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IS レギオン

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第9話


 最初に仕掛けたのは簪だった。簪は、背中から延びる2対の触手の先端の槍を高速で時間差を付けて、軌道を読まれないようにして束を包み込むようにして射出したが、束は、
「よっと」
と言うように近くの木の上に飛び移り、
「なかなかだねえ。でも、束ちゃんには、丸解かりなのだよ」
と言って挑発した。

「なかなか、やりますねえ。でも、これなら如何でしょう」
と言うや、次の手を打った。それは、ほぼタイムラグ無しに次々と触手を束の元に集中を狙った。その結果、次々と打ち出された触手槍を束は、木々を飛びながら、紙一重に避けていった。

 暫くその攻防が続いたが、遂に束が小さなミスをして、地面に降りた。その瞬間を狙ったように簪は、地面を思いっ切り蹴り、高速移動をして、手槍を繰り出した。

 「隙やり、左腕貰った!」
と言うや、束の左腕が、ザンッというや、空に舞った。そして,ボトと腕が地面に落ちた。

 それを見た束は、そんなに驚いたと言う事は無く。
「あらら。よくも、飛ばしてくれたね」
と言うや、無くなった左腕を見た。不思議な事に大量の血がボトボトと流れ落ちて、地面に血の池を作り出していた。それを見ていた多数のギャオス達が騒ぎ出したが簪が、
「少し静かにして」
と小声ながら、ドスの利いた声を出して、騒がしかったギャオス達が一斉に静かになった。

 そして、簪が、
「これで止め」
と言おうとした時、其れは起こった。

 地面に血の池を作っていた物が、まるで逆再生するように束の失った左腕に向かっていき、さらに地面から、細々とした小さな塊が大量に溢れ出していき、失った左腕を再生していった。そして。それを見た簪は、暫く呆然としていた。

 簪が、茫然としている時にも次々と束の左腕を形成していった。そして、遂に完全に元に戻った。

 「堂々、ビックリした。束ちゃんは、少し自分の身体を弄ったのだよ。今では、其処らの人間以上だよ」
と再生した左腕を伸ばしたり縮めたりとしながら、胸を張った。

 「本当に、人間ではありませんね。化け物ですね」
と呟いた。すると束が、
「あらあら、よく言うね。貴方も私以上の化け物でしょ」
と言った後、
「でも、ちょっと束ちゃんいらいらしちゃったから、本気で叩き潰してやるよ」
と言った後、今まで着けていた機械的なウサ耳のカチューシャを外した。

 すると束の髪が今までの派手なピンクから真っ白な紙の色に変化し、身体つきもほっそりと背が少し伸びており、頭頂部に猫耳が生えた。

 「お前が、ご主人様を苛付かせてるのかにゃ」
と、束らしからぬ人格が言うや、人間以上の瞬発力を駆使して、簪に飛びかかった。

 さあ、2回戦目の始まりだ。
 
  (ネコ)ネコ目(食肉目)- ネコ亜目- ネコ科- ネコ亜科- ネコ属に分類される小型哺乳類であるイエネコ(学名:Felis silvestris catus)の通称である。非常に運動神経と聴覚が鋭く、特に対象の動きを捉えることを得意とする。8m位の距離ならば人間の顔を識別することが可能である。 20m以内のものであれば、じっと見ることによって距離感をかなり正確に測ることができる。また、
ネコの五感で最も優れているのは聴覚である。可聴周波数は60Hz - 65kHzとされ[14]、イヌの40Hz - 47kHz、ヒトの20Hz - 20kHz に比べて高音域に強い。これはネズミなどが発する高音に反応するよう適応したためと言われている。耳は片方ずつ別々に動かすことができ、異なる方向の音を聞き分けることができる。そのため、指向性が強く、音源の場所をかなり正確に特定することができる。音の聞き分けの能力も高く、例えば飼い主が帰ってきた足音を判別することは簡単にできる。

 何を言いたいかと言うと、今の状況は、一枚ほど束が有利だと言う事だ。

 「行くにゃ、行くにゃ、行くにゃ」
と言いながら、周囲の木々を巧みに利用しながら、しなやか且つ高速で簪の方に向けて、攻撃を加えようとしたが、簪も黙ってやられる訳ではなく、今まで密かに地面に潜り込ませていた2対の触手槍による奇襲攻撃を加え、束が次に飛び移ろうとした木々を破壊した。

 しかしながら、束は、自身の運動神経と猫の洞察力などを駆使して、きれいに地面に着地し、瞬く間に簪の近くまで距離を縮めていき、鋭く尖った左右5本の爪を使い、突き刺すように向けていったが、簪は、自身の触手を素早く戻して、自身の近くに触手を地面に突き刺して壁を作った。

