で——俺の唯一の甥であった



「その子を離せッ!」



仮面の男は振り返ることもなく、人柱力を連れて消えた

また、周囲にいた男たちもそれに習うかのように消えていった


負けた


完璧な敗北だった






 
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