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一週間

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第七章


第七章

「どうもね」
「けれどよ、横浜のそうしたホテルってよ」
「どうなの?」
「かなりいいらしいな」
 健人はこのことを彼女に話すのだった。
「洒落てていい感じだってよ」
「ええと、一泊で八千円位よね」
「まあそんなところだな」
「一人四千円ね」
「一泊だとそんなものじゃねえのか?」
「確かにね」
 言われてその言葉に頷く優里亜だった。
「じゃあシティホテルかそこに泊まって」
「それでいいだろ」
「そうね。じゃあそうするわ」
「明日の朝からだな」
 話はこれで終わりだった。その日は二人で優里亜の家で休んでそれからだった。二人で横浜への電車に乗ってそこへ向かうのであった。
 横浜に向かうその電車の中で。優里亜は健人に対して尋ねた。土曜の朝は平日に比べて人がかなり少ない。その中で二人並んで席に座って話をするのだった。
「横浜かあ」
「言ったことあるだろ」
「結構ね」
 それはあると答える。
「好きな街よ。お洒落だし食べる場所も一杯あるし」
「そこでやっぱり食うことが出て来るんだな」
「やっぱりね。それはね」
 それを否定しない彼女だった。
「出て来て当たり前じゃない。中華街行くんでしょ?」
「ああ、まずはそこだな」
「それだったらやっぱりそうじゃない。食べるんじゃない」
「それはそうだけれどな。それで何食うんだ?」
「広東料理」
 優里亜は一言で答えた。
「それ貰うわ」
「広東料理かよ」
「あれが一番美味しいじゃない、中華料理じゃ」
「俺も好きだけれどな。まあ熱くないのがいいな」
「中華料理は全部火を使うけれど」
 そのことを指摘する優里亜だった。それは忘れない。
「それでそんなこと言ってどうするのよ」
「少し時間を置いて冷ましてから食うんだよ」
「何かあまり美味しくなさそうね、それって」
「俺はそれで美味いんだよ」
「やれやれ、相変わらずね」
 優里亜はそれを聞いて少し呆れた顔になった。荷物は自分の上に置いている。彼女だけでなく健人もそこに置いてそれで二人並んで座っているのだ。緑の席にだ。
「その猫舌は」
「悪いかよ」
「別にいいけれど。まあラーメンはのびないように気をつけてね」
 それは言うのだった。ラーメンはのびたら食べられたものではない。優里亜はラーメンが時間が経ってそれでのびることを言っているのである。
「それはね」
「一応わかってるよ」
「やれやれ。この四日間大丈夫かしら」
 優里亜は今度はこんなことを言った。
「こんな調子で」
「何だよ、そこまで言うのかよ」
「まあ残り四日ね」
 その一週間の残り四日である。そのことの話にもなった。
 
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