壁と爪が衝突する鋭い音を周囲に鳴らし、その衝撃で土埃が舞った。そして、束と簪の両者は距離を置いた。

そして、簪が口を開いた
「なかなかやりますね。しかしながら、此方の方が今度こそ勝ちますので、辞世の句でも読んでいて下さい」
「うにゃ?随分とこのガキは、自信過剰だにゃ。こうなったら、殺してやるにゃ。そうすれば、ご主人様も喜ぶにゃ」
と両者が次の手を打つように準備を始めた。簪は、地面に突き刺していた触手槍を前部に展開させていき、2対の触手槍のそれぞれから延びる先端部分を開いた。一方の束は、地面に這い蹲る様に身をかがめ、スタートダッシュの準備をし始めた。その時、束の口が開き、其処から見える歯が鋭く尖り始め、肉食獣の様になり、ナイフのように両手から延びる爪も随分と鋭く左右それぞれの指が変化していった。


 そして、周りはシンと静まり返り、木々の擦れる音すら無く、まるで個々の島全体の空気が止まったという感覚に陥りそうだったが、木々の葉から落ちて流れ落ちる一つの雫が地面に向かって落ちていき、ポチャンと小さいながらも地面から跳ねた音が聞こえた時、束が、今まで以上のスピードで簪に向かっていった。

「これで終わりにゃ!」
という風に、爪と牙を突き出して向かっていったが、簪はあわてずにその場に立っていた。

 すると、簪の触手槍の開口部の周囲から超低周波が流れ始めていき、それが、収束しながら超音波波長に変化していき、周りの空気が振動を始めた。するとその音波が再s校長に達した瞬間、触手槍の展開部分からオレンジ色の鋭い光線を放った。

 
 「おっと、危ないにゃ」
と言いながら、簪の周りの触手槍から放たれた光線(超音波メス)を紙一重に避けたが、その放たれた光線に当たった木がきれいに真っ二つに斜めに切れていき倒れた。

 「良く避けましたね、少し残念で。ほんとうなら、今頃胴体と頭がお別れしていた頃なのに」
と周りの触手槍を不規則に動かしながら、その光線をぎりぎりで避けていた束に言った。すると、束が、
「そんにゃことは無いよ。そんにゃ攻撃、私の聴力があればその攻撃の光線音くらい聞けるにゃ」
と近くの木の枝に飛び移りながら余裕を持ちながら束は堂々と言い切った。

 「それなら、この攻撃はどう?」
と言った後、簪の背後から延びる触手を不規則に動かしながら、束に向かってある特殊な波長を出す音波を発した。すると、その攻撃を直に受けた束は、最初余り変化を受けていなかったが、暫くすると、束がフラフラし始めた。

 「にゃ?なんか変な感じだにゃ、風景が歪んでいくにゃ」
と言った後、木からすべり落ちるように落下した後に上手く立てなくなっていった。すると、それを見た簪がほくそ笑むように喋った。
「ふふふ、如何かな、さすがに猫になった後の効果は段違いに聞くのね。天災さんもこれなら上手く動けないでしょ。ネタ晴らしをするとねこれは、音響兵器の一種の『LRAD(Long Range Acoustic Device)』っていう兵器をコピーしたものなの」
と言いながら、次の手で止めを刺すように、再度触手槍を開き光線(超音波メス)の照射準備を始めた。もちろん、束が動けないように触手を地面に貫通させてから一回転両手足を拘束した。

 「これで本当にお終い」
と言った瞬間、4本の触手槍からオレンジ色の光線(超音波メス)を束に掃射した。


 「ボト、ボト、ボト、ボト」
と地面に何かが転げ落ちる音がした。それが、束の両手足であった。
「よくも、よくも、よくも」
と束が憤怒の表情を見せたが、簪は、とてもスッキリと気持ち良さそうにさわやかな笑みを浮かべてこう言った。
「大丈夫。直ぐに楽にしてあげるよ」
と言った瞬間、再度オレンジ色の光線(超音波メス)を放ち、胴体と首を分断させた。

 物言わぬ躯と化した束を見て、簪はウットリとしながら、
「これで邪魔者が一人消えた。でも、もう少ししてからでいいや。もっとたくさんの子供たち(ギャオス)を増やして進化させないと、後10年位かな?その後、いよいよ復讐の始まりだよ。ふふふ、うれしいなあ、楽しみだなあ、お姉ちゃん待っててね。最後に殺してあげるよ」
と狂気の笑みを浮かべながら、触手の間から膜を出していき、ギャオス達と共に空に上がった。天には、怪しくも赤く光る満月が照らし出されていた。


