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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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神を信ずることは、感情の問題である



神を信ずることは常識や倫理や議論の問題ではなく感情の問題である。

神の存在を立証することは、それを反証することと同じく不可能である

—サマセット・モーム—




今日は6度目の10月10日

この世界に転生した日、俺の誕生日




太陽の当たらぬ地下神殿、そこが俺の唯一の居場所

大いなる化け物を、尾獣を封印している巫子さまとして恐れられ、敬われ、軟禁されている

供え物を運んでくる周辺住人と面会する以外、何一つすることがない



いつも傍で控える、医療忍者から情報を収集することで暇をつぶす


分っていることは、この世界はNARUTOによく似た別世界だということ


木の葉という里は存在しないということ、そもそも火の国自体が存在していないこと



この国は火ではなく、日の国、太陽神を奉る小国

そんな太陽神のもと、御国のために働く月隠れの忍び里



ここが、俺の生まれた場所



そして今日、誕生日でありながら悲しいお知らせが発覚した



戦争兵器として扱うべく、大切に、しかし放置気味に育成されていたにも関わらず

俺には忍者の才能がない、との判断が下され一生幽閉されることが決定した




理由は簡単


チャクラコントロールが出来なかったのだ




いや、そもそも文字を習得しただけの段階で、教科書だけでチャクラとかいう意味のわからんものをコントロールさせようというのが間違いなのであって!

俺自身に問題はない!・・・と、断言出来ればいいのだけれども

虚弱体質である俺は、生まれつき忍者に向いていないと言われていた




九尾が入ったまま、地下暮らし

出来ることは読書(宗教関連のみ)だけ

ははっ 泣きてえ



せめてもの救いは、九尾が割と友好的だということだろう

いや、もっと小さい頃は体を乗っ取ろうと、画策してたらしいんですがね

精神世界で殺気を向けられる度に失神、発熱、生死の境を彷徨うという流れが確立し、こりゃいかんと思われたそうです



その発熱の影響か、俺の記憶はここ最近まで飛び飛びです

そして九尾=命に関わるという図式が体に刻みこまれたため、声をかけられただけで気絶する始末

完全にトラウマですありがとうございました










いいよ不貞寝するから

それしか出来ないからな










チャクラコントロール・・・出来たら、もっと俺違ってたのかな

 才能 があったら、ナルトみたいにアカデミー通って、友達作れて、忍者になれたかな


せめて体が丈夫だったら、ロック・リーみたいに体術で頑張れたかな

なんで俺、こんな体に生まれてきたんだろう





才能があれば





もっと丈夫な体なら




・・・そもそも、転生なんて、なければ



こんなことには、ならなかった




妬ましい、とはこの事だろうか



憎い、とはこの事だろうか




なんで俺をこんな風に転生させたんだろう神様は



見たこともない、居るのかもわからない神をただただ信じて



なかば八つ当たりのようにその存在にケチつけて



頭を抱えてしまったりして










「・・・ううっ・・・」










抑えきれない嗚咽が零れる


なんでもないのに、こうなったことは仕方がないのに


布団にくるまり口元を押さえる


泣けば全部すっきりする

いやな気持ちは全部涙が溶かしてくれる


そう信じて、泣き続けた



































暗く、黒い涙が落ちてくる

この狭いとも、広いとも言える牢獄に溢れだしている



どうしようもない恨みと妬み、そしてほんのわずかの怒りが溢れている



あの小さな宿主が泣いているのだろう

正気を取り戻して泣いている



「・・・哀れな仔・・・」



先代の宿主は、かように脆弱なものだっただろうかと溢し、


尻尾で涙の洪水を一掬い


鈍い音を立てて、毛どころか身をもを焦がした



大いなる獣よと、大妖怪よと讃えられた、この我の身を焼き尽くす涙



凝縮された恨み

我以上の恨み






「本当に・・・哀れな・・・」







せめて最後まで、天寿を全うするまでは守ろう


それが狂わせてしまったことに対する、せめてもの償いのはずだから








 
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