 静かな風が、この殺戮があった場所にフラリと靡いていた。その静けさがある木々の間の月光が差し込んだ影から一人の少女が現れた。

 「姉さん」
と影がうまく差し込まれており、顔がよく見えないが、その少女が次に喋った言葉があった。

「そろそろ、死んだふりを止めない?」


  さて、ここで少し時間を遡って行きたいと思う。時間は約半年前に遡る。

場所は、日本国政府直轄極秘部署某所特殊生物対策室

古来から、日本国および世界各国で報告や発見があるUFO「Unide ntified Flying Object」(アンアイデンティファイド・フライング・オブジェクト)やUMA(「謎の未確認動物」を意味する Unidentified Mysterious Animal)と言った物体または、生物に対して各国政府及び機関が極秘裏に回収研究するために創設された部署であり、それを知る関係者は、各国でも一握りしか居ないとされる。

 さて、ここ日本でも、そのような研究、分析などを行う部署があり、そこの大会議室に集まった関係者の中には、ある少女の姿があった。
「さて皆様初めまして。私が、第十七代当主更識 楯無と申します。先代の楯無は不慮の事故により死亡した為に私が今回特別に第十七代「楯無」の名をいただきました。これからわたくしは、日本の為、政府のため全力で任務に当たらせて貰います。若輩者ですがどうかよろしくお願いします」
と楯無が言った後に綺麗なお辞儀をした後にゆっくりと席に着いた。其処にいた他の関係者たちは、口々に
「まだ若いですな」
「これから、あの者が日本を陰で支えるのか、心配だ」
「ほう、この者出来るな」
と心配や期待などを口々に囁きあった。

 「分かりました。では、楯無さん此れから精進を重ねながら、頑張ってください」
と議長席に座っていた初老の男性が楯無に対して、期待する様に優しく声をかけた。
「はい、分かりました」
と楯無は立ち上がり、議長の目を見据えながら、お辞儀をした。

 「さて、此れから今日の本題に入ろうと思う」
と議長の声が少し緊張しているかの様に声のトーンを下げた。その瞬間、会議室に異様な緊張が走った。

 「さて、手元の報告書にあったようにまた、謎の生物による襲撃があった。詳しくは、特殊事件・事故捜査部から報告してくれ」
と副議長席の男性が声をかけた。
「は、報告します。一週間前に沖縄県の本島で旅行中であった、東京都の「国立音ノ木坂学院」の2年部が突然消息不明になり、付近の警察職員が調査に乗り出した時、無線連絡で「巨大な鳥が...」との報告後に無線から何かをかみ砕く音の後連絡が不能になった為に、付近の自衛隊が出動後、完全に破壊されたバスを発見、付近を調査したところ、海岸に多数の正体不明の足跡と共に人間の靴だろうと思われる足跡は発見しました。なお,現在の所、襲撃者及び生存者の情報が入っておりません」
と眼鏡を掛けたスリーピース・スーツで、ベルトは使わずにボタン留のサスペンダーを着用した男性が説明を終えた。
「説明ありがとう」
と議長が言った後、今度は、生物関係部署の鳥類専門家の女性が説明に入った。
「皆さん初めまして、ただいま説明のあった「巨大な鳥」と報告があったように私たちが付近を調査した時、巨大な白いペリットの山が発見されました」
「すみません、「ペリット」とは?」
「はい、ペリットとは、消化されずに口から吐き出された物を指します」
と、話の途中ながら、質問に答えた女性が答えた。

 そして、次の言葉で一段と会議室は静まり返ろうとした。

 緊張する空気を払拭するように、手元にあったミネラルウォーターをコップに注ぎ一口飲んだ後、鳥類学者の女性が言葉を続けた。

 「では、先ほどの続きを申したいと思います。沖縄本島で起きた襲撃者の犯人が残したとされるペリットについて、国立遺伝子研究所の協力を仰ぎました。その結果とんでもない物が発見されました」
「とんでもない物とは」
「はい、ペリットに含まれた物の中に染色体が発見されました」 
「ただの染色体がとんでもない物なのかね?」
とその話を聞いていた一人が呟いた。
「はい、それが只の染色体の方が良かったかもしれませんが、その染色体は「一対」しかないのです」
「一対?確か染色体の数って」
「ああ、人間なら23対、ニワトリなら39対、アマガエルなら12対だったはずだが」
と、生物部門の男性陣が話し合った。その話を聞いていた女性が話を続けた。
「はい、生物部門の先生方がおっしゃる通りです。が、今回採取された物には、何時いしか存在しておらず、しかもその染色体には、無駄な部分が一切ないというのも報告書にありました」
「無駄が無いだと!」
と会議室の一角に構える生物分野の科学者、技術者などが一斉にざわついた。
「はい、生物の進化には必ず無駄や欠陥がある筈なのですが、この染色体にはそれらの家庭が一切ないとの報告です。また、この染色体には、「XX」の他に「YY」のタイプもあり、単為生殖が可能と言う結論も出ています。現在の遺伝子科学上その様な事は確実に不可能だと報告書にはありました。また、五島列島にある島の姫神島にも、同じような痕跡が発見されました。なお、姫神島の住人全員が現在行方不明です。この情報は現在情報規制の為に国民には伏せられています」
「何と言う事だ」
「そんな事があれば、ほぼ無限に、数が増えてしまう」
「そういえば、人間の靴の足跡が見つかったはずだが、それについては」
と会議室に居た人達が騒然となったが、一人が靴の事で思い出した。
「それについては、現在調査中です。この靴については、大量生産品の為に確認は、ほぼ不可能です」
と最初に発言した男性が答えを出した。

 その場の空気が一段と重くなるが、次の発言により、さらに一段と重くなった。

 「もう少しお時間よろしいですか?議長」
と先程発言を終え、コップに注いだミネラルウォーターを飲み終えた女性が発言を求めた。
「どうぞ、お願いします」
と議長はその発言を認めた。

 「先程の件と関連があるのかは、現在調査中ですが、ほぼ同時期に奈良県のあるキャンプ場の付近に大量のミイラ化死骸が見つかっており、その検分の結果そのすべてのし甲斐が骨と皮だけの状態になっており、詳しく解剖した結果、僅か数センチの注射口の様な物が発見されました。これについては、未解決部分が多く全くの謎です」
「注射口!」
とこれまで静かに聞いていた楯無が突然何か思い出したように声を荒げた。
「楯無君?」
と少し驚いたように議長が聞いた。
「ははい、すみません。しかしながら、私にも発言よろしいですか?」
と聞いたので、議長は、
「よろしいですよ」
と、快諾してくれた。
「すみません。注射口と言う発言に気になる点を思い出したので」
「なぜでしょうか?」
と女性は少し驚いたように聞いた。
「はい。私の父と母が、その注射口の様な物でミイラ化して発見されたのです」
と発言した直後会議室はさらなる驚きに包まれた。

 「どうゆうことですか?」
とその話を聞いた別の部署の人が聞くと、
「はい、私の父と母が,私の継承式の時に、私の妹と一緒に小部屋に入った後姿が似せないのを不審に思った使用人が小部屋に入った時には、もう...」
と楯無は、少し表情を暗くし、言葉を詰まらせた。すると其れを聞いていた議長が、
「そんな事があったのか、それは、すまない。それで、妹さんの方は、どうなったのかね?」
と聞くと、楯無は、
「はい、私が着いた時には、妹の姿が無く,妹が居たであろう処に湯飲みが落ちており、其のすぐ傍の壁が綺麗にくり抜かれる様に外に出ており、その後付近を探索したのですが、見つかりませんでした」
と言葉を継ぐんだ。

 暫く、会議場が沈黙に包まれた後、速やかにその後の調査の続行と調査範囲の拡大、それに伴う人員装備の拡張などが急ピッチに進められたが、その後、様々な事が立て続けにおきた。そう、「霧の艦隊事件」の為にさらなる混乱が起き、中々人員の確保が難しかったが、遂に



一年後。

ここは、束と簪との戦闘が行われた無人島である。終始この戦闘をずっと監視していた者が居た。高度約一万メートルこの日は所々に雲があったが、この者には、そのようなものは関係なく鮮明にはっきりと写りこんでいた。それは、人類が持つ、航空機などではなかった。その身体は、全体的に節足動物のサソリに似た身体中に突起物があり、背中と副部分に円盤状の物が備えてあった。その身体の構造は、未知の地球外の物質であった。
 識別個体名「E-0R:スコープ・レギオン」である。
一夏との融合したレギオンが、一夏の知識と地球内の情報法を統合し、レギオンチャンパー内で独自に進化したタイプであり、主な行動は、(あるじ)である一夏に周囲の情報と監視した情報を速やかに運ぶという任務である。その為、戦闘能力は皆無であるが、強力な電子妨害と空間上のありとあらゆる情報の盗聴である。なお,命名は一夏本人である。

そのレギオンが今まで見た情報を速やかに隠密に運ぶ為に強力な光学迷彩と共に高速スピード(マッハ5クラス)で主のいる島に向かった。

 そして、その頃、一夏とその家族は、ある出会いをし、姉の千冬の永遠のライバルとの初邂逅であった。
 

  